番外編
本編が終わり、いつものように番外編です。2015年最後のインドア派の城の更新は、この「探偵神津恭介の殺人推理11」の番外編となりました。
また例によって、本編で既に出ているけど改めて凄かったなと思った部分、新たに感じた点などを中心に書いてみました。では、どうぞご覧下さい。
◎まさに名探偵
神津恭介は、まさに探偵らしい探偵、それも名探偵でした。いつも落ち着いていて決して動揺もしませんでした。その沈着ぶりが特に表れ
ていたのが、次のシーンでした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 本編第6章より ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・・・ 一同沈黙してしまったところで、電話がかかってきました。一番近くにいる信子が出ました。「はい、神津でございます。」 すると相手はこう言っ
てきました。
「神津恭介に警告だ。手を引け、さもないと殺す。」
明らかに真犯人からの電話です。「誰なんですかあなた? もしもし。もしもし!」と、さほど動揺する事もなく言い返す信子。さすがは神津の妹で
す。相手はそれだけ言って切りました。「どうした?」 「お兄さんに警告だって。」 「警告?」 「手を引け、さもないと殺すって・・・」 「男?」 「男。」
「共犯の男だ!」 ついに命を狙われる所まで来てしまった神津。でも、こういうのは脅される方がヤバいように一瞬思われがちですが、実はその反
対で、真犯人のほうが相当焦って危機感を持っているという事が言えます。神津も当然それは分かっているでしょう。なので手を引くどころ
か、次なる調査を行います。「研三くん、福島行きつけの雀荘っていうのは調べてあるか?」 ・・・
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こうしてまったく動揺することなく、いやそれどころか逆に事件解明にさらなる意欲を燃やしていた事が分かります。やはりそれは本編でもあった通
り、真犯人のほうが焦っている、またそれを神津も十分分かっているこそ、そうした余裕があったのだと思います。これ以外にも、キャバレー『トップ
レス』に行って三崎のことを尋ねた時に、副支配人から怒鳴られてもまったく怯みませんでした。度胸満点でした。本編では触れはしませんでした
が、服装も探偵らしい恰好をした時が多かったですし、やはり何と言っても、第7章から最終章にかけての最後の謎解き。これが超お見事でした。
ホントに何から何まで名探偵という感じでした。
◎福島康夫の死
この物語で第一に死んでしまったのが福島康夫。彼の死に方に非常に注目がいきました。何しろ、電車の中で急に倒れこんで実はそれがそのまま
死んでいたというわけですから、それはもう神津をはじめ、みんながどうしてそうなったのかを推理なり想像なりしていきました。
・青酸を口に入れたのではないだろうか
・いやそれは物理的に無理だ
・自殺なのか他殺なのか
・ビタミン剤に青酸を含ませてそれを予め飲んでいたのでは・・・
・いや、でもビタミン剤からは検出されなかった
・じゃあ青酸は口から入ったのではないかもしれない
といった具合に、香織や山下、それに初めのうちしか出番がなかった電車の乗客など、色んな人が色んなことを言いました。でも、最後はやはり神
津が推理した「口から入ったのではない」というのが当たっていました。
◎疑わしい人物
やはりサスペンスとなると、疑わしい人物が何人かいる方が面白いです。原島陽子、北島義男がこの物語ではそうでした。そして、やはり2人とも結
局真犯人ではありませんでした。殺された福島に城山に三崎。陽子も北島もこの3人に、あるいはその中の一部の者に恨みの感情を持っていまし
た。特に北島が登場した時には、彼が本ボシでもう決まりだなと思えるほどでした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 本編第5章より ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・・・ 「三崎哲也が死にました。福島が死に三崎が死に、もう1人失踪届が出ていた城山健治は、今朝芦の湖で死体になって発見されました。死因
は福島と同じ青酸性の毒物・・・」 「ハハハハ。」と、ここで笑う北島。「北島さん。」 「あんたたちの考えてる通りだ。春佳は獣のような男3人に犯さ
れた。ナイフで脅かされて、ホテルへ連れ込まれた。春佳は・・・・まるで魂が抜けてしまったように・・・・ボロ切れみたいになって帰ってきた。心も、体
もボロボロ・・・」 こうしてついに告白した北島。さらに、
「そうだよ! 俺が奴らを殺したんだ! もし生き返ってきたら、何度でも殺してやる!!」
と、神津や香織を睨みつけ、強い口調で言いました。 ・・・
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このように、殺ってもいないのに殺ったと言い張っていました。しかも、別に捕まって尋問を受けてるわけでもないのに、です。よっぽど恨んでたと
いうのが強く表れています。しかし、何度も言うようですが北島は真犯人ではありませんでした。そして、じゃあ真犯人は一体誰かという非常に興味
深い展開へと変わっていきました。
◎第四の男・桑畑登場
真犯人だけでなく、福島たち3人の方も新たな人物が浮かび上がってきました。桑畑次郎という第四の男です。この桑畑の下衆っぷりを見てると、
福島、城山、三崎も同じような人間だったんだなと想像が出来ます。特に福島と城山はあまり登場したシーンがなかったのですが、それでも想像出
来ます。言ってみれば、この男こそがこの物語の一番の悪党だったわけですが、結局この桑畑は何の裁きも受けませんでした。性犯罪系の類は被
害者本人が訴えない限り有罪にはならないらしいですが、その被害者の方が心に傷を残してしまったりと悲惨な目に遭いました。そして桑畑が受け
た痛みといえば、最後の香織のビンタ1発くらいでした。このあまりにも割りに合わない結末の差・・・。女性の視聴者からしたら、もう10発ほどブッ
てやれば良かったのに!! ・・・と思ったことでしょう。
◎2−1=1
2−1=1、この物語ではこの数式がいかにも意味ありげといった感じでちょくちょく出ていました。そしてついに、神津が事件解明と同時にその意味
を明かしました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 本編第7章より ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・・・ 「僕の推理が的外れであることを願っていたんだが・・・。残念だよ。もっとも最初から君を疑っていたわけじゃない。君が事件の核心に関わっ
ているつまり、共犯者ではないかと思いだしたのは、三崎哲也が殺された時だ。確かにあれは完全な密室だった。犯人はあの部屋の中から、マ
ジックのように見事に消えた。しかし、まあ子供のような素直な目で見れば、簡単に答えは出てくる。」と、説明を始めていった神津。ここからがこの
神津の真骨頂です。そして、
「つまり、2−1=1。」
再びあの数式を口にしました。「2−1=1・・・」 「うん。犯人は部屋に入った女であることは誰の目にも明らかだ。じゃあどうしてそれが消えたの
か・・・。もちろん、共犯がいたからこそ。あのとき部屋の前にいたのは、山下くんと香織くん。2人だけだった。」 確かにそうでした。そして、2人が部
屋に入った時には、女の姿はどこにもありませんでした。逃げ道がない部屋の造りであった事も間違いなし。これで密室となったわけです。ところ
が、山下たち2人が部屋に入る前に、香織がスペアキーをもらいに管理人室に行っていました。
「香織くんが管理人を呼びにいってるあいだ部屋の前に残っていたのは山下くん、君1人だ。」
そうです。これがポイントになります。2−1=1というのはこの事です。 ・・・
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で、このあと山下が女を逃がした所まで神津は詳しく説明してくれるわけですが、それにしても三崎が殺された辺りから山下が怪しいとすでに思い始
めていた神津はさすがに凄いです。そういえばその後暫くしてからも、2−1=1と呟いていました。この時なんかはもう、山下が一連の事件の共犯
者であると80%くらいは思っていたに違いありません。
◎一番の見所、そして悲しき末路・・・
真犯人、そして共犯の山下の2人が本ボシだったというのは、すでに本編でも言った通りです。一番肝心な真犯人よりも先に共犯者を言ってしまう
物語は、サスペンス多しといえど、この『探偵神津恭介の殺人推理11』だけかもしれません。そして、ついにその真犯人が浩子である事が、神津の
口から出てきました!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 本編最終章より ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・・・ 第7章の最後は、山下が放った
「さすが神津先生だ・・・。そうです。この桑畑を殺さない限り、俺の復讐は完結しない!」という復讐に満ちたセ
リフで終わっていました。しかしそのすぐ後、「いや!」と神津がそれを否定。そして、ついについにこの一連の殺人事件の真犯人を発表し
ます! では聞いてみましょう!
「正確に言えば、浩子さんと君のだ。」
何とあの加納浩子が真犯人! 自分たちのボードセーリング仲間である浩子が犯人と知った研三たちは、驚きを隠せません。
・・・
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真犯人がついに明らかになる所、やはりこれこそが、物語の中でも一番の見所のシーンと言えるでしょう。密室から消えた美女というのが浩
子であった事も、これでようやく分かりました。実は恋人同士だった山下と浩子。浩子も、福島たち3人によって酷い目に遭わされた女性の1人でし
た。そして、山下の彼らに対する怒りはもう半端ではありませんでした。あの北島と同じくらい、いやそれ以上とも言えるほどの憎しみを持っておりま
した。すでに自殺を図っていた浩子。そして、神津たちの目の前で同じく自殺をした山下・・・。ホントに何とも言えない、悲しき末路でした・・・
◎最後は海辺
悲しき末路のまま物語が終わってしまっては、ホントに悲しくなってしまいます。事件が一段落ついた後は、のどかな雰囲気漂う神津たちの海辺シ
ーンとなりました。それにしても、ラストはどうしてこう海辺シーンが多いのでしょうか・・・。本当によく似合っておりました。神津、信子、研三、香織の
4人がこのシーンで出ていましたが、もし浩子が真犯人、そして自殺していなければ、彼女も合わせた5人にきっとなっていたでしょう。残念
ながらそうはいきませんでした。
以上、番外編ということでまとめてみました。今回は7項目書かせてもらいました。ある程度定着してきたのか、番外編は7項目がやはりちょうどい
い数だなと思うようになってきました。さあその番外編も終わり、これで今度こそこの物語とのお別れの時が来ました。では、こちらのほうもご愛読あ
りがとうございました。