道南の春を探して
2014.4.13

 今日は生物部部長のY君と二人、山に行く約束をしていた。私もY君も北斗市に住んでおり、それほど家が遠くないので、私がY君の住んでいる場所を確認しておくという意味もあり、迎えに行った。

 今日はこれと言った目標は考えていなかったが、自分は今年、まだ蝶を見ていないので、「初蝶」を心の中で目標にしていた。「初蝶」と言っても、この春羽化したものもいるかもしれないし、越冬明けのタテハ類もいるかもしれない。心の中では出来れば今春羽化したシロチョウが見たいなと思っていた。

 Y君の自宅近く、3月にクジャクチョウの越冬個体を見たという場所に案内してもらった。天気はいいがちょっと風が強く気温も10度以下位。残念ながらここで「初蝶」を見ることはできなかった。

キクサギイチゲ

 春の花の代表格のひとつ、キクサギイチゲが咲いていた。とても綺麗。春に咲く花はあまり派手ではない感じが多く個人的に好きだ。

 蝶を探しながらウロウロしていたとき、Y君が「トンボがいる」と教えてくれた。こんな春先にトンボがいるのかと思ったら、越冬するトンボなんだとY君に教えられた。さすが生物部部長!いろいろ知ってるね!!(自分も部長だったけどあまり知らない・・・)

オツネントンボ

 この時は種名はわからなかったが、月曜日に図鑑で調べて「オツネントンボ」であることがわかった。色自体はかなり地味なんだけど、越年トンボということで、年を越すトンボ。特に珍しくもない普通種だそうだが、成虫で越冬するトンボがいるという事を知っただけでも収穫だった。

 この場所ではこれ以上あまり見られるものもなさそうだったので、近くの林道に行ってみることにした。林道に入って少し行ったところでとりあえず車を降りてみることにした。するとすぐに蝶が飛んでいるのを確認した。越冬のタテハだという事はわかったが、飛んで行ってしまった。これが自分の今年の「初蝶」である。なんだかよくわからないまま逃げられてしまったが、きっとまた出てくるだろうと思い、Y君と林道をちょっと歩いてみることにした。しかし、ちょっと歩いても蝶が出てこないので、車に戻って林道の奥に行ってみようという事になり、引き返して車の方向に歩き出した。先ほど蝶を見た場所に近づき「もしかしたらさっきの蝶、戻ってるかもね」と言うとY君も「その可能性は十分にあると思います」と答えていた。タテハ蝶の中には一度飛んでどっかに行ってもまた同じ場所に戻ってくる習性がある。きっとY君はそういうことも知っていて「可能性は高い」と答えたのかな?と感じた。もしそうならやっぱり結構詳しいんだなと感心した。

 そして狙い通り、蝶は元の場所に戻ってきていた。フキノトウで吸蜜していた。シータテハだった。Y君は自身が購入した一眼レフのマクロレンズで撮影していた。自分も今年初めてのシータテハを撮影した。

撮影するY君。脇にはまだ残雪

今年初の蝶、シータテハ(越冬)

 このシータテハ、けっこう飛び回るんだけど、必ずフキノトウに着地して吸蜜するので、たくさん写真が撮れた。満足したので林道の奥に進んでみることにした。

 道は結構険しくて「ダメかも」と思いながらもなんとか進んでいたが、蝶が飛んでいる姿が見えたので車を止めて降りてみた。飛んでいた蝶はまたもやシータテハだった。しかし、道路脇に流れる水の所にエゾサンショウウオの卵を発見した。Y君を呼び、「サンショウウオの卵があったぞ」と教えた。自分は毎年カエルやエゾサンショウウオの卵を見ないと春が来たという気がしないので、エゾサンショウウオの卵を見れたのは嬉しかった。

 Y君に「きっと下に親がいるぞ」と言い、卵をゆっくりとずらしてみると、思った通り卵の下に親が隠れていた。Y君はエゾサンショウウオの親を見るのは初めてだったらしく、ここは生物部顧問としてエゾサンショウウオの親を見せてあげられて嬉しかった。

エゾサンショウウオの親と卵

 二人でエゾサンショウウオの写真を撮っていると、Y君が「お、珍しい虫」と言った。何かと思ったら、何かわからないけど甲虫が歩いていた。「ツチハンミョウです」と教えてもらった。

ツチハンミョウ

 お腹の部分がやたらでかいアリのように見えたが、ちょっと青みがかっていて色は綺麗だった。毒があるとか言ってたかな?

 車に戻り、先に進もうとしたが、道が「これはもう無理だ」という感じになっていて引き返すことにした。しかし、まだ時間があったので、茂辺地という地域の林道に行ってみることにした。新しくできた高規格道路を通って茂辺地の林道に向かったのだが、なんと林道に入るずっと手前の普通の舗装道路で行き止まりになっていた。ここより先に進むことはできない。

 がっかりしながら戻ろうとすると、すぐ近くに池のようなものがあるのに気づき、カエルの卵でもあるかなと思い車から降りた。
 しかし、降りた瞬間目にしたのは蝶が飛んでいる姿であった。一瞬見ただけでタテハの仲間とわかったが、どうも先ほどのシータテハとは違う。とりあえずなんとか写真に撮ろうと奮闘したが、池の向こう側が崖のようになっていて、蝶はその崖の方にいるので撮影が難しい。そのうち蝶の数は2,3頭になってきた。その中にはシータテハも混ざっていそうだったが、とりあえず、シータテハじゃなさそうな蝶に焦点を当てて撮影を試みた。

 自分はすぐに諦めたが、Y君は果敢にもその崖に挑戦していた。足を滑らせて池に落ちるんじゃないかとちょっと心配だったけど、無事に崖をクリアして撮影していた。自分も300mmレンズで何とか撮影して画像を確認すると、それはエルタテハであった。

 帯広にいたころには珍しいとは思えない蝶であったが、高校時代には函館近郊ではほとんど見たことが無い種である。最近は増えてきているという話もきいた事があるので、そんなに珍しくもないのかもしれないが、シータテハ以外の蝶が見れたので嬉しかった。

崖を行く部長Y君

正体はエルタテハだった

 そんなこんなでもう行く所もなくなったので帰ることにした。一番の目標だったこの春羽化したシロチョウは見れなかったが、2種類の越冬タテハを見れたので良かった。クジャクチョウの越冬が一番多いのかな?と思っていたが、今日は見ることができなかった。