ヒメシロチョウを探しに
2014.5.10

 今日の活動には前置きがある。それは前回、生物部の部長と二人で北斗市の林道で撮影したエゾヒメシロチョウかヒメシロチョウかどっちかわからない写真である。(下の写真)

エゾヒメシロチョウかヒメシロチョウかどっちかわからない写真(2014.5.6北斗市)

 この写真をHPに掲載するうえで、どっちかわからないので、道南虫の会の掲示板に出して、「これはどっちでしょうか?」と質問した。その結果、エゾヒメシロチョウだという人もいれば、ヒメシロチョウだという人もいて、結局はっきりとどっちだという結論には至らなかった。
 自分の性格からすれば、まぁどっちでもいいか!となるのだが、この種類に関してはそうはいかない部分もあった。
 それは、もしヒメシロチョウであったなら、自分が目標としている北海道の蝶の撮影において、シロチョウ科の種類がコンプリートされるからである。

 意見が分かれたこの写真をヒメシロチョウとして紹介するのには確信が持てない状況になっていたところに、道南虫の会のKさんが、「それならヒメシロチョウが生息している場所に案内してあげる」という事になった。生物部の部長をはじめ合計3人の部員を引き連れての活動となった。

 道南虫の会のKさんはなんと、私や対馬先生、そして現在の部員達の大先輩にあたる方だ。
 Kさんが生物部の部員で、卒業と入れ替えで対馬先生が入部し、その後対馬先生が顧問になった時に私が入学して入部し、私が顧問になった時(2014年)に現在の部員がいる。歴史を感じる。

 Kさんと10時に待ち合わせをして函館市内のヒメシロチョウがいるというポイントに案内してもらった。

 ヒメシロチョウとエゾヒメシロチョウは見分けが難しく、羽の形がやや違う事、裏面の模様が若干違う事、色味がちょっと違う事で、写真だけでは判断ができない場合があるという事が今回わかったので、今日は写真撮影だけでなく、採集もしてこようと思っていた。

 この2種の大きな違いとして挙げられるのは食草だ。ヒメシロチョウの幼虫はツルフジバカマと呼ばれる草を食べ、エゾヒメシロチョウの幼虫はクサフジを主に食べるようだ。

 それで、ツルフジバカマがあればヒメシロチョウ、クサフジがあればエゾヒメシロチョウという事になるのだが、この場所では両方の蝶が見られるらしい。両方の食草があるようだ。
 
 ただし、成虫の発生時期に若干の違いがあり、ヒメシロチョウが早くて、エゾヒメシロチョウは遅いとのこと。そして今日見られるのは発生時期が早いヒメシロチョウである可能性がかなり高いという事を教えてもらっていた。

 ポイントに到着してすぐに白い蝶がチラチラ飛んでいるのが見えた。とりあえず部員たちに採集するように指示しながら、自分はKさんにヒメシロチョウの食草であるツルフジバカマがどれか教えてもらい撮影した。

ツルフジバカマ

 エゾヒメシロチョウの食草であるクサフジとよく似ていて区別がつけられなかったがKさんから特徴を教えてもらいながら撮影した。

 部員たちはヒメシロチョウを見つけたら採集しようとしていたが、私はなかなか写真が撮れない。チラチラ飛び回っていて止まらないのだ。追いかけて一瞬止まったところを撮影しようとするが、ピントを合わせているうちにまた飛んで行ってしまう。まずなんとか撮影できた写真が下の画像。もしかして産卵しているのだろうか??

産卵している?

 部員たちが採集した蝶を見ると、確かにヒメシロチョウの特徴があらわれていた。エゾヒメシロチョウとは違う感じ。でもこの画像をカメラで見たとき、またどっちかよくわからなかった。やはり写真で似ている種類を判別するのは難しい。

 Kさんは蛾の幼虫を探したり、タラの木に付いている甲虫を棒で叩いて落としながら採集していた。さすが大先輩で色々な昆虫に手を出しているようだ。

Kさんに教えてもらった珍しい蛾の幼虫
(ベニモンマダラといい、ツルフジバカマを食草としているそうだ)

 その脇ではオオイヌノフグリが綺麗に咲いていた。天気が良く気温も17度位。風が少し強いがとても楽しい。

オオイヌノフグリ


わかんない

 ヒメシロチョウは晴れているときには色んなところでチラチラ飛んでいるがとにかく止まらなくて写真が撮れない。時々太陽が雲に隠れると下草などに止まる奴もいるが、近寄ると気配を察知して飛んでしまう。Kさんも「こっちで止まっているぞー!」と教えてもらい走って撮影に行くが直前で飛ばれたりして撮影できない。これまで道東で見てきたエゾヒメシロチョウもまずこんな感じでなかなか止まらない。
 ん〜、なんとかしっかり撮影したいと思っていたのだが、ようやくそのチャンスがやってきた。

ヒメシロチョウ(ちょっとトリミング)

 上の画像、羽の形、鱗粉の模様、どちらを取ってもヒメシロチョウの特徴が出ているように感じる。間違いなくヒメシロチョウだろうと思う。
 私自身、数日前に道南虫の会掲示板に質問をしてからようやく本格的に2種の特徴について見比べたり比較したりするようになったのだが、これは種の特定に良い写真ではないだろうか。
 北海道の蝶の写真を全種撮影したいという目標を思いついたのがちょうど2000年頃だったので、14年かけてようやくシロチョウ科をすべてそろえることが出来た。とても嬉しいし記念日になった。

ヒメシロチョウが生息している環境

 お昼近くになり、Kさんは用事があるという事でここで帰ることになった。みんなでお礼を言って見送った後、我々は川釣りをしてみることになった。元々釣りをしようかと言う計画はあって、竿などを用意していたのだが、ちょうどこのヒメシロチョウのポイントに川が流れていて魚がいそうな感じがした。

 禁漁河川かもと思いちょっと気になっていたが、他にも釣りをしていた人がいたのでまぁ大丈夫かなと思って準備をして釣りを始めた。(帰宅後調べたら禁漁河川ではなかった)

釣りをする部員達

 私の竿はMさんに貸すことにした。Mさんはこれまで釣りをしたことが無いと言っていたので、なんとか1匹でも釣って欲しいなと思った。

 Mさんに釣れそうな場所を指示しながら釣りをさせたがなかなかあたりが来なかったので、私がMさんから竿を借りて餌を流してみたらいきなりあたりが来た。

 かなり大きなあたりで竿が折れそうなくらいしなった。どう考えても30cm以上はある魚影が見えた。その魚は暴れまくり、全然引き寄せられない。とうとう糸を切られてしまった。

 しかし、ここに魚がいることははっきりしたし、今の魚との死闘をMさんも見ていた。そしてMさんに竿を渡してまた釣りをさせた。すると、あたりが来た。最初は逃げられたが、何度か目のあたりでとうとうMさんが釣り上げた。イワナだ。

 初めての釣りで20cm強のイワナを釣ったんだからたいしたもんだ。Mさんも嬉しそうにしていた。

Mさんが釣り上げたイワナ

 最初、リリースしようかと思ったが、針を飲み込んでしまっていたので持って帰ることにした。これはMさんの獲物だからMさんに持って行ってもらうことにした。
 さっき私に来た巨大なあたりはこの川のイワナの主だったかもしれない。

Mさんのイワナ

 しばらくしてちょっと遠くで釣りをしていた部長が魚を持ってやってきた。Mさんが釣り上げたよりも大きな魚だと思ったらウグイだった。でも30cm以上はある大物だ。
 部長も川で魚を釣ったのは初めてだということで、たとえウグイであっても嬉しそうだった。このウグイは針を飲み込んでおらず、元気だったのでリリースした。
 あ、さっき私に来た大きなあたりもイワナの主ではなくウグイだったのかも…と思った。

ウグイを釣って嬉しそうな部長

 時間はお昼を過ぎていたが、せっかくの土曜日だし、天気も良くて気温も高い。このまま帰るのも少しもったいないなと思い、違う林道に入ってみることにした。4月にも一度来た林道だが、様子はずいぶん変わっていて、春が来たような雰囲気になっていた。エゾキケマンがたくさん咲いていた。

エゾキケマン

 林道を散策しながら面白い蝶はいないか探していた。部長はアカマダラを見たことが無いというので、アカマダラを見せてやりたかった。20年以上前、ここにはたくさんのアカマダラがいた記憶がある。卵を採ってきて飼育した記憶もある。
 スジグロシロチョウなどがたくさん飛んでいる中で、ミヤマセセリを見つけた。数年ぶりに見た。

ミヤマセセリ

 越冬のタテハ類もたくさん飛んでいた。部員はキアゲハも見たという。本格的なシーズンに入ったと思えるくらいたくさんの蝶が飛んでいた。
 撮影は出来なかったがアカマダラも見ることが出来た。網で採集して特徴などを説明した。サカハチと似ているから判別できるまで少し経験が必要かもしれないが、部長は大体わかったようで、その後数頭のアカマダラを捕獲していた。

 フキの葉っぱに大きなアマガエルがいた。太陽を浴びているような感じに見え、干からびないか心配だった。

大きなアマガエル


手前にアマガエル、奥に部員達

 今日参加した1年生のI君は蝶を見つけると一目散にダッシュして、まるで網を日本刀に持ち替えたかのように凄い勢いでブンブン振る。もうちょっと落ち着いて網を振れと言ったが、宮本武蔵ばりに片手で網をブンブン振っていた。
 蝶を追いかけダッシュして、そのまま崖を登って行ったり。
 同じ1年生のMさんは、とても落ち着いていて蝶を採集するときも網をフワッと振って採集していた。そしてI君に「そんなにバタバタ音を立てて走って行ったら蝶だって逃げちゃうでしょ!」と言っていた。

蝶を追いかけて走り、そのままの勢いで崖をよじ登って行ったI君
手前にMさん、右の白い服が部長

 この林道ではエゾ?スジグロシロチョウ、ルリシジミ、スギタニルリシジミ、アカマダラ、サカハチ、アカタテハ、シータテハ、クジャクチョウ、ルリタテハ、ミヤマセセリが見られたが、イカリモンガもたくさん飛んでいた。

ルリタテハ

 ルリタテハは北海道では珍しい印象があるが、今日はかなりの数を目撃した。林道の往復で延べ10頭はいた。3頭が絡み合って飛んでいる姿も見られた。部員達も採集を試みたが、誰一人の網にも入らなかった。今日はルリタテハの勝ちだ。

アカタテハ

 アカタテハも少し珍しい印象がある。今日はたくさん飛んでいた。部長によると、去年はたくさん見られたという事だった。

蝶を探して林道を歩く部員達

 ヒメシロチョウを観察した後に訪れたこの林道で思いのほか多くの蝶たちと遊ぶことが出来た。また、男子部員二人にはイラクサを触らせてみた。イラクサの痛さを知ったことによって、特に1年生のM君は今後、膝下が露出したズボンは履いてこないと思う。(膝下もだいぶイラクサにやられていた)
 3時過ぎまでこの林道で過ごし、今日は終了となった。

 Mさん、釣ったイワナを家に持ち帰り「あんた何でこんなもん持って帰ってくるの!」と家族に怒られてなきゃいいけど・・・。