第2節 連用形 【目次】 【前文書】 【次文書】 【HOME】
2003/02/06 更新
連用形に属する品詞は、動詞連用・命令連用・清音連用・濁音連用・可能連用・進行連用・形容連用・連濁動連・動詞接頭の9種類である。このうち動詞連用と形容連用が、一般文法の動詞連用形と形容詞連用形にほぼ該当する。残りの7種類は、新たに定義したり拡張定義したものである。
1 動詞連用
2003/02/06 更新
一般文法でいうところの動詞連用形のうち、音便形を除いたものが本システムの動詞連用である。五段系動詞にはイ段の活用語尾が付いて動詞連用が形成される。
カ五動詞+き=動詞連用 書きまする
ガ五動詞+ぎ=動詞連用 稼ぎたい
サ五動詞+し=動詞連用 探しながら
タ五動詞+ち=動詞連用 立ちはだかる
ナ五動詞+に=動詞連用 死にそうな病人
バ五動詞+び=動詞連用 運びなさい
マ五動詞+み=動詞連用 勉学に励みし頃
ラ五動詞+り=動詞連用 何を取りゃあいいのだ
尊敬動詞+り=動詞連用 下さりました
ワ五動詞+い,ひ,ゐ=動詞連用 笑い上戸
上下動詞は、語尾なしに動詞連用に転換する。
440-50 上下動詞=動詞連用 落ちました
サ変動詞・ザ変動詞には「し」「じ」が付いて動詞連用になる。
サ変動詞+し=動詞連用 転換します 滅します 窮しました
ザ変動詞+じ=動詞連用 転じなさい
その他、自発の助動詞の活用形などがある。
使役未然+え=動詞連用 言はえたり
受身未然+らえ=動詞連用 掛けらえたり
動詞接頭+来《き》=動詞連用 帰り来ます
動詞連用は、「〜すること」の意味で名詞的に使われる。動詞連用には一般接頭や一般接尾などは付きにくいものと考え、基本格節扱いとするが、丁寧接頭の付いた動詞の連用形はサ変名節と捉え、「する」「させる」などとの間をマス空けしない。
※実は、動詞連用は動詞接頭経由で一般名節に転換するが、結合度は低い。
620-10 動詞連用=基本格節/サ変名節 変な感じした → ヘンナ□カンジ□シタ
お願いします → オネガイシマス
レアケースながら、動詞連用にも一般接尾などが付くので、次の結合規則を設ける。ただし、結合度は低く設定した。
620-20 動詞連用+??接尾=??名節 支払い金《しはらいきん》
「吊り金具」「掛け饂飩《うどん》」などの例では、動詞連用は接頭語的に機能するが、これらについては、動詞接頭の項で説明する(動詞連用は動詞接頭に転換するので(620-40)、複合動詞形成機能など、動詞接頭の接頭語的機能はすべて保有する)。また、「給料取り」「名前負け」などの例では、動詞連用は接尾語的に機能する(180-10)。さらに、動詞連用はナ五動詞・音便仮定に転換する。ナ五動詞に転換するのは、完了の助動詞「ぬ」を付けることに該当する。
620-40 動詞連用=動詞接頭 吊り金具
620-30 動詞連用=ナ五動詞 匂いぬるかな
620-50 動詞連用=音便仮定 何を取りゃあいいのだ
動詞連用は造語機能に富んでおり、品詞変換語を伴って以下のような多様な品詞に転換する。
動詞連用+し=基本格節 勉学に励みし頃
動詞連用+がてら,がてり=ガテ格節
帰りがてらに立ち寄る
※「がてら」「がてり」は名詞にも付くが、その場合は「散歩がてら」のようにサ変名節に付く。
動詞連用+ぎり,っきり,っ限《きり》,っ切《き》り=キリ格節 付きっ切りの看病
※促音の付かない「思い切り」などは複合動詞と考える。
動詞連用+そ,さう,そう=ソウ格節 降り出しそうな天気
動詞連用+つつ=ツツ格節 雪が降りつつある
動詞連用+やう《よー》,よう《よー》,様《よー》=ヨウ格節 やりようがない
※「よう」などは終止形にも付くが、その場合は、「滑るように」「悲しいような」など、状態・様子を表すソウ格節になる。動詞連用に付く場合は、方法・手段を表すヨウ格節となる。
動詞連用+たり,なり,也《なり》=一般終節 上手《うま》い泳ぎなり
動詞連用+て=ハモ終節 並びて進む
※現代文では、「歩いて行く」「並んで進む」のように、多く清音連用・濁音連用に「て」「で」が付く。
動詞連用+てしがな,やがら=連用文節
飛びやがら
動詞連用+け=ラ五動詞 夜も明けにけり ※回想の助動詞
動詞連用+やが=ラ五動詞 やりやがったな
動詞連用+っしゃ=尊敬動詞 書きっしゃい
動詞連用+ま=マス動詞 働きますとも ※丁寧の助動詞
動詞連用+た,度《た》=タ活形容
眠りたい
動詞連用+て,ね=形容音便
眠りてえなあ 寿司食いねえ
動詞連用+とう=形容連用 眠りとうござる
動詞連用+き=動詞終止 夕べ雪降りき ※回想の助動詞
動詞連用+けむ,けん=動詞終止
花咲きけむこそ ※回想の助動詞
動詞連用+し=動詞終止 夕べ降りし雪 ※回想の助動詞
動詞連用+つ=動詞終止 追いつ追われつ ※存続の助動詞
動詞連用+けらし=形容終止 春来にけらし ※「けるらし」の短縮
動詞連用+けめ=動詞仮定 花咲きけめど ※回想の助動詞
動詞連用+しか=動詞仮定 夕べ雪降りしかば ※回想の助動詞
動詞連用+な=強制命令 早くしなさい

命令連用とは、尊敬動詞に活用語尾「い」が付いたものである。
尊敬動詞+い=命令連用 下さい いらっしゃい
尊敬動詞はラ五動詞の一種であるから、本来の連用形活用語尾は「り」である(「下さります」など)。一般文法では、「り」の促音便「っ」(「下さった」など)のほかにイ音便として、この「い」があるとされる。しかし意味合いとしては、連用形というよりは丁寧な命令というべきなので、本システムでは命令連用と名づけた。以下に述べるように、活用はシンプルである。
命令連用は、一般終節に転換するほか、品詞変換語を伴って乍ラ格節とマス動詞を形成する、実際の用例はマス動詞が大部分である。
622-10 命令連用=一般終節 下さいね
命令連用+ながら,乍《ながら》,乍《なが》ら=乍ラ格節 下さいながらも
命令連用+ま=マス動詞 下さいませ ございました
清音連用と濁音連用は対をなすので、まとめて説明する。一般文法の言葉で言えば、清音連用は「カ行五段活用動詞のイ音便連用形」「タ行五段活用動詞の促音便連用形」などとなるが、本システムでは音便連用形以外まで拡張して、次の12種類を清音連用と定義する。なお、このほかに「行《い》っ」「来《き》」「し」などが清音連用として辞書に登録されている。
カ五動詞+い=清音連用 書いた ※カ行五段活用動詞のイ音便連用形
サ五動詞+し=清音連用 探しちゃいます
タ五動詞+っ=清音連用 立った ※タ行五段活用動詞の促音便連用形
ラ五動詞+っ=清音連用 取ってる ※ラ行五段活用動詞の促音便連用形
尊敬動詞+っ=清音連用 下さった
ワ五動詞+っ,う,ふ=清音連用 笑っちまう 笑ふた《わろーた》
440-60 上下動詞=清音連用 見てました
サ変動詞+し=清音連用 愛してね
ザ変動詞+じ=清音連用 信じてる
使役未然+し=清音連用 書かした
進行連用+っ=清音連用 飛んでった ※「飛んで行った」の短縮
動詞接頭+来《き》=清音連用 帰り来た
同様に、次の4種類を濁音連用と定義する。
ガ五動詞+い=濁音連用 稼いだ ※ガ行五段活用動詞のイ音便連用形
ナ五動詞+ん=濁音連用 死んじゃう ※ナ行変格活用動詞の撥音便連用形
バ五動詞+ん=濁音連用 叫んでる ※バ行五段活用動詞の撥音便連用形
マ五動詞+ん=濁音連用 読んどくれ ※マ行五段活用動詞の撥音便連用形
清音連用と濁音連用の活用語尾は7種類づつ対をなす。
清音連用+ちょ,と=カ五動詞
書いとく ※「書いておく」の短縮
濁音連用+ど=カ五動詞 積んどく ※「積んでおく」の短縮
清音連用+ちょ,と=ラ五動詞
書いとる ※「書いておる」の短縮
濁音連用+ど=ラ五動詞 読んどる ※「読んでおる」の短縮
清音連用+ちま,ちゃ=ワ五動詞
笑っちまう ※「笑ってしまう」の短縮
濁音連用+じま,ぢま,じゃ,ぢゃ=ワ五動詞
死んじまう ※「死んでしまう」の短縮
清音連用+て=進行連用 見ています
濁音連用+で=進行連用 飲んでいます
清音連用+た=過去形 探した
濁音連用+だ=過去形 呼んだ
清音連用+ち=音便仮定 買っちゃいけない ※「買っては」の短縮
濁音連用+じ,ぢ=音便仮定
研いじゃいけない ※「研いでは」の短縮
清音連用+ちめ,とくれ=上下命令
書いちめえ ※「書いてしまえ」の短縮
取っとくれ ※「取っておくれ」の短縮
濁音連用+じめ,ぢめ,どくれ=上下命令 死んじめえ ※「死んでしまえ」の短縮
読んどくれ ※「読んでおくれ」の短縮
以上のように清音連用にはタ行で始まる品詞変換語が付き、濁音連用にはダ行で始まる品詞変換語が付き、それらが完全に対を作るのである(発音上、ダ行がザ行に変わる部分がある)。イ音便・促音便・撥音便と捕らえるよりも体系的に整理できる。なお、上記の7種類のうち短縮形を除けば、清音連用は「た」「て」、濁音連用は「だ」「で」が本質的な語尾である。
可能連用とは、「〜できる」という意味をもつ活用形である。一般文法では、可能連用は明確に活用形と認識されていない。仮定形の一部と考えられているようである。実際、以下に示す15種類の可能連用形成規則は、仮定形(本システムでは動詞仮定)形成規則のサブセットとなっている(カ変動詞のみ、わずかに差異がある)。しかし、可能連用の活用機能は、動詞仮定よりも清音連用に遥かに類似しているという特性がある。
※一般文法では、可能の意味をもつのは未然形に付く「れる」「られる」である。
可能連用は、五段系動詞にはエ段の活用語尾が付いて形成され、その他の動詞にも「れ」「せ」「け」などエ段の活用語尾が付いて形成される。
カ五動詞+け=可能連用 書ける
ガ五動詞+げ=可能連用 泳げない
サ五動詞+せ=可能連用 はずせない
タ五動詞+て=可能連用 勝てる
※「立てる」は可能連用ではなく、タ下動詞派生の上下動詞である。「られる」が付くなら上下動詞、付かないなら可能連用、と判別できる(今の例では「立てられる」は○、「勝てられる」は×)。ただし、サ促動詞・サ名動詞は例外。
ナ五動詞+ね=可能連用 死ねます
バ五動詞+べ=可能連用 跳べません
マ五動詞+め=可能連用 呑める
ラ五動詞+れ=可能連用 取れちゃう
尊敬動詞+れ=可能連用 下された
ワ五動詞+え,へ,ゑ=可能連用 笑えそうな話
上下動詞+れ=可能連用 見れる ※いわゆる「ラ抜き」言葉
サ促動詞+せ=可能連用 達せちゃう
サ名動詞+せ=可能連用 愛せればいい
※「サ促動詞+せ」「サ名動詞+せ」は「られる」が付くことができても、例外的に可能連用である。
進行連用+け=可能連用 持ってける ※「持って行ける」の短縮
動詞接頭+来《こ》れ=可能連用 走り来れる
可能連用は4種類の品詞に直接転換するほか、品詞変換語を伴って10種類の品詞を形成する。
628-10 可能連用=ハモ終節 泳げはしない
628-20 可能連用=ツン動詞 泳げんのですか
628-30 可能連用=ザリ未然 泳げずに溺れた
628-40 可能連用=ナイ未然 泳げない
可能連用+そ,さう,そう=ソウ格節 泳げそうもない
可能連用+っこ,ら=連用文節
泳げっこない
可能連用+ちょ,と=ラ五動詞
泳げちょる ※「泳げておる」の短縮
可能連用+ちま,ちゃ=ワ五動詞
泳げちゃいます ※「泳げてしまう」の短縮
可能連用+ま=マス動詞 泳げません
可能連用+て=進行連用 泳げても泳がない
可能連用+る=動詞終止 泳げるそうだ
可能連用+た=過去形 若い頃は泳げた
可能連用+れ=動詞仮定 泳げれば助かった
可能連用+ち,り=音便仮定
泳げりゃ助かった
5 進行連用
2003/02/06 更新
進行連用は、「清音連用+て」または「濁音連用+で」で定義される。「持っている」「飛んでいる」のように、英語の現在進行形に感じが似ているために付けられた品詞名である。「可能連用+て」も、進行連用の機能を持つ。
清音連用+て=進行連用 持っている
濁音連用+で=進行連用 飛んで下さい
可能連用+て=進行連用 うまく書けている
進行連用はデ格節に直接転換するほか、品詞変換語を伴って8種類の品詞を形成する。
630-10 進行連用=デ格節 持ってさえいれば
進行連用+くらい,ぐらい,位《ぐらい》=程度名詞 書いてぐらいくれてもいい
進行連用+から=カラ格節 終わってからにする
進行連用+そ,さう,そう=ソウ格節 やってそうな雰囲気
進行連用+くらいな,ぐらいな,位《ぐらい》な=ナ格節 飛んでぐらいな感じ
進行連用+ながら,乍《ながら》,乍《なが》ら=乍ラ格節 酔ってながら運転する
進行連用+まで,迄《まで》=マデ格節
頭を下げてまで頼む
進行連用+をや=連用文節 況《いわ》んや彼に於《お》いてをや
進行連用+退《 の》=カ下動詞 言って退《の》ける
以上とは別に、進行連用の存在価値は動詞の短縮形の表現にある。これまでの説明の中にも部分的には出てきたが、2つの動詞の短縮形がある。第1は「行く」である。
持って行く ⇒ 持ってく 飛んで行かない ⇒ 飛んでかない
のように、進行連用がカ五動詞として機能する。そこで、「進行連用=カ五動詞」という結合規則を設定すればいいかというと、それでは動詞連用で問題が生じる。例えば、上記の結合規則を使うと、
持ってきます → モッテキマス ※「持って行きます」の短縮形
となる。しかし、「持ってきます」は「持って来ます」と解釈するのが自然であり、分かち書き表記は「モッテ□キマス」とするべきである。単にマス空けの有無の問題ではなく、「行く」と「来る」で、意味が正反対になる。
以上のような不都合を避けるためには、動詞「行く」の活用を展開し、そこから動詞連用を除いて個別に対応すればよい。それが次の8規則である。
進行連用+か=五段未然 持ってかない (持って行かない)
進行連用+っ=清音連用 持ってった (持って行った)
進行連用+く=動詞終止 持ってくのです (持って行くのです)
進行連用+け=可能連用 持ってけない (持って行けない)
進行連用+け=動詞仮定 持ってけばいい (持って行けばいい)
進行連用+け=五段命令 持ってけよ (持って行けよ)
進行連用+こ=推量終節 持ってこね (持って行こね)
進行連用+こう=推量名節 持ってこうとも (持って行こうとも)
なお、動詞連用は除くが、そこから派生(620-50)する音便仮定は除く必要がないので、次の規則は設定される。
進行連用+き=音便仮定 持ってきゃいい (持って行きゃいい)
第2は、「居《い》る」である。
見ていない ⇒ 見てない 飛んでいる ⇒ 飛んでる
のように、進行連用が上下動詞として機能する。そこで、「進行連用=上下動詞」という結合規則を設定すればいいかというと、それでは上下動詞を展開する中で3ヶ所大きな問題が生じる。
1つ目は、「上下動詞+さ=サ下動詞」により展開すると「進行連用+さ=サ下動詞」となり、
見てさせる → ミテサセル
となることである。これは、「ミテ□サセル」としなければならないものである。
2つ目は、「上下動詞=動詞連用」(440-50)により展開すると「進行連用=動詞連用」となることである。これにより「見てます」や「見てなさい」が正常に処理される一方で、一部の動詞と結合して複合動詞を形成してしまうことが問題である。例えば「始める」が他の動詞の連用形に結合して「歩き始める」や「食べ始める」となるのと同様に「見て始める」が複合動詞(1文節)になってしまう。これは2文節とし、「ミテ□ハジメル」としなければならないものである。
3つ目は、「上下動詞=清音連用」(440-60)により展開すると「進行連用=清音連用」となることである。これにより「見てとる」や「塞いでとく」が1文節になってしまう。ただし、「見てた」のように、清音連用への展開が必要な部分もある。
この他にも若干の細かい問題があるが、それらも含めた不都合を避けるためには、上下動詞の展開上問題のあるところを除いて個別に対応すればよい。
(上下動詞自体の部分)
630-20 進行連用=ツン動詞 見てっかしら (見ていっかしら)
630-40 進行連用=ナイ未然 見てない (見ていない)
630-30 進行連用=ザリ未然 見てぬ (見ていぬ)
630-50 進行連用=受身未然 見てられる (見ていられる)
進行連用+る=動詞終止 見てるのだ (見ているのだ)
進行連用+れ=動詞仮定 見てれば分かる (見ていれば分かる)
進行連用+り=音便仮定 見てりゃ分かる (見ていりゃ分かる)
進行連用+ろ=上下命令 見てろい (見ていろい)
(動詞連用の展開部分)
進行連用+て=ハモ終節 見ててもよい (見ていてもよい)
進行連用+っこ,やがら=連用文節
見てやがら (見ていやがら)
進行連用+やが=ラ五動詞 見てやがれ (見ていやがれ)
進行連用+ま=マス動詞 見てません (見ていません)
進行連用+た,度《た》=タ活形容
見てたい (見ていたい)
進行連用+な=未然形容 見てない (見ていない)
進行連用+て,ね=形容音便
見ててえ (見ていてえ)
進行連用+とう,のう=形容連用 見てとうござる (見ていとうござる)
進行連用+な=強制命令 見てなさい (見ていなさい)
(清音連用の展開部分)
進行連用+た=過去形 見てたのね (見ていたのね)
進行連用+ち=音便仮定 見てちゃ嫌よ (見ていちゃ嫌よ)
(その他)
進行連用+らっしゃ=尊敬動詞 見てらっしゃい (見ていらっしゃい)
進行連用+らして=進行連用 見てらして (見ていらして)

6 形容連用
2003/02/06 更新
形容連用とは、一般文法の形容詞連用形のことで、形容詞の語幹に「く」の付いたものである。「う」「ゅう」が付いた音便形の形容連用もある。
**形容+く=形容連用 大きくなる 逞しく育つ
*活形容+う《―》,ゅう《ゅー》=形容連用
大きう《おおきゅー》なったなあ
形容詞を形成する品詞変換語についても、音便形の形容連用がある。
地名名詞+くそう《くそー》=形容連用 江戸くそうなる
一般名節+くそう《くそー》=形容連用 爺《じじ》くそうなった
ナリ名節+くそう《くそー》=形容連用 馬鹿くそう思える
五段未然+のう《のー》=形容連用 書かのうなった
ナイ未然+のう《のー》=形容連用 見えのうて困る
動詞連用+とう《とー》=形容連用 帰りとうなった
進行連用+とう《とー》,のう《のー》=形容連用 見てとうござる
動詞接頭+がとう,ずろう,づろう=形容連用
歩きづろうござる
動詞終止+ことなく《 こと なく》,間ものう《 まも のー》,べう《びょー》,可う《びょー》=形容連用
有る可う《あるびょー》もなし
形容連用は、「寒くなる」「高く上がる」「清く美しい」のように、後ろに用言を連ねることから「連用」の名が付いているが、分かち書きの上からは、これらの例はいずれも2文節なので、「連用」であることに文節構成機能上の意味はない。従って、本システムでは形容連用を名詞的に扱うことになる。
形容連用は基本格節に直接転換するほか、品詞変換語を伴って5種類の品詞を形成する。
632-10 形容連用=基本格節 遠くの親戚
形容連用+ながら,乍《ながら》,乍《なが》ら=乍ラ格節 遅くながらも着いた
形容連用+たって,ば=一般終節
小さくたっていい 運良くば
形容連用+て=ハモ終節 高う《たこー》てもいい
形容連用+もがな=連用文節 別れの無くもがな
形容連用+ち,っち=音便仮定
早く行かなくちゃ こう暑くっちゃかなわん

連濁動連とは、動詞連用が動連名節の後ろに接尾語的に付くときに、先頭の音が濁音化したものをいう。「暮《ぐ》らし」「開《びら》き」「払《ばら》い」などが、連濁動連として辞書に登録されている。
連濁動連は動連名節に付いて基本格節を形成する。
180-30 動連名節+連濁動連=基本格節 海開き《うみびらき》
連濁動連は接尾語の機能しかないので、付属語に分類されるべきであるが、形態上から連用形の章で説明した。
動詞連用は、他の動詞に冠せられて複合動詞を形成する。この場合、動詞連用の送り仮名(活用語尾)が省略されることがある(語幹が1拍の動詞のことが多い)。
例: 書き始める ⇒ 書始める 取り扱う ⇒ 取扱う
本システムでは、「書《かき》」「取《とり》」のように、複合動詞の前置成分になることのできる品詞を動詞接頭と定義する。接頭語的な機能を有するが故の品詞名である。動詞連用も動詞接頭である。複合動詞の活用形は、後置成分の活用形が踏襲される。以上をまとめると、結合規則は
620-40 動詞連用=動詞接頭 書き
636-60 動詞接頭+??動詞=??動詞 書き始める
となる。??のところには、任意の活用形が入る。上の例では、「始《はじ》」がマ下動詞であるから、複合動詞の「書き始《かきはじ》」もマ下動詞となる。
動詞連用以外の動詞接頭としては、上記の「送り仮名なしの動詞連用」のほかに「動詞連用の促音便・撥音便」がある。
例: 取っ掛かるの「取っ」 ※「取り」の促音便
ひん曲げるの「ひん」 ※「引き」の撥音便
また、「素っとぼける」「素っ飛ぶ」の「素《す》っ」のように動詞接頭と同等の機能を持つ語もあるが、動詞連用由来ではないので動詞接頭とはしない。
動詞接頭はその名の如く接頭語としての機能があり、名詞や接尾語に冠せられる。
636-20 動詞接頭+一般名詞=一般名節 吊天井《つりてんじょー》
636-30 動詞接頭+サ変名詞=一般名節 拭掃除《ふきそーじ》
636-35 動詞接頭+カナ名詞=一般名節 押《おし》ボタン
636-40 動詞接頭+接尾汎用=一般名節 差出し用の郵便箱
636-50 動詞接頭+接尾連用=一般名節 生き甲斐《いきがい》
動詞接頭は接尾語としての機能もあり、動連名節や丁動接頭に付いて基本格節を形成する。
180-20 動連名節+動詞接頭=基本格節 均等割《きんとーわり》
750-30 丁動接頭+動詞接頭=基本格節 御乗《おのり》の方
以上のように、動詞接頭は接頭語と接尾語の機能が中心であり、本来は付属語に分類されるべきであるが、一般名節に転換する(結合度は低い)機能もあるので自立語的性格もあり、また形態上は動詞連用に類似することから、連用形の一種に位置付けた。
636-10 動詞接頭=一般名節 賭《かけ》じみた行為
動詞接頭は他の接頭語的機能も豊富で、
動詞接頭+がち,勝ち=ナリ名節
曇りがちな天気
動詞接頭+手,主,人,者,屋=人格名節 送り主《おくりぬし》
動詞接頭+がまし,ぐるし,苦し=シ活形容 聞苦し《ききぐるし》い
動詞接頭+除《の》=カ下動詞 払い除《はらいの》ける
など、種々の品詞変換語を伴って他の品詞に転換する。詳細については、付表の「品詞変換語一覧表」を参照のこと。なお、「動詞接頭+来」形式の品詞変換語がいくつかあるが、これは、「来る」(カ行変格活用動詞)が動詞としては辞書登録されていない(活用形は登録されている)ために、「帰り来た」「寄せ来る」などの複合動詞が636-60によっては形成されないことを補うものである。
9 複合動詞
動詞連用・動詞接頭は、次の結合規則により複合動詞を形成するが、これについてはいくつかの留意事項がある。
636-60 動詞接頭+??動詞=??動詞
(1)動詞複合の条件
「動詞接頭+??動詞」(636-60)が必ず複合動詞になるわけではない。複合動詞にならない場合を述べると、
第1に、単に動詞を列挙する場合がある。
例: よく遊び食べ飲む → ヨク□アソビ□タベ□ノム
文章中に出てくる「動詞接頭+??動詞」が複合動詞であるかどうかをシステム的に判定することは不可能であるが、動詞を「複合動詞の後置成分になりやすい動詞」(これを複合可能動詞と呼ぶことにする)と「なりにくい動詞」に分類することは出来そうである。その上で、後置成分が複合可能動詞でないときには複合動詞としての結合度を低く押さえる処理をすることにする。「出る」「歩く」「写す」などは複合可能動詞であり、「遊ぶ」「食べる」などは複合不可の動詞である。こうすることにより、「遊び食べ飲む」は複合動詞にならない。
第2に、動詞連用の形をした副詞や接続詞などの場合がある。
例1: 食糧が余り出す → ショクリョーガ□アマリダス
例2: ゴミが余り出ない → ゴミガ□アマリ□デナイ
例1では「余り始める」の意味で複合動詞になるが、例2では「余り」が副詞になっているので複合動詞にならない。例1は稀少ケースと考えられるので、「後置成分が複合可能動詞であっても、前置成分が「余り」の場合は結合度を低くする」ことにする。同様の措置は、以下の語が前置成分のときにも行われる。
動詞連用の形をした副詞の例: あまり(余り) たとえ(例え)
たとえ誤っても許されない → × タトエアヤマッテモ□ユルサレナイ
○ タトエ□アヤマッテモ□ユルサレナイ
※書き誤っても → カキアヤマッテモ
動詞連用の形をした接続詞の例: つまり(詰まり)
つまり始めからやり直しだ → × ツマリハジメカラ□ヤリナオシダ
○ ツマリ□ハジメカラ□ヤリナオシダ
※書き始めから → カキハジメカラ
動詞連用の形をした名詞の例: 〜の通り《とおり》 〜に限り《かぎり》
手本の通り歩きなさい → × テホンノ□トオリアルキナサイ
○ テホンノ□トオリ□アルキナサイ
※飲み歩きなさい → ノミアルキナサイ
動詞連用の形をした助詞の例: より(寄り) に(煮) で(出) へ(経)
予定よりかかった費用 → × ヨテイ□ヨリカカッタ□ヒヨー
○ ヨテイヨリ□カカッタ□ヒヨー
(2)後置成分動詞の連濁
前置成分が促音で終わり、後置成分の先頭音がハ行のときは、先頭音はパ行に連濁する。
例: 取っ払う《とっぱらう》 差っ引く《さっぴく》
「ハ行→パ行」以外の連濁は見当たらない。「先駆《さきが》ける」(名詞に続く連濁)、「洗い晒し《あらいざらし》」(名詞化してしまい動詞活用せず)のような例は多いが、いずれも複合動詞とは認められない。
(3)多重複合の問題
「取り組み始める」のように、3つ以上の成分が結合して複合動詞を形成することがある。この例では複合動詞「取り組む」の連用形「取り組み」に「始める」が後続するわけで、636-60で対応できる。ただし、「取組始める」のように第1・第2成分の送り仮名が省略される場合は、「取組《とりくみ》」を一つの動詞接頭として辞書登録しておかなければ、636-60が適用できない。同じような例として「受付《うけつけ》」などがある。
「取組み始める」のように第1成分だけの送り仮名が省略される場合は、「取《とり》」が動詞接頭として辞書登録されていれば、特に問題なく処理できる。
一方、多重複合が可能なことによる副作用もある。
支出を差し引き残りは100円 → × シシュツヲ□サシヒキノコリワ□100エン
○ シシュツヲ□サシヒキ□ノコリワ□100エン
のように、複合し過ぎると誤りになる場合もある。この辺になると人間の知能でなければ対処し切れない。