夜のライトトラップ初体験
2014.7.25

 函館に転勤してくることになって、楽しみにしていたことがある。それは道南虫の会の小松さんと名越さんにライトトラップに連れて行ってもらう事だった。

 転勤が決まって発表になった時、掲示板で真っ先にお願いしていた。「夜の採集に誘って欲しい」と。

 何か採集したいわけではない。ただ、心の中であこがれていた。真っ暗な中、シーツみたい白い布にライトを当てて、寄ってくる虫を採集する。
 自分はいろんな虫が見たいだけなので、そういう憧れていた体験ができるだけで嬉しい。

 そうこうしているうちに7月も下旬になり、ついにお誘いの声がかかった。やった!!

 土曜の夜に行く計画だったが、天候が崩れる予報になったため1日繰り上げて、金曜日の夜に行くことになった。

 5時半に名越さん宅で待ち合わせ。ほどなく小松さんもやってきて、車2台でポイントに向かった。自分は名越さんの車の助手席。

 色々おしゃべりしながら車は林道を走る。名越さんとも小松さんとも、函館に引っ越してきてから初めて会う。一緒にどっかに採集とかに行くのも初めてなんだけど、年に1回の虫の会懇親会やアサギマダラ調査などで顔を合わせているので特に違和感もなく普通の感じでいることができた。

 今回行くポイントは初めて行く場所なのだが、自分は一体ここがどこなのかよくわからない。名越さんの車のナビでだいたいの位置がわかる程度。

 林道をかなり奥まで進み、今日のポイントに到着した。、

滝があるらしいけど、どこにあるのかわからない

 さっそく準備を始める。奥の山からたくさんの昆虫が来るように、下草を刈ったりして見通しを良くする。


準備をする小松さんと名越さん

 シーツのような布やライトのセットの仕方はわからないので、自分は下草を刈るのを少しお手伝い。

 ライトは発電機(エンジン)をつかって点灯させる。燃費はかなり良く、2リットルもあれば3回くらい出来ると言っていた。

 そうこうしているうちにだんだん暗くなってきた。いよいよ発電機を動かし、電気をつける。

暗くなって電気を付けたところ

 この電気に色々な昆虫が集まってくる。蛾、甲虫など、ほとんどよくわからない虫ばかり。でもテレビなどで見て憧れていたライトトラップを体験で来て、楽しくて仕方がない。

蛾(ハスオビマドガ

 カメムシが飛んできた。最初「なんだカメムシか」と思って見向きもしなかったのだが、小松さんが「このカメムシ綺麗なんですよ」と教えてくれたので、「どれどれ?」と見てみると、緑の宝石を散りばめたような色をしていてビックリ。こんな綺麗なカメムシたいたのか!!
 なんとかこのカメムシの綺麗な様子を撮影したいと思ったが、これが限界。

実際はもっとキラキラ輝いているカメムシ(エゾツノカメムシ?

 カミキリムシも飛んでくる。これももっときれいな色をしていたんだけど、うまいこと撮影できなかった。

カミキリムシ(ハンノアオカミキリ

 あたりが真っ暗になると、どこからともなくどんどんと虫たちが飛んでくる。

 これは小松さんが「カイコの原種」と教えてくれた蛾だ。

カイコの原種の蛾(クワコ

 更にどんどん虫が飛んでくる。帯広に転勤するまだ前、岩見沢にいた時にクワガタ採集に行ったときによく見かけた大きい蛾。

 その時には「戦闘機」と呼んでいた蛾。スズメガの仲間らしい。

戦闘機(エゾシモフリスズメ

 自分は特に採集したい虫とかもいないんだけど、同じ職場の方から「コクワガタのメスがいたら欲しい」と言われていたので、もしコクワガタのメスが飛んできたら採集して帰ろうと思っていた。でも飛んできたのはアカアシクワガタとミヤマクワガタばかり。かなり大きいミヤマクワガタも飛んできた。

 普段、小松さんも名越さんもクワガタには目もくれないらしい。そう聞いてなんかちょっともったいないような気がした。

 「相当大きいのなら持って帰ります」と小松さんが言っていたし、名越さんも「オオクワガタなら持って帰ったことがある」と言っていたが、飼育して楽しむためではなく、即殺して標本用だって。

 逃がす前提でクワガタだけ集めてみることにした。

大きなミヤマクワガタ
(飛んできたものを布にくっつけて撮影した写真)

 道南で見られる蛾は3000種位と小松さんが言っていたような気がするが、その中でも注意しなければならない(ドクガ)のは3種類だけらしい。だから、「ほとんど心配することは無いよ」と小松さんに言われて安心していたのだが、自分の胸元に止まった蛾を見て、「もしかしてこれドクガじゃないの?」と思い、小松さんに聞いてみた。すると、やっぱりドクガだった。

 心配しなくていいって言ったじゃん!!

 私の胸元に付いたドクガは小松さんがフィルムケースの中に入れてくれた。その後、布にも付いていないかと思って見たら、やっぱり布にも付いていた。

私の胸元にいたのと同じ(ドクガ

 更に、もう一種類、違うドクガもいた。「3種類しかいないよ」って言っていたドクガのうち、2種類も飛んできたのか。
 これだけはちょっと怖かった。

ドクガ(キドクガ

 飛んで来る虫たちを見ると、圧倒的に蛾が多いように感じた。蛾をしっかりと観察したのは初めてだったので、適当に撮影しながら観察したが、ひとつわかったことがあった。

 「蛾って、こんなに綺麗なのか!!」 ということだ。

 もちろん、地味なのもいるけど、バラエティーに富んでいて、かなり小さいもの、とても大きいもの、翅の形や色、模様も様々。これははっきり言って新発見だった。

自分が気に入ったのはこのガ。白黒の感じが好き
(左から、マエアカスカシノメイガ、ヨツボシノメイガ、オオシロオビアオシャク、ハスオビマドガ

 ウスバカゲロウも飛んできた。これの幼虫は有名なアリジゴク。何匹のアリを食べて成虫になったのかな?

ウスバカゲロウ

 蛾はまだまだ飛んでくる。

蛾(ユウマダラエダシャクの一種

蛾(キマダラツマキリエダシャク

蛾(ハダカエグリシャチホコ


(左から、ウスジロオオヒメシャク、ミヤマキリガ、アヤシラフクチバ

 蛾を観察し、「綺麗だなぁ〜」と感動していると、あれれ?チョウチョじゃん!というのが一頭布にはりついていた。

 ミドリシジミの仲間だね。

 蝶を室内で飼育すると、蛍光灯とか室内の明かりに引き寄せられて飛び回っていることも多いんだけど、ライトトラップに集まる性質もあるんだね。ただ、見れたのはこの一頭だけ。種類を確認するために採集した。(まだ展翅していない)多分、ただのミドリシジミの♀だと思うが。

ミドリシジミ類の♀

 小松さんが、手に蛾をくっつけて自分の所に来て教えてくれた。「通称日の丸って呼ばれている蛾だよ」って。

 確かに日の丸がふたつあるように見える。

日の丸の蛾(マルモンシロガ

 無数の虫たちがライトの布めがけて飛んでくるのだが、やっぱり大きいのは良く目立つ。そのなかでも今日、かなりの数見られたのがヘビトンボ。自分はこれまで数度しか見たことが無かったので、こんなに多数のヘビトンボが飛んでくるとは驚きだった。30や40はいたと思う。あちころヘビトンボだらけ!!

ヘビトンボ

 小松さんは時々蛾の解説をしてくれるが、「今日の蛾の中で、私の標本箱に無い種類の蛾は一種類もない」と言っていた。小さい蛾を狙っていたようだが、どれだけ採集したんだろう?あんまりしていないように感じた。

 名越さんはちょっと面白い。蛾ではなく、甲虫を集めている。それも肉眼では種類の判別がつかないような小さな小さな甲虫。
 
 それを吸虫管というのを使って、吸いながら採集している。
 ちょっと太くてクネクネ曲がるストローのようなものを加えて虫を吸い取る。そのままだと口の中に入ってくるのではないかと思うが、途中に試験管みたい部分があって、吸い取られた虫はその中に入るので口の中に入ってくることは無い。種類さえ判別できない小さな甲虫を吸い取り、後で自宅で顕微鏡を見ながら種類を判別するらしい。

 そんな小さな甲虫たちが「可愛くて仕方ない」らしい。さすがだ・・。

口に管を咥え甲虫を吸い取る名越さん

 面白い模様の虫はいないかなと思いながら観察するのだが、とにかくブンブン虫たちが飛び回っている。小さな虫は口の中に入るし、ちょっと大きめの虫だって服の中に簡単に侵入してくる。虫だらけで普通に息が出来ない。

面白い模様の蛾(ヨコジマナミシャク

 布に付いている虫、地面を歩いている虫、飛んでいる虫。本当に物凄い数だ。こんなにいろんな虫たちを見れて本当に楽しい。

布に張り付いた大量の虫たち

 時刻は9時を過ぎ、そろそろやめようかという事になった。布に充てられていたライトを切ると、虫たちは集まる場所を失いブンブンと飛び回っていた。

ライトを切った直後。それでもまだ布には大量の虫たちが

 あんまりたくさん飛び回っていたので、フラッシュを付けて夜空を撮影してみた。満点の星空に見える気もするけど、これ全部昆虫に反射した光。

題名「命輝く星々」

 クワガタはミヤマクワガタとアカアシクワガタで10匹以上は飛んできた。本当なら喜んで持ち帰るのだが、今自宅にはミヤマクワガタの大きいのとノコギリクワガタの大きいのがいるので、これ以上はいらないと思い逃がすことにした。小松さんが近所の子供にあげるために数匹確保していた。

飛んできたクワガタたち

 一度体験してみたいと思っていたライトトラップを体験することが出来た。しかも想像していた以上の凄い虫たちが飛んできた。こんなに楽しいとは思わなかったし、蛾の綺麗さにも改めて気が付いた。ヘビトンボなど、普段あまり目にしない虫も大量に飛んできたりして、本当に楽しかった。また機会があれば是非連れて行ってほしいと思った。

 帰りはまた名越さんの車の助手席に乗せてもらった。
 ライトトラップの電気を消された虫たちは飛び回り、どこに行っていいかわからない感じで、車のドアを開けると相当数入り込んできた。帰りの車の中は蛾達とのドライブになった。

 ※画像の蛾の名前(赤字で表示)については、全然わからなかったので、道南虫の会会員小松さんに同定して頂きました。