今からおよそ千年前。式神を操る闘神士達は天流と地流の二大勢力に別れ抗争を続けていた。その戦闘は熾烈を極め両派はやがて疲弊し衰退していった。
しかし永い時を経て今、一人の少年闘神士の目覚めにより両派は再び激しい火花を散らすことになる ―――
ソーマは夕暮れの河原に一人いた。正確には式神のフサノシンと共に。そんなソーマに「地流には本当に戻らないのか」とフサノシンは気遣わし気に訊ねる。「 ミカヅチにはもう従わない。況してや、あんな奴の言いなりになってる兄さんなんて絶対に許せない 」とソーマは言う。まるで萎えそうになる信念を自身に言い聞かせるように。
信念はあっても見通しのつかない現状に心が揺れるソーマにフサノシンは言った。
「 お前が天流であっても地流であっても、どこまでもついていってやるぜ 」
たった一人でも自分の存在を認めてくれる相手がいるから前を向いていける、ソーマはきっとそう思ったに違いない。
ソーマとフサノシンがお互いの絆を再確認していた頃。
飛鳥家の嫡子ユーマは式神ランゲツと共に妖怪相手に必死の修行をしていた。その心にあるのは強くなること。
「 もっと強くなる。誰よりも誰よりも強く 」
強さに拘るユーマ。大事なものは本当にそれだけなのだろうか・・・・・
自分の主張と兄との関係で悩むソーマ。自分の強さが揺るぎないものになるようにと必死になっているユーマ。飛鳥家の二人がそれぞれの思いと闘っている最中リクも戦っていた。
自分の生み出した料理、と。
火を噴き、煙を上げる料理は、命がけで作られた感がある・・・・・どうにか出来上がった料理をソーマと食べようと声をかけるが無碍に断られてしまう。ただリクの場合、頭のネジが一本から3本足りないので腹も立たないらしい。
そんな時、部室がないからという理由でボート部の面々が料理の材料を持ち寄ってリクのアパートを訪ねてきた。襖越しに聞こえる長閑な日常の風景にソーマは居た堪れない思いになった。
「 地流に立ち向かえる天流という組織なんてないじゃないか!こんなんじゃぁいつまで経ってもミカヅチを倒すことなんて出来ない 」
ソーマは父や母の敵を取りたいのだ。そうしてミカヅチから兄を取り戻したいのかもしれない・・・・・その為にはミカヅチと戦える相手を探しているのだ。地流に立ち向かえると思っていた天流には、そんな組織力は皆無のように見えソーマは苛立ちのままにアパートを飛び出してしまった。
そんなソーマを心配したリクは皆の手前、食事後に探しに出掛ける。ソーマを探すことに非協力的なコゲンタにリクは自分の視点から見えるソーマは賢くて良い子だと説いて聞かせる。普段ボーッとしていて何も考えてなさそうに見えるが実はしっかりと相手を見ているリク。
渋々従うコゲンタだったがソウタロウの社でフサノシンと、別の式神の気配を察知してリクと二人急いで向かうのだった。
フサノシンが地流のミンゴベエに倒されそうになった瞬間、間一髪でリクと共に駆け付けたコゲンタに助けられる。しかしフサノシンは決して礼を言わない。むしろ自分だけで決着をつけるつもりか手を出すなと言い切る。これはソーマとフサノシンの戦いなのだから。
「 こっちは猫の手を借りる程、へばっちゃいない。これからは一人でやってみせる 」
差し出した手を乱暴に叩かれた気分のコゲンタは烈火の如く怒る。が、フサノシンにとって大事なのはソーマ。自身の闘神士に自信をつけてやりたい、お前は凄いんだという思いを伝えたい ―――
フサノシンはめげるソーマの心を奮い立たせたくて傷つきながらも地流の敵・埋火のミンゴベエを相手に必死に立ち上がって戦おうとする。思いを掴んで欲しくて、自分の行動の意味を感じて欲しくて。
「 諦めるな。俺は負けないから 」
だからソーマお前も負けるな ―――
フサノシンの言葉、フサノシンの行動、フサノシンの心を感じ取ったソーマは本来の力を開放して今までの苦戦が嘘のように呆気なくミンゴベエ
を倒したのだった。
戦いの後に残されたのは見せ場を奪われ不貞腐れるコゲンタと、迷いを振り切り一回り成長したソーマだった。
つづく
第八話「 ユーマとソーマ 」