技のある風景
     車いす電動ユニット

   摩擦屋の意地キラリ

      (ミクニ・マキノ工業)

 重くて動かしにくいーー電動の車いすの、そんなイメージを吹き飛ばす、車いすに後付けする電動ユニットが開発されている。
 99年に車いすに後付けできる電動化装置の開発を取引先から頼まれたのがはじまりである。
従来品は左右の車輪をつなぐ車軸を歯車で回すのが一般的。しかし、細い車軸で大きな車輪をまわすには、大きな力が必要であり、装置が大きくなる。
同社はタイヤの側面をローラーで挟み込み、ローラーの回転で車輪を動かすことを考えた。この方式ではタイヤの側面が摩擦で減りやすいと言われていた。タイヤが減るのはローラーが上滑りするからであり、同社はローラーの形に工夫し、発表し業界を驚かせた。
しかし、車いすに使われ出したパンクしないタイヤとローラーゴムとの相性が悪く、、上滑りを無くすことができなかった。
この窮地を救ったのが、摩擦を専門にする東北大学堀切教授が開発した、米ぬかを使った粉状セラミック。ゴムに配合すると粉がスパイク効果を発揮し、上り坂でも駆動力が落ちない、雨の日も、粉が水を吸収し、滑りにくくなったという。
03年から本格出荷、バッテリーも含め重さは7・5キロ。従来品より10キロほど軽いうえ、車軸に取り付けない分折り畳みやすい。「ほとんどのメーカの車いすに取り付けられる」と同社の技術者は言う。
 電動装置の国内出荷数は95年度は30台だったのが03年度に4000台を突破。同社は今夏まで1000台を売り上げた。


       2004.12.11朝日新聞夕刊記事から引用