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番外編

 

本編が終わり、いつものように番外編です。本編終了で終わったことは一度もありません。今回も当然ある、恒例の番外編です。そしてやはり、本

編で既に出ているけど改めて凄かったなと思った部分、新たに感じた点などを中心に書いてみました。
では、どうぞご覧下さい。

 

◎興味ある展開

ドラマ・・・特に2時間ドラマの場合は、興味を持って見てもらえるような展開にすることが大事だと思います。2時間もあるわけですから、見始めの

段階で、最後まで見たいと思わせるかどうか、そこが勝負です。この「終着駅殺人事件」は、その点に関しては、まさにしっかりと成されていると言っ

ていいでしょう。学生時代の約束事から物語が始まり、それから7年後という設定。こうして何年か経つという所で、まず興味が沸いてきます。そして

その約束通り、7年経つと、7人組のリーダー宮本が残りの6人全員に再会しようという手紙を出す。そこからその7人組が1人ずつ殺されてい

く・・・。一体なぜそんな事が起きるのか!? 犯人は誰なのか!? 7人組内部の者なのかそれとも別の人間なのか!? 動機は何か!?

この7人組は全滅するまで殺されていってしまうのか!? ・・・といった具合に、どんどんとハマっていきます。私もそうですが、サスペンスドラマ好き

の人はみんな、ハラハラドキドキするような展開の話の方が好きに決まっています。「お、こりゃ面白そうだ!」と視聴者に思ってもらえる、そんな「終

着駅殺人事件」だったと私は思います。

 

◎問題だらけの7人組

その7人組ですが、色々と問題のある者が多くいました。初めは、仲良し7人組が卒業したあとも皆無事就職をし、再会しても高校当時の友情を

保ったままでいるだろうと思いましたが、やはりサスペンスドラマ。そんな事は全然ありませんでした。まずは町田と陽子の職業が偽りである事が

発覚。町田はシナリオライターをやっていると言ってましたが工事現場職員、陽子も芸能プロダクションのマネージャーではなく下積み歌手でした。

2人ともウソをついていた理由は一緒でした。同じ故郷の人間たちには、自分が立派にやっていると思われていたい、そういう理由

でした。この事は特に陽子が強く言っておりました。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  本編第4章より  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

・・・ とりあえず落ちつく陽子と清水の2人。 「・・・ふるさと出た時は、今から思えば随分甘かったって思うけど、絶対に有名な歌手になる。私には

その才能があるって信じてたわ。でもそうじゃなかった。レコードも7枚出したし、名前も今のジョウカオルになるまで3回替えたわ。それでも、ヒット

曲は出なかった。1年ごとに惨めになっていく。惨めでも、東京なら平気なのよね。」
 「東京なら? どうして?」

 「みんな他人じゃない。ふるさとの人は困るのよ。

  東京で辛い生活をしてるなんて思われたくないわ。」


と、今度は清水を鈍感呼ばわりする事なく陽子は答えました。「うん、気持ちはよく分かるよ。」 陽子と同じ青森出身、そして東京に出て来てもうす

でに多くの苦労を味わっているであろう亀井がそう言ってくれました。 
・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そして、これ以外にもまゆみと片岡が実は付き合っていたこと、しかもまゆみは妊娠していて、片岡もまゆみもその事を隠していました。さらにさら

に、まゆみは安田や川島とも付き合っていて四角関係になっていました。・・・とまあ、このように出るわ出るわの7人組の芳しくない実態の数々。

こうして振り返ってみると、唯一まともなのはリーダーの宮本孝ただ1人という事になります。ホントに問題だらけの7人組でした。

 

◎村上陽子役

今度は7人組のうちの1人、村上陽子役を演じた女優さんについて触れてみましょう。誰が演じたかを先に言っちゃいますが、風吹ジュンさんです。

この本編の最終章でも紹介していますので、すでに分かっている人もいるかもしれませんが・・・。犯人に近いような扱いをされて刑事たちにつっか

かる、そんな勝気な村上陽子をしっかりと演じました。「終着駅殺人事件」は1981年のドラマなんですが、実は私は、風吹さんがこのわずか1年後

の1982年に別の2時間サスペンスにも出演したのを知っています。それも2作品。それが何なのかは言うつもりはありませんが、いずれもこの村

上陽子のように誰かに殺されてしまう。しかもなぜか同じ絞殺でやられてしまっています。このように殺されてしまうという事は、それなりの理由があ

るというわけで、この2作品に関しては男を惑わす悪女の役でした。またそういう役をやるにはピッタリな女優さんだなと思いました。



◎2つの凄い犯行

この「終着駅殺人事件」では、5人もの人間が殺されました。7人組のメンバー、安田、川島、まゆみ、陽子、そして片岡の5人・・・。まさに連続殺人

事件でした。この中で特に凄かった犯行は、やはりまゆみと川島殺しの2つでしょう。まゆみの方は毒殺でしたが、初めは自殺かと思われて

いました。他殺と思わせないという所がまず凄いです。そして、まゆみの付き合ってる相手が片岡である事も知っていた犯人は、まゆみに狂言自殺

をするように仕向ける。そのやり方も実によく考えていて、青酸入りの錠剤を、まゆみに青酸が入っている事を気づかれないようにして飲ます。さら

に、密室にするために、チェーンロックしてから飲むように言った所も、凄い計画性を感じました。一方、川島殺しの方は、随分とリスクの大きかった

犯行でした。あの8月12日21時53分発のゆうづる7号で、終点の青森まで行くのではなく、水戸で川島と一緒に降り、川島を麻酔薬で眠らせた。

その川島を車に乗せ、鬼怒川まで連れていき、そこで溺れさせて殺害。そして、すぐさま猛スピードで車を走らせて仙台まで行き、ゆうづる7号に再

び戻り、見事なまでのアリバイを作りました。非常に凝っているというのもあるんですが、これが時間的には実にギリギリの線でしたので、先ほど言

いましたようにリスクの大きい犯行でした。これは亀井たちも同じことを実験したんですが、そのシーンからもよく分かります。
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  本編第7章より  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

・・・ ていうか、ついに仙台駅に着きました! すぐに車から降り、近くの時計を見にいった亀井と清水。先に言ってきますが、仙台駅にゆうづる7号

が到着するのは深夜3時40分です。果たして今何時なんでしょうか!? 時刻は・・・・・・・・・・・・・・

 3時30分でした!

おお! やりました! これで川島殺しのアリバイは崩れ、7人組内部の者の犯行が不可能でないことが証明されました。しかし、亀井

も清水もそんなに喜ぶような表情は見せませんでした。「清水、間に合ったよ。」 「念のため、確かめてきます。」 清水はすぐに駅の中へと入って

いきました。まあ清水が確認するまでもなく、ゆうづる7号がまだ来ていないのは間違いありません。亀井は車の中に残っている十津川の所に行き

ました。

 「警部。我々はゆうづる7号より、10分早く着きました。」

「うん・・・」  十津川はもう、グッタリとシートにもたれております。 
・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

このように、間に合ったとはいえ差はわずか10分。もし例えば、鬼怒川から仙台へ行っている間に他人の事故等で渋滞になっていたりしたら、

ゆうづる7号に戻れなかった可能性は十分にあります。犯人からすれば、ホントにリスクの大きい一発勝負の犯行だったと言えるでしょう。



◎原点

7人組が次々に殺され、とうとう宮本と町田の2人だけが残りました。そして、ついに町田が犯人であることが分かりました。その町田ですが、いきな

りこんな殺人鬼になってしまったのでは当然ありません。こうなってしまったのには、過去において様々な出来事があり、それが積み重

なっていったからだと思います。
高校時代に神秘主義をしつこく宮本たちに話していた町田。それに嫌気がさしたのか、宮本たちは偽の霊能

者を使って町田をからかう事にした。これがとんでもない悲劇を生み、町田の姉はその偽霊能者に乱暴され、ショックで自殺をしてしまいました。そ

れから5年後くらいになりますか・・・。町田は静岡で事件を起こし、前科持ちとなりました。ただこれは、暴力団員に絡まれている女性を助けようとし

てそうなったという止むを得ない事情もありました。自分の姉が男に乱暴され、そのショックで自殺した。それとこの女性とが、町田にとっては重なっ

たのでしょう。助けないわけにはいかないと思ったに違いありません。そして極めつけは、あの宮本からの再会しようという手紙。川島に出すはずの

ものだった手紙が間違って町田に届き、町田はそれを読んでしまった。自分の前科のことを言っていて、さらにはその事を会ってみんなでバカにし

てやろうと思っていると勘違いし、とうとう殺意が芽生えてしまい、この連続殺人に至ってしまいました。こうして振り返ってみると、町田の過去の出来

事が全てが繋がっているなと思います。逆をいえば、これらの出来事の1つでもなければ、今回の連続殺人は起きなかったんじゃないでしょう

か・・・。繋がっているということは、やはり原点に遡りたくなります。自分が信じている神秘主義を友人たちにしつこく話していたこと、ここが原点だっ

たと私は思います。ということは、結局は町田の性格に問題があったという事になるかもしれません・・・



◎結末

ラストは壮絶でした。自分が犯人であることが世間に知られ、追い詰められてしまった町田。自分がとんでもない誤解をして殺人を犯していた事を、

とうとう亀井たちから教えられます。それを知った町田は当然動揺しました。そしてそのショックを抱えたまま、町田は身を投げて自殺しました。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  本編最終章より  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

・・・ 列車が1台やって来ました! しかも、いま町田が飛び降りようとしている真下を通過しようとしています。この列車は、ひょっとし

て町田が乗るつもりだった14時48分発特急みちのく青森行きの列車なのかもしれませんが、今はそんな呑気なことを言っている場合ではありま

せん。さあ、泣きそうな顔から意を決した顔へと変わった町田。右を向き、左を向き、そしてまた正面を向き直し、手すりも越え、そしてついに・・・

 ついに飛び降りました!!!

「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と声を上げて飛び降りた町田。もうこれは、ちょうど来た列車に100%轢かれたに違いありません。それでも「町

田!」
と言って一斉に駆け寄る刑事たち。それにしてもなぜここで清水のセリフなんでしょうか・・・? 亀井でいいかと思うのですが・・・。とにかくこれ

でとうとう、

 町田は亡くなってしまいました!

あぁ・・・。本当に最悪の事態になってしまいました・・・。 
・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

結局は、姉と同じく自殺という人生の最後を迎えてしまった町田。しかし町田は、亀井たちから本当のことを聞かされなかったとしても、飛び降りて死

ぬつもりだったかもしれません。いや、死なないつもりだったかもしれません。もし後者だとしたら、この場は黙っておいてあげて、捕まえた後の取り

調べの時に教えてあげた方が良かったなと思います。こうした町田は悲惨な死を遂げましたが、7人組の最後の1人、宮本だけは何とか一命を取り

留めました。これ、文庫本でしたらどうやら宮本も死んでしまうそうです。やはりテレビ放送になると、そういう所は幾分緩やかになるようです。町田

の死、重傷ながらも宮本の無事が分かった所で、亀井が長かった今回の一連の事件の感想を悔しさを交えて述べるシーンがありまし

たが、最後は十津川がそれをフォローして物語が終わったところも、しみじみしたものが伝わって非常に良かったと思います。

 

以上、番外編ということでまとめてみました。今回も6項目書かせてもらいました。7項目ではなく6項目ですが、1項目ごとのボリュームは割りとたっ

ぷりあるかと思うのでそれで大目に見て下さい。では、こちらのほうもご愛読ありがとうございました。 


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