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番外編

 

本編が終わりました。最後は何とか丸くおさまったとはいえ、本当に暴力的な場面の多いストーリーでしたね。暴力的な場面が多いといえば、何年

か前にTBS系で放送されていたガチンコ!という番組があり、私も結構見ていました。視聴者から苦情があったり、やらせ発覚が生じたり、色々問

題はありましたが、少なくとも多くの人がこの番組を見て影響を受けたことは確かです。

さて、本題の「ガラスの家の暴力少女」に話を戻しましょう。本編も終わり、次はいつもの通り番外編です。・・・と言いたいところですが、実は今度ば

かりは、本編で言いたいことを出し切ったため、正直書くことがありません。ですが、それでも頑張って書くことにしましたので、どうぞご

覧下さい。

 

◎洋子の奮闘振り

この物語の中で一番気苦労を重ねていたのは、やはり洋子しかいません。直子を更生させようと必死に闘っていました。娘がこれだけ荒れてしまう

と普通なら投げ出してしまうところなんですが、洋子は歯を喰いしばり、必死に喰らいついていました。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  本編第4章より  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

・・・ 幼稚園児だった直子が誰とも友達とは遊ぼうとしなかった、洋子はその時の夢を見ていました。「私あの時、仕事やめて育児に専念しようと思

ったわ。かわいそうにあの子・・・。」 「洋子・・・。」 妻を心配する周平。しかし洋子は、

 「大丈夫。私はあの子の母親ですから・・・。がんばってみるわ。

と涙を止め、直子を元に戻す決意を新たにしました。 ・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

やはり、母親にとって子供はかけがえのない者。母親の強さ、子供を持つ親の気持ちといったものが、非常によく伝わってきました。

 

◎直子は暴力だけじゃなかった

直子のいえば、何と言っても数々の過激な暴力シーンでしたが、そればかりではありませんでした。まず見てて感じたことは、頭がいいということ。

洋子の解説でもありましたが、神奈川県に移住する以前の小学校時代の成績は5と4ばかりでした。ちなみに今の小学校の成績の付け方はどうな

っているんでしょうか・・・。やはり5段階の数字で決めているのか、また、地域によって異なってもいるようですし、いずれにしても全国どこでも5段階

評価というわけではないみたいです。ちょっと話が横道にそれましたが、このように直子は本当は頭のいい女の子。そして、それを象徴するようなと

ころも多々見られました。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  本編第3章より  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

・・・ 「明後日なら入院するわよ。当たり前じゃないの、急に言われたって片付けておきたい事があるわよ。」 「早いほうがいいんだ、1日でも・・・。」

「あんたにはね。」と、やはり親をあんた呼ばわりする直子。「いや、君のためでもあるんだ。」と、江本が口を挟んで周平を助けようとします。「私は、

今死ぬっていう病人じゃないわ。」 「うん、あの、今ならベッドが空いているんだ。でも、明日になるとどうなるか分からないんだ。」 「じゃあ、お金を

払って入院した事にしておけばいいでしょ?」 おぉ〜、なかなか口が達者ですね。大人相手でも負けておりません。「病院はね、お金だけをもらえ

ばいいと言うもんじゃないんだよ。」という江本の言葉に対しても、

 「ウソ! 病院は慈善事業じゃないわ。お金が入ればいいはずよ!」

と、堂々と言い返します。 ・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

慈善事業なんて言葉、私は中学時代使いもしなかったでしょう。世間のことをよく知っている発言でした。そして、それだけじゃありません。上記会話

を見てもらえると分かりますが、言っている事もなかなか筋が通っていて、相手とのやりとりも非常に上手いです。直子のすごい所は、自分の思い

通りに事を進めていけるところです。養子縁組の話を持ち出し、明け方まで話し合った時も、結局は洋子と周平が睡魔と直子の粘りに根負

けして養子を認めてしまうことに・・・。実はこの時は直子は昼間たっぷりと睡眠をとっていたわけで、そうした下準備を抜かりなくやっていたのもま

た、直子の頭脳的作戦と言えるでしょう。暴力だけでなく、頭もきれていて口喧嘩も強い。本当に一筋縄ではいかない少女でした。

 

◎靖子もぐれかかっていたが・・・

直子だけでなく、靖子もぐれかかっていました。途中までは、スーパーのできあいで済ませた食事に納得できず、半ば強引にサイフからお金をとって

外食しに行ったり、直子の完全回復のため、おばの家に行かされそうになった時も、ここは自分の家でもあるとキッパリ断っていました(もっとも、結

局は行ってしまいましたが)。まあここまでは、はっきり言って靖子の言いぶんのほうが正しかったわけですが、とうとう、直子の可愛がっていた金魚

を死に至らしめるという、今までにない残虐性を見せてきました。そして、すごい顔で洋子を睨んでいました。これは洋子、直子、靖子の三つ巴の戦

いになるかなと思われましたが、なぜかその後は洋子に対する反抗心は薄れ、明るく声をかけていました。そして結局は三つ巴にはならず、最後は

洋子&靖子組VS直子という、2対1の大激闘となりました。思えばこの物語は、これ以外にもところどころで話が急に飛んでいるんじゃないかと思

われる部分がありました。そういう部分が目立たなくなっているくらい、過激なシーンが連発していたということが言えます。

 

◎病院側の活躍

この物語では、病院側の活躍ももちろんありました。江本と緒方、2人の医師も直子回復に大きく貢献しました。経験豊富な面を生かし、ここぞとい

う時には的確な決断をしていた江本もさすがでしたが、それ以上にすごかったのが緒方。次の重大な3点を洋子に伝えていました。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  本編第6章より  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

・・・ ちょっと時間を置いて、部屋から緒方だけが出てきました。「お化粧変わったのは直子さんの希望ですか?」 「いやあの、高校行くもんですか

ら・・・」 「濃くなされた方がいいと思います。お母さんの厚化粧を嫌がるようになったら、しめたものですよ。」 なるほど、それが完全回復の1つの

目安となるわけですね。 ・・・

 

・・・ 「直子さん、絵は描いてますか?」と、洋子のほうに聞いてきました。

 「もしその絵に、緑色とかピンクとか、明るい色が使われるようになったら、

  良くなった証拠です。」

「緑色とピンクですね?」 洋子は念を押すようにして聞き返してきました。 ・・・

 

・・・ 「もし直子さんが、暴力をふるうような事がまたあったら、外へ逃げて下さい。」 しかし、もう直子の好きなようにさせるよう決意している洋子

は、

 「好きなだけ、ぶたれてやりますから。」

と、キッパリ言いました。「それは危険です。我を忘れているんですから、とめどがありません。」 ・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

この3点をちゃんと頭に入れていた洋子。暴力が再発した時も外に出ていましたし、絵にピンク色が使われ厚化粧を落とそうとしましたので、このと

き洋子は直子が回復し出していることをハッキリと認識しました。こうしてみると、緒方の貢献度というのは非常に高いことが言えます。まあ

結局は、直子は病気をしていたわけではなく、江本と緒方は直子回復のきっかけを与えたに過ぎないんですが、この2人の力添えがなければ、何

が原因で直子がおかしくなってしまったのか、洋子達はその理由さえも知ることはなかったでしょう。

 

◎最後の最後まで・・・

直子は回復するのか、それとも最悪の悲劇的結末を迎えてしまうのか、最後の最後まで分かりませんでした。最終章では、まずはある程度予想し

ていた大激闘が起こり、これを目の当たりにした、いや実際に身を持って体感した洋子は、ついに死を覚悟しました。心中を図ろうと赤い紐で直子

の首を絞め、もうここまでかと思われた時に、あの例のピンク色の絵が出ました。やはり物語というのは、最後の最後まで分からないという展開が

一番面白いです。そして、これまでの数々の凄まじいシーンがあった反動からか、直子が洋子の厚化粧を落として始めるところは、安堵感、開放感

というものを非常に強く感じました。その後の締めくくりとなるラストでの食卓のシーンや、直子と靖子が仲良くなっているところは、ちょっといきなりす

ぎた感じもしますが、ようやく西田家に平和な日々が訪れてきたという雰囲気が出ていて良かったです。洋子の最後の解説に、「まだまだ問題はあ

りましょうが・・・」とあり、微妙な終わり方がしないでもありませんが、あの最後の平和な光景を見た限りでは、やはりハッピーエンドで終わっ

という事でいいんじゃないでしょうか。

 

以上、今回は番外編ということでまとめてみました。「狂った信号」の時の6項目より1つ少ない5項目ですが、書かせてもらいました。番外編も終わ

り、これで正真正銘この物語とのお別れの時が来ました。では、こちらのほうもご愛読ありがとうございました。 


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