丞相府へ向かう途中の、人通りのない庭園の中

風が湿気を帯びて生ぬるく肌を掠めていく

空には、雨が今にでも降り出しそうな雲が天を覆っていた

足取り重く劉備は石畳の上をただ静かに歩みだす















■ 業 ノ 雨 ■













「お前・・また孟徳のところへ行くのか?」

「夏候惇殿…」


少し不機嫌な声色が自分の後ろから発せられた
後ろに立っていたのは曹操の腹心、夏候惇だった。



「毎度毎度、孟徳も飽きないもんだな・・・」

「・・・・・」

「嫌なら適当な理由をつけて断ればいい、
あいつは酒が入ると話しが難しくなるからな」

「そのような・・・
曹操殿と居る時間はとても有意義にすごしております・・・それに・・
話の中からいろいろ学ぶことも多いですから」

「フン、後で泣き付かれても知らんからな」

「・・・夏候惇殿」



苦笑いを浮かべて夏候惇を見上げると
お前はお人好し過ぎのだと・・彼に優しく背を叩かれた

劉備が曹操の下へ客将として迎えられた当初、夏候惇は劉備の存在をこころよく思わなかったが
今となっては互いに打ち解けたような間柄にまでなっていた
そんな夏候惇に、劉備は精一杯の笑顔で微笑み返そうとした

昔から作り笑顔が得意だったが

自分も驚くほどに、上手く笑うことができなかった。


「劉備…どうした・・?」


俯いてしまった劉備を夏候惇が訝しげに見下ろす
この薄曇った天気のせいなのか解らないが、
どんなときも微笑を絶やさない劉備の表情が今日は暗く影ってみえた




ぽつ

ぽつ


「雨・・・?」

夏候惇があたりを見回す
黒い雨雲が陽の光を遮り、
しん・・と重く静まりかえった空間に雨音だけが響く
大きな雨粒が足元の石畳に水玉模様を作り出し、次第に強く降り出してくる


「来い」


そう言って、夏候惇が劉備の細い腕を引く


「夏候惇殿・・・!?」

「もたもたするな、走れ!」





強引に腕を引かれ、近くの建物の軒下へ走り付いた時には2人とも酷く雨にぬれていた
まだ雨は強く降り続いていて当分止みそうもない


「はぁ・・はぁ・・」

「こんな程度で息が上がっていてどうするんだ?」

「夏候惇殿が無理に引くから・・・・
私は走るのが苦手なのです」

「そうなのか?」

ええ、と小さく返事を返した後、また劉備は俯いてしまった
濡れそぼった髪から水滴がポタポタとおちる
少しの沈黙の後、夏候惇が口を開いた


「雨が上がるまでここで雨宿りだな」

「・・・・・・・・」

「劉備?」

「行かなければ・・・曹操殿が相府で待ってるので・・」

「劉備、見ろ・・まだ雨が強い。
大人しく此処に居たほうがいい、濡れ鼠になって孟徳の所へ行ってもどうにもならんだろう」

「・・で・・ですが・・・曹操殿がッ・・・」


それでも立ち去ろうとした劉備を夏候惇が引き止める
体が冷えきってしまったせいなのか
それとも、何かに脅えているのかのように、わずかに肩を震わせていた
どうか離して欲しいと、夏候惇の腕の中で劉備が身じろぐ


「劉備、冷静になれ・・
この雨なら行けなくても仕方がない事だろう?
孟徳も鬼じゃない、それくらい・・」

「夏候惇殿は・・
なにも知らないからそのような事を!」

「何も知らない?劉備、それはどういう事だ?」




「――-ッ」



あまりにも不用意な言葉だったのだろうか・・・
劉備の顔から一瞬に色が褪せて蒼白になっていく


「劉備…お前、孟徳と何かあったのか・・?」


劉備の両肩を強く押さえ、言い聞かせるように問い質す

口を閉じたまま何も話そうとしない劉備をただじっと見つめる
髪が揺れてそこから水滴が滴り落ちるのを目で追う
首筋に伝い流れた水滴が、やがて衿に隠れた見慣れない紅色の痕を掠め流れていった・・・


白磁の肌におとされた無数の朱痕


それが何を示しているのか、
色恋沙汰には無骨な面を持つ夏候惇でも十分察することができた


「劉備・・首に・・・」


ハッと弾かれた様に夏候惇を見上げ、慌ててその紅色の痕を手で隠す
蒼白になっていた劉備の顔が今度は真っ赤に染まってゆく

その仕草はまるで、頬を染める女性の姿其のものだった…


見惚れて力が抜けた夏候惇の腕から振り切り逃げるように劉備が駆け出す
まて!
と彼の体をまた腕中へと引き戻し、強引に壁へ押さえ込んだ
以外にも華奢な体は簡単に夏候惇に囚われた


「痛ッ・・夏候惇殿!離して・・下さいッ!!」


押さえつける夏候惇の両腕から必死になって逃れようとするが
このあまりにも乱暴な行為に体が竦み力が入らない
劉備の名を夏候惇が低い声で呼ぶと、体を震わせながら目を瞑った
そうして、諦めたように抵抗を止めた劉備の、着物の襟をそっと肌蹴させた

「・・・ッ」

胸元が露になりその朱色の痕が目に映った
劉備は恥ずかしさに表情を歪ませている



「劉備・・お前、孟徳に抱かれたのか?」


「・・・・・・ええ、
すべては曹操殿のご意思です、私はただ其れに従っただけ・・・」

そして
曹操と交わした行為はあなたにはまったく関係の無い事だと、
劉備の口から毀れた刹那





訳が解らなくなるほどの歪んだ感情が腹の底からからこみ上げ

カッと何かが途切れて視界が歪みだした











衝撃の後、背に少しの痛みと冷たい床の温度
雨音が耳障りに響きだす
夏候惇に体の自由を奪われ、そのまま、噛み付く様に唇を奪われる

性急な舌使い
何もかもが、自分の知らない感覚

「ンッ・・・・んンッ・・」

互いの歯がかち合い、劉備が嫌がるように顔をそらすと
その顎を掴み、さらに深く唇をまさぐり、くぐもった声が口から漏れる

「・・・ンッ・・はぁ・・・」

呼吸が乱れ、劉備の瞳が潤む・・・
つつ・・と透明な糸をひきながら唇が離れた
あまりの動揺で覚束無く浅い呼吸を繰り返すが、潤んだ瞳はキッと夏候惇を睨みあげた

「…このような事をされては…困ります
私は曹操殿の」

愛玩なのだと、夏候惇への拒絶を剥き出しにした
しかし
感情が抑えられなくなった夏候惇に、劉備の声は届かない



「ならば、お前を孟徳から奪うことになるな・・・」



夏候惇の武骨な指先が劉備の腰帯の紐を手荒に解きあげた

「や…嫌ッ・・・!」

着物を剥ぎ劉備の両足を強引に開かせる

「夏候惇ど…のッ」

「酷くはしない…諦めて大人しくしていろ」

夏候惇の大きな体が覆いかぶさる
劉備の肩に顔を埋め、白いうなじに舌を這わせると甘い声を漏らす
不安げな瞳、
唇を噤み、ほどこされる行為に肩を震わせ受け入れる様
まるで生娘のようにも思えるこの仕草は…全て孟徳が劉備に教え込んだものなのか・・?

体中の血が沸きだす

「孟徳のことなど、忘れてしまえ…」


夏候惇の指が、劉備の後孔へとたどっていくと、びくりと体を震わせ夏候惇の着衣に頬を寄せる
曹操に嫌というほど慣らされたそこは、なんの抵抗も無く指を受け入れた
いつもと違う夏候惇のごつごつした指の感覚に劉備が身を強張らせる
孟徳はお前を毎晩どう可愛がっているんだ?と耳元で囁いてやると恥ずかしさに表情を歪ませた

「・・・・嫌ぁ・・・ンッ・・・」

劉備の中を指で優しく撫で解していくと、
指をくわえ込んだ後孔がヒクヒクと夏候惇を強請るように痙攣させる
敏感すぎる体は、心とは裏腹に快楽を求め熱くなる


「もう・・・限界だ・・・」

夏候惇の裾から猛った雄がのぞく
そのいきり立ち脈打つ雄の先から、先走りの液が溢れ出ている
それを見た劉備の顔が一瞬引きつった

「これ以上は・・・どうか・・止めて」

腰が引けた劉備をおさえつけ両足を力任せに大きく広げ、その猛った雄を押し付けた
下半身にその熱を感じ、あっ…と声が漏れる

「こ・・・恐いッ・・・夏候惇どのッ・・・」

「力を抜いていろ・・」

「嫌ぁッ・・ンッ・・痛い・・・」

捩じ込むように雄の先を挿し入れると、散々慣らされていたはずの中から血が滲む
下半身に痛みが襲い、嫌嫌と頭をふり止めて欲しいと哀願する劉備の中へ全て埋め込んだ時
劉備が事途切れたように泣き出した

ゆっくりと抽出を繰り返し、甘やかせるように劉備を抱くと
孟徳への罪悪感のせいなのか、
絶対に声を漏らさないように歯を食いしばって我慢しているようで
意地悪く猛りを深く突き上げれてやれば、悲鳴にも似た嬌声を耳元で漏らす

次第に激しさを増す抽出に、耐え切れず甘い声が漏れ
先ほどまでの鈍い痛みが消え、信じられないほどに体が昂ぶった

「ああッ・・んッ・・・・・」

夏候惇の引締まり整った体が、劉備の華奢な体を幾度も貫く
何かをつかもうと彷徨う手を夏候惇の大きな手が握りこみ、
その手のひらに口付けた

「劉備・・ッ」


愛しさをこめて劉備の濡れた髪を優しく撫でる
触れるだけの
優しいだけの口付けをする
人の肌がこんなにも温かなものだったか?










求められることに心は戸惑う







自分は、曹操の愛玩・・・


非生産な行為をただ繰り返すだけ


自分は弱い人間だから、


こうすること以外の生きていく術を知らない




そして





いつの頃からか彼方へと抱いていた密かな恋心は、



時間とともに温かさを失ってしまった・・・









もう
なにもかもが手遅れだった











小刻みに震え、床をなぞる白い足

白くなる意識の中・・・夏候惇が耳元で何かを囁いた







それは、聞こえなかった事にした・・・。


















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夏候惇×劉備  『業ノ雨』    天音


遠洋漁業のまぐろ(仮)さんへプレゼントの惇×劉です!
遅くなってしまって申し訳ないです;
可愛い劉備絵のお返しにまぐろ(仮)さんからエロぃ惇劉所望されましたのでかいてみました!!
まぐろ(仮)さんどうか、ご笑納くださいませ!!!

最初は、これを漫画にする勢いだったのですが
すごい枚数になり迷惑をかけそうだったので、シンプルに小説モドキにしてみました
大まかなプロットを小説として読めるまでにするのにも1週間かかったのに
この様です;敗北感は否めません
もっと文章力をつけたいです・・。言い訳です;


本文・・・

悲恋・・悲恋だなーー;
バットエンドもいいところだ;
結局、手遅れだから仕方が無いのか?とか思う。
私が書くとむっちゃ暗くて・・・すみませ;
もう惇劉で曹操様の匂いプンプンさせてる劉備ってどうなのーーーー;
もっといちゃいちゃに出来なかったんだろうかと・・

も、後悔先に立たず;
もっと惇劉を勉強してきます;はははは!!!にげろーー;

ちなみに天音妄想中の惇兄のチン○はソソ様よりもデカチンだって言い張ってみる



まぐろ(仮)さんリクエストありがとうございました!!