聞いたことのない滝の名が出ますが地元の人の公称を採用しました。
この山は既存コースもいいが、薮山コースはもっといい。ルートの概要を説明すると、まず傾山の地形的特徴から、北西側に岩稜が集中して急峻であるが東側はなだらかで非対称山である。そのため傾山の薮分けルートは西側のスズ竹が少なく、岩場や変化に富む緒方町側に多い。三重町側はスズ竹の薮分けが主となります。傾山の谷・尾根もいずれを取っても変化に富んだルートは登って損しない。
ここは指導標、案内板は一切ないので地図と磁石と高度計を用意して常に自分の位置を確認して歩かれることを望みます。初心者のみの使用は避けて下さい。薮山をやろうとすれば読図によるルートファインティングは必須です。それとかザイルワーク、基本的岩登りの技術など沢登りの技術が入ります。
登山靴でも登れる谷。傾登りのうち最も面白いコースである。千間別れから上は沢登りといっても登りやすく、滝もあるがいずれも簡単に巻くことができる。山手谷は様々な選択枝があって興味が尽きない。沢登りというより薮山ルートと言える。
まず九折越しコースを熊の標から山手渓谷に入渓する。山手谷は昨年の台風でバラスが覆い、谷の様相が一変した。しばらくバラスの上を流れの左、右、左と渡りながら歩くわけだが初めての人には九折越しコースとは違う風景に新鮮さも感じるだろう。両サイド急峻な崖が続くが、やがて左側が緩くなったら河原を離れて尾根登りとなる。一部急な所があるがその他は比較的登りやすく、約1時間20分で林道に達する。林道はやはり先の台風で荒れている。山手谷はえんえんと続くゴーロの谷で沢登りというより、薮山ルートしての興味が高く、傾山をあらゆる角度からアプローチすることができる。
入り口は巨石が累々と積み重なったゴーロで、まん中の植林地を登る。砂防堤からゴーロにはいるが左は杉の大崩壊地でその広さに圧倒される。ゴーロ歩きは高く積み重なった石のそばを通らないようにするのが安全対策で常に心がける。高さ150m登ると正面には尾バネが立ってくると谷は狭くなり、尾バネの右の谷を登る。さらに登ると前カタ谷と分かれて左の樹林帯を登っていく。水流もなくなり傾斜が増してくるがこの辺は手つかずの自然がひろがりコノハズクの声に深山の雰囲気を盛り上げる。
樹林帯を登り切ると前本カタ谷との分かれで右を取ると今までずっとゴーロの谷であったが変化の兆しが表れてくる。ゴーロが消えて軽い岩登りの谷と姿を変えて気持ちよく登っていくと水流のない谷から突如水の滴る15mの滝が現れる。立派な滝ではないが休憩したくなる所だ。ここで水を補給して残りの高さ300mを登る。右の巻き道も簡単に登れ、すぐに谷に入ると分岐で今度は左を取る。谷は一段と狭く高くなって眼前に30mのチョクストンが現れて行く手をふさぐ。ここは右に巻き道があるのでそれを登る。
急な登りでいやな感じだが次第に傾山の山容が姿を現す。100m登るひとつのピークに達してここから傾山の岩稜を見ることができる。後傾と本傾の間の谷は非常にガレており、複数で登る時は先行者は石を落さないように注意しよう。あたりは両サイドの壁の風景に鮮烈な印象を与える。詰めは中央ピークと後傾の間を目指して岩を登る。この岩からも傾山の違う角度から眺めることができ、最後は鈴竹を薮分けるとすぐに見慣れた登山道に合流して終わる。
九折コースのバイパスとしての意味を持っている。このコースの特徴は九折登山道より傾山の景観をま近に見ることができる。ただ台風で昔に比べて通りにくくなっている。
千間尾根ルートは九折コースの一部がバイパスしている。千間谷の沢登りルートと交差しており、水量の少ない秋を狙って沢登りと組合わせると素晴らしい登山が約束される。しばらく九折コースを登ると、渓流を二つ越して直角に取付けられた緒方山岳会の指導標がある。指示通りに直角に曲がれば通常の九折コース、まっすぐ進むと千間尾根コースである。あたりは637mの鞍部の広場は急峻な谷が続く傾山の山手谷にあっては照葉樹林の原生林が静かなたたずまいを見せている。川を渡るため下ると、ここは千間谷の辰美滝の上部で少し下るとそれが見られる。
辰美滝はいく筋もの流れを伴った美しい滝で、その上には芥神の滝も近い。ここからルートが二手に別れて上りは左、下りは右を取ることにする。右の尾根を登ると急であるが、辺りは人気がなく原生林の雰囲気が最高。しばらく登ると傾斜が緩くなって右からのルートと合流して林道へ出る。取り付きは左から、急な取り付きから杉の林へ。右へ添うように進むと右からの尾根と合流する。やや判然としなくなるがまっすぐ進み、高度が増すにつれて鈴竹が濃くなって栂林から堯林へ変化してくる。急坂を登りつめると初めてのピークで、平坦となって体を休められる。再び登りが始まるがしばらく歩くと急に鈴が薄くなって傾山の展望が開けて二つ坊主や吉作落しなどの岩壁が眼前に広がる。一息つこう。
しかしここから踏み分けがなくなって薮分けとなる。約50m薮分けてると傾斜も緩くなって鈴も消える。明るい林の中を程なく千間ピークの九折登山道に飛び出す。しばらく通常の登山道を登るが南稜ルートとの合流点からここを離れて左の斜面を登る。すると一つの大きなピークが見えてくると、このピークから傾山の最高の風景を見ることができる。足元には垂直に300m下に山手谷が広がり、上には傾岩峰がそそり立っている。新緑と岩の色があいまって忘れることのできない光景である。緒方町の絶景の一つである。このピークから右へ斜断するともとの後傾の一般コースにもどる。
林道までは吉作落としルートと同じで岸壁の左の谷を登り、赤テープを頼りに尾根に取り付く。最初は松林でやがて栂林になり、倒木もなく快適な登山道。しばらく登ると鈴竹が現れて傾斜を増してくる。まっすぐ登ると三つ坊主を直登するコースで岩登りの経験者のみが通過できる。ここからは尾根を離れて左のドウカイ中谷へ入る。最初は等高線とパラに進むがドウカイ谷の手前に涸れ滝が一つあり、この滝の上を通過するため二つ手前の尾根を登り、滝をやり過ごしてドウカイ中谷の手前の尾根に取付いたら下る。
後は赤テープを頼りにドウカイ中谷に入る。快適な谷ではないが秋の紅葉は見事。すると小石が挟まれた高さの低いチョクストン滝が現れて左を巻くが、固定ザイルがあると乗り越せそう。再び河原に戻って次の滝は岩を跨ぎ、体を挟むようにして這うと、簡単に登られる。次は左から巻く。一ケ所高さのある岩を跨ぐがこれが最後で河原を登り詰めると青鈴コースと三つ坊主コースの分岐点の登山道に出る。
吉作落しを通過することに重点を置いてみた。三尾コースを観音滝の上まで行き、川を渡らず渓流ぞいをまっすぐ登る。辺りは自然が濃密で岳人でもきっと満足されるであろう。やがて川は二手に分れ右を取り、さらに進むと再度二手に分れて右を取るがこの川の左へ渡る。ほんのすこしで作業小屋が見えて林道に出る。林道からはドウカイ谷に入渓するとしばらくゴーロとなるが標高900mから急に傾斜が増して連瀑帯となる。ここは左を巻いて常に右の連瀑帯を離れないように尾根、谷を越えていく。
急峻だが石を踏み落とさないようにしければ問題なく、約100m登ったら再び谷に入り、標高1050mで二つ坊主との分岐点で、右の僅かな水流へと入っていく。チョクストンを避けながら登ると二つ坊主と吉作落しの鞍部に達する。山頂は展望はないが南の岩場から山手谷が違った角度ではるか下方に見える。また尾根沿いには露岩があってその上から三つ坊主から傾山までの稜線が、広角スクリーンの映画をま近に見るようワイドに迫る。二つ坊主までの登路は猟師道のような道を岩の裾野を巻くように登っていくと二つ坊主の山頂で、祖母山から傾山にかけての展望が広がる。二つ坊主からは一般コースと合流する。
1307mを通る細い線の部分
見立からいちいち九折を通ると遠回りになるのでショートカットを地図で調べて通ってみました。意外とよかったのでここで紹介します。多少スズ竹の藪、杉林の中を通るが尾根ぞいは落葉広葉樹で今時期紅葉が美しい。逍遙とした歩きを体験したい方には推薦。宮崎県側も捨てたものではない。