【新社会大阪80号2008年9月掲載分より】


暮らしと自治を破壊する「橋下府政改革」

茨木市議会議員 山下けいき



7月になって、「社会党ですか」と電話がかかりました。「新社会党です」と答えると怪訝そうな口ぶり、ここから延々と1時間。もともとは「府会議員の報酬カット幅をいくらにしたらいいと思いますか?」の質問で、相手は橋下徹知事の誕生によって政治に目覚めたという30代の女性。以下、そのやりとり。

相手「議員報酬のカット分を私学助成や福祉に回したらいい」

私「そうですね。でも報酬カットもいいですけど5兆円の財政赤字を抱えるようになった原因の追究と反省が、知事と与党府議には必要だと思いますが」

相手「・・・」

私「私学助成や福祉に回すと言いますが、橋下知事はそこをカットして、赤字の原因である関西新空港や安威川ダムなどの大型公共事業はそのままですよ」

相手「・・・、赤字だからみんなに我慢してもらわないと」

私「夜間中学や障がい者対策など、ぎりぎりの人の分までカットしろというのですか?」

相手「まだ(就任して)4ヶ月だから・・・」

私「橋下知事で大阪は変わるといっても、どのように変えるかが問題でしょう?」

相手「でも変えてくれるのは橋下さんしかいないし、変える中身を私に聞かれても・・・、どうして批判ばかりするんですか?私が目覚めたのは橋下知事が誕生したからです・・・」

そのうち相手の方は「議員がどんな活動をやっているか知らないし、議会の中身なんか関係ない」と言われる始末。結局「橋下さんを支持しない議員はいらない」で終わりました。

          <写真は臨時職員の解雇に抗議しストに入った教育合同労組2008年7月15日府庁前にて>
連帯のあいさつをする「天六ユニオン」の早川副委員長
マスコミは橋下番を設けているのか、箸の転げたことまで電波で流し、人気番組「探偵!ナイトスクープ」の20周年記念番組も橋下知事を呼んでいました。テレビは出演者の知名度を上げるばかりか、その正当性をも肯定させていきます。また橋下財政改革案に反対した市町村長へは批判が多く、「知事へは激励のメールが多かった」と、正義の知事に反対する悪者の市町村長という構図すらつくっています。

かつて小泉内閣の郵政民営化を改革、改革と持ち上げ、劇場化させた選挙がありました。これとまったく一緒、権力に迎合するマスコミによって橋下知事を批判する人は非国民ならぬ非大阪府民扱いの雰囲気すらかもし出し、支持率は現在も高止まりのままです。


橋下「改革」は府民生活切り捨てだ

しかし橋下「改革」は府民にとって歓迎すべき内容でしょうか。何よりも血も涙もない府民生活の切り捨てだといわなければなりません。5兆円の借金財政を再建するとして、今年度は1,100億円の収支の改善を打上げ、府民生活に直結する医療、福祉、教育を切り捨て、府民の負担増、文化やスポーツなど府の施設の統廃合、府の職員の人件費削減を打ち出しました。

具体的には私学助成を小中学校25%、高校専修学校10%、幼稚園5%も大幅削減、小学1、2年生の35人学級廃止、夜間中学への補助金廃止、青少年会館の廃止、国際児童文学館の廃止です。

高齢者、障がい者、一人親家庭を対象とした医療費助成も削減されます。月支払いの上限2,500円は維持されるものの、1回500円までだった自己負担が1割負担に、いったんは窓口で全額を支払った上で役所に申請して返金されるという償還制です。お金がなければ医者にかかれず、役所に行かなければ返してもらえないことになります。障がい者施策の一部や救命救急センターへの助成の削減、街かどディハウスや女性総合センター(ドーンセンター)への補助金打ち切りも出ています。

まさに福祉、教育、医療の切り捨てで、いずれも府民にとって、なかでも低所得者層にとっては死活問題となっています。ただでさえ食料品など物価の値上げが相次ぎ、年金、医療、介護など先行きは不安だらけ、弱肉強食がまかり通る中での大阪府財政改革案は認められません。

茨木市の6月市議会に提出された資料が示す影響項目は、補助金として社会福祉施設など整備費補助金、障害(がい)者・高齢者の住宅改造助成費補助金、運動部活動外部指導者活用事業補助金、多文化共生教育推進事業委託金、また交付金化移行分として総合生活相談事業等補助金、進路選択支援事業委託金、人権相談事業補助金など29項目、6,955万9千円に及びます。

橋下知事は、公務員バッシングの風潮も利用し、府職員や教員の給与を削減、人件費のカットは2009年度以降、通年で612億円となり、退職金のカット、住居手当、出張や修学旅行の付き添い、日当、食事代、旅行雑費、また非常勤職員の雇い止めに及んでいます。

また来年度からは新たな人事評価制度を導入、給与カットの割合に差をつけることを明言、これは全国でも例がなく、「成果の判断は難しいが、府民の満足度や意識を調査し、業績評価に結び付けたい」としています。しかし結局は上司による恣意的評価を認めることによって、職場に分断と差別を持ち込み、労働組合を形骸化させるものにほかなりません。

大阪府の財政赤字につながる決定に関与していない公務員労働者に犠牲を押しつけ、返す刀で府民に犠牲を強いるやり方は到底是認できるものではありません。


赤字の原因は開発行政と小泉改革

さて赤字の原因は何でしょうか。岸知事以降、大阪府は関西財界と与党の自公民が圧倒的多数を占める議会を背景に、全く不要な関西空港2期工事、安威川ダム建設、泉佐野コスモポリス、茨木・箕面の両市にまたがる国際文化公園都市・彩都、箕面森町の大規模住宅建設、新名神高速道路の建設など、必要性も採算性もない大型プロジェクトを推進、自然を破壊したばかりか、今日の膨大な借金を残しました。しかし橋下知事はこれらの事業を全て継続すると議会で答弁しています。

自・公政権下では景気対策と称する、これら公共事業をあとで「地方交付税」で補填するからと自治体に押しつけてきました。ところが国は補填どころか、小泉政権では地方交付税の削減、補助金・負担金削減と税源移譲が進められ地方財政は一層厳しくなったのです。

橋下知事の「改革」は、大阪府の財政破たんの原因に目をつぶり、住民福祉の増進という地方自治体の理念を投げ捨て、住民サービスの低下、職員の賃金削減をこれまで以上に進めるものです。

これをチェックすべき府議会はどうでしょうか。知事選で対立候補を立てたはずの民主党は、予想したとおり橋下氏が知事に就任するやいなや早速擦り寄り、「改革」予算に賛成し与党的立場に大きく舵を切っています。


道州制で自治から中央集権、ミニ石原の正体を暴露して反撃へ

もう一つは大阪府庁を大阪市のWTC(ワールドトレードセンター)に移し、「関西州」の州都にするなど道州制のさきがけを志向する動きです。関西経済連合会は「道州制は究極の構造改革だ」として、軍事・外交の中央政府と、基礎自治体、そしてその中間に位置する道州制を推進し、知事も「都市間競争に勝ち抜き、発展を遂げるため、大阪府の発展的解消も辞さない」と関経連の手先となっています。

福田首相や石原都知事には「先輩の教えを請う」とこびへつらいながら、40歳代の府職員を対象にした自衛隊の体験入隊を口にし、権限外の教育委員会への命令、職員には「気に入らなければ辞めてもらってもいい」と暴言を吐くなど、「ミニ石原」としての性格を露呈しており、わたしたちは橋下知事の正体を府民の前に明らかにして反撃していかなければなりません。