幼虫探し
2014.6015

 4月、5月と好天続きの道南地方であったが、6月の初旬から天候が崩れ、厚い雲に覆われている。雨もたくさん降って山に行くには条件が悪い。

 生物部の部員たちは6月上旬の中間テストを終え、「さぁ山に行くぞ!」と思った先週の土日も雨にやられてしまった。そして今週末、天候は回復せず、土曜日も日曜日も雨の予報であった。これでは活動できないかと思ったが、部員たちが「なんとか活動したい」と思っている感じが伝わってきたので、強行活動することにした。

 とはいっても、天気が悪くては蝶の観察は望めない。そこで、雨でも観察できて楽しめるものはないか考えて、幼虫を探しに行くことにした。
 今の時期ならナミアゲハ、ミヤマカラスアゲハやタテハ類の幼虫が見られるかもしれない。そんな計画を生徒に話すと部長が「ナミアゲハの幼虫ならホーマック(北海道のホームセンター)の売っているサンショウにたくさん付いていますよ」と教えてくれた。どうやら園芸コーナーのサンショウにナミアゲハが産卵に来ているらしい。じゃぁ、それも含めて見に行こうかという事になった。

 今日の参加者もチーム北斗。自分と部員、合計4名での活動だ。

 まずはホーマック1件目。
 園芸コーナーに到着するとさっそくナミアゲハの幼虫が見つかった。

 ホーマックの従業員の方に許可をもらい、サンショウとミカン科植物に付いていた幼虫を採集した。

ナミアゲハ幼虫

 この後、ホーマックを2件はしご。合計3店舗でナミアゲハの幼虫を採集した。どのホーマックでもしっかり許可をもらっての採集だ。

サンショウからナミアゲハの幼虫を探す3人

 自分の狙いとして、こういう天気が悪い日は鉄山である。これは高校時代の経験。鉄山の林道なら天気が悪くても色々楽しめた記憶がある。あと、アカマダラが春に多かったので、幼虫採集できるかなと思った。

 鉄山の林道に向かったが、なんとここでちょっと道に迷ってしまった。迷っているうちに雨が降ってきて、これはやばいと思った。

 なんとか鉄山の林道に到着して林道に入ると、雨が降っているのに蝶が飛んでいた。シロチョウが多く飛んでいたが、アカタテハもいた。けっこう降っているのに葉っぱの上でじっとしている。こんな奴もいるんだなと思った。

雨の中、じっとしているアカタテハ

 少しするとラッキーなことに雨は止んだ。車を止めてここから歩きで幼虫探しをすることにしたが、思いのほか蝶も飛んでいた。

スジグロシロチョウ

 蝶が飛んでいると言っても、数はそんなに多くなく、もし晴れていたらもっとたくさん飛んでいるだろうなぁ〜と思いながら歩いた。イラクサにアカマダラの幼虫がいないかと探しながら歩いていると、普段あまり目に入らない色々な昆虫を観察することが出来た。

カメムシの一種?


ゾウムシの一種?

 意外なことに、黒いアゲハがけっこう飛んでいた。そういえば、対馬先生が「カラスアゲハのメスが欲しい。産卵させて飼育したい」と言っていたのを思い出した。1年生のI君に採集させようとしたが、網の棒を一振り目で折ってしまい、網と棒を連結させるところを手で持っての採集。これではなかなかうまく採集できない。しかも、まだ注意不足で、網を濡れた地面に付けてしまう。

網だけを手で持ってカラスアゲハを狙うI君

 部長とI君で数頭のカラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハの♀を採集することが出来た。

 更にプラプラ歩いていると、空が明るくなって少しだけ日が差してきた。日が差すと蝶の数は一気に増える。

 ただし、これは!という蝶は飛んでいない。クロヒカゲが縄張り争いをしていたり、スジグロシロチョウやサカハチチョウは花の蜜を吸っていた。

 マイマイカブリみたいのがいた。

マイマイカブリ

 Mさんはトンボに興味があると入部時に言っていた。そろそろトンボも見られる時期になってきており、部長が採集したイトトンボを見せてくれた。

部長が採集したイトトンボを網から取り出すMさん

 自分には何のトンボか全然分からないが、カワトンボに似ているような気がした。だけど、まったく自信がないので、とりあえず写真だけ撮影した。Mさん、これ何トンボか宿題です。調べてきてください。

胸のあたり


顔正面


翅のところ。あれ?Mさん指長いね!

 晴れていたのは5分程度で、また天気は曇ってきてしまった。それでもプラプラ歩きながら色々探して歩いた。

コチャバネセセリ。珍しくもなんともないけど、今年初めてかな?

 偶然、アカタテハが産卵している所を見つけた。部員達を呼んで観察させた。産みたての卵も持って帰ることにした。
 観察していると、ここらへんはアカタテハの食草であるイラクサがかなりあることがわかった。イラクサは多くのタテハの食草でもあるので、探せば色々なタテハの幼虫が見られるかもしれないと思って、イラクサ畑の中に突入することにした。
 
 イラクサに刺されないように気を付けながら草を踏み倒して道を作っていく。道の先には花が咲いていて黒いアゲハやサカハチが蜜を吸っていたり、よく見るとたくさんのアカタテハがいて、卵を産みまくっていることも分かった。こういう光景を見たのは初めてだった。

 イラクサの葉っぱを見てみると、結構な数の卵がたくさんの葉っぱに付いていた。たくさんのアカタテハが産卵しているんだなと思った。産卵しているアカタテハを観察すると、どうも卵の産み方が雑に見えた。葉っぱに止まってポンと産んで、また違う葉っぱに移動してポンと産むのを繰り返している。葉っぱの中央に産んでいたり、端っこに産んでいたり、裏側に産んでいたりと色々。

産卵するアカタテハ


産みたてのアカタテハ卵

 このイラクサ畑にアカマダラもいるかと思ったけど残念ながら見つけられなかった。だけど、違う種類のタテハチョウ科の幼虫と思われるものがけっこういて、アカタテハの卵とイラクサに付いていた幼虫も持って帰って育ててみることにした。
 何のタテハチョウが羽化するか楽しみである。

 そのほかにもキアゲハの幼虫を数頭見つけることが出来たが、これは持ち帰らなかった。

キアゲハの幼虫(2齢位?)

 終齢手前(4齢)の幼虫も見ることが出来た。

キアゲハ幼虫

 アゲハの得意技、臭い匂いを出す角のようなものを出して匂いを嗅いでみた。やっぱり臭かったけど癖になりそうな匂いだ。

 くんくん・・・くっせーー!   でももう一回! やっぱりくっせー!

臭角を出すキアゲハ幼虫

 I君が「これは何ですか?」と言うので見てみると、ミドリヒョウモンの幼虫であった。ミドリヒョウモンの幼虫はスミレを食べるが、こいつはフキかイタドリか、食草ではない植物にいた。蛹になる場所を探しているのだろうか?

ミドリヒョウモンの幼虫

 オオミズアオも見つけた。が、残念ながら死んでいたようだ。ただ、体は固くなっていなかったので、死んでいたとしても死んだばっかりだと思う。

オオミズアオ


オオミズアオの頭部

 今日、けっこうみられたのがこれ、ハナムグリだと思うんだけど、詳しいことはわからない。

ハナムグリ?

 葉っぱの上にセミがいて、全然動かなかった。写真を撮った後、死んでるかどうか触ってみたらいきなり翅をばたつかせて下に落ちた。けっこうびっくりした。

エゾハルゼミ


林道を歩く部員3人

 本当は晴れてたくさんの昆虫と遊びたいところだったが、あいにくの天気で残念だった。でもこの天気にしては色々観察できて有意義だったと思う。

 ミヤマカラスアゲハ、カラスアゲハ、スジグロシロチョウ、コミスジ、アカタテハ、サカハチ、クロヒカゲ、キマダラヒカゲ、コチャバネセセリが観察できた。

 成虫以外では、ナミアゲハ幼虫、キアゲハ幼虫、アカタテハ卵、ミドリヒョウモン幼虫、その他タテハチョウ数種類(種名わからない)の幼虫が観察できた。

 帰り際に対馬先生宅により、カラスアゲハとミヤマカラスアゲハの♀を渡してきた。ミヤマカラスアゲハは欲しいと言われていなかったが、うまく産卵したら部員達に育てさせたい。特に1年生にはあまり経験がないと思うので、卵、幼虫、蛹、成虫という一連の変態を直に観察することにより色々学べることもあると思う。