ウラクロシジミの卵探し・ビーチグラス
2015.3.21

 3月も後半に入ってきて年度末を迎えようという感じになってきているが、道南は例年よりとても暖かく雪解けも進んでいるようだ。

 3月1日に卒業した生物部のY君。4月からは社会人となり本州に行くのだが、そのための準備期間である今、けっこう暇にしているらしい。卒業後、車の免許も取り、暇だから毎日運転して北斗市の林道などに行き、春の蝶を探したりしているらしい。
 暇なんだったら携帯をいじったり、ゲームしたり、友達とカラオケに行きまくったり・・・。そういう過ごし方ではなく、林道に蝶を探しに行く。さすが生物部の部長ではあるが、歴代の部長の中でもなかなか見どころがある。

 そんなわけで、対馬先生と、「彼を道南虫の会の会員に推挙してはどうか」という話になっていた。Y君は本州に行くので道南との結びつきは無くなるが、虫の会の会員条件は「道南に住んでいる、もしくはゆかりがある」という事なので問題は無い。

 数日前、たまたま学校に来たY君に道南虫の会の会員にならないかと話をし、彼も「是非」という事だったので、これからは部長のY君ではなく、道南虫の会会員の「山下君」として、この活動記録に登場してもらう事になった。

 対馬先生の先輩にもなるKさん、対馬先生、自分、S君の4人が道南虫の会会員で函館工業高校生物部OBである。ここに山下君が加わる。5人。これまでの生物部の歴史は60年以上だと思う(正確にはわからない)が、卒業しても虫のことに関わった趣味を続けていってもらえるのはとても嬉しい。

 というわけで、今日は山下君と対馬先生と安井さんと自分で、北海道ではかなり珍しいウラクロシジミの卵探しに行くことになった。ただ、対馬先生は用事があるため、出発は10時半過ぎ。朝の時間がもったいないので山下君を誘い、まずはビーチグラス探しに行くことにした。

 8時に山下君の所に迎えに行き、北斗市の海岸へ。前回もビーチグラスを探しに来た海岸だが、今日は二人で探すのでたくさん見つかるかと期待した。
 今朝は0度位まで冷え込んだが、やはり季節は春なのか、8時少し過ぎた位でそんなに寒いとは思わなかった。

海岸のカモメ

 二人でテクテク歩きながらビーチグラス探し。「いかにも「私は元、瓶でした」みたいなやつはダメだ」とか、「角が取れて丸まっており、熟成が進んだものがいい」とか言いながら二人でビーチグラスを探した。

ビーチグラスを探す山下君

 最初はあんまり見つからなかったが、少し歩いて違う場所になるとビーチグラスがごろごろ落ちている。割れて間もないものも多く、この辺に海水浴に来た人か、遊びに来た人が瓶をポイ捨てしている証拠だ。たくさんあって嬉しい反面、マナーが悪い人も多いという事だろう。

ビーチグラス。元は何の瓶だったのかな?

 天気も良く、函館山も綺麗に見える。

函館山

 浜辺にはビーチグラスだけではなく、貝殻とかいろんなものが落ちている。その中で花びらのような模様がついて綺麗なものがいくつか落ちていた。「なんだこれ?」

花びら模様の変なもの

 ちょっと名前を忘れてしまったがウニの体の一部だと山下君が教えてくれた。

 けっこう綺麗なので、たくさん集めたらインターネットオークションで売れないかな?と思った。実際、形や大きさの良いものは商品価値があるらしい。

 更にビーチグラスを探しながら歩いていると、何かコンクリートでできた変なものがあった。何個かあって、これも何か不思議。かなり古いようで、波に浸食されたのかボロボロになっている。もしかして、江戸時代の北前船なんかが停泊するときの桟橋のようなものなのだろうか?
 もしかして、そういう古い時代の何かが落ちていて、お宝を拾うことが出来ないかと期待したが冷静な山下君に「そんなものないですよ」と言われ、がっかりした。

古いコンクリートの桟橋?

 やはり二人で歩くと拾えるビーチグラスも多く、たくさん拾うことが出来た。そうこうしているうちにある程度時間がたったので、北斗市の林道に今年初の蝶を探しに行くことにした。

 山下君はもう何度か越冬のタテハ類を見つけて写真に撮っているらしいが、自分はまだ今年、蝶を見ていないので、撮影できなくても「初蝶」を見たかったのだ。

 去年何度も足を運んだ林道に行った。ちょっとした水たまりがあって、カエルの卵を発見!と思ったら近くに何匹もの親の姿も見られた。もう冬眠からあけて卵を産んだんだね。
 昨日同じ場所では卵は無かったと山下君は言うので、昨日から今日の間に産まれた卵なのだろう。

 親と卵の写真を撮り、本当に春が来たんだなと実感。嬉しくなってきた。

カエルの卵と親

 結局あまり時間も無くて、そんなに林道を歩くことは出来なかったが、越冬明けのクジャクチョウを1頭確認することが出来た。初蝶だ。
 飛んでいたので写真には撮れなかったが、満足し、対馬先生宅に迎えに行った。

 対馬先生、安井さんと迎えに行き、今日は南茅部方面にウラクロシジミの卵を探しに行くことになっていた。

 大学時代には成虫を見たことがあるが、北海道での生息地である道南地方では見たことが無い。マンサクと言う春の花がウラクロシジミの食樹なのだが、その卵が本当に見つかるのかちょっと疑っていた。なにせまだ北海道では見たことが無いから。

 対馬先生が「ひとつでも見つかると思うか?」と聞くので、「見つからないと思う」と答えた。

 南茅部のマンサクがあるというポイントに到着。

ポイントに到着したところ

 対馬先生が「長靴は?」というような事を言った。

 「え?持って来てないよ」と言うと、「え〜っ!」と。
 なんで長靴持ってこないのよ!と言うような事を言われたが、そんなの聞いてない。
 どうやら、そのマンサクを探しに行くには川を渡らなきゃならないらしい。
 
 そうならそうと早く言ってよ!と思ったけど、対馬先生からしたら「長靴を持ってくるのは当たり前」と思っていたようで、意志の疎通が出来ていなかったようである。当然山下君も長靴は持って来ていない。

 困ったなぁ〜と思ったけど、とりあえず一緒に行ってみることにした。ちょっと沢に下って川にたどりついた。ここを渡らなきゃだめらしい。

 山下君は対馬先生がおんぶして川を渡った。こんな足元の悪いところをおんぶして渡る対馬先生は凄いと思ったが、さすがに自分をおんぶしてもらうわけにはいかない。そんな事をしたら二人とも川の中で転んで水浸しになるのはわかりきっている。

 なので、川幅の狭いところを見つけてジャンプしてみることにした。

 本気のジャンプなんてもう何年していないだろう?距離が短ければ川に落ちる。でも本気でジャンプしたら肉離れを起こすのではないかとちょっと怖い。

 足元を見て、着地地点を定める。自分がどの位飛べるのかすらわからないけど、なんとかなりそうなギリギリの気がする。まぁ、失敗しても足がぬれるだけだからいいかと思い、さっき見つけたカエルを思い出しながら飛ぶことにした。

 カメラ等は安井さんに預け、勢いよくジャンプした。

じゃーんぷ!

びょーん


 なんとかギリギリで着地に成功した。

 川を渡り、川沿いに歩いてマンサクを探す。マンサクはどうやら川沿いに多いらしい。なので長靴も必須アイテムなのだ。自分や山下君はマンサクが川沿いにあることも知らないから。

 川沿いを歩いていると、あれ?これって・・・。

 みつけたのはなんとギョウジャニンニク。

ギョウジャニンニク

 しかも食べごろ。

 採って行きたいなぁ〜と思ったけど、とりあえずマンサク探しが先。

 しかし、この先は普通の靴ではちょっと難しいという所にさしかかってしまった。
 なので、この先は対馬先生と安井さんがマンサク探しをし、私と山下君はギョウジャニンニクの採集をすることにした。対馬先生がカッターを持っていたので、それを借りて山下君がギョウジャニンニクを切り取って採集した。

 それにしてもまだ3月20日位である。こんな時期にギョウジャニンニクが採れるなんて、やっぱり今年の春は早いようである。

 ギョウジャニンニクを取っていると、元来た方向から対馬先生の声が。マンサクを見つけ、ぐるっと回って自分たちを呼びに戻ってきてくれたようである。

 マンサクがある場所まではまた川を渡る必要があるが、一度元来た道を戻って違うルートで行った方がいいらしい。

 と、いうわけで、また川をジャンプしなければならない。


足元を確認してー!


じゃーんぷ!


着地!!

 またギリギリでジャンプに成功!元来た沢を登り、違うルートでマンサクが咲いている場所に向かった。

 マンサクの木は黄色い綺麗な花をつけて咲いていた。初めて見たと思う。この木に北海道では道南にしか生息していないウラクロシジミの卵があるかもしれないのだ。

マンサクの花

 みんなで木の芽というか、咲いている花の近くを見ながらウラクロシジミの卵を探す。自分はあまり探さずに、探している人たちを観察しながら撮影していた。

マンサクの木を見つめる安井さん

 付近を観察すると、マンサクがあるのはここだけ。他にマンサクの花が咲いているような場所は見つからない。ここにあるマンサクは2本だったが、2本しか無いんならウラクロシジミの卵を探すのは難しいんじゃないかなと思った。たった2本の木で何年間も生息し続けることが出来るのだろうか?という疑問があったからである。

 この木からは数年前にウラクロシジミの卵を採集したことがあると言っていたので、期待もできるが果たして見つかるだろうか?

卵を探す3人

 すると遂に「あった!」

 対馬先生が卵発見。

 えーすごい!見せて見せて!と、卵が付いた枝をもらい撮影した。

ウラクロシジミの卵


拡大したところ

 更に山下君も

 「これですか?」と卵らしきものを発見。対馬先生が確認し、「山下君も卵発見!」と言った

 

山下君が見つけた卵。あれ?穴あいてない??

 卵二つ発見。更にみんな探す気になっていたが、自分はここで育った成虫の写真が撮りたかったので、あまり卵を持って行かれると困る。なので、

 「もうそれくらいでいいんでない?」と言った。

 安井さんは1つも見つけられていなかったが、山下君の見つけた卵を飼育すればいいんだから。それに、たった2本しか無いマンサクの木で細々と生息していたウラクロシジミの卵をあんまり採集したらもう見られなくなってしまうかもしれないし。

 そういうわけで、これ以上卵を探すのはやめることになった。やっぱり根こそぎ採れるだけ採るのではなく、生息地や環境のことも考え、将来にわたって楽しめるようにするためにも、ここで探すのをやめて正解だと思う。夏になったら成虫の撮影が出来るチャンスも増えるし。

 というわけで車に戻ることにした。途中、自然に咲いている福寿草のちょっとした群落があった。

福寿草

 南茅部地区は海岸沿いに昆布漁をしている所が多い。そして沿道ではたくさんの場所で昆布が干されていた。

昆布を干しているところ

 函館市南茅部地区は高級昆布が有名で、白口浜と呼ばれている。昆布を切った断面が白っぽいところから付いた名前らしい。
 この地区は何千年前の縄文時代の遺跡もたくさんあるし、北海道唯一の国宝である中空土偶も見つかっているし、大謀網と言って、定置網の原型のようなもので漁がおこなわれていたという歴史もある。それこそ竪穴式住居跡もあったりして、道南の歴史を語る上では外せない場所なのである。

 南茅部地区から恵山を回り、戸井方面に来た。ここでギョウジャニンニクを探して採って行く事にしただが、ここのギョウジャニンニクはまだちょっと時期が早く、葉っぱが出ていなかった。残念。あと1週間かもうちょっと時期が早かったようだ。そのかわりにいたのがこいつ。

ダニ

 ダニって春の終わりとか、初夏とか、そういう時期のものだと思っていたが、まさが3月にダニがいるなんて知らなかったよ。山下君に2つ付いていたらしい。
 今年の初ダニを撮影したが、このあとダニはきっと山下君に殺されたものと推察される。

 ここで安井さんは先ほど山下君が採集したウラクロシジミの卵をもらっていた。山下君は4月から本州で就職のため、飼育は出来ないだろうから。
 ところが、安井さん、山下君から卵をもらっただけでは満足できなかった。
 対馬先生が採集した貴重な1つの卵まで狙っていたらしく、「あれ?もうひとつの卵は??」と言い出した。

 対馬先生は「えー!?これは俺が飼育するよ!」と言っていてなんか面白かった。この際だからあげればよかったのに。

 お前のものは俺の物。俺の物は俺の物。安井さんには気を付けなければならないかもしれない・・・。

 そういう安井さんだが、以前、私にアサギマダラの成虫をプレゼントしてくれたこともあるし気前のいい所もある。

 長い冬が明け、ようやく春がやってきたなと思える1日だった。初蝶も見れたし、北海道ではなかなか珍しく、まだ成虫を見たことが無いウラクロシジミの卵を見ることが出来た。ギョウジャニンニクも葉っぱを出していたし、おまけにダニまで・・・。

 これからは春に羽化する蝶がぞくぞくと出てくるなと思うと、とてもワクワクした気持ちになった。

 4月になり、新年度になったら、部活動にも新入生が加入してくれるだろうか。

今日拾ったビーチグラス