北斗市の林道巡り
2014.5.6

 ゴールデンウイークも今日で最後、天候はまずまずの予報だったので生物部部長と二人で山に行くことにした。特別な目的はないが、多くの蝶を目撃したいという事と、対馬先生からスギタニルリシジミがいたら採集してほしいと頼まれていたので、一応網も持参することにした。

 部長の家に9時半に迎えに行くと、部長のお父さんがいて挨拶をした。部長とそっくりのお父さんで、一目でお父さんとわかった。

 自分は函館出身で、高校時代や大学の長期休暇には帰省して色々な所に蝶に会いに行ったが、道南の林道についてはそれほど詳しくないので、部長のお父さんにも「どこがよさそうですかね?」と尋ねて情報をもらった。部長のお父さんも山が好きで色々な林道を知っているらしい。

 渡島当別にある林道を勧められた。ただし、昨日熊が出たとのこと。一応、クマよけのホイッピーと言うキコリの人たちが持ち歩くような物凄い音が出る電子ホイッスルのようなものと、熊よけのスプレーは常備していた。これまでクマには何度か遭遇したことはあるが確率はかなり低いし、山に入ればクマがいるのは当たり前なので、それほど重大には考えないまま、勧められた渡島当別の林道に行くことにした。

 最初に入った林道では、下の方でシロチョウが少し飛んでいるのが見えたが、奥の方では蝶の姿はなし。時間が少し早かったかもしれないというのと、気温も10度位と低く、雲が出たり晴れ間が出たりという天候も影響している感じがする。

 とりあえず、行き止まりになるところまで進んで車を降り、少し歩いてみることにした。

 部長はここには以前も来たことがあるらしく、ウドが自生している場所を知っているらしい。少し探したが見つけることは出来なかった。
 網を持って歩いていたので、山菜取りの人に「何探しているの?」などと声を掛けられた。

林道の一番奥のあたりでウドを探す部長

 車を止めたところから100m位林道を歩きながら戻っていた時に、けっこうスピードのある自動車が上がってきた。それは部長のお父さんであった。

 どうしたのなかと思ったが、車から降りた部長のお父さんは、熊に関する新たな情報を得たらしく、急いで私たちを追いかけてきたようだった。

 部長のお父さんの話によると、近所の人が昨日この林道に来た時に熊を見て、その熊は爆竹を鳴らしても何をしても全く逃げる様子が無かったらしいとのこと。そういう話を自分たちが出発した直後に聞いて、人間をあまり怖がらない熊らしいから危ないと思い、心配してここまで来てくれたという事だった。

 天候もそれほど良くないし、風も強く気温も低い。蝶の期待もあまりできないので、熊の危険性があるかもしれないこの場所に長居する理由もないので、この林道は諦めることにした。

 林道を戻る途中、根元から折られていたタラの木を発見。有名な山菜のタラの芽が採れる木だが、こうやって折られてしまうと来年以降楽しむことは出来ない。いくら手が届かないからと言って、ねこそぎ折ってしまうのはいかがなものかと思った。
 

根元から折られたタラの木
 
 更に戻る途中、ブルーのシジミが飛んでいたのでスギタニルリシジミかもと思い採集してみたらただのルリシジミだった。

 天候は少し悪くなってちょっとだけ雨も落ちてきたので、違う林道に向かうことにした。

 次に向かった林道は、今まで入っていた林道のすぐ近くの林道。

 道路脇の水が流れているところを見たら、ここにもエゾサンショウウオの卵があった。しかも、産み立てのような感じの卵も見られた。親を見つけることは出来なかったが、道南ではエゾサンショウウオの卵がありそうだなと思われる水辺にはほぼ確実に卵が見られる。道東にいるころに比べると数が多いような印象だ。

エゾサンショウウオの卵(中央は産みたて?まだ膨らんでいない)

 更に、ここの場所には何故か蜂の巣が落ちていた。この水辺の上には木があるので、木から落ちてきたものなのかどうかよくわからないが、形から推測するとスズメバチの巣ではないかと思った。

落ちていた蜂の巣

 蜂の巣を観察していると、どうも繭のようなものがあり、もしかしてと思い繭の中を確認すると、予想通りスズメバチが出てきた。きっと羽化する直前に蜂の巣が水に落ちてしまい、そのまま死んでしまったんだと思う。多分去年のものなのかな?もう本当に羽化を目前に控えて死んでしまったようで、ふだんならスズメバチは怖いんだけど、ちょっとかわいそうに感じた。ただ、死んでいるとはわかっていても繭から引き出すときにはちょっと怖かった。

羽化直前に死んでしまったと思われるスズメバチ
何スズメバチかはわからない

 この林道も奥まで行ってみたが、それ以上面白そうなものは見つけられなかった。天候も雲が多く、このあとどうしようかと話し合い、ちょっと距離はあるが七重と江差を結ぶ中山峠と言う所に行ってみようという事になった。

 途中、戸切地陣屋という場所の桜が綺麗だと部長に教えてもらい、ちょっと寄り道をすることになった。五稜郭の桜に比べてもとても綺麗で、道路の両脇の桜がトンネルのように道を覆っているという事だった。しかも五稜郭みたいに人でごったがえしていないらしい。

 しかしそこに到着すると、けっこうな見物客が来ていてびっくり。出店まであるし、駐車場には交通整理の人までいる。
 とりあえず車を駐車場に止めて桜を見ることにした。


桜のトンネル。綺麗!

 ちょっと小腹がすいてきたので出店のたこ焼きを注文、すぐ出来ると言っていたのに10分くらいは待たされた。待っている間あたりを見物。

 北斗市のゆるキャラ、ずーしーほっきーの旗があった。ホッキの寿司がモチーフらしいのだが、本当に可愛くない。可愛くないというより気持ち悪い。キモ可愛いならまだしも、気持ち悪い以外の感想が出てこない。だけど、この気持ち悪さが話題を呼んで、けっこう有名だ。

 アートの世界ではこういう、他とは違った独自性が評価されるが、ずーしーほっきーもそういう観点で言えば他のゆるキャラと大きく違っているので、目立つという点では作戦成功だと思う。ただ、このずーしーほっきーを見てホッキの寿司を食べたいと思う人はいないんじゃないかと思う。

ずーしーほっきー

 たこ焼きが出来上がる間、部長が「出店と桜って何故が合うんですよね〜」なんて言うから、確かに!と思い、たこ焼き屋さんと桜を撮影。しかし、桜の奥には真っ黒い雲が迫ってきていた。

桜と出店

 ようやくたこ焼きが出来上がり、一度車に戻っておやつタイムにすることにした。しかし、車に入った瞬間から雨がポツポツ降り出した。「雨降ってきたよ」なんて言っている間もなく、凄い雨になってきた。外にいた他のお客さんたちも急いで車に戻っていたがけっこうずぶ濡れになっていた。たこ焼きが出来上がるのがもう少し遅かったら自分たちもずぶ濡れになっていたと思う。
 雨に加えて風も強くなってきた。この後、中山峠に行く予定だったが、ちょっとこれはもう無理と判断し、部長の家も近かったことから、今日はこれで終了しようという事になった。

 たこ焼きを食べ終え部長を送り届けようと思ったのだが、雲の切れ間から青空が見えた。その青空の方向には部長が知っている林道があるらしく、最後の最後、この林道にダメ元で寄ってみようという事になった。

 ところが、この林道に到着するころには天気は回復し、暖かい日差しが降り注ぐようになっていた。これは運がいい!

 林道に入ってすぐの所でシロチョウが2頭チラチラ飛んでいるのが見えた。最初、どうせエゾスジグロシロチョウか何かだと思っていたが、せっかく晴れてきて蝶が見られたので、確認してみようという事になり、部長が網で採集してみた。そしたらそれはエゾヒメシロチョウがヒメシロチョウであった。ただしどっちかわからない。
 エゾスジグロシロチョウとスジグロシロチョウとか、サトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲなどなら「どっちでもいいよ」という事になるのだが、こいつは別。

 なぜなら自分はまだヒメシロチョウの写真は撮ったことが無い。これがもしヒメシロチョウなら初撮影ということになる。どっちかわからないけどもしかしたらヒメシロチョウかもしれないと思い、網から逃がしたこの蝶を追いかけて止まったところを撮影することが出来た。何度か飛んだり止まったりを繰り返してくれたので、二人で色々撮影することが出来た。

 もしエゾヒメシロチョウであったとしても、今年初なので嬉しいことは嬉しい。

エゾヒメシロチョウかヒメシロチョウ


撮影を試みる部長

 部長はそーっと指を伸ばしてみた。そしたら手乗りになった。シロチョウ系はそれほと手乗りになりやすいとは思っていなかったので、部長の指に止まる姿を見てちょっとびっくり。慌ててカメラのレンズ交換して撮影した。

手乗りエゾ?ヒメシロチョウ

 自分は今度、広角レンズに交換して背景を入れて撮影を試みた。ちょうど部長が奥にいたので一緒に撮ってみた。部長とエゾ?ヒメシロチョウのコラボ写真が撮影できた。

部長とエゾ?ヒメシロチョウ(部長に公開許可済み)

 近くの水たまりにはオタマジャクシがウヨウヨしていた。こういう光景を見ると何故かわからないけどワクワクしてくる。以前のエゾサンショウウオの大群の時にもワクワクした。何でだろう??

オタマうようよ!!

 この林道も行き止まりの所まで行ってみた。林道を走っている最中、道の両脇がちょっと開けている所が多くてとてもいい感じの林道だと感じた。初夏になったらまた訪れたいと感じた。

 林道の行き止まりで車を降りると、さっきまで道と平行に流れていた川が枯れていることに気付いた。けっこう水量もあったんだけど何で枯れているんだ?と思い調べてみることにした。すると、30mほど下流では水が流れていた。ちょっと詳しく調べようという事になり、川に降りてみることにした。
 

成長したギョウジャニンニク

 下の写真は川が枯れている様子。元々は水が流れていたような感じがする。

枯れている川。

 水が流れている所から上流に向いて写真を撮ってみた。画面の中央から上流側では水が流れていない。いきなり川が始まっている感じ。

いきなり始まる川

 よく観察してみると、川が始まっているあたりの両脇から水がどんどん湧き出していた。写真には部長が写っているが、ちょうど部長のあたりから上は川が枯れている。

水が湧き出している所

 川が始まっている所の水にはアメンボが数匹いたが、それ以外の生き物は確認できなかった。水が湧き出している場所は何か所もあり、ひとつの湧水の水量は少なくても、たくさん湧いていればそれなりの水量になる。

川の最上流部のアメンボ

 なかなか面白い現象だなと思い、近くを少しウロウロして楽しんだ。春の花がたくさん咲いていて綺麗だったが、今日はニリンソウが一番多かったような気がする。

 この辺りでは白い蝶が多く飛んでいたが、多分飛び方からしてスジグロシロチョウかエゾスジグロシロチョウだと思い、撮影したり網で捕まえたりはしなかった。

 部長が青いシジミチョウを発見して、もしかしてスギタニルリシジミかなと思ったが、ただのルリシジミのオスだった。でも羽化したての感じでとても綺麗だったので撮影した。

ルリシジミのオス

 戸切地陣屋の桜を見たところで雨に降られ、今日はこれでおしまいかと思いながら最後の最後で楽しい時間を過ごすことが出来た。アマカダラの春型やキアゲハ、ミヤマカラスアゲハも見たかったが今日は見ることが出来なかった。またスギタニルリシジミも見ることが出来なかった。それでも最後のオマケと思って入った林道で思いのほか楽しむことが出来て嬉しかった。

 林道を戻るとき、部長が倒れた桜の木から花が咲いているのを見つけたので撮影することにした。

桜の木が根元から折れている


ちょっと引いて撮影。思いっきり倒れているのがわかる。


しかし、枝からは花が咲いている


とても力強く、イキイキと咲いている桜の花

 これだけボッキリ折れていては、多分来年花を咲かすことはないのではないかと感じた。今、花が咲いているだけでも凄いと思った。植物の生命力は強いんだなと。部長が「桜の木は枯れる直前に一番花を咲かせるらしいですよ」と言っていたのがとても印象的だった。

 帰宅後、お風呂に入るとき、左腕のひじ近くをダニにやられていた。今年初のダニだ。抜き取った後、火あぶりに処された。