緑の紙吹雪
2014.7.6

 今日の目標はウラクロシジミ!これまでまだ撮影したことが無い蝶の1種だ。ただし、どこにいるかはわからない。北海道での生息地は道南のしかも南部に限られていて、可能性の高いのは函館市の戸井地区、木古内や松前あたりと読んだ。時期的には少し早いかもしれないが、もしいれば綺麗な成虫の写真を撮影できる可能性がある。

 ウラクロシジミは仙台で過ごした大学時代に何度か見つけて採集した記憶がある。夕方だったような気もするが、よく覚えていない。

 ゴマダラチョウ撮影時の経験から、朝早いと下草あたりに降りているかもしれないと思い、今日も部長と一緒に朝早く出発した。

 本当は帰りに東山地区のウラナミアカシジミ撮影にチャレンジする予定だったが、乙部から前田さんと本多さんが採集に来る予定だったので、我々は帰りではなく、朝一番で東山に行き、ウラナミアカシジミを撮影した後にウラクロシジミ探しに行くことにした。

 そんなわけで東山。期待したウラナミアカシジミよりもミドリシジミ類の多さに驚いた。
 天候は曇りで蝶の活性もまだ低い状態。たくさんのミドリシジミが笹の葉に降りてきていて、とても綺麗な姿をたくさん撮影することが出来た。ただし問題は何ミドリシジミかよくわからない!! 

なんかのミドリシジミ

 これらのミドリシジミ類は翅を開いて止まっていることが多かった。オスばかりだったが、キラキラ光る緑色がとても綺麗。昨日は2頭だけ目撃したミドリシジミ類をかなりの時間かけて追いかけ、結果ろくな写真が撮れないという結果だったが、今なら撮影し放題である。

とっても綺麗な何かのミドリシジミ♂


何だかわからないミドリシジミ類

 とりあえず、まだ撮影したことが無いフジミドリシジミではないということはわかるので、別に何ミドリシジミでもいいかと思いながら撮影した。種類がはっきりわからないけど、綺麗だから嬉しい。

 このポイントでの一番の目標であったウラナミアカシジミは少ないながらも見つけることが出来た。ミドリシジミ類に比べて20〜30分の1位の数だと思う。

ウラナミアカシジミ

 ウラナミアカシジミやミドリシジミ類を撮影しているとき、部長が「なんだこの蝶は!!」的な事を叫んだ。
 部長が見ている方向を自分も見ると、ウスイロオナガシジミかミズイロオナガシジミがいた。自分も久しぶりに見たので、どっちかよくわからない。部長も初めてということで、驚いたようだ。

 とても綺麗な個体だったので、二人で一生懸命撮影した。帰宅後、ミズイロオナガシジミであるとわかった。

ミズイロオナガシジミ

 時間が少し経つと、とにかくミドリシジミ類が多く、縄張り争いをしながら飛んでいるのが多いこと多いこと。
 
 2頭、3頭、時には4頭位で縄張り争いをしている。それもあちこちで。目に見えるだけで10頭以上のミドリシジミが飛び交っている状況で、まるで紙吹雪が舞っているような感じ。もしこいつらがピンク色の蝶なら桜吹雪のようだと思う。

 葉っぱに止まっているミドリシジミ類の撮影にも飽きてきたので、飛んでいる所の撮影に挑戦して遊んだ。

 以前試みたゴマダラチョウの飛んでいる写真に比べると、ミドリシジミ類が縄張り争いをしている時にはゆっくり移動するのでピントを合わせやすい。とはいってもかなり難しいとは言える。

縄張り争いをしているミドリシジミ類の♂

 少し付近を調査すると、モンシロチョウの2化とかコキマダラセセリも見られた。

 時間も9時半を過ぎたので、そろそろウラクロシジミ探しに行くことにした。

 向かったのは戸井方面。でもどこに行けば良いかはわからないので、適当に車を走らせ、林道みたいのがあれば入ってみることにした。

 戸井方面に向かう途中で見られるのがこのアーチ橋。戸井のアーチ橋と呼ばれている。

 

戸井のアーチ橋


 この橋は、戦前に五稜郭から戸井まで鉄道を敷こうとして作られたものだ。軍事的な要素により、軍人とか武器とかを戸井に運ぶために建設されていた。しかし、第2次世界大戦がはじまり、鉄道を作るための材料が不足したため、2.8kmだかを残して建設が中止されてしまった。約9割がた完成していたらしい。物資が不足していたため、鉄筋コンクリートの鉄筋を調達できず、鉄筋の代わりに竹や木を使っていたらしく、竹筋コンクリートなる恐ろしい材料で作ったようだ。

 朝鮮人の強制労働者をタコ部屋に押し込み、十分な食事も与えずに働かせ、逃げ出した労働者を日本刀を持って追いかけたという記録もあるみたいで、想像するだけで震えてしまう。

 軍事的な要素が強かったせいもあるのか、敗戦後、建設が再開されることもなく、青函トンネルを戸井〜大間あたりの東ルートで作る場合には、この線路を作り直して使おうとしていたらしいが、結局、西ルート(知内町〜今別町)が採用されたため、日の目を見ることは無かった。そしてこの遺構はいまだにそのまま残されているが、現在では粗悪な材料(竹筋コンクリートなど)で作られているために風化などでボロボロになってきていて、けっこう危ないようだ。写真を見ればわかるけど、下には住宅があったりして、崩れたら大変なことになりそう。補修ているものや、一部撤去されているものもある。


 戸井のどこの地域かはよくわからないが、谷があったので林道があるだろうと思い向かってみた。案の定、林道があったので車を走らせながらウラクロシジミ探し。しかし、天候が良くなく、蝶の姿もあまり見られない。

 この林道はそんなに深くまで続いておらず、2km位で行き止まりになっていた。ちょうど引き返すあたりでカッコいい蛾がいたので部長のカメラに止めて撮影してみた。

蛾とカメラ

 このポイントではそんなにたくさんの蝶は見られなかったが、多く見られたのはイチモンジチョウだ。交尾をしているイチモンジチョウが上の方から落ちてきたので撮影した。手乗りにしたりして遊んでみたが、交尾が外れることもなく、悠々と交尾していた。

イチモンジチョウ交尾

 移動したり、歩いてみたり、色々しながらウラクロシジミを探していると、白と黒に見えるシジミチョウが車の目の前を横切った。

 「あれ、ウラクロじゃねぇか!?」と言って慌てて車から降りたが、ウラクロシジミと思われる蝶は崖の上に飛んで行った。そして崖の上で止まったように感じた。姿は見えないし、崖の上は遠いし、どうにもならないと思ったが、部長は崖の上に石を投げてウラクロシジミと思われる蝶を飛ばそうとした。が、全然飛んではくれなかった。

 今の白と黒の蝶は多分ウラクロシジミだと思うが、確実な確認は出来なかった。自分としては80%ウラクロシジミだと思った。

 その後現れたのが、ウラゴマダラシジミ。とても綺麗な個体だ。これも部長は初めて見る蝶だと言っていた。部長の蝶の知識はまずまずなんだけど、まだまだ見たことが無い蝶が多いらしく、もっとフィールドに足を運んでたくさんの蝶を実際に見る経験が必要だなと感じた。実際に見たことがある蝶と、本やインターネットでしか見たことが無い蝶なら思い入れやその後得られる知識の定着もかなり違うと思う。
 とにかく、出会ったことがある蝶の数をたくさん増やしてほしいなと思った。自分が高校生の頃とおんなじようだ。

 (そんな事エラそうに言える立場でもないかもしれないし、北海道産のゴマダラチョウの写真を撮影している部長はそれだけでも結構すごいとは思うのだが)

ウラゴマダラシジミ

 ウラゴマダラシジミを撮影しながら、もしかしてさっきウラクロシジミだと思った蝶は、このウラゴマダラシジミだったかも??と思ったら、さっき見たウラクロシジミ80%と思っていたのが、50%に下がった。

 天候は12時に回復する予報だったが、残念ながら回復する気配なし。しょうがないので戻ることにした。戻りながら鉄山の林道に入り、前回探せなかったアサギマダラの幼虫をもう一度探そうという事になった。

 鉄山の林道に入り、イケマを探してアサギマダラの幼虫探し。でも残念ながら見つけることは出来なかった。

 鉄山の林道では茶色い羽のカワトンボがけっこう飛んでいた。撮影しようとカメラを向けたら、斜に構えてこちらを睨んでいた。

おい、何勝手に撮ってんだよ!って文句言われてるみたい。
もしくは、「おひかえなすって!」とか言ってるのかな?


 シロチョウも飛んでいたので撮影してみたが、どうやらエゾスジグロシロチョウのようであった。綺麗で大きな個体だったので、2化だと思う。もう夏型が出る時期になったんだなと感じた。ついこの前まで春だったのに。

エゾスジグロシロチョウ夏型♂

 また、ウラゴマダラシジミも飛んでいて、部長が手乗りにして遊んでいた。

部長とウラゴマダラシジミ

 鉄山の林道ではそれほど面白い事も起こらず、最後にもう一度東山のウラナミアカシジミを見に行くことにした。先ほど対馬先生から連絡があり、結構な数飛んでいたと報告があったからだ。

 東山に着くと結構な数のウラナミアカシジミを見ることが出来て、朝よりも多いなと思ったし、ミドリシジミ類も相変わらず多かった。でも、気温も上がり晴れ間も出てきたことで活性が高く、素早く飛んでいたり、木の高いところを飛んでいるものが多かったのでなかなか撮影することは難しかった。やっぱり撮影するなら朝に限る。

 しょうがないのでまた飛んでいる所の撮影をして遊んだ。

飛んでいる写真


飛んでいる写真


飛んでいる写真

 なかなか緑色の輝きが写せなかったので、残念。もっとたくさん撮影すれば偶然いい写真も撮れるかもしれないなと思ったけど、そこまで頑張る気にもならなかった。ウラナミアカシジミの飛んでいる写真もチャレンジしたが、太陽を浴びてオレンジ色に光り輝いていたものの良い写真は撮れず、少し遠くに止まっているのを望遠レンズで撮影するだけで精いっぱいだった。

ウラナミアカシジミ

 結局ウラクロシジミには会えず。しかし、かなりの数のミドリシジミ類や、これまであまり出会ったことが無いウラナミアカシジミにも出会うことが出来て良かった。部長も昨日に引き続き、初めて見る蝶がたくさんいたので、一緒に行動して良かったと思う。経験値も今年の春からグングン上がっていってると思う。