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第16話 「受胎」THE PREGNANT

 

もしも人と違った特殊な能力が使えたら、人生どんなに楽になるだろうか・・・と、私はたまに思うことがあります。しかし、そういった能力が仮に備わ

たとしても、必ずしもそれがプラスになるかといえば、決してそうではありません。それが逆に苦痛になる時だってあります。今回のこの第16話

は、まさにその辺の気持ちの葛藤がよく出ている話と言っていいでしょう。果たして、どんな能力を持った人が登場するのでしょうか・・・。では、どう

ご覧下さい。

 

もう前半の話は知っている。早く後半を見たい人はこちらへどうぞ。

 

◎今回の登場人物

 黒井ミサ:黒魔術を使う少女で主人公

 黒井サトル:ミサのおじさん(叔父か伯父かは不明)、一流の黒魔術師

 袴田瑞紀:カウンセリングルームに通う少女。しかし、猟奇殺人事件解明のため、ミサに助けを求めるようになる。

 吉沢早苗:同じくカウンセリングルームに通う少女。瑞紀とは友達だが、猟奇殺人事件をきっかけに仲が悪くなっていく・・・。

 小杉麗奈:カウンセリングルームを経営する先生。しかしその実態は・・・

 黄金コンビ:カウンセリングの「カ」の字も出来そうにないナレーション

  (注:上と同じ色で登場人物の台詞も分けています。)

 

◎ストーリー

今回は、あるどこかの牢獄から物語が始まります。そこで両手を上げた状態で吊るされている1人の女性・・・。「う・・・う・・・」と呻きながら苦しんでお

ります。そこへ今度は、ハサミを持ち、黒装束の格好をした別の女性がやってきました。このエコエコアザラクではもう、グロいシーンが出て

くるのは必至。ハサミを持っているという時点で、嫌な予感が高まってきます。その予感が早くも的中。吊るされている女性の背中を刺しました! 

あまりの痛さに、ものすごい悲鳴を上げています。そして今の惨劇を、なぜか今この場にいない3人が感じ取りました。まず1人はミサ。さすがです

ね、やはり並みの能力者ではありません。続いて2人目は、袴田瑞紀。感じ取ったのはいいんですが、ちょっと無様に転んでしまいました。そして最

後3人目は、吉沢早苗。怯えるように立ちすくんでおります。それにしても、ミサはともかくとして、なぜ他の2人がこれが分かったのでしょうか・・・。い

きなり疑問に思うところですが、それよりももっと信じがたい事実が・・・! 今刺したばかりの背中から、何やらどす黒い液体が滝のように落ちてき

ました。さらに、落ちた液体はすぐに粘りっ気のある固体へと変わりました。それを片手でつかむ黒装束女。「早すぎた・・・。」と悔しそうに言っており

ます。刺されたほうの女性はもちろん即死。そしてその死体は、無残にも裸のままで外に捨てられてしまいました。その死体ですが、左手の小指

の爪だけが黒く、そして刺された背中は十字の跡・・・と、どうやらこの話の重要なキーとなる2部分を見せてくれました。十字の傷跡を残し

たまま、ここでサブタイトル紹介。

 〜「受胎」THE PREGNANT〜

画面の色合いも気味悪く変わり、まわりが黒に赤の十字となりました。

 

画面はミサ達の病院へと変わります。ミサ、サトル、小岩井と、お馴染みの3人がそろっています。いつもならただならぬ雰囲気が漂っているんです

が、珍しく今日は何もしないでラジオを聴いております。しかしそのラジオから流れているニュースは、決して今回の物語と無関係なものではありま

せんでした。「東京都八王子市の山頂で、少女の全裸死体が発見されました。死体は、東京都新宿区に住むアイザワ晴美さん17歳と判明し・・・」 

アイザワというのは、漢字が分からないので片仮名にさせてもらいました。今のニュースを聞いたミサが、「ねえ、おじさんはどう思う?」とサトルに肩

を揉みながら聞いてきました。まさかこれで100円でももらうつもりじゃないだろう、という感じですが・・・。「魔術的な何かがあるというのか?」 たぶ

ん「あるというのか?」って言ったんだと思います。このサトルは口をちゃんと開けずに低い声でしゃべるので、どうもよく聞き取れない部分が多いで

す。「何も感じない?」 サトルはゆっくりと立ち上がり、

 「まあ感じるといえば、人間という生命体はまったく愚かで残酷だと、

  改めて実感したということぐらいだな。」

と言いました。おいおい、あんただって一応人間なんだから。「魔術的なことは何も感じないってこと?」 「ミサ、少し過剰に反応しすぎるんじゃない

のか? この世の事件、すべてに魔術が絡んでいるわけではないんだぞ。」 それでもやはりミサは、どうも腑に落ちないようです。

 

さて、小岩井のセリフは一言もないまま画面が変わりました。『COUNSELING ROOM』と書かれた部屋。横文字の苦手な人も、これくらいなら分

かるんじゃないでしょうか・・・。カウンセリングルームですね。その部屋の中から、瑞紀の甲高い声が聞こえてきました。「ねえ先生! 晴美から何

か聞いてませんか!?」と言い終わると同時に、部屋の中が見えてきました。やはり瑞紀がいたのと、もう1人、眼鏡をかけた白衣姿のカウンセラ

ー、小杉麗奈がいました。「落ち着いて、瑞紀ちゃん。」とタバコを吸いながら言う麗奈。タバコの煙がすごいですね、もう部屋中漂っておりま

す。この人絶対ヘビーです。「誰かに付け回されてるとか、何かそういう話をしてませんでしたか!?」 「落ち着きなさい。相談内容は口外できない

ってこと、知ってるでしょ?」 「そうですよね・・・。」と、興奮していた割りにはイヤにあっさりと聞くのをやめた瑞紀。しかしここで、麗奈の顔をじっと見

つめました。その間およそ十数秒、そして今度は、瑞紀の顔ががっかりとした表情になりました。

 「ルール違反ね。この部屋に入ったら、人の心は読まないって約束だったでしょ?」

なるほど、瑞紀は人の心を読むことが出来る能力者。さっきのは、麗奈の心を読んで晴美のことを知ろうとしたわけですね。それにしても、そ

の狙いをすぐに察知し、自分の心を読ませなかった麗奈って一体・・・? さて、2人の会話に戻りましょう。「晴美ちゃんの死はショックかもしれない

けど、今日の瑞紀ちゃん、何か変よ。」 「なんで晴美が殺されなきゃなんないの!? だって危険を感じとれる能力なら・・・」 「彼女は自分の能力

を忌み嫌っていたわ。だから、わざと使わなかったんじゃない? その気持ち分かるわよね?」と、なぜか瑞紀の背中を見ながら言う麗奈。そういえ

ば、晴美の背中には十字の傷が残されていました。やはり麗奈は何か知っているんでしょうか・・・? そして、晴美もまた能力者だったようです。

「人の心を覗くことが、どんなに嫌なことか知ってるでしょ? 力を使うぐらいならって、彼女死を選択したんだと思うわ。」 「バカよそんな選択! 私

だったら、嫌いな能力を使ってでも生き延びてやるわ。」 「生き延びるって、別にあなたが狙われてるわけじゃないでしょ?」 「ホントにそう思ってま

す? ホントに気づいてないんですか? この事件の被害者は、全員が何らかの特殊能力を持っているんです。」 ほう、殺されたのは晴美だけじゃ

ないわけですね。「彼女たちが殺されたって言われてる日、私の中で何かがグシャッてつぶれたんです。」 「つぶれる?」 「私達って、同じ種の死

は敏感なんです。早苗もつぶれたのを感じたって言ってました。」 「だから狙われる可能性があるって言うの? 考えすぎじゃない?」 「この状

況なら誰だって警戒します。」 「でも、誰が何のために能力者を殺すって言うの?」 「だからそれを調べるんです。」 「どうやって?」と、少し目つき

を光らせて聞く麗奈。

 「都市伝説の彼女に会ってきます。

  彼女ならきっと、この事件の裏に何があるか、必ず突き止めてくれると思うんです。」

目に輝きのあった麗奈。しかしミサに会うという今のこの瑞紀の言葉を聞いて、なぜか動揺を見せました。「どうかしました?」 しかしその動揺も束

の間、すぐに笑顔に変わり、「あなた、強くなったわね。ここへ来たばかりの時は、もろくて壊れやすい精神だったのに・・・」と言って、瑞紀の肩に触

れてきました。「きっと、先生のカウンセリングがあったから強くなれたんじゃないですか?」 「そう言ってくれると、すごく嬉しいわ。」と、肩からまた

や背中へと手を移してきました。

 

さて、カウンセリングルームから人気の少ない場所へと変わりました。ここでポツンと1人立っている瑞紀。ミサを呼ぶため、次のようにテレパシーを

送ります。「ねえ、聞こえてたら返事して。あなたの占い、よく当たるって噂を聞いたわ。でも、私が興味あるのは占いの噂なんかじゃないの。あなた

は行く先々で、普通じゃ考えられない事件を解決してるって、裏の噂に興味を持ったの。ねえ、聞こえてる? お願い答えて! 私に力を貸し

て!!」 そして長いこと待ちますが・・・ミサは現われません。「都市伝説の噂か・・・」と諦めて帰ろうとしたその時、セーラー服の少女が現われまし

た。ミサです。「遅れてごめんなさい。力の波長が微妙に違うから、なかなか同調できなくて・・・。」 瑞紀はまず、「噂は本当だったのね。あなたの心

の中は、人の悲しみでいっぱい。」と、得意の能力でミサの心を読みます。「普通にしゃべれるんでしょ! 助けを求めておいて人の心を読むなん

て、ずいぶん失礼なあいさつするのね?」 「ごめんなさい。初対面の人にはどうしても警戒しちゃうの。」と、本心かそれとも今思いついた言い訳か

は分かりませんが、ここは瑞紀も謝ります。「ねえ、この場に溜まってる残留思念とかを読みとってほしいの。私の力は人に対するリーディングだけ

で、物質は全然ダメなの。」 「猟奇殺人のことを知って、どうするつもり?」 「友達を助けたいの。」 ミサは黙ったままですが、果たして引き受けて

くれたんでしょうか・・・?

 

夜になりました。ある路上で、座り込んでハンバーガーのようなものを食べている瑞紀、そして早苗。瑞紀が言っていた友達とは、この早苗でありま

す。「いい早苗? しばらく先生のところに行っちゃダメだからね。ねえ、聞いてるの?」 「もうこれ以上、麗奈先生の悪口聞きたくない。なんか瑞紀

変だよ。いつだって先生は優しく私たちの相談に乗ってくれてるじゃない。あの部屋で力を使うのはルール違反よ!」 「でも晴美以外の殺された子

たちも、先生のカウンセリングを受けていたのは事実よ!」 「それだけで先生が犯人なの!? 単なる偶然かもしれないじゃない!」 「だから会っ

てきたんじゃない、彼女に。」 「前に言ってた都市伝説の? ホントにいたの!?」 「私たちとは微妙に波長が違うけど、すごい力を持ってたわ。」 

すごいと言えば、この2人もそうです。ここまでずっと、飲み食いしながら心の中で会話しております。さあそして、やはりミサも瑞紀のお願

いを聞いてくれていたようです。画面は、ミサが原因を調べるシーンへと、一時的になります。すでに壊れてしまっているテレビのモニターに、力を吹

き込むミサ。するとそのモニターには、オープニングに出ていた晴美が黒装束の女に刺し殺されるシーンが映し出されました。これには、さすがに瑞

紀も驚いております。そして黒装束の女の素顔が見えました。そこには・・・・・・恐ろしい顔つきをした麗奈の顔がありました! やはり犯人

は麗奈でした!

 「この女から得体の知れないプレッシャーを感じる!」

ミサも、これはただ事じゃないと直感しました。さて、画面は再び瑞紀、早苗の会話のシーンに戻ります。今度は、口を開いて普通に会話しておりま

す。「先生を疑ってまで、その子を信じる価値はあるわけ!?」 「じゃあ、先生を信じる価値はあるわけ!?」 「バカじゃない! 私たちの力になっ

てくれる先生を信じないでどうすんのよ!」 とここで、早苗が急に吐き気を催しました。思わず隅のほうで吐いてしまう早苗。瑞紀もかけ足で行き、

早苗の背中をさすってあげています。なんだなんだ、さっきのハンバンガーで食あたりでも起こしたか? いや、そうじゃありません。「早苗、まさ

か・・・!?」 「・・・生理がピタッて止まったと思ったら・・・何かつわりみたいなのが始まって・・・」 まだ気持ち悪そうに吐いています。「病院は?」

「・・・検査薬で調べた・・・」 まだしゃがんだままの早苗。ここで瑞紀は、早苗の手の小指の爪が黒く変色していることに気づきました。殺された晴美

の小指と同じ変調、瑞紀は嫌な予感を覚えます。早苗のほうは、「結果は・・・良性だった。」と言いながらようやく立ち上がることが出来ました。そし

て、瑞紀の元を離れて帰ろうとします。「相手は?」 「そんなのいないよ!」

 「じゃあどうやって・・・じゃあどうやって妊娠するのよ!?」

ここで、去って行こうとしていた早苗が一旦止まって振り返ります。「欲望でいっぱいの心が読めちゃうんだよ。そんな私たちがエッチなんて出来ると

思う?」 「ホントに全然覚えないの?」 「ないわ。」 「やっぱ先生んとこ行っちゃダメ!」 「しつこいよ。」 「晴美も殺される前、全然覚えがないの

に妊娠したって。彼女とすれ違った時、思わず心の中のぞいちゃったら、そんな風に悩んでて・・・」 またかよ! これであんた、人の心に土足で

がるの3度目だぞ! と言いたいところですが、まあ読心力のついた人というのは、それなりに警戒心も強いのでしょう。さあ今の瑞紀の話を

聞いた早苗ですが、

 「何と言われようと、私は先生を信じるわ!

と言って、ついに麗奈のところへ向かっていきました。やりきれない瑞紀・・・。その頃、カウンセリングルームでは、早苗が来るのを麗奈が高笑いし

ながら待っていました・・・!

 

ここでこの話の前半が終了です。ミサが得体の知れないと言っていたほどの力を持っている麗奈。第14話、第15話で現われなかった強敵に、ミサ

はどのように立ち向かうのか!? そして、瑞紀や早苗の運命は!?

後半は、こちらです。


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