7月になって、「社会党ですか」と電話がかかりました。「新社会党です」と答えると怪訝そうな口ぶり、ここから延々と1時間。もともとは「府会議員の報酬カット幅をいくらにしたらいいと思いますか?」の質問で、相手は橋下徹知事の誕生によって政治に目覚めたという30代の女性。以下、そのやりとり。
相手「議員報酬のカット分を私学助成や福祉に回したらいい」
私「そうですね。でも報酬カットもいいですけど5兆円の財政赤字を抱えるようになった原因の追究と反省が、知事と与党府議には必要だと思いますが」
相手「・・・」
私「私学助成や福祉に回すと言いますが、橋下知事はそこをカットして、赤字の原因である関西新空港や安威川ダムなどの大型公共事業はそのままですよ」
相手「・・・、赤字だからみんなに我慢してもらわないと」
私「夜間中学や障がい者対策など、ぎりぎりの人の分までカットしろというのですか?」
相手「まだ(就任して)4ヶ月だから・・・」
私「橋下知事で大阪は変わるといっても、どのように変えるかが問題でしょう?」
相手「でも変えてくれるのは橋下さんしかいないし、変える中身を私に聞かれても・・・、どうして批判ばかりするんですか?私が目覚めたのは橋下知事が誕生したからです・・・」
そのうち相手の方は「議員がどんな活動をやっているか知らないし、議会の中身なんか関係ない」と言われる始末。結局「橋下さんを支持しない議員はいらない」で終わりました。
<写真は臨時職員の解雇に抗議しストに入った教育合同労組2008年7月15日府庁前にて>
マスコミは橋下番を設けているのか、箸の転げたことまで電波で流し、人気番組「探偵!ナイトスクープ」の20周年記念番組も橋下知事を呼んでいました。テレビは出演者の知名度を上げるばかりか、その正当性をも肯定させていきます。また橋下財政改革案に反対した市町村長へは批判が多く、「知事へは激励のメールが多かった」と、正義の知事に反対する悪者の市町村長という構図すらつくっています。
かつて小泉内閣の郵政民営化を改革、改革と持ち上げ、劇場化させた選挙がありました。これとまったく一緒、権力に迎合するマスコミによって橋下知事を批判する人は非国民ならぬ非大阪府民扱いの雰囲気すらかもし出し、支持率は現在も高止まりのままです。
橋下「改革」は府民生活切り捨てだ
しかし橋下「改革」は府民にとって歓迎すべき内容でしょうか。何よりも血も涙もない府民生活の切り捨てだといわなければなりません。5兆円の借金財政を再建するとして、今年度は1,100億円の収支の改善を打上げ、府民生活に直結する医療、福祉、教育を切り捨て、府民の負担増、文化やスポーツなど府の施設の統廃合、府の職員の人件費削減を打ち出しました。
具体的には私学助成を小中学校25%、高校専修学校10%、幼稚園5%も大幅削減、小学1、2年生の35人学級廃止、夜間中学への補助金廃止、青少年会館の廃止、国際児童文学館の廃止です。
高齢者、障がい者、一人親家庭を対象とした医療費助成も削減されます。月支払いの上限2,500円は維持されるものの、1回500円までだった自己負担が1割負担に、いったんは窓口で全額を支払った上で役所に申請して返金されるという償還制です。お金がなければ医者にかかれず、役所に行かなければ返してもらえないことになります。障がい者施策の一部や救命救急センターへの助成の削減、街かどディハウスや女性総合センター(ドーンセンター)への補助金打ち切りも出ています。
まさに福祉、教育、医療の切り捨てで、いずれも府民にとって、なかでも低所得者層にとっては死活問題となっています。ただでさえ食料品など物価の値上げが相次ぎ、年金、医療、介護など先行きは不安だらけ、弱肉強食がまかり通る中での大阪府財政改革案は認められません。
茨木市の6月市議会に提出された資料が示す影響項目は、補助金として社会福祉施設など整備費補助金、障害(がい)者・高齢者の住宅改造助成費補助金、運動部活動外部指導者活用事業補助金、多文化共生教育推進事業委託金、また交付金化移行分として総合生活相談事業等補助金、進路選択支援事業委託金、人権相談事業補助金など29項目、6,955万9千円に及びます。
橋下知事は、公務員バッシングの風潮も利用し、府職員や教員の給与を削減、人件費のカットは2009年度以降、通年で612億円となり、退職金のカット、住居手当、出張や修学旅行の付き添い、日当、食事代、旅行雑費、また非常勤職員の雇い止めに及んでいます。
また来年度からは新たな人事評価制度を導入、給与カットの割合に差をつけることを明言、これは全国でも例がなく、「成果の判断は難しいが、府民の満足度や意識を調査し、業績評価に結び付けたい」としています。しかし結局は上司による恣意的評価を認めることによって、職場に分断と差別を持ち込み、労働組合を形骸化させるものにほかなりません。
大阪府の財政赤字につながる決定に関与していない公務員労働者に犠牲を押しつけ、返す刀で府民に犠牲を強いるやり方は到底是認できるものではありません。
赤字の原因は開発行政と小泉改革