第10話 通学路での告白!
かの、尾崎豊は、卒業という歌の中でこう言っていた。
「やがて誰も恋に落ちて愛の言葉と
理想の愛それだけに心奪われた。」
他聞に漏れず、私も人生でたった1度っきりの初恋をし、夢破れた。
これから書く文章は、少しだけ少年としてあるまじき行為を行っている
可能性があるので、フィクションとして読んでいただければ幸いである。
あれはまだ私が、壊れそうなものばかり集めてしまうのが趣味だった、
ガラスの10代だった頃のお話だ。
高校1年の入学したての頃、廊下ですれ違った1人の女性を見て、
私の中に、雷に打たれたかのような衝撃が走った。
「全身を、恋の稲妻が駆け抜けた!」とでも言うのだろうか。
それが私の初恋だ。
彼女は2つ年上のAさん。
ちょっとだけ、永田名人の知り合いだった。
彼を通じて、名前や住んでいる家なんかがわかった。
でもそれだけ。
当時も今と変わらず、透き通るガラスのようにピュアハートだった私は、
それ以上前に進むことができなかった。
悶々としたまま、時だけが流れていった。
そして、クリスマスの鈴の音も聞こえ始めた、12月中旬、私は一大決心をする。
うちの高校の3年生は、3学期になるとほとんど学校に来なくなる。
みんな、受験勉強等に集中するためだ。
その前に、なんとかしなくてはならない。
行動を起こさずに後悔するよりは、実行して失敗してする方がずっといい。
高校時代、私は中野会長と一緒に、チャリで通学していた。
当然会長は、私がAさんに思いを馳せていることを知っている。
決行当日の朝、意を決し会長に告げる。
私「たいじ、俺、今日Aさんに告白するわ。」
会長「そうか。ついにか。まぁ、がんばれ!」
彼女の家は、永田名人に聞いて知っていた。
我々の通学路の途中にある。
家の玄関で彼女が出てくるのを待ち、告白してしまおうという寸法だ。
会長と二人、現場に近づくにつれ、緊張が高まる。
私「たいじ、俺、やっぱ駄目だわ。無理だわ。」
何度も言うが、当時の私はとっても純情だった。
たった一言、「好きです」 の言葉を口にする勇気を持ち合わせていなかった。
見かねた会長がもどかしげに、冗談半分こういった。
会長「そんなら、酒でも飲んで告白すれば?」
私「 ・・・・・・・・・ 」
私「 それ、 グッドアイデアじゃん! 」
急いで、酒屋の自販機へと走り、ワンカップ大関を購入する。
腰に手をあて、ぐいっと一気飲みすれば、
元気百倍、アンパンマーン!だ。
彼女の家の前に着き、電柱の影から会長と2人、そっと彼女を待ち伏せする。
そして玄関のドアが開き、彼女が現れた。
会長からゴーサインが出る!
必死でチャリンコをこいで、彼女の元へと向かう。
しかしながら酔っ払っているせいか足元、いや、チャリ元がおぼつかない。
ふらふらしながらチャリを走らせるのだが、
彼女の元へとたどり着くまでに2回ほどこけた。
彼女からしてみれば、チャリに乗ってふらふらしながら、しかも
2回ほどこけながら自分に近づいてきている私の姿は、かなりの高確率で変質者に
見えたことだろう。 ごめんなさい。
そして、いざ彼女の元、当時流行っていた「ねるとん」風に、
私「Aさん、自分は、1年のたこと言います。
ずっと前から好きでした!
良かったら、付き合ってください!」と、
人生一番の大勝負をするも、間髪いれずに返ってきた言葉は、
大方の予想通り、「ごめんなさい!」の一言。
まぁ、当然だ。
知らない怪しい男がいきなり近寄ってきて、ずっと前から好きでした!と言われ、
「実は私も好きでした!」 との、私が描いていた素敵な未来予想図は、
世界中どこの国の少女漫画を探しても見つからないだろう。
今であれば、3秒位考えたらわかりそうな結末もわからないくらい、
当時の私はピュアだった。
そしてアホだった。
「ありがとうございました!」と、
意味のわからない御礼を告げ、深々と頭をさげ会長の元へと戻る私。
会長の所に戻るまでに、今度は3回こけた。
まぁ、元気出せよ!と、口では励ましてくれている会長の表情には、
「ぷぷっ、フラレてやんの。」との憎たらしい笑みが浮かんでいた。
彼の表情が、今もまぶたに焼きついて離れない・・・
2006.11.18