祖母山の尾平側の谷

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一般事項

○沢登りに関する情報を集めています。

谷は大雨が降ると状況は大きく変化します。できるだけ新しい情報を入れるよう努めていますが限界がありますので、そのことを念頭に置いてご利用ください。この記録は古くなりましたのであしからずご了承ください。最近、祖母・傾山系の谷を登られた方がありましたら是非ご報告ください。

○吉川 満著「九州の沢と源流」を読んでくださるようお願いします。

九州全体の谷をこれほど詳細に書かれた本はなく、とてもわたくしにはできないことです。祖母傾の谷はすべて吉川さんの本に頼りました。それと吉川さんによると九州は沢でなく谷と呼ぶのが正式です。

 

ウルシワ谷 初・中級

 このルートもポピュラーになり、今更申し上げることはないが初めて入渓する人のためにアドバイスする。この谷は97年の台風19号と次の年の10号で倒木で谷が埋もれた所があり、歩き難い谷になった。私も地元なので倒木処理にあたっているが大規模に崩壊した所があり、充分気をつける必要がある。それ以外は難しい谷ではないが落水谷から上はいくつも分岐があり、登れないと判断したら元に戻る。そのため時間がかかってしまうが止もう得ない。また谷登りに馴れた人には濡れることを条件に水量が多い落水谷のほうが面白いと思われる。

 さてガイドに入ろう。川上本谷との出合いから黒金尾根登山道から川を渡って左より入渓する。すぐに右側から壮大なスラブが広がるが、これがトモエム落しだ。ここは飛び石で伝に進む。運動神経とバランスが必要で難しい所。ここを過ぎると嫌な倒木帯となる。右側(北壁)は高さ50mの壁となっている。倒木は広い河原を埋め尽くし、無残な姿をさらけ出している。慎重に歩き、右側の岸に辿りつくとホッとする。しばらく右側をいくと裏谷との出会い、そして左(南岸)へ渡る。

増水時はここで足を濡す。踏み分けはまっすぐ付けられているのでまちがってしまう。右下はゴルジュとなってナメ滝6mがあるが、上部は倒木で埋まっている。その上はナメと釜が三連続する。ここからは、谷が広がって大きなナメを形成している。初心者は自然のたたずまいに思わず足を止めてしまう。幅50m長さ100mのナメは水流が薄膜を張っている。その上は倒木があって再びナメが続く。左岸に踏み跡もあり歩き易いが積極的に足を濡してナメを歩こう。それが終わるとゴーロの谷となってやがて左より半迫谷との出会いの滝となる。この滝は段になっていて見所の一つである。

半迫谷は思いの他、水量が多い。ここを過ぎると谷はゴーロの谷となりインゼルとなる。それを過ぎるとまた倒木となる。倒木は木の上を歩き、岩を乗越すと石積みの滝であるが岩の造形が素晴らしい。急なゴーロの谷であるが左から巻き上げるように登っていく。石積みの滝がいくつもあり面白いが後は、谷は石屑で広く埋められている。一面の空木のお花畑で、6月の初旬は一面の白い花をさかせる。ただし臭いはお世辞にも誉められたものではない。このまま黙って通過すると40mの落水滝へ行ってしまうので、倒木がある方向がウルシワ谷である。

ウルシワ谷からは水流がなく涸れ谷となるので暑い時は水筒に水をいれておく。倒木とゴーロの谷がしばらくつづいて感じは良くないが辺りの原生林の雰囲気はよい。やがて傾斜のある連瀑帯が現れ、技術に応じて直登したり、巻いたりする。ルートを的確に選んで体力の消耗を押えよう。高度を稼いだ後は緩くなり再びゴーロの谷となる。伏流水が現れるが谷の大きさに比較して信じられない程の小さな水量である。谷は二手に分れ、右、北谷を取る。

ここから飽きるほど長 いゴーロがつづくが高度を稼ぐ。時には石積みの滝が現れたりする。ゴーロから ガレ谷となってくるが落着いているので心配はない。それが終わりに近づくと悪相の谷になる。ここは左の壁に沿って巻く方が安全でもろい岩が積み重なっており、慎重に行動したい。落石させないよう細心の注意が必要で急なルンゼはなおも続くが難所はない。ここまでくると終わりも近い。谷は二手に別れて左を取ると僅かな鈴竹の藪分けて山小屋の水場に到着して溯行は終了する。

 

落水谷  (おつるみず)  中級

 同じウルシワ谷の本流となるのがこのこの落水谷である。ウルシワ谷よりもグレードが上である。分岐も多く地図と首っ引きとなるが右に行くほど岩混じりの登りとなる。左はスズ竹の藪分けが多くなる。

 参考にはならないかもしれないが、標高1000mに近づいたら左寄りにすすみ、落水谷は落水滝の左を高巻する。再度滝を左を登り、本流をまちがわないように登るが何度もまぎらわしい分岐が登場するので地図と高度計と磁石を随時確認しながら登る。祖母山の真正面ルートは1200mを右、1360mを右、1400mを真ん中、1450mを右となるが、精通してないとルート設定は難しいだろう。落水谷上部には様々なバリエーションが隠されているのでうまくいくとカンテ登りやルンゼ、チムニーなどの様々な登りを体験できる。

一歩間違うと何時間ものスズ竹との格闘になる。真正面ルートはCS登りからはじまる。ラインを間違うと進退極まるので登る前にシュミレーションする。山頂直下にくると二又になるが左は梯子場ルンゼ。ボロボロなので梯子に人がいないのをみはからって登る。右は急峻なルンゼ登りとなる。まん中は本格岩登りのルート。またCSを登らず右を藪分けると雪晴新道に達する。こちらの方が確実で、東岩鼻からの風景は一般登山道ではみられないほど圧巻。

 

裏谷右俣  (うら) 上級

 右俣は祖母傾最高難度の谷である。難度の滝は高巻けば中級以上の人でも可能であるが、高巻きばかりでは意味がない。ぜひ登攀能力のある人に来ていただいて登って欲しい。アドバイスとしてクライミングシューズを持っていくとよい。それと人数はすくない方が時間がかからない。

 取り口はウルシワ谷の倒木帯を過ぎてすぐの所である。最初はトユ滝、背の低い花崗岩の滝と続くと祖母傾山系一二を争うほどの美しいナメが現れる。幅30m長さ60mはあろうか左右に緩くふれながら踊るように流れていく様は極上の世界を見せてくる。途中傾斜のあるところはナメ滝となっている。短いゴーロの後は再びナメが現れる。原生林が暖かく包み込む様は何時間もそこにたたずんで見たくなるであろう。それが終わると再びゴーロの谷で一か所へつりの練習をしたくなる石積み滝がある。あと大岩を経て930mで左俣、右俣に分かれる。右俣をしばらく行くと12mの直瀑で以外とホールドがあるので10mは登れるが残りの2mの斜滝は確保が必要。

ここまでは初級だが裏谷は標高1000mを境にして谷の様相が一変する。7mの後の18mは手に負えないくらい難しいので登れないときは高巻きとなる。登りは滝面が濡れているので滑ってしまう。困難な滝になれていないとフリーの人でもなかなか登れるものではない。

続いて吉川さんは15mだが20mに感じる大チョクストン滝は見る者の登る気を失せるほどのすさまじい形相で迫ってくる。涸れているのでフラットソールの方がよいかもしれません。登れないときはまた右を大高巻きとなる。左のバンドを登るがハングしており、大小の石が挟まっているので一人づつしか登れないので大人数だと時間がかかってしまう。しばらく登ると直瀑20mが右よりに現れるが、再び大高巻きとなる。これから上は初心者は通行不可となる急なガレ場ですので谷の熟達者だけとなるので早めに右の尾根の薮分けとなる。うっとうしいがしばらく登ると展望の開ける岩尾根で、やがてシャクナゲ公園に出る。


 
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