日本から最も近い米国 グアム 平成8年8月16日〜20日(火)

 関西空港からナイトフライトでひとつ飛び、3時間少々でグアムに到着。そこは日本から最も近い米国だ。空港に降り立つと、熱帯特有の肌にまとわりつくむせ返る様な空気がある。珊瑚礁に囲まれた南海の楽園・グアムはミニ・ハワイを思わせる雰囲気である。

◇リンカーンの出迎えでスタート 

 現地旅行社R&CのK氏が出迎えてくれる。思いもかけず空港ロビー前には、とてつもなくどでかい白いリンカーン・リムジン(後にR&C社副社長の専用車と知る)が横付けされており、妻と二人だけで乗り込む。束の間のVIP気分に浸りながら、ほどなく10分もするとパレス・ホテル・グアムに到着。ホテルロビーにてK氏にリコンファームのために帰りの航空チケットを渡してから、簡単な説明を受ける。時刻は現地時間の午前4時前である。R&C社カウンターが午前9時に開くのを待ってオプショナル・ツアーを頼むことにして、とにかくしばらく仮眠をとる。

 ホテルロビーの一角には、現地旅行社の受け付けカウンターがぐるっと数社並ぶ。島内観光、サンド・キャッスルデイナーショー、アトランティスサブマリン……と矢継早に、事前に頭で描いていた通りに、取り敢えず今日と明日の予約を入れる。

◇市内巡りで土地カンをつかむ

 まずは知らない土地で地理感覚をつける意味から、ホテルを10時に出発して観光ポイントの集中するアガニャへと向かう。南国の日差しは眩しく、サングラスでもなければ目があけておれないほど。太陽は真上から照り、できる陰が小さく短い。

 パセオ公園は1944年日本軍から解放された後、アガニャの街に残ったレンガを海岸に押しやってできた。その突端に立つ自由の女神像のレプリカは、1950年アメリカのボーイスカウトから、“不変の忠節忠誠”の誓いの印として、グアムのボーイスカウトに寄贈されたもの。大きさはニューヨークの自由の女神像の20分の1、高さは約5mの銅製。

自由の女神像のレプリカがあるパセオ公園
パセオ公園の自由の女神像のレプリカ

 アプガン砦は1800年頃、グアム島を征服したスペイン人がチャモロ人の反抗に備えるため丘の斜面に築いた、石灰岩と珊瑚石からなる要塞。この高台からはアガニャからタモンまで一望できる。露天屋台での冷えたヤシの実ジュースがうまかった。その上、果肉はワサビ醤油でいただくと、イカサシ風味でなかなかいけるのを新発見。

 ラッテ・ストーン公園には、古代チャモロ文化を探る上で欠かせないラッテ・ストーン8基が保存されている。南部奥地のフエナ貯水池近くで発見されたままの状態で再現してある。大きな珊瑚石でできた遺跡は、高さ2.5mあり垂直の柱の上にカップ型の石が、ちょうどケン玉のように置かれている。上流階級の家屋の土台に使われたという説が有力だが、多くの謎に包まれており、地元では祖霊の住む場所とされ、信仰の対象になっているそうだ。

信仰の対象 ラッテ・ストーン
信仰の対象 ラッテ・ストーン

 スペイン広場は、道路をはさんでラッテ・ストーン公園の向かいにある。スペイン総督官邸跡地で、第二次世界大戦中砲撃を受け、珊瑚礁のスペイン風アーチだけが残っている。広場内には、総督婦人が熱いチョコレートドリンクで客をもてなしたというチョコレートハウス、六角形の音楽堂などがある。

 恋人岬にはスペイン総督との結婚を拒み、結婚式当日に恋人と互いの髪を結んで、この断崖から身を投じた、という美しいチャモロの乙女伝説が残る。海抜120mに位置する断崖からは、ガン・ビーチやイパオ・ビーチ、フィリピン海沿いに弧を描く斜面、ヤシ樹林、タモン・ビーチのホテル街が見渡せる。奇遇にもS新聞社のY氏にバッタリ出くわす。声をかけると随分と驚いた様子で、先方が女性連れということもあってか「なんでこんなとこにいはりまんのん…」の一言残してそそくさとその場を離れる。

 遅い昼食は「シー・ホース」でのビーフステーキだが、味はうまくない。妻は恋人岬で気分が悪くなりゲロした後でもあり、ほとんど手をつけず。食後はDFSギャラリア、白牡丹、マイクロネシア・モールでのショッピングだが、今朝、R&C社のK氏から「後日、DFSの特別割引券をことづけるから…」と言われていたため、今日のところはざーと回って品定めだけにとどめる。

 観光を終えて部屋へ入ると、R&Cカウンターから「今朝のオプショナルのディスカウントがあるから」との電話。思わぬ60$ほどが還元されたため、その場で明日アトランティス・サブマリンとコーラルリーフ・サンセット・クルーズの間にガン・シューティングを、そして明後日にはスター・サンド・ビーチ・ツァーを追加申込みする。これで3日間のスケジュールはびっしり。

◇ラスベガス・ショーでトロピカル・ナイトを満喫

 グアム唯一のショー・エンターテイメントであるサンド・キャッスルへ。建物はアラビア宮殿風で、ホテル・ロードでもひときわ威容を誇る。ラスベガス・スタイルの豪華なショーが楽しめるレストラン・シアターで、アメリカ本土で厳しいオーディションを経て選ばれたダンサーやマジシャン、振り付け師など熟練したプロたちが繰り広げるレビュー&マジックショーだ。フランス料理のコース・メニューを味わった後、7時30分からショーが始まる。

 冒頭はミュージカルのラスベガス・シーン。続いて白ハトを次々と出す見事な手さばきを披露するマジック・ショー。その次はブロードウエイのウエストサイド・ストーリー風なシーン。一転してウエスタン、さらにはフィフティーズとテンポよく進む。合間に美女がトラに入れ替わるという大がかりなマジック・ショーで会場が大いに沸く。フィナーレはハリウッド・シーン。『雨に歌えば』にのって舞台で本物の雨を降らせ、かぶりつきのお客は大騒動する。

 ニューヨークで本場のミュージカルを見逃したのは今でも悔しいが、これで十分堪能できた。トロピカル・ナイトを満喫し、余韻にひたりながらホテルに帰るとドアの下にK氏から、メッセージに添えてDFSの特別割引券が2枚。

◇なにわともあれ留守役にまず土産

 本日のアトランティス・サブマリンは、ホテル・ロビー集合が12時のため、午前中をかけてDFSギャラリアでのショッピングにあてる。ホテルからはタクシーで無料送り。9時の開店を待って入る。一番に、厄介なばあさんの守をしてくれている長男の嫁とSさんに、パロマ・ピカソのバッグを求める。これまでこのブランド名すら知らなかったが、売店のおばさんによれば雅子さまご愛用で特に最近の人気商品とか。ちなみにガイドブックによれば「日英プリンセス御用達のバッグ」とあり、キスマークコレクションで人気上昇中だそう。大胆で革新的なデザインと色使い、そして機能性とエレガンスのバランスが絶妙、赤と黒の製品が主体とも。奇しくも気に入って求めたものは、いずれも黒であった。

◇潜水艦で海底散歩

 せっかくグアムに来たからには、一度はスキューバ・ダイビングといきたいところだが、これだけは残念ながら誰でもすぐにというわけにはいかない。せめてサブマリンで海底散歩、と思い参加したツアーである。アプラ港からシャトルボートで30分程かけて潜水地点へアクセスして、グアムでただ一隻の本物の潜水艦アトランティス号に搭乗。

潜水艦アトランティス号で いざ海底散歩
潜水艦アトランティス号で海底散歩

 人気のダイビング・ポイント“ギャブギャブ・リーフ・”を中心にゆっくりと潜航していく。水深20〜30メートルまで潜ると、太陽光線の不足から色合いがモノトーンに。さしづめ私のエンジのシャツは、ダーク・パープルに変化してしまった。丸い舷窓の向こうには数億年もの歳月を経た広大な珊瑚礁から、戦中まで使われていた海底ケーブルまで広がる。神秘的な海底の珊瑚礁や色鮮やかな熱帯魚の回遊が手にとるように見える。ダイバーによる餌付けも見所で、窓ガラス越しにポーズまでとってくれる。これなら丸で自分がダイビングをしている気分だ。海底探検でもうひとつのグアムを発見した思い。

◇実弾の迫力、ガン・シューティングを初体験

 サブマリンを終えてホテルに着いたのは3時5分で、すでにガン・シューティングの迎えが待っている有様で忙しいこと。ホテルから車で30分程走る。射撃場に入るや否や薬きょうを渡され、場末の安バー風のカウンターの横を通って一室に通される。そこで日本語による射撃の説明ビデオを見せられた後、いよいよ屋外の射撃ブースへ。まず耳にプロテクターをつけてからインストラクターのもとで、妻と私は同時に22口径、スミス&ウェッソンに初挑戦する。ずしりと重い。おもむろに撃鉄を起し引金を引くと、パーンという乾いた音とともにかなりの反撃がある。想像した通りのショックだった。無我夢中で4〜5発撃ってから、先程のビデオを思い浮かべてスタンスを肩幅にとりなおす。そして腕をまっすぐ伸ばして右手に左手を添えて、息をこらして照準を定め静かに引金を引く。

 後半は私だけ38口径のコルトに持ち換えて再挑戦。22口径と違い一発づつ撃つ度に薬きょうが勢いよくはじき出され、時に腕や胸にも跳ね返る。衝撃もスミス&ウェッソンより大きく、一発毎にひと呼吸おく。日本では味わえない実弾ならではの反動と、薬莢のにおいは刺激的だった。撃ち終わった後はインストラクターが進んで記念写真のシャッターを切ってくれ、撃ち抜かれたターゲットに射撃認定書をつけてくれる。妻と私、ともに仲良く1発づつど真ん中を撃ち抜いており喜んだものだが、ひょっとしてサービスでどちらもあらかじめ抜いていたのかな…とも思ったりして。

◇黄昏のタモン湾でロマンティクなクルージング

 コーラルリーフ・サンセット・クルーズでは、沈む夕陽にタモン湾の空も海も時々刻々と染まりゆくさまを見ることができ、まことにロマンティクな絵になる美しさだ。昔、チャモロ族が航海に使っていたフライング・プロアと呼ばれる船をデザインした大きな白い双胴船に乗ってのディナー・クルーズだが、ハワイのサンセット・クルーズを想定していたら大違いで、タモン湾の浅瀬をゆっくり回転しながら行ったり来たりするだけ。

 ディナーはアラスカ産のサーモン、カナダのロブスター、シュリンプはじめシーフードとチャモロ風のアチョーテライス、おまけにそうめんありのエスニックな味はまずまずだった。カクテルは有料だが、それ以外のドリンクは飲み放題。

 バスで案内してくれたガイド達が船上のスタッフとなって料理を運んだり、客と一緒になってエンターテイメントショーを陽気に楽しむ。ギター片手のラッドさんがどうやらこのクルーズの顔らしく、船上のムードを盛り上げる。かつて日本でお馴染みだった曲の弾き語りをやったり、ホラ貝吹きコンテストでの軽妙酒脱なやりとりは本当に芸達者で面白い。やがてホテル街の夜景がきらめく火ともし頃には、ディスコ・タイムの幕開けでムードは最高潮へと達する。ダイナミックな音響とライティングにより、ダンシングフロアーが大きく揺れるのを感じるほどに船ごとエキサイト。

◇日本食が一番だか、外国では値がはる

 根っからの日本人。やはり三度三度、米の飯を食べねば食事をした気にならない。初日に着いた時からマークしていたのだが、今朝はホテルの地階にある「とみ田」にて純和風の朝飯をどうしても食することにする。早起きしてホテルの周囲を散策したり、写真を撮ったりして時間をつぶす。6時30分の開店と同時に、われらが一番の客だ。メニューは、味噌汁、塩鮭、山芋と竹の子の煮つけ、味海苔、香の物と一応見た目は日本食だが、肝心の米がパサパサのタイ米で少しガッカリしたものの、全般に味はまずまず。しかし、最後の勘定の段に二人で36$(約4300円)に改めてその高さに驚く。

◇パレスは岬に建つオーシャン・ビュー・ホテル

 パレス・ホテル・グアムは、タモン湾とアガニャ湾の両方が見渡せるオカ岬に建つ、閑静な高級ホテルだ。館内の中庭は最上階まで吹き抜けで、巨大なアトリウムとなっている。客室はすべてオーシャン・ビューで、422号室のバルコニーからはアルバット島が見える。テニスコートを始め、ウォータースライダーでつながった2つのプールやプールサイドには洞窟バーもあるが、岬の上にあるため近くにビーチがないのが残念。

◇白砂ビーチでひねもすのんびりが究極の贅沢

 グアムの魅力のひとつは、何と言ってもマリンブルーの海で熱帯魚と戯れることだ。そのため今日はスター・サンド・ビーチへ向けてホテルを8時30分に出発。同ビーチは島内北部のアンダーソン米軍基地内にあるプライベート・ビーチ。舗装道路を過ぎると、道はいつしかオフロード。ここから装甲車のような4WDに乗り換え、浜辺すれすれの岩場や砂場を駆け、うっそうとしたジャングルを通り抜けると、名の通り星の形をしている白砂のビーチが開けてくる。透けるような海にリーフエッジがくっきりと線を描く。日本のTVポスターの撮影はほとんどがこの場所で行われるという。基地奥のためツアーのみ入場可能なかくれた穴場。

スター・サンド・ビーチ
スター・サンド・ビーチ

 ビーチ・シューズとシュノーケルを借りて、心踊らせながら海に入る。珊瑚礁の海岸は遠浅で、透明な海中を色とりどりの熱帯魚が泳ぐのが見える。ひとしきり泳いだ後は、静かに木陰で日光浴をしたり、サンドバギーに乗ったりして過ごす。潮風に吹かれながらハンモックで揺れるもよし。5〜6名のスタッフはアットホームな雰囲気の中で、決しておせっかいでなく、さりげなく気を使ってくれるのがわかる。気軽に声掛けしたり、適宜場内アナウンスなどもしてくれる。

 ランチ・タイムにはスタッフ一同で手作りのチキン、スペアリブ、レッドライス、サラダとフルーツを盛り合わせてくれる。現地の歌手スター・サンドによる演奏を聴きながらの食事。食後はジャングル探検と称して希望者を集めて、島内の古代遺跡巡りの案内をしてくれたり、ヤシの実ゲームを設けたりして遊ばせてくれる。

白砂とマリンブルーの海
白砂とマリンブルーの海

 

こんなところで何も考えず、何もせずにひねもすのんびりと過ごすのは究極の贅沢かも。一日中いても飽き足りないし退屈もしないだろう。

 



 

 ◇タヒチアン・ショーで、最後の夜も南国情緒たっぷり

 最後のグアムの夜を締めくくるにふさわしいものをと、R&Cのカウンター嬢に尋ねる。「お勧めはフィシュ・アイ・マリンパーク・ディナーショーです。海中展望塔を備えたパークで、本場タヒチのショーがある。デイナーはバイキングで味もおいしいと評判…」に誘われ決める。

 この春、お目見えしたばかりのマリン・パークで、海中展望塔は交通頻繁な道路をはさんでレストラン向かいの海岸にある。そのためにアンティークな専用車がピストン輸送してくれる。目下、陸橋を計画中で完成すれば島内で1号となるそう。

 海中展望塔は海岸から長い渡り廊下の先に出島風にあり、ダイバーが餌付けする様子や海底が覗ける。またサンセットの瞬間前後は、千変万化の水平線の風景も美しい絶景だ。

タヒチ美女たちのポリネシアン・ダンス
タヒチ美女たちのポリネシアン・ダンス

 バイキング形式の料理の数々は、評判通りで満腹食べる。ショー・タイムにはゴッホの絵に出てくるような顔だちのタヒチ美女5名が、凝った作りの屋外ステージでポリネシアン・ダンスを繰り広げる。観客も参加してのフラダンス・コーナーも笑いを誘う。男性によるファイヤー・ダンスも南国情緒がいっぱい。ショー・アップは9時だが、その頃には昼間の疲れも手伝いビールの酔いも早く心地よい。ついに実質3泊4日のグアムの旅もおしまいに近づきつつある。

 日本から南へ2500km、北緯13度に位置するグアムは、のんびりとするのには最適の南国のパラダイスだ。リーフに囲まれアクアマリン色に染められた海は、本物のリゾート・アイランドといえるだろう。1521年にマゼランが発見し1565年から330年にわたるスペイン統治が続いたが、1898年アメリカとの戦いに敗れてからはアメリカに統治される。第二次世界大戦中は、一時期日本の占領地にもなったが、現在は、アメリカの自治属領としての顔を持つ一方で、先住民であるチャモロ人の文化やスペイン文化が融合した、独特の雰囲気を持っている島である。

 例によって限られた時間内での旅行故、ついついあれもこれもと欲張りフルに動いたが、本当は何もせず、美しい海でも眺めながら、ゆったりのんびりと過ごしてこそ似つかわしいグアムかなと思う次第。

                                       平成8年8月25日記