第六話「 舞え!闘神符 」
森羅万象。あらゆる存在は皆、陰陽五行に縛られている。陰陽五行の技を操る者は陰陽師と呼ばれたが、それとは異なる技術を会得した存在が別にあった。
式神と契約を結び戦いに赴く者達。
名を闘神士という―――
新たな地流の追手が迫っているとも露知らずリクは呑気に朝からカレーライスを行儀良く食べていた。食事の最中にフッとソーマの学校の手続き等に思い至り問いかけるが反って煩がられ本人から大学卒業証明書を見せ付けられ驚愕するのだった。ソーマにあれこれ構おうとするリクにコゲンタは悪態をつく。
「 大体何でアンナ奴、置いとくんだよ! 」
「 だって行く所ないみたいだったし 」
「 だからってホイホイ拾ってくんな! 」
・・・コゲンタ様。アナタの仰る通りです。
※ 人を拾う = 誘拐
・・・?
確実に地流闘神士の魔の手がリクの周辺に忍び寄っているのにも関わらず、相変わらず妙にリクの周辺は平和だ。そこでは日常茶飯事となりつつあるコゲンタの怒声が響き渡っていた。
「 やっぱり、おめーはその性格からして駄目だ!叩き直さねーと駄目だ!俺が鍛えてやる!! 」
と意気込むコゲンタに引っ張り出されるようにリクは”天流の修行場”を探して修行する事になってしまった。
目的地へ着いたリクとコゲンタ、二人の前にはまるでピクニックに出かけるようなノリのモモとリナが集合していた。二人の同行に憮然とするコゲンタを他所に
“ミステリーツアーにゴー!”という合言葉を掲げ三人はあっという間に洞窟の行き止まりに突き当ってしまう。先に進めないのならと実にアッサリと踵を返したリクの行動にコゲンタが激怒する。
「 どーしてお前はそーなんだ!!そんなんだから見えるもんも見えねーんだろうが!! 」
何につけても物事に対して執着がなさ過ぎると息巻くコゲンタはリクに先に進むように怒鳴りつける。しかし、明らかに行き止まりの空間のいったいどこへ進めというのかと不服を見せたリクが何気に洞窟の壁面に触れた瞬間、腕にある流派章が光出した。神操機を翳せというコゲンタの声に応じて上げた腕の先には陰陽太極図が浮かび上がっていたのだ。驚愕する三人の前に開かれる扉。それこそが異界へと続く入り口だったのだ。
この場所は闘神符を使って気力を鍛える修行場だとコゲンタが説明している方向違いの場所でリナは岩に張られた札を剥がしてしまい封印されていた妖怪を解放してしまう。いきなり出現した妖怪の集団に慌てながらもリクは無意識で符を使い妖怪達の動きを封じていた。本人には自覚はなくても潜在能力が無ければ白虎と契約を交わす事は出来ないと感じているコゲンタはお前なら修行次第でいくらでも強くなれると諭してみせた。が、相変わらず当人の口から出るのはやる気のない言葉ばかりでコゲンタの苛々を増長させただけだった。
そんな折、リクの周辺をうろついていた新たな地流闘神士・ゴンパチが霜花のライデンと共に乱入してきた。
そんな敵の出現にコゲンタは、
「 倒せるもんなら倒してみらがれ! 」
・・・いつでもどこでも強気なコゲンタ。
現れた闘神士に対抗しようと居住まいを正すリクの気力が一気に眼前に絞られると先ほどリクの気力で足止めされていた妖怪達は弱まった気力の隙をすり抜けモモとリナに牙を向けようと動き出した。二人を護る為、必死で闘神符を使い新たな壁を作るリクだったがいつ妖怪達が符を破って二人を襲わないかという杞憂からで目の前の戦いに集中出来ないでいた。
闘神士の気力・力量で式神の実力に差が出る戦いの場においてリクの意識が散漫になればコゲンタは力を発揮出来ず一方的にやられるしかない。
「 バカリク!コンニャロウ!戦ってる最中によそ見してる闘神士がどこにいんだよ!!
」
と怒りを叩きつけるコゲンタにリクもなり振り構わず喚く。
「 だって、このままじゃモモちゃん達が妖怪達にやられちゃうよ!! 」
と必死なリクの様子にコゲンタは諭すのだった。
「 リク、お前は闘神士だ。符を使いながら戦わなきゃなんねー時が必ず来る。この式神を倒したらオレが 妖怪を蹴散らしてやる!・・・だから、お前もやってみせろ! 」
・・・この瞬間のあどけない顔。瞬時に表情が凛々しくなって。この一瞬一瞬の表情に誰でもが恋におちるに相違ない!現に私はそうだった!
コゲンタの言葉で心の冷静さを取り戻したリクは纏う空気をガラリと変えて眼前の敵に向かった。
しかし、耳に届く二人の悲鳴にやはり戦いに集中出来ずコゲンタを更に苦しい局面に追い込んでしまう。
そこで後のなくなったリクは開き直って式神ライデンがコゲンタ目掛けて繰り出した技を符で返した。思わぬ反撃にうろたえるライデンの僅かな隙をぬってコゲンタの剣が襲かかる。コゲンタの剣は見事にライデンを捕らえ勝利する事ができたのだった。
リクはホッと肩の力を抜くが背後からの悲鳴に我に返る。振り返ったリクの視界には後数歩の距離でモモ達に追い縋ろうとする妖怪達の姿がある。間に合わない!!
固まるリクの頭上からコゲンタの一喝が洞窟内に木魂した。
「 そこまでー!! 」
その声に瞬殺されたかのように妖怪達はかき消すように姿を消した。驚くリクにコゲンタは余裕の笑みを貼り付けて言ったのだ。
「 ただの練習用の、幻だ 」
その言葉に脱力するリク。そこには先ほど戦いで垣間見えた闘神士の姿はなく、ごく普通の中学生の姿があるだけだった。
つづく