番外編
本編が終わり、いつものように番外編です。たまには違うパターンも考えてみろよと思うかもしれませんが、いつものように番外編です。そしてやは
り、本編で既に出ているけど改めて凄かったなと思った部分、新たに感じた点などを中心に書いてみました。では、どうぞご覧下さい。
◎反アクション刑事
この物語の主人公は、今さら言うまでもありませんが安浦刑事でした。安浦刑事は、今回私が書いたシリーズ5第8話だけに限らず、他の回でも
温厚な刑事でした。
アクションを駆使してガンガン犯人を捕まえていくというタイプでは決してなく、事件に関わりを持っているであると思われる
人からじっくり話を聞いて、そして事件解明のヒントを掴んでいく、そういうタイプの刑事でした。これを私は勝手に反アクション刑事と名付けさせても
らいましたが・・・。しかもその事件解明を、1人で行動してやる方が目立っていました。勢津子が重傷を追って入院してから後は、勢津子の夫、また
勢津子、八木沢の恋人まゆみと、1人で会いに行っていました。以前このインドア派の城で書いた「探偵神津恭介の殺人推理11」の主人公神津恭
介もまるっきりアクション無しの探偵でしたが、彼とはまた別の味を持った刑事でした。
◎インパクトあるゲスト
この物語のゲスト出演者は勢津子、八木沢、森口・・・でしたが、中でも勢津子の存在感、そのインパクトは半端ではありませんでした。バラエティ番
組でいえば、大物ゲストが来て大いに盛り上がったといった所でしょうか・・・。なかなかの神回でありました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 本編第1章より ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・・・ さらに、この勢津子は非常に明るいなという感じが凄くします。この明るさはその周りの者達にも行き渡るようで、怪我をしているはずのユカと
エリがすっかり笑顔になっています。「さっきからずっとあんな調子なのよ。」 「ラ〜ララララララ〜・・・」 「エリ。(窓の)戸を閉めろ、戸を。」 「足痛
い。」と都合よく断るエリ。 「ラ〜ララララララ〜。・・・あ、『ばら色の人生』。私のテーマミュージックですのよ。」 お茶を作ってる間もこうしてずっと
歌っていた勢津子。そして、「あの、お茶を・・・」と出そうとしましたが、こぼしてしまいました。それも、夕刊を読んでいる安浦の足元に・・・。「熱っ!」
「大丈夫ですか!? ごめんなさい! あの、私家事は苦手ですの。でもあの、このバストと、
笑顔には自信がございますの。家庭に明るい笑みを・・・。お任せ下さいませ。」
これを聞いて、また明るい顔になるユカとエリ。でも安浦は、任せらんねーよ
といった感じで、明るい笑みはちょっと見せらせませんでした。
・・・
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これは初めて勢津子が登場した時のシーン。サブタイトルに入る前に起こった事ですが、もう十分すぎるくらいのオープニングセレモニーになりまし
た。こうした明るさが最大の取り柄であった勢津子。しかしその反対に、事件に関与しているんじゃないかという面も見せ、その時の深刻そうな様子
は、明るい時とはまるで別人のようでした。で、実際に事件に関係している人物の1人だったわけですが、そういう展開を考えた所はなかなか見事
だったなと思いました。勢津子の持つ二面性、そこがこの物語では上手い具合いによく表れていました。
◎母と息子
これもこの物語の中では大きな見せ場となりました。本編の最初で紹介した主な登場人物、その中の勢津子と八木沢が実は親子でした。そして、
回想シーンではありましたが、その再会シーンは感動的でした。ただ犯人を見つけて逮捕するだけが刑事ドラマではありません。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 本編第3章より ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・・・ 八木沢のアパートの部屋にやってきた勢津子。セールスレディ・・・・・レディというほど若いかというとかなり疑問符が付きますが、そこは
放っておくとして、セールスレディとして八木沢に会いにきました。「失礼いたします。・・・ああ、綺麗になってて・・・お若いのに偉いわぁ・・・」 勢津子
はきちんと整理された八木沢の室内に見とれています。対する八木沢も、じーっと見とれて勢津子の顔を見ています。「・・・ああ、ごめんなさい。あ
の、私、あの、お得な生命保険のご案内に来ましたのに・・・」 勢津子がしどろもどろにバッグからパンフレットを出したその時、
「お母さん・・・」
と八木沢が呟きました。これを聞いて思わず固まってしまう勢津子。「お母さんでしょ!? 小さい時に別れたっていう・・・」 笑顔になった八木沢。
「保険のセールスなんて口実で、僕に・・・僕に会いにきてくれたんでしょ!? 僕、お母さんの写真見たんです。親類の家で昔のお母さんの写
真・・・」
こうしてなぜか倒置法を連発する八木沢。さあ、もう隠す必要もなくなった勢津子の方にも自然と笑みが出てきました。「今の笑顔とちっと
も変わってない。」
「ケンちゃん・・・」 「やっぱり・・・やっぱりお母さんだったんですね!?」 と、何と八木沢の方から手を握りにいきました! こう
いう再会の時っては、だいたいが母親から手を握りにいくもの。息子の方からするのも珍しいですね。もちろん勢津子も、握りにきた八木沢の手を
しっかりと取りました。 ・・・
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赤の他人が身内を装ったなりすまし詐欺というのがありますが、これはその逆で、他人のふりをして本当の身内に会いに来ました。しか
も、なりすまし詐欺のような悪い事ではなく、息子に会いに来るという非常にいい事でした。ラスト近くでも、安浦立ち合いのもとで勢津子と八
木沢の、今度は別れとなるシーンがありましたが、これもグッと来るものがありました。
◎割りと単純な事件
事件としては、割りと単純でした。ていうか、八木沢が犯人でないとなると、その関係者から的は絞られてくるわけで、言ってみればまゆみと森口が
怪しいのではないかと、全国の視聴者も予想した事でしょう。そしてまるでそれに従うかのように安浦が、まゆみ、森口と、聞き込みないしは事情聴
取に行き、結局は森口が真犯人で、八木沢が外出していた間に森口が来ていたという、これも単純なものでした。勢津子と八木沢の感動シーンの
方に少しウェイトがいったのか、こうして事件の方はちょっと面白みに欠けていたなと思いました。
◎3人の友情、+ヒロイン
八木沢、工藤、森口という3人の男の友情が本物かどうか、これも物語の中で1つポイントになったかと思います。振り返ってみれば、この3人のう
ち真っ当だなと思える人間は八木沢くらいで、工藤、その工藤を殺した森口の2人は、あまりいい感じを受けませんでした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 本編最終章より ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・・・ さて、こうして動作的な事は全て他の仲間たちに任せている安浦。その安浦がゆっくりと口を開きました。「・・・八木沢さん。あなたなぜずっと身
を隠していたんだね?」 八木沢は森口の方をチラッと見てその質問に答えました。
「彼が殺ったんじゃないかと確かめようとして・・・。もしそうなら自首を薦めようと・・・」
「そうでしたか・・・」 と言ってから森口を見た安浦。真犯人であることが分かった森口は、もうみんなから見られまくっています。
「自分が疑われるのを構わずに、君を懸命にかばおうとした。
その君はどうかね? 彼を真犯人に仕立てようとしたんだ。君は最低の男だ。」
もう全く反論することも出来なくなった森口は、目をつむり、俯くしかありませんでした。
・・・
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確かに、どんな事があろうと捕まりたくないという気持ちは誰にだってありますので、森口のことを「最低の男だ。」とバッサリ言った安浦は少し言い
過ぎな気もしますが、こんな立派な八木沢と比較すれば、森口がそんな風に思えてくるのも無理はありません。また、工藤は工藤ですぐカッと切れ
やすくなるタイプのようで、例えここで森口に殺されなかったとしても、いつかトラブルを起こして今回のように殺されてしまう、あるいは逆に相手を殺
してしまうんじゃないかという気がしました。こんな3人がよくここまで長く友情を保てたなと不思議に思います。あと、この3人のうち八木沢と工藤
が、まゆみを間に挟んで恋敵同士でありました。そして、森口もまゆみの事をよく知っていたようで、まゆみはこの男達3人の中にいるマドンナ、い
わば今回の物語のヒロインと言っても過言ではないのですが、あまり出番も多くなく、ヒロインといった感じはさほどしませんでした。
◎ラストはバーで・・・
ラストはいつも通りバーで・・・・というより、安浦と片桐由美、通称ママとのツーショットシーンになりました。たた今回に関しては、珍しくこのラストシー
ンより前の段階もママの登場がありましたが・・・。でも、ラストでもありました。このバーでは、事件の血生臭さを語るのは似合いません。エリとユカ
の怪我の治りが回復傾向に入っていること、勢津子がいなくなってちょっぴり寂しさを感じていることなど、比較的明るい話題が飛び交いました。最
後に安浦が「一杯いこう。」と言って締めたところが、はぐれ刑事純情派らしくて良かったなと思いました。
以上、番外編ということでまとめてみました。今回は6項目書かせてもらいました。いつもでしたら7項目なので少し物足りないかもしれませんが、
今回は2時間ではなく1時間ドラマなので、3〜4項目以上出来ているという事で大目に見て下さい。では、こちらのほうもご愛読ありがとうございまし
た。