良寛の人間像の「真髄」の再考

良寛の人間像の「真髄」の再考

ⅲ）光照寺と修行【18歳～22歳－4年間】

良寛18歳の時、尼瀬の曹洞宗光照寺・（十二世）玄乗破了和尚の元に参禅した。
　この時、「安永３年７月玄乗破了和尚の弟子となりて薙髪し、良寛と改む。時に18歳なり、又自ら大愚と号す。」と言う説もあるが、ここでは4年後の22歳の時に出家としておく。参禅して見習いの修行をした理由は、京屋と池田家（橘屋と婚姻関係）との勧請などの争いや俗事その他、到底名主見習役は勤まらないということなどであると言われている。
勧請とは、神仏の霊を移し祭ることで、京屋の先祖がこの勧請をしたもので、自分の権利であると主張した。尚、池田家は、神明社の神職である。
（修行者としての）良寛の光照寺での生活は、実家が近く援助もあったろうから、厳しい修行というよりは「光照寺に寄宿して勉学をしているようなもの」であったと思われる。

ⅳ）円通寺での修行【22歳～34歳まで－12年間】

　光照寺で4年が過ぎた頃、安永８年春光照寺で江湖会〈こうこうえ〉授戒会〈じゅかいえ〉が行われた。この授戒会に講師として（その頃高徳の僧とうたわれた）玄乗破了和尚のかっての師、備中玉島（岡山県倉敷市）の円通寺住職国仙和尚が訪れた。【かっての弟子たちの寺院を巡りその途中に光照寺での江湖会・授戒会出席を兼ねて訪れた】
　この時、良寛は国仙和尚の魅力にふれ国仙和尚の弟子となり得度剃髪（出家して髪をそること）をした。時に良寛出家22歳。
　良寛は、そのまま国仙和尚の後に従い、一行は同年秋まで越後を回り、その後岡山、長野の善光寺、大坂を経由して円通寺に赴いた。
　大愚良寛の名前を名乗る。【大愚良寛＝大忍・大賢・良好・ゆったり】
　以来12年間、良寛は国仙のもとで厳しい修行求道に励んだ。
　しかし、その後良寛はこの修行時代を振り返って「円通寺の門前には千戸ばかりの村があった。しかし、そこの住民を一人も識ることなく過ぎてしまった」と追想している。
その日常は著しく自閉的であったらしい事は良寛が後に作った漢詩によってこのように知られている。当然他の修行者とも友人にならなかったらしいと言われている。
　天明３年(1783)、母秀子【享年49歳】没。【良寛26歳】このころ、母の7回忌か三回忌に帰郷している。
　寛政２年、師の国仙和尚から印可の偈（修行修了証明書）を得るが、曹洞宗の寺の住職等にはならなかった。
　翌、寛政３年(1791年)春、師の国仙和尚が示寂（じじゃく＝名僧の死）する。
　師の国仙和尚の亡き後跡目のごたごたからか、良寛は諸国行脚の旅に出、円通寺を去って姿を消してしまう。中国・四国・九州地方を巡ったと言われている。
　さて、このころの時代はと言えば、1788年良寛28歳の時に筆頭老中「田沼意次」が失脚し直ぐに、老中松平定信の「寛政の改革」、将軍家斉の大御所時代《文化・文政文化（化政文化）》となる。海外に転ずれば1789年良寛32歳の時にフランス革命が起きている。
その他、出雲崎の米騒動、天明の飢饉、天明の打ち壊し。米価暴動と文化の割に政情不安な時代であった。

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