アサギマダラ捕獲再チャレンジ失敗
2014.5.25
 先日(5月11日)にアサギマダラを捕獲しに行き失敗したが、今日もリベンジに行くことになっていた。週間天気予報では今日はかなり良い天気になり気温も高くなる予定であったが、直前の予報ではそれほどでもない感じに変わっていた。それでも時期的には本州からアサギマダラが渡ってきてもおかしくない時期に入ってきているし、この前見つけられなかったアサギマダラが好んで飛来するスナビキソウも開花しているという事だった。

 7時ころ、対馬先生が自宅に迎えに来てくれた。今日は片山さんという方も一緒に参加し、3人でアサギマダラを見つけようと意気込んで出発した。

 途中、一回福島あたりで休憩したが、その時に一眼レフの電池を入れ忘れてきたことが判明。しょうがないので今日はコンデジのみでの撮影となってしまった。

 9時少し前に舘浜という、前回も来た場所に到着した。スナビキソウもすぐに発見することが出来た。前回来た時には見つけることが出来なかったが、きっとまだほとんど生えていなかったのではないかと思われる。

スナビキソウ

 スナビキソウのにおいは芳香剤のにおいにちょっと似ていると感じたが、このにおいにアサギマダラは寄せられてくるようだ。

 少し歩きながらスナビキソウを確認したり、アサギマダラが飛来していないか探したが、天候は薄曇りで他の蝶も含めて全く飛んでいない。10分か15分くらいしたら雲が取れてきたのでしばらく待ってみたが結局アサギマダラを見つけることは出来なかった。

スナビキソウ

スナビキソウ群落

 このまま待っていても可能性が低いという事で、もう少し北側のスナビキソウが生えている場所に移動することにした。途中、対馬先生が以前からプライベートビーチと言っていた場所に立ち寄った。

 対馬先生は「去年、秘密のプライベートビーチを見つけた」と言っていた。もちろん、対馬先生が買った土地ではないが、他に誰も来ないし、とても海が綺麗な場所だと教えられていた。しかし、車で走っているときに海を見て、「あ、これがプライベートビーチ?」と思った場所がまさに対馬先生が言っているプライベートビーチだった。自分は道路から見えないような場所にあるのかな?と思っていたので、こんなにわかりやすい場所をプライベートビーチと言っていたことが少し可笑しかった。

対馬先生のプライベートビーチ

 車が走る道路からは少し降りるような感じになっていたが、きっと降りる場所が分かりにくくなっているのかな?と思ったら、道路からかなり分かりやすく階段が付いており、「ここから降りていく」と言われた時には笑ってしまった。誰でも気づくって!

プライベートビーチに続く階段。後ろの人が片山さん

 ただし、この階段、真っ直ぐ砂浜まで降りることは出来ず、砂浜より2m弱高い場所で終わっている。ここから飛び降りなければならないのかなと思ったが、横にしばらく歩くとまた階段があって、そこから浜辺に降りることが出来る。砂浜まで降りるのにはちょっと分かりづらいので、人があまり来ないのかもしれない。

 このプライベートビーチも去年はスナビキソウがあったということだったが、今日はみつけられたのはひとつだけ。これではアサギマダラも寄ってこないだろうということですぐに車に戻ることになった。

プライベートビーチのガラス

 プライベートビーチでは時々綺麗な石が落ちているらしい。対馬先生はそれを拾って持ち帰ると言っていた。石ころを持ち帰って一体どうするのかと思ったら、飾っておくというようなことを言っていたと思う。

 蝶の採集、山菜採り、船を買って魚釣り、そして石ころまで。対馬先生は何でもハンターだと思った。人には色々あり、狩猟民族や農耕民族など、先祖から遺伝子を受け継いでいるとしたら、対馬先生はバリバリの狩猟民族だと感じた。

 だけど、対馬先生が拾って私に渡してくれた緑色の石(上の画像)これは元々瓶とかに使われていたガラスなんだって。それが海に捨てられたりして割れて、石や砂で研磨されてこのようになるらしい。表面に砂糖の付いたアメみたいだなと思った。そして、元々瓶だったガラスがこんな風になるなんて、ちょっと驚いた。

 車に戻り、更に北に進み、次のスナビキソウがたくさんある場所に行く前にちょっと寄り道をした。以前対馬先生がリュウキュウムラサキを採集したことがあるという場所だ。海のすぐ近くだが、里山っぽくていい感じの場所。

 到着した瞬間に黒いアゲハが飛んできた。カラスアゲハかも!と網を取出し採集を試みたが最初の一振りを外して逃げられてしまった。もしカラスアゲハだったら道内最早記録だったので残念だった。

 ちょうど桜が散っていて、小さな橋に花びらがびっしり。片山さんは足を滑らせていた。

桜の花びらがびっしり!

 お寺か神社みたいのがあって、ツツジがいっぱい咲いていた。この花に黒いアゲハが来るんじゃないかと思い見てみたが、残念ながらいなかった。

お寺か神社

 更にそこからしばらく北上し、スナビキソウがたくさん生えている砂浜に来た。たしかにこれまで見てきた砂浜に比べて圧倒的にスナビキソウが多いと感じたが咲いている感じは最初に行った場所の方がたくさん咲いている感じ。

 去年はここにたくさんのアサギマダラが飛来していたという事で期待した。天気も良くなってきたし。

 だけどアサギマダラの姿はなし。ちょっと残念。対馬先生と片山さんはスナビキソウを採集していた。

スナビキソウを採集する片山さん

 砂浜に生えているスナビキソウは意外と根が深いらしい。片山さんは丁寧に土を掘り、スナビキソウを採集していた。

 アサギマダラが何でスナビキソウが好きなのかと言うと、スナビキソウに含まれているPA物質と呼ばれるものが、オスのフェロモンの原料になっているからだそうだ。

 すなわち、アサギマダラのオスはスナビキソウの花の蜜を吸蜜してPA物質を体内に取り込み、それをフェロモンにしてメスを誘い出すようだ。ちなみにアサギマダラが夏によく吸蜜に来るヒヨドリバナにもPA物質が含まれているらしい。

 スナビキソウを採集する片山さん。実は化学の専門家らしく、採集したスナビキソウや、近くにあるスナビキソウの枯れたものからPA物質を抽出しようと思っているようだ。複雑な物質で人工的に作り出すのは難しいそうだが、PA物質を抽出できれば、例えばそれを何かに染み込ませてアサギマダラをおびき寄せることが出来るかもしれない。

 そもそも、広い海を越えて旅をしてくるアサギマダラがたくさんスナビキソウに集まるというのだから、このスナビキソウが持つPA物質と言うものは相当アサギマダラにとって魅力的なのだろう。それを抽出して、例えば濃縮して布などに染み込ませて置いておけば、私たちに例えたら屋外で誰かが焼肉をしているときのような美味しそうな匂いとか、焼き鳥屋さんの前を通った時のような、店に入りたくなるような魅力的な匂いとか、そんな感じでアサギマダラが集まるかもしれない。それが出来たら凄いだろうなと思った。

砂を掘りスナビキソウを採集する片山さん


掘り出されたスナビキソウ

 もうこの場所にとどまってもアサギマダラが採集される期待は薄いと判断し、ちょっと山側の林道に行くことにした。この林道では去年の5月終わりに50頭位のアサギマダラが目撃されたという。今日ももしかしたらアサギマダラが花の蜜を吸っているのではないかと期待したが、アサギマダラの姿は見ることが出来なかった。そのかわり、一般的な蝶はけっこうたくさん飛んでいた。

 特に多かったのはルリシジミ。その他、スジグロシロチョウ、サカハチ、ヤマキマダラヒカゲが多く、コミスジやトラフシジミも見られた。

トラフシジミ

 エゾハルゼミが鳴く時期に入っており、実際に飛んでいるものを捕まえてもらい撮影した。

エゾハルゼミ

 このエゾハルゼミ、目の間に3つの赤っぽい物がある。デジカメで撮影して拡大してみると、宝石のように綺麗なものだった。

綺麗な宝石?

 この3つの綺麗な色のものは単眼と言って、光の明暗を感じ取るものらしい。飛んでいるときなどの明暗の変化を感じ取り、真ん中の単眼は自分の縦方向の揺れ、残りの2つは横方向の揺れを光の強さで感じ取るようだ。(インターネットで調べてみた)

 蝶とかは採集して標本にすると目の色が変わってしまうんだけど、このセミの綺麗な宝石のような色も死んでしまうと変わってしまうのかな??

 林道をしばらく歩いた。途中から自分は対馬先生と片山さんの後ろを歩いた。

対馬先生と片山さん

 ヤマキマダラヒカゲがけっこう飛んでいた。せっかく止まっても近づくときの足音などですぐに飛んでしまいなかなか撮影できなかったが、どうにか一頭だけ撮影させてもらうことが出来た。サトキマダラヒカゲとの区別が難しいが、判別ポイントはいくつかある。自分はそのうち後ろの翅の裏面の根元部分にある3つの丸い模様の配列での区別をしている。

 サトキマダラヒカゲはこの丸い部分が直線に近い感じで並ぶ。ヤマキマダラヒカゲは3つの丸い部分が一直線上とは言えない感じで、バラバラになっている。下の画像のキマダラヒカゲは3つの丸い部分の配列がバラバラになっているのでヤマキマダラヒカゲと判断できると思う。

 いつもなら「どっちでもいいや」と、いちいち区別していなかった似ている蝶だけど、今年はちょっと区別を注意して観察してみようと思っている。

ヤマキマダラヒカゲ

 この林道にはあまり見たことが無いちょっと派手目な花が咲いており、クマバチ?が一心不乱に花に顔を突っ込んで花粉を集めていた。

花粉を集めるクマバチ?

 このハチをマクロで撮影するためにかなりカメラを近づけたが、全然気づかない。何枚か撮影した後にハチが気付いて一目散に逃げて行った。

 林道を途中で折り返して戻り、上ノ国から木古内へ抜けて、最後に北斗の水無の林道にちょっと立ち寄った。エゾヒメシロチョウが1頭だけ飛んでいたが、そろそろ時期も終わりかけになっており、少しすれた個体だった。

 今日は最大の目的であったアサギマダラの発見は出来なかった。対馬先生が言うには「いなかったという事がわかったというだけでも研究成果である」という事だが、やっぱり見つけられた方が楽しいのは確かである。

 去年はかなりの数を見られたアサギマダラだが、今年はまだ見られていない。これからきっと大群でやってくるんじゃないかと期待している。