勝軍山のアサギマダラ
2014.9.20

 季節も秋に移行しつつあり、山頂で過ごしていたアサギマダラも標高を下げつつ南下の準備に入る時期になってきた。
 9月6日に松前の勝軍山調査を行ったが、その時にはアサギマダラを見ることが出来なかった。それから2週間ほどたち、その間に道南虫の会の片山さんが勝軍山でアサギマダラの捕獲、マーキングに成功しているので、今日は生物部で勝軍山に行き、調査をすることになった。

 6時40分に対馬先生が自分の家に来て、そこから部長、1年生部員のI君を連れて松前に向かった。Mさんは朝が早いのが苦手という事で休み。

 勝軍山に到着する少し前にある天狗山。ここでもアサギマダラの記録があるという事で、対馬先生とI君はまずここで調査することになり、自分と部長は勝軍山で調査することにした。2人2人に分かれた方が効率が良いかもしれないという事で。

 自分と部長が勝軍山に到着する直前に雨が降り出してしまった。道中ずっと晴れていたのに。
 「やんや、雨が降ってきたでや。ちょっと車の中で様子を見るべ」という事になり、しばらく待った。11月にある函館検定を受けようと思っているので、部長にテキストブックを渡し、色々問題を出してもらった。

 そうこうしているうちに雨が上がって晴れ間も出てきたので、いよいよ調査開始。

雨上がりの空

 遊歩道を歩きながらアサギマダラを探した。蚊が多くてプーンと耳元でうるさい。自分はカメラだけを持ち、部長に網を持ってもらった。もしアサギマダラを見つけたら部長に捕獲してもらおうと思っていた。

 天狗山の対馬先生とも連絡を取りながらアサギマダラを探した。どうやら天狗山でも雨が降ってきたらしい。

アサギマダラを探す部長

 二人で一緒に歩いてもしょうがないので、ちょっと離れながらアサギマダラを探した。2週間前と違ってアザミの花が多く咲いていて、これにアサギマダラが来るらしい。自分は知らないが、去年は多くのアサギマダラが観察できたそうだ。

 なかなかアサギマダラの姿が見えないなと思いながらアザミを見ていると、ちょっと大きめの何かが飛んだ。カラスアゲハかミドリヒョウモンか、何かな?と思ったら一瞬飛んだ。飛び方がアサギマダラに似ていると思ったのでよく観察すると、思った通りアサギマダラがアザミの花に来ていた。

 「アサギマダラいたぞ!」と部長を呼んだ。ちょっと距離があり部長はなかなかアサギマダラを見つけることが出来ない。指をさして「ほらあそこ!」と言っても分からないようだったので、とりあえず「もっと前、ちょっと右側!」などと言いながら部長をアサギマダラに近づけながら自分は何枚か撮影をした。距離は20mほどだったと思う。

勝軍山のアサギマダラ

 かなり近づいたところで部長はアサギマダラを現認。自分はとりあえず撮影はもういいなと思ったので、「採れ!」と言った。ところが、部長の気配に気づいたのか、網の射程距離に入る寸前でアサギマダラはアザミから飛んだ。でも、その辺をフラフラ飛んでいたので採集のチャンスはまだある。そして、部長の網が火を噴いた!!

 「スカッ!」

 空振り!!!

スカッと空振りした瞬間。逃げたアサギマダラも小さく写っています。(画像中央少し下)

 空振りしたあと、アサギマダラは驚いたようで一目散に逃げて行ってしまった。

 「すみません」と部長

 でも、謝られる筋合いは全くない。逃げられることだってあるし、それなら自分なんか網すら持っていないのだから。
 ちょっとがっかりしているようだったので、「またチャンスはあるさ」と慰めた。

 そして更にアサギマダラ探し。

 すると、下の方にいた部長から「アサギマダラ採りました〜!」と声が聞こえてきた。おお、やったか!採集されたアサギマダラを確認しに行こうと思い、10m位歩いたところで、なんと私の足元からアサギマダラが飛び出した。

 「えっ?」と思った。

 部長のアサギマダラを見に行こうと思い、自分の足元にいたアサギマダラを見逃していたようだ。でも、そのアサギマダラはフラフラ飛んでいたので、「おーい、こっちにもいるぞ!」と言った。

 しかし、そのアサギマダラはフラフラ飛んでいるものの他のアザミに止まることなく、少しずつ上の方に行き、木の向こうに飛んで行ってしまった。見えなくなって3秒後位で部長の走る足音が聞こえ、部長がここまで来た時には何事もなかったような感じになっていた。残念。

 網を持っていればよかったなと思ったが、自分の網は天狗山のI君に渡しているのでもうどうしようもなかった。最初から網を持つ気もあまりなかったし。カメラと網の二刀流はなかなか難しいものだ。
 
 部長が採集したアサギマダラはボロだった

撮影後マーキングされたアサギマダラ
(部長が携帯電話で撮影した写真)

 ♀だ。羽がボロボロすぎて、「ハコダテ」と書く場所も切れていてとても記入しづらかったらしい。8月の中旬に北海道で羽化したものが、南下しつつここまでたどり着いたものかもしれない。今年は去年に比べ明らかにアサギマダラの数が少ないのだが、こいつのお母さんは八雲とか、長万部とか、岩内とか瀬棚とか、そういう所で産卵して、生まれたアサギマダラが本州に渡って行く直前で部長に捕獲されたのかもしれないなどと想像を膨らますととても楽しい。

 ただ、羽がこんな状態なので、この先本州に渡っていけるのだろうか?と不安にもなった。

 このアサギマダラはすぐに放した。そして、今の段階では4頭目撃、そのうち1頭捕獲・マーキングという成果だ。
 今年のこれまでの状況を総合的に見てみると、まずまずだなと感じていた。

 更にアサギマダラを探し回るがなかなかそう簡単には見つからない。

 部長が手を握り締め、何かを持ってきた。

 「もしかして蛇じゃないだろうな」と聞いたが、「蛇を手のひらの中で握り締めるわけないでしょ」と言われ納得。しかし、ワラジの可能性もある。かなり怖かったが、部長が開いた手のひらの中には小さな可愛いカナチョロがいた。

かわいいカナチョロ(今年生まれだろうか?)

 対馬先生に電話をすると、天狗山ではアサギマダラの目撃は無く、そこから歩いて下山し、バスに乗ってこっちまで来ると言う。松前の停留所から勝軍山までの距離も相当ありそうだったので、松前の停留所まで迎えに行くことにした。

 部長はここに留まりアサギマダラを捜索し続けるということで、自分だけ対馬先生とI君を迎えに行った。

 対馬先生とI君と合流し、勝軍山に戻った。これで今日参加した4人が再集合と言う形になる。

 対馬先生とI君は天狗山でアサギマダラを目撃できなかったのに、私と部長は4度目撃している。なので、対馬先生とI君はやる気満々だ。競うようにして走りながら部長の待つ勝軍山の中へ消えて行った。

 自分がI君と対馬先生を迎えに行っている間、部長はアサギマダラを2頭目撃、そのうち1頭を捕獲していた。一緒に迎えに行かなくて良かった。

捕獲されたアサギマダラ
 
 これもメスだ。1頭目ほどではないが、少し羽が痛んでいる。やはり離れた場所で羽化して南下してきた個体なんだろうか?

 これでI君も対馬先生も俄然やる気が出てきたようだったが、残念ながら少し雲が多くなって来たりというのもあって、その後アサギマダラの目撃には至らなかった。

クモ


左が部長、真ん中奥に対馬先生、右のジャージがI君


いつも蝶と間違えるイカリモンガ

 天狗山に行っていたI君と対馬先生、道中で色々話したと思うが、I君が空手の黒帯であることを知ったらしい。自分も知らなかった。で、自分もよくわからないけど、空手のパンチ?のやり方を教えてもらったようで、ここで披露しはじめた。

 足を開いて、バシッ!とパンチ。I君はさすがに黒帯だけあって綺麗。対馬先生はパンチの拳が反対方向を向いていて、アッパーみたいになっている。

空手のパンチを披露する対馬先生。

 「手の向きが逆です」とI君に指摘されていたが、その後もアッパーみたくやっていて、頭の中の指令と体の動きが一致していないようだ。さらに、キックも披露し始めた。山の森の中で空手の稽古。山籠もりの武者修行みたいだなと思って笑った。

キック

 対馬先生は「お前もやってみろ!」と言うのでI君に教えてもらいながらパンチとキックをやってみた。パンチはまずまずだ。

パンチの練習(頭のタオルは蚊よけのため)

 3人でパンチをして部長に写真を撮ってもらった。自分だけタイミングが合っていなかった。頭では同じタイミングでパンチをしているつもりだったんだけど。対馬先生はパンチに慣れてきたのか、ちょっとかっこよくなってきた。

3人でパンチ

 そして3人でキック。みんなで一緒にキックをしたのだが、明らかに自分だけキックの高さが低い・・・。

キック!

 キックをすると、太ももの裏側が痛い。明らかに体が硬いのがわかる。自分はこれが精一杯。負けた・・・。

 ふと我に返り、「何で山ん中でこんな事してるんだろう?」と思ったが、こういうのが生物部らしくていい。

 アサギマダラの結果としては、6度目撃中2頭捕獲・マーキングでまずまず良かったと思う。蚊に5,6か所刺されて痒かった。天候がもう少し安定していれば、もっと目撃できただろうか?でも自分としては撮影もできたし、部長もマーキングできたので満足だった。