第1話 人生で最高に嬉しかった瞬間
誰にも、人生で最高に嬉しかった瞬間ってあると思う。
思いを寄せる女性に告白して、恋が実ったとき。
新しい命の誕生。その場に立ち会えたこと。
人にはそれぞれ、人生で一番うれしかったことがあるはずである。
それは高校2年の夏・・・
友人と自転車で九州一周旅行へ出かけたときのこと・・・
今では、とても自転車で九州一周しようなどとは思わないが、当時は若気の至りと
いうか、いわゆるひとつの青春というやつなのであろうか。
17歳、高校2年の夏、友人二人と、合わせて3人で、9泊10日位で、九州を1周した。
北九州から大分に抜け、鹿児島を経由して熊本入り。
私の人生に大きな感激を与えた事件は、熊本駅で起こった。
さかのぼる事3日位前、大分の湯布院の峠を自転車で上っていたのであるが、
ここは、チャリンコで通るにはかなりの難所である。それこそ、一日がかりで、
われわれはこの峠を越えたのであるが、一生懸命坂道を登る途中、どこぞやの
修学旅行の女子高のバスが、我々を追い抜いていった。
バスは5台くらい連なっていたであろうか。
何人かの女子高生が、我々に「がんばってね〜!」と、窓越しに声を
かけてきてくれたのである。 これぞ青春やね!
いやぁ、嬉しかったぁ。副会長、ハッピーハッピーである。
ここまでなら普通にありそうであるが、話はまだまだ続く。
そして3日後。熊本駅から電車に乗る3人。チャリンコで旅行しているはずが、
どうして電車に乗っているかであるが、自転車旅行が辛くなり、チャリンコは宅急便で
送って、自分たちは電車で帰ろうと思ったとは、口が裂けてもいえない。
電車にのって、一路山口を目指す予定であった我々の反対側のホームに、
貸切らしい電車がとまる。「あぁ、女子高が貸しきっている、女子ばっかりの電車で
うらやましいなぁ」と、当時は思っていたかいなかったかは定かではないが、
その反対の電車の女子たちと、ふと目が合う。
その瞬間、手で口を押さえて、驚きの表情を浮かべる、修学旅行中の女子たち。
向こうで、なにやらこっちを指差し、口を押さえて驚く女子たちの数がどんどん増える。
そうである。数日前に由布院の坂で我々をバスで抜いていった、修学旅行中の女子
たちである。そう気づいた途端、我々の乗った電車がゆっくりと動き始める。
その瞬間である。その修学旅行中の女子たちが一斉に我々に向かって、手を振り
始めたのである。すれ違う車両、全ての女子たちが、僕らに向かって手を振って
くれている。想像であるが、向こうの電車の中では、
女子A「大分の坂を上りよった、3人の男子があの電車に乗っちょーよ!」
女子B「うそー、どこどこ? あ、ほんとじゃー、 キャー」というような会話が繰り
広げられていたのではないかと考える。なにはともあれ、すれ違う全ての車両の
女子たちが、我々にてを振ってくれている。光GENJIの、カー君さながらの気分で
ある。
いやぁ、嬉しかった。私、一生懸命手を振り返した。
それこそ・・・・・ 手がちぎれんほどに・・・
男って、馬鹿である。
いや違う。馬鹿は私だ。
2006.05.08