小谷ながら小鳥谷がよい
祖母傾山系の溯行は緒方町では進んだが竹田市側はまったく手がついていなかった。竹田市の神原川一帯は一般には「神原渓谷」と呼ばれているが、その上流部には登ってみたいと思っている谷はいくつもある。その中では小谷ながら小鳥谷が有力である。
谷の下部は直近に九州自然歩道の神原登山道と平行しているので、はじめはそれにそって登る。しばらくはゴーロが続く。登山道が谷に近づくと原生林に囲まれて涼風が気持ちよい。御社の滝(8m)は写真で見るのと違い豊富な水量で勢いよく落ちていた。入渓は五合目小屋から入ることにする。しばらくはゴーロが続いて二俣を左に取ると、最初は7m、釜を持つ6m、5mと似たような滝がつづくが、7×15mの段状のナメから始まる後半は様々の滝が現れた楽しい溯行となる。インゼルの後、10mの滝の造形は見物。そして18mの斜滝はスラブ状で美しい姿で迫ってくる。水量が少ない時は滝登りが可能。小滝を過ぎると6mのテラス付きで2点支持でも登れる。最後の段状滝3mは目も覚めるような苔むして周囲の原生林の中で映えて見事である。渓谷もこれで終り、この後いつまでもガレ谷となるので地図で見ながらメンノツラコースへ藪分けする。
神原本谷は祖母山の北から直接源を発している代表格の谷である。はじめは左俣と同じコースで五合目小屋から谷に入る。この谷特有のゴーロで始まるがしばらく登ると、大岩を持つ多段滝17mが現れる。10mを巻いて8mを過ぎるとガレ谷がつづくようになる。標高差で300 m、傾斜も緩くてしだいに飽きてくるが1時間半も登るとようやく変化の兆しが見えてくる。木立より岩場が見えくると風景が一変。両サイド岩壁が迫る連瀑帯に突入する。「く」の字、段状、CS、ナメを持つ多段と、あまり高い滝はないが登りごたえのある滝がつづく。3番目は相手の力を借りてショルダーで登る。
7番目は登れそうだったが惜しいかな水量が多いため右を巻く。標高1400mあたりから霧につつまれて雨も降ってくる。しかし面白い登りはさらに続く。斜滝、倒木滝と越えて行くと多段滝が相次ぐようになる。7mの幅広滝は美しい直瀑のように見えたが近寄って見ると多段滝となっている。この滝も見送ることにした。この後水量を減じて小滝ナメがつづくとガレの中に水流は消えていよいよ鈴竹の藪分けかと思う間もなく登山道に出た。 この谷は今はやりの百名山登山のバリエーションルートとして見れば面白いと思う。ただ、めったに人が入らないため倒木、小枝が多いため鋸釜は必要。
小さい谷ながらコンパクトに登りどころが詰まった谷である。本谷から別れるとすぐに7m、2mと登場する。三条の滝は見事。二段の20mの立派な滝は左を巻くとしばらく涸れるが長引くことなしに5mのナメ付斜滝に続いて、つぎつぎと滝が現れて引きつく暇もない。3mの直瀑、三段の4mの斜滝と小谷とは思えぬほど立派な谷で神原渓谷では一番の谷である。