本編(探偵神津恭介の殺人推理11「密室から消えた美女」)
さあインドア派の城、とうとう10個目へと突入しました! 探偵神津恭介の殺人推理11「密室から消えた美女」。いやもう今回の更新作業はホント
まいりました。まず何を書いていこうか、全然決まらなかったです。とにかくこれが決まらないとどうしようもありません。1文字も書いていけません。
そしてようやくこの探偵神津恭介の殺人推理11にすることに決まりました。こないだスカパー!で放送されたのを録画したばかり。ビデオテープに
録画したばかりの作品を書いていくことになりました。話のほうは一体どんな展開になっていくのでしょうか・・・? さあ、ではさっそく始めて行きま
しょう。いきなり全部を作るなんて死ぬ事と同じくらい無理なので、第1章〜第8章(最終章)に分けていきたいと思いま
す。ではまず、重要度大であるストーリーの第1章からどうぞ!
もう第1章の話は知っている。早く他の章を見たい人は、
こちら(第2章、第3章、第4章、第5章、第6章、第7章、最終章)へどうぞ。
◎主な登場人物
神津恭介:この物語の主人公。大学教授でもあり私立探偵。どんな事件が起きても、完璧に推理し解決していく。
神津信子:神津恭介の妹。穏やかな性格で明るい。
松下研三:神津恭介の助手で、ルポライター。信子とは恋人同士・・・・・なのかもしれない。
清水香織:東洋新聞社会部の新人記者。社長令嬢でもある。神津恭介に憧れている。
原島陽子:第一の変死事件の被害者の婚約者。銀行に勤務している。
加納浩子:第一の変死事件の目撃者。神津恭介、信子、研三とはボードセーリング仲間。
北島義男:喫茶店「FAR AWAY」の経営者。最愛の一人娘がいたのだが・・・
山下誠一:東洋新聞社会部のやり手記者。神津、香織らと共に一連の事件の謎を追う。
黄金コンビ:探偵とか、命を落としかねない仕事は絶対にやりたくないと思っているナレーション
(注:上と同じ色で登場人物の台詞も分けています。)
◎ストーリー(第1章)
まずは、ウィンドサーフィンをしている2人の男女のシーンからスタートしました。ウィンドサーフィン、そして2人の男女・・・。ということは、もしかして
前作品の『ハネムーン』の阿佐子と正司!? まさかの続編か!? ・・・と思いましたが、そうではありませんでした。サーフィンを楽しんでいる
2人というのは、この物語の主人公である私立探偵の神津恭介と、その妹・信子でした。「いい気持ち。」 「ああ。」 快晴ではなく、むしろ少し雨が
降ってきそうな空模様ではありますが、それでも本当に気持ちよさそうです。「私もお兄さんもホント幸せよね。今頃、ラッシュの電車でモミクチャにさ
れてる人いっぱいいるんだもん。」 そのモミクチャにされてるであろう、電車内のシーンへと今度は変わりました。モミクチャ・・・というほど大げさで
はありませんが、吊り革に空きなし、ドア近辺にも人がいるという事で、完全に満員電車にはなっています。さて、吊り革をつかんで立っている人達
に注目してみましょう。画面一番左に見えるのが、東洋新聞社会部記者の山下誠一。その右隣にも、男が2人立っています。そんな彼らの目の前
に座っている女性がいるんですが、彼女は本を読んでいます。おお、電車の中で本を読むとは、私と同じタイプですね。さあ、そんな呑気なことを
言ってる場合じゃない状況になってきました! 山下の隣にいる男性が急に倒れてしまいました! それも、目の前の読書中の女性になだれ込む
ような形で・・・。「キャー!!」と悲鳴を上げる女性。「どうしました!?」 すぐさま倒れた男の脈をはかってみる山下。すると・・・・・・
「死んでる・・・」
何と男は死亡しました! うわこれはいきなりの出来事! また前作の『ハネムーン』の話をして申し訳ないんですが、『ハネムーン』では番外編でも
言った通り、ストーリー中の死者はトータル0でした。ところが今回は、始まって数分でこうして早くも死者が・・・! 野球で言えば、1回の表
から点が入ったようなものです。「死んでる!?」と、さらに隣にいたもう1人の男が驚いて聞き返しました。「誰かここで降りる人いませんか!?」
てことは、今電車は走行中ではありますが、もうそろそろ駅に着くという事ですね。山下にそう言われて即答えたのが、身近にいて立っていた加納
浩子という女性。「あの、私降りますけど・・・」 少し濃いめのクリーム色の洋服がよく似合っています。「じゃあ至急駅員に連絡して下さい。人が死
んでるって・・・」 「はい! あのすいません! ちょっと通して下さい!」 満員電車なので皆にはどいてもらわないといけません。どいてもらって浩
子はすぐに電車を降り、駅員の元へと走っていきました。その途中、神津恭介の助手でルポライターをやっている松下研三に会いました。もっとも
気づいたのは研三のほうですが・・・。浩子のほうは、やはり急いでいるという事もあってか、周囲にはまるっきり注意が行ってなかったようです。
「・・・あ、浩子さん! ねえねえ!」 こうして呼び止めてなかったら、そのままダッシュで走り去っていたでしょう。「加納浩子さんですね?」 キョトン
とした表情で頷く浩子は、相手がまだ誰なのか分かっていません。誰だこいつ・・・というほどではありませんが、微妙な表情を浮かべています。
「やっぱり覚えてないか・・・。ほら、ボードセーリング。いつか神津信子さんと、兄さんの恭介氏と・・・」 「ああ! 葉山の海で! 確か・・・・・松下さ
ん。」
「そう! 久しぶり。」とメチャクチャ笑顔になる研三。名前を覚えていてくれて相当嬉しかったみたいです。「・・・あ! いけない、私駅員さん
探さなくちゃ・・・。倒れた人がいるんです、あの電車の中で・・・」 窓の外を見て、さっきまで乗車していた電車を指さす浩子。「そう・・・」 同じ方向を
見てみる研三。浩子は「信子さんに会ったらよろしく。」と言ってすぐまた走りだそうとしましたが、「ああ。また一緒に行きましょうよ、どっかの海
に・・・」と、研三はまだまだ喋っていたかったみたいです。でも、非常事態であるのでそんな事は言ってられません。「それじゃ。」と明るく手を振っ
て、この場は浩子と別れました。
亡くなった男は、とある病院に運ばれました。ただ、山下が言ったように既に死んでおります。その証拠に、この病院にパトカーがやって来ました。
少々荒っぽく停め、降りてきた刑事2人。急いで院内へと入っていきました。医者から、
「99パーセント、青酸に間違いありませんね。」
と聞かされた刑事たち。しかしどうしてこう刑事ってのは、2人の時は1人が年配の警部で、もう1人は若いのでしょうか・・・。今回もそうなっていま
す。年配のほうの警部の名は、田沢。若いほうの刑事の名は分かりませんが、いま被害者の持ち物を調べている所です。そのうちの1つである名
刺を田沢警部が手にし、見てみました。「福島康夫。西海銀行新宿支店、経理主任・・・」 「30歳です。」と、若いほうの刑事が田沢に教えました。
もちろんこの若い刑事の年齢ではなく、福島康夫の年齢です。
さあ、この病院にはさっきの電車の中に居合わせていた人達も来ていました。山下と、死亡した福島康夫の隣にいた男、そして座って本を読んでい
た女性の3人です。てことは、駅員を呼びにいった浩子はどこに行ったのでしょうか・・・? そのまま家に帰ったのか、あるいは別の場所に行ったの
か・・・。ともかく、この3人と今の刑事2人が顔を合わせました。田沢警部に、自分の名刺を差し出す山下。今回はなぜか名刺がよく出てきます。
「ほう、東洋新聞社会部の記者さんか・・・」 そして、なぜかこうして田沢警部が名刺を読むパターンになっております。田沢はさらに言いました。
「何か気づいた事ありませんか?」 「はぁ・・・。やっぱり青酸ですよ。」 「やっぱり?」 「はぁ・・・。こう助け起こす時に、口からアーモンドのような香
りがしたんですよ。あれは青酸死独特の匂いでしょ?」と、まるで刑事ならそれくらいは知ってるでしょ・・・みたいな言い方にちょっとなってしまった山
下。しかしこれを聞いて反論したのは、田沢たちではなく、山下と一緒に居合わせていた男でした。「でも、青酸というのは飲みこんだらほとんど即昏
倒するもんでしょ?」 「そう。」と答えた田沢警部に、次のようにさらに言いました。
「あの人、福島さんって言うんですか、何も口に入れたりしませんでしたよ。
いや、物理的に無理ですよ。吊り革に・・・こうやってぶら下がって、
こっちの手(吊り革を持ってない方の手)にはカバン持ってたんですから・・・」
すごいですねこの男。山下は新聞記者だから、こういう事件性のある事に手慣れていてもおかしくないんですが、この男は素人でありながらここ
まで状況をよく覚えていて、しかも自分なりにそれを分析して意見を述べてるんですから・・・。さあ、ではもう1人の女性のほうは
一体どんな発言をするのでしょうか? 若い刑事が「あなたは何か気がつきませんでしたか?」と尋ねました。「いいえ。本に夢中だったものですか
ら・・・。そしたらドサッと倒れてきたんで、もうビックリしちゃって・・・」 うわ、こりゃダメです。起こった事をまんま答えただけでした。するとここでまた
1人、別の女性が駆け足でこの場にやって来ました。一瞬浩子かなと思いましたが、別人でした。駆け足で来たんですが、部屋の『霊安室』というプ
レートを見た瞬間、おとなしく立ち止まり、泣きそうな表情へと変わりました。「福島康夫さんの家族の方ですか?」と聞いてみる田沢警部。「はい。」
と答えたこの女性の名は原島陽子。後に福島とはどういう関係なのか分かるのでここでは言うのは省きますが、この陽子が田沢警部に招かれて霊
安室の中へと入っていきました。もう1人の刑事は、「ご協力ありがとうございました。また何か後でお聞きする事があるかもしれませんが、今日の
所はこれで・・・」と丁寧にお礼を言い、山下たち3人を帰らせました。
次の日になり、さあ場面は変わって神津家。出だしでちょっとだけ登場があったとはいえ、ここまで随分長いこと出てこなかった神津恭介。まったく、
誰がこの物語の主役だと思ってんだと言いたくなるような話の流れにここまでは少しなっていますが、ようやく再度の登場です。インコと戯れて遊ん
でいる神津。でも決して子供のように無邪気な感じはなく、むしろ大人の風格さえ出ております。ただ、ちょっと呑気そうな感じはしますが・・・。それと
は対照的に、やや真剣なまなざしで新聞の記事を見つめている研三。この神津家にお邪魔しております。
「あ痛ぁ・・・」
と悔しがったのは、その記事が昨日の電車内で起きた福島康夫の事件の事であったから。『ラッシュアワーの車内で銀行マン青酸死? 自殺?
他殺?』という見出しに、福島の顔写真も載っています。「ちょっと見てよこれ。たまたま本誌記者が乗り合わせておりだって・・・。ついてやがん
なぁ・・・」 「研三さんだってその場に居合わせたようなもんでしょ。」 信子がお茶を2つ持ってきながら言いました。兄の神津の分と、今グチをこぼ
していた研三の分です。何度も言いますが、神津恭介と信子は兄妹です。ここから先も、神津恭介のことは名字を取って『神津』、神津信子のことは
『信子』と記すことで、2人を分けることにしますので・・・。「俺だってね、ライターの端くれなんだから変死事件だって分かってりゃすっ飛んでいった
よ。」
「あ、そうか。浩子さんに会ってポーッとしちゃったんだぁ・・・」
「またすぐそういう風にもう・・・」
「でもよく覚えてたわよね。半年前にたった一度会ったっきりでしょ? よっぽど気にいっちゃったんだぁ・・・」 いつ
の間にか神津からインコを渡されている信子が、話を引っ張っています。と、ここら辺りで見かねた神津が割って入ってきました。「おいおい、あんま
りイビるなよ。研三くんかわいそうじゃないか。」
「だってね・・・」と、まだヤキモチを焼きたがる信子。そんな信子に対し、研三も舌を出してふくれっ
面です。こうしてみると、研三と信子は恋人同士、いやそこまでいかないにしても、少なくともお互い思いは寄せている事が分かります。「マジな話、
先輩どう思います?」 神津のことは先輩と呼ぶ研三。研三は真剣に聞いてますが、神津のほうは少しふざけています。「この事件ですよ! 何とも
不可解じゃないですか。ホントに青酸性毒物で死んだとしてもですよ、通勤時刻の真っ只中で自殺するなんて前代未聞だし、かと言って他殺だとし
たら、あのラッシュの中でどうやって毒を飲ませたのか・・・」 神津はまだ聞く素振りといった感じではありません。でも、ちゃんと聞いてはいるでしょ
う。「先輩! 本職の大学教授の仕事より、推理のほうが100倍も好きで、名探偵と誉れ高い神津恭介先生でしょ? ねえ意見・・・」 ここで言葉が
止まってしまう研三。実は、さっきからずっとふろしきを使った手品を行なっている神津。それをじっと見ながら、「意見を聞かせて下さいよ。」と改め
て聞いた研三。それでもまだふざけ続ける神津。
「はっはっは、研三くんの好きなもんだよ。ほら。」
と言って、ふろしきからトカゲを出しました。それを研三に近づける神津。「ちょっと・・・! いやいや! 先輩! 先輩! 先輩!! ちょっ
と! やめて・・・!」
と、研三はもう泣きそうな声を出してしまっています。信子も、「怖がり。」と言って神津と一緒になって意地悪く笑っています。兄
が兄なら妹も妹ですね。と同時に、この兄妹は爬虫類系は全然平気であることも分かりました。「はっはっは。」と、自分の手元にトカゲを戻した神
津。「もう先輩・・・」 研三も安心した様子です。結局ここでは神津の意見を聞くことが出来ないまま、今回のサブタイトル紹介。まずは『探偵神津恭
介の殺人推理』と出てその後、
〜密室から消えた美女〜
と出ました。果たして密室から消えた美女とは何者なのか!? 今回の犯人なのか!? 色々気になるところですがさらにその後、『2−1=1が怪
しい!?』と画面に表示されました。2−1=1、これはもう100パーセント正しい数式だと思うのですが、それが怪しいとは一体どういう事なの
か・・・。本編が終わる頃にはそれもきっと分かっているでしょう。さあ、土曜ワイドなので、このサブタイトルの後は、主な登場人物紹介となりました。
ただその紹介は、もうすでに上でもやってますので、ここでは省かせてもらいます。ちなみに私が上で紹介した通りの順番に、画面のほうも人物が
出てきました。では、物語を続けましょう。
さあ、次は東洋新聞社。そのビル内の社会部の様子を見てみましょう。東洋新聞社会部ということは、つまりは山下が勤めている部署。その山下
は・・・・・やはりいました。「部長。昨日の事件の司法解剖の結果ですが、福島康夫の遺体から青酸が発見されました。」と、同部署の部長に報告し
た山下。「そうか。しかし、いつ飲んだのか、あるいは飲まされたのか・・・」と部長。「自殺か他殺かという点も含めて、その辺りの所はまだ分かって
いません。」
「電車の中で殺されたとは限らないんじゃありません?」
と、ここで急に割り込んできたのは・・・・・・ 「おう山下。新人の清水香織くんだよ。研修が終わってね、ウチに配属されたんだ。」 私が説明する前
に、部長がこうして言ってくれました。「よろしくお願いします。」 「どうも。」と、山下は少し気に入らない様子。この香織が現れた時からずっと面白く
ない顔をしております。きっと出しゃばって発言してきたのが気に入らなかったのでしょう。いやでも、電車の中で殺されたとは限らないなんて、結構
いいとこ突いてるんじゃないでしょうか・・・。また、このように「殺された」と言ったということは、香織は自殺よりも他殺のセンが強いと思って
いるようです。その香織がさらに続けました。「4、5年前に同じような事件があったのを覚えてらっしゃいません? 青酸カリを使った殺人ですけど、
被害者は死ぬ直前何も口へ入れてなかったんです。で、もうちょっとで迷宮入りになる所だったのが、実は被害者が少し前にビタミンの糖衣錠を飲
んでいたことに注目した人がいて解決したんです。」
「ビタミン剤?」 「犯人は錠剤を2つに切って、中へ青酸を仕込んでからまた接着したんで
す。」 「思い出した・・・。そうやって青酸の効果を遅らせたんだ。」と言う部長。この場は3人しか・・・いや厳密に言うと周りにも社の人間はいます
が、会話をしているのは3人しかいないので、黒字は部長のセリフだと思って下さい。「今度の事件の福島さんも、朝出かける前にビタミン剤を飲ん
だかもしれないし、もし風邪とか引いててカプセル剤を飲んだとすれば、糖衣錠よりカプセルのほうが細工がしやすいわけですから・・・」 「うん・・・。
なあ山下。福島の婚約者で・・・ほら同棲してるとかいう・・・」 「原島陽子!」と、少し声を大にして即答した山下。さっき私は、この原島陽子が後に
福島とはどういう関係なのか分かると言いましたが、早くも分かりました。「もう一度会って取材してくれ。」 「はい。」 行こうとした山下に、「あ! 彼
女(香織)も連れていけ。」とさらに付け加えた部長。「え!?」 「今日から君のアシスタントだ。」 「ちょっと待って下さいよ!」 山下はやけに嫌がり
ます。ここでまた「よろしくお願いします。」という言葉が香織の口から出るかなと思われましたが、思いも寄らぬことを、それも山下にではなく部長に
言ってきました。「お願いがあるんですけど、東都大の神津恭介先生、ご存知でしょ?」 「名前だけはね。確か、例の糖衣錠に仕込んだ青酸カリの
謎を解いたのも、その人だろ?」
「ええ。今回の事件、神津先生に特に推理していただきたいんです。」
これを聞いて、あんまりいい気になるなよと言いたげな山下。「君・・・」 「せっかく山下さんがスクープなさったんだもん。ドーンと他社に差をつけなく
ちゃ。もったいないでしょ。さ、先生のところへ行きましょ。」 香織はもう行ってしまいました。片や、まだ部長のデスクのところでずっと立ち止まった
ままの山下。「彼女、ウチの社長のご令嬢なんだ。よろしく頼む。な。」 しょうがないなといった感じで、山下も重い足を動かし始めました。
さっそく神津に会った香織と山下。どこかの通りを歩いております。
「うん・・・。君にそこまで頼まれると、断りにくいね・・・」
香織はよほど頼み込んだのでしょう。その執念に神津が負けたようです。「じゃあOK!? 良かったぁ・・・」と喜ぶ香織。今は画面左から順に、山
下、香織、神津という並びになっています。あの電車内もそうでしたが、なぜか山下は一番左になります。ということで、横一列に歩いている3人なん
ですが、私はこういう歩き方はあまり好きではありませんね。なんせよく自転車に乗りますから・・・。自転車で走っていて前方で3人も横歩きしていた
ら、いい加減にしろよ!と言いたくなります。
さあ、話を戻しましょう。「いや、君の記事を読んでね、興味があったって話だ。」 今度の『君』
は、香織ではなく山下を指します。「肝心な事はまだ何も分かってない状況ですが、よろしくお願いします。」 神津は微笑みました。「去年の春にね、
初めて先生の講演を聞く機会があったんです。」と、嬉しそうに神津のことを山下に話す香織。さらに続けました。
「先生こうおっしゃったわ。人間は決して無意味な行動はしない。
無意味に思えても、そこには必ず何か意味がある。」
タバコを吸いながら香織の言葉を聞いている神津。自分で言った事なので、もちろんよく覚えているでしょう。「私卒業後の進路のことで悩んでた時
だったし、すごく感動しちゃって・・・。で、生身の人間にめいっぱい関われる仕事がしたいと思って、新聞記者・・・それも社会部の記者になろうって
決めたんです。」
「ハハ、そうか・・・。じゃあ、私にも少し責任があるのかな・・・」 「それに・・・」 「ん?」 「いえ、何でも・・・」 言いかけましたがや
める香織。こんな2人のやりとりを滑稽に思ったのか、さっきまでしかめっ面だった山下も随分とにこやかになっています。「ああ、ところで事件の事
なんだが・・・」
「はあ・・・。福島康夫ですが、やはりビタミン剤を常用していました。」 その確認を、福島宅ですでに終えている山下と香織。福島宅
には同棲中だった原島陽子がいまして、彼女から色々と話を聞いたようです。やはりある程度下調べをしておかずに神津に会うのは、失礼だと思っ
たのでしょう。ではその福島宅での会話、回想シーンで見てみましょう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 回想シーン1 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「7種類も!?」 といきなり驚く香織。テーブルに、その7種類のビタミン剤が実際に置かれています。「これ、全部毎朝?」
「ええ。2錠ずつ。『これが俺の朝飯だ』って・・・」
と答える原島陽子。うわマジですか!? 体に悪そう・・・。こんな朝飯なら食べない方がマシかもしれません。「このビタミン剤の中に、毒が入って
るっておっしゃるんですか?」 「あいえ・・・。もちろんまだ断定したわけじゃありませんが・・・。」 「誰がそんな・・・」って、そんな事が出来るのは状況
からしてたった1人しかいません。ジッと陽子を見つめる山下と香織。どうやら陽子も気づいたようです。「まさか! 私が!? 福島を殺したなん
て・・・! 私たちもうすぐ結婚する事になってたんですよ! その私がどうしてあの人を殺さなきゃいけないのよ!」 口調も強く、顔つきも必死に
なった陽子の顔が画面いっぱいに映し出されました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
回想シーンが終わり、再び神津、山下、香織の3人のシーンへと戻ります。さっきまで歩行中でしたが、いつの間にか喫茶店に来ている3人。神津
はコーヒー、山下はコーラ、香織はオレンジジュースを飲んでいるようです。1人が『コーヒー3つ』と注文するパターンがありますが、この3人はどう
やら好みはバラバラのようです。さて、飲んでいるといえば問題の福島のビタミン剤。陽子から預かった7種類のビタミン剤を神津に見せた香織は、
「ビタミン剤だけの朝ご飯だなんて、何か不気味・・・」と引いております。山下は、ビタミン剤の不気味さよりも犯人を予想しております。
「彼女かもしれないな・・・」
と、陽子を疑う山下。
さらに、「婚約してたって同棲してたって、相手を殺さないって保証にはならんでしょ。」と、少しぶっきらぼうな言い方で神津
のほうを見ました。香織も同じく神津を見、犯人の予想へと頭を切り替えます。「私もちょっと引っ掛かってる事あるんです。病気にしろ事故にしろ事
件にしろ、愛してる人が突然死んじゃったりしたら、私なら・・・動転して絶望して、泣いて泣いて、それでも涙が枯れるなんて事ないと思うんです。で
も彼女は違うみたい。そんなには悲しんでないっていうか、絶望してないっていうか・・・」 「福島がビタミン剤を常用してることを彼女は知ってたわけ
だし、再婚しやすい立場だったしな・・・」 山下は今度は香織のほうに視線を向けました。なのでタメ口に変わっております。しかしそれにしても、神
津はこの喫茶店に来てからはまだ一言も喋ってないですね。まずは他の人達の意見をじっくりと聞いてから発言する、きっとそういうタイプなので
しょう。その神津がようやく口を開きました。
「まあとにかくこの薬、ウチの大学の研究室で分析させてみよう。」
まずはとりあえずといった様子の神津。ここからどう推理していくかが実に楽しみです。
ここで第1章が終了です。いやぁ〜この第1章でかなり多くの人が登場しました。主な登場人物でまだ出てきてないのは、早くもたった1人となりまし
た。そして早くもといえば、事件のほうも早くも起こりました。電車の中のあの不可解な変死事件・・・。これには一体どんな謎が秘められているの
か!? またここから先は一体どんな事が待ち受けているのか!? 物語はまだまだ始まったばかり。事件もまだまだ始まったばかり・・・かもしれ
ません。
第2章は、こちらです。