劉備が曹操の元に身を寄せて間もない頃、劉備は曹操の屋敷によく招かれていた。
義兄弟たちとともに招かれて、曹操の臣下たちと飲むときもあれば、曹操と二人きりで飲むこともあった。
だが、曹操と二人で、飲むときに劉備は苦手なことが一つだけあった。

 

「今宵も・・・ですか?」

曹操から、酒宴の招きの使者に、劉備はいささか困惑した表情を浮かべた。

「はい、曹司空が左将軍と二人でお飲みになりたいと申されております。」

(安易に断るわけにはいかないな・・・。)

今後のことを考えると曹操との付き合いを下手に断ることはまずい。気が進まないが、行くべきだろう。

「・・・わかりました、夕方には司空の御屋敷に参りますと、お伝えください。」

「わかりました。」

 

足早に去っていく使者を見送ると、ふうっと溜息を吐いていた。

「兄者、そんなに嫌なら断っちまえばいいのに・・・。」

「断ることは別に無礼にはならないはずですぞ。」

劉備の様子を見て、張飛と関羽が口々に言った。

「あ・・・いや、別に嫌なわけではないのだ・・。」

「では、体調でも優れないのですか?」

二人が心配そうに劉備の顔を見る。

「そうじゃないんだ。ただ、曹操殿はなぜ私ばかりを呼ぶのかが気になってな・・。」

劉備の答えに、二人は真剣な表情で、

「・・・・兄者、もしものことがあったら逃げるのですぞ・・。」

「なんなら、俺がついて行こうか?」

と言ってきた。その表情があまりにも必死だったので、劉備はたじろいた。

「だ、大丈夫だ。そんなもしものことなんか起こるはずもない。
じゃあ、私は準備をして行くから、ちゃんと待っているんだぞ。」

そう言って足早に二人から離れていった。

 

 

 

 別に曹操が嫌いだからとか、体調が悪いから、曹操の屋敷に行きたくないわけではない・・。劉備が曹操に会いたくない理由は別にあった。

(私は曹操殿を恐れているのかもしれない・・・。)

曹操が100年・・いや1000年に一人いるかいないかの英雄であることは間違いない。
その輝く才能が多くの人々を魅了し、惹きつけている。もしかしたら、自分も曹操に惹きつけられているのかもしれない。
そう考えると、怖くなった。自分は、漢王室復興と云う志がある。
自分が曹操に惹きつけられ過ぎてしまうと、その志もともに戦う義兄弟たちも忘れそうで怖い。
自分を失いそうになることが、曹操に会いたくない最大の理由だった。

 

 「左将軍、劉玄徳、参上いたしました。」

「司空が奥でお待ちです。さあこちらに。」

曹操の屋敷に着くと、すぐさま客間に案内された。客間に着くと、屋敷の主が周囲のものを下がらせた。

「お招きに預かり光栄にございます。」

「よく来たな劉備。さあ、そんな堅苦しい挨拶はよい。今宵は二人で飲み明かそうぞ。」

そう言って、曹操は劉備に酒杯を勧めた。
劉備は彼の目の前に用意された席に座りのその酒杯を受取って、酒を飲んだ。
そのとき、曹操の目になるべく視線を合わせないようにしたが、油断した。
酒杯を受け取った瞬間、曹操の目とあってしまった。
彼の切れの長い鳳眼に見られ、呼吸が止まりそうなくらい、鼓動が速くなった。

(胸が熱い・・・・。)

飲んだ酒のせいなのか、それとも違うものなのか・・・。
劉備はともかく曹操の視線から逃れようと、一気に酒を飲みほした。その姿を曹操は満足そうに見ている。

「なかなかの飲みっぷりだ。では、わしも負けじと飲むか・・。」

そう言って、曹操も杯に入っていた酒を飲み干し、さらに酒を注いだ。
二人の酒宴は、雑談を交えつつ、優雅に進んだ。

 

 どのくらい時間が経ったのだろうか。
普段からあまり酒は強くはなくて、ついつい、酒を控えてしまう癖があり、酒を飲むよりも、つまみに手を出していたおかげで、劉備は、それほど酔ってはいなかった。
だが、曹操はいつも冷静な姿とは違い、少し酔っているようで、陽気で明るい表情をしていた。

「司空殿・・・もうそのくらいにされた方が・・・。」

「いや・・まだ大丈夫だ。それに劉備、ここはわしの屋敷だ。なんの遠慮はいらん。」

「はあ・・・しかし・・。」

「それにお主は気づいておらぬのか?」

今まで、陽気なとは打って変わり、曹操は再びあの鳳眼で劉備を見て、不敵に笑いこう言い放った。

「お主は、もはやわしの手中にいるという事を・・。」

「・・・・!」

曹操の手が伸びてきて、劉備の顎をとらえた。劉備は逃れようにも、体制が悪く、身動きができなくなった。

「た、戯れはおやめ下さい!!」

「戯れではない・・本気だ・・。」

劉備は必死に叫んで、曹操から逃れようとするが、曹操はその抵抗を強引に押さえ、劉備の唇に口づけた。
触れただけだと思っていた口付けは、すぐに息つく暇もないくらい濃厚で貪欲な口付けに変わった。
曹操は一気に劉備の舌に自分の舌を絡め、深く口付けをした。

 やっとのことで口付けから解放された劉備は息を整えるのが精いっぱいで、何が起きたのか理解するまでにかなりの時間がかかった。

 

 

「・・・お主をわしのものにしたいのだ・・玄徳・・・。」

曹操は劉備にそう耳元で囁き、帯を解こうとした瞬間。

パシッ!

乾いた音が室内に響き渡り、曹操の頬に赤い跡がついた。劉備は目に涙を浮かべ、

「お止め下さい!私は物ではありません!!」

と曹操に言い放った。曹操は、頬をさすり、いささか冷静になったようで、しばらく黙っていた。
そして、先ほどの不敵な表情とは違い、どこか寂しげな表情で、

「・・・酔いが過ぎたな・・無礼なことをした・・。」

と言って、席に着いた。劉備もほっとして、席についた。
しかし、その瞬間、曹操が真剣な表情で、こちらを見ていた。

(また、あの目に惹きつけられる・・・)

虎ににらまれた獲物のように、身動きができず、呼吸もままならない…。
黙ってうつむく劉備に曹操は重々しく口を開いた。

「・・・もし・・先ほどの言葉が・・偽りでなければどうする・・。」

「先ほどの言葉とは・・・?」

劉備が恐る恐る聞く。

「・・・お主をわしのものにしたい。」

「ですから私は・・。」

「違う!物としてということじゃない。・・・一人の男としてだ。」

そう言って、曹操は立ち上がり、劉備の耳元で囁いた。

(愛している・・・。)

「っ……!?」

その一言に劉備は、頭の中が真っ白になった。

(愛している……?曹操殿が私のことを……?)

「…返事を聞かしてくれ…玄徳…。」

その甘美な囁きが、劉備の胸を熱くする…。
恥ずかしさから曹操から視線を逸らそうにも、曹操の切れの長い鳳眼に惹きつけられてしまい逃れられない。
だが、今までの恐怖を抱いていた視線とは違い、その視線は優しくて、どこか寂しさを漂わすものであった。

(嗚呼、私は誤解をしていたのだな…。)

曹操の言葉を聞いて、劉備は初めて自分の気持ちに気づいた。
自分は曹操を恐れていたわけでも、嫌っていたわけでもなかった。
ただ、曹操に対して抱いている自分の気持ちを認めたくなかっただけなのだ。

(今…その決心がついた…。)

劉備は曹操をまっすぐ見て、笑顔で、

「曹操殿・・・私もお慕いいたしております。」

と赤らめて言った。

「それでは…。」

「ええ…愛しています……曹操殿。」

そう言った瞬間、曹操は劉備を抱きよせ、濃厚な口付けをかわした。
先ほどの口付けとは違い、お互いを確かめるように深く、そして甘いもので。
劉備は知らず知らずのうちに、曹操の背に腕を回していた。それを合図に、曹操は劉備を連れて、寝室へと向かった。

 

 

 「………っぁ。」

寝所についてすぐさま帯を解かれ、再び深い口付けをしたのちに、彷徨っていた曹操の指先が胸の飾りに触れて、劉備は思わず声を上げた。まるで女の嬌声のようで、恥ずかしく、白い劉備の肌がほんのりと赤く色づいた。

「愛いやつだ…。」

そう言って曹操は、胸の飾りを執拗に揉む。胸の飾りが甘い刺激が、むずかゆい感覚となって劉備を襲う。

「…は…、ぁん……」

「ここは何もしておらぬのにもう濡れているぞ…。」

胸の飾りをなめていた曹操がふいに劉備の中心に触れる。
その感触に思わず、身体がビクッと反応し、さらに嬌声をあげてしまった。

「曹…操殿……そんなに……ふぁっ…!!」

中心をしごいてやると、劉備はあっけなく乱れた。

「先にイってもよいのだぞ…。」

耳元で甘く囁かれ、甘い熱が劉備の身体を襲う。

「そん…な……あっ……ん……ぁっ!」

反論する余裕もなく、快楽の波に翻弄される。

「……だめっ…、あ………ん、…ぁ―――っ!」

びくびくと身体が震え、走り抜ける快楽にすべての神経が支配される。
そのまま、劉備は曹操の手の中で果てた。快楽の後から襲ってくる気だるさに引きつった全身が力を失い、崩れ落ちるように曹操に身を任せた。
荒い息をつきながら曹操を見れば、彼は喉を鳴らして劉備の出したものを飲み込んでいた。

「そ…んなの……汚いです…。」

赤面して、曹操に訴えるが、

「愛しい者のやつが汚いわけあるか。」

と曹操は言って笑った。そして、力の入らない劉備の身体を押し倒すと、

「力を抜いてくれ、玄徳…。」

と甘く囁き、後ろの蕾につぷりと指を入れた。

「ふぁっ……!?」

いきなりの刺激に劉備はきゅっと曹操の指を締め付けた。
だが、指の動きから与えられる快楽とくすぐったいような疼きに、しだいにその締め付けは緩くなっていった。

「……あ…っ……は…ぁ…ん…っ…。」

知らぬ間に1本だった指が3本に増やされ、その動きも穏やかなものから劉備の中を押し広げるようにかき回していった。
いつしか指から与えられるだけでは、満足できず、劉備は、潤んだ瞳で曹操を見つめ懇願した。

「曹……操…殿……もぅ……ほ…しい…です…。」

「何がほしいんだ?玄徳?」

意地の悪い笑みで曹操は劉備を見る。その行動に劉備はぷいっとそっぽを向き顔を赤らめながら、

「…曹操…殿…が…ほしい…。」

「いい子だ、玄徳…。」

そういって、曹操は劉備の両足を広げ、劉備の蕾に己の中心をあてがい、一気に入れ込んだ。

「ふぁっ……っ!」

あまりの質量に劉備は、一瞬、気が遠くなった。劉備の中はきつく曹操のものを締め付ける。

「くっ…。力を抜け……玄徳…。」

苦しそうの曹操が言うが、劉備の力はなかなか抜けない。曹操は、再びそそり立っている劉備のものをしごく。

「あっ…!…駄目っ……!」

締め付けが緩くなり、この隙に一気に曹操は劉備の奥まで突いた。

「ああっ…!……ふぁ…っ…ん…っ…ぁっ。」

すぐにでもイキそうな劉備の自身の根元をきゅっと締める。

「…少し我慢しろ…。」

「で…もっ…。」

「お主をもう少し味わいたい…。」

曹操に見つめられ、劉備はトロンとした表情になった。二人は口付けを交わし、その快楽に浸った。

 

「動くぞ…玄徳…。」

「はいっ…。」

その一言を合図に曹操が劉備を激しく突く。

「ああっ……ぁっ…ふぁっ…ぁ…!」

じゅぷんと中を激しくかき混ぜられ、劉備は快楽の渦に翻弄されていた。
必死に曹操に抱きつき、少しでも彼とともに快楽を味わおうと、曹操の名を叫ぶ。

「……っ…曹…操…殿…ふぁ…あっ…!」

「字で呼んでくれ……玄徳…。」

「…孟…徳…殿、…ぁっ…愛…し…ていま…す…、あぁっ…!」

「…わしもだ…玄徳。」

劉備はぎゅっと曹操を抱きしめ、曹操はそれに答えるよう劉備の奥深くを激しく突いた。

「ああっ―――っ!!」

「くっ…!」

激しい快楽は劉備を絶頂に導き、中心から熱い快楽を吐き出し、意識までも奪った。

 

 

「……玄徳……玄徳。」

劉備は薄ら目を開けると、曹操が優しい表情でこちらを見ていた。

「無理をさせたな…すまん……。」

「いえ、大丈夫です…。」

「わしの思いが通じたので、つい無理強いをさせてしまった…。」

申し訳なさそうに曹操が劉備に言うと、劉備は彼の頬撫でて、

「私も嬉しかったのです。孟徳殿のお言葉で、自分の本当の気持ちに気づいて…。」

そう言いかける劉備に曹操は口付けをかわす。

「…玄徳、愛しているぞ…。」

自分を惹きつけてやまない曹操の鳳眼が今は、自分だけを見ている…。そう思うと劉備は、愛おしい気持ちでいっぱいになった。

「私も愛しています…孟徳殿。」

 

愛しい方よ…。いつまでもその目で私をとらえ続けて…。





執筆
進徳様、三国志中心進徳様

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