山崎賞

NPO法人農業開発技術者協会・農道館

Yamazaki Greeting

第一回授賞式(昭和四十八年十一月五日) 故・山崎正一先生のご挨拶

 

このたび「哲学奨励山崎基金」を段け,哲学の研究上すぐれた実績を積み上げつつある人に,その研究を奨励助成する意味で,哲学奨励賞をおくることに致しました.

顧みれば,私は少年時代,人生の意義を問い,永遠なるものを求めて哲学を自己の生涯の仕事として志し,以来,四十余年の歳月が経過しました. 昨年,私は満六十歳の還暦を迎え,永年つとめた東京大学を今年四月に退官し,些らの退職金を受けました.

せめてその一部なりとも公的に有意義な使い方をしたいと思い,私の信頼する年若な友人たちに相談いたしました.その中の一人に,詩人であり哲学者であり,また農学者として,新しい農業のあり方を追求する事業を進めている人がいます.

その事業は,そもそも,ギリシャの詩と哲学から現代における科学技術と人間の生き方に かかわる,私とその人との永年にわたる哲学的対話の中から次第に姿をととのえるに至ったものであり,現代の人間生活を根本的に聞いなおす哲学の実践活動というべきものであります. 相談の結果,私の退職金をこの事業に提供し,そしてこの事業の運営によって生み出される資金を,若い哲学徒のための管学奨励賞の基金としていくということに致しました.

詩人哲学者であり農学者であるその若い友人とは,この授賞式の世話人として働いてくださった足立原貫氏です.

本賞の選考に当たっては,私の,哲学上の年若な友人,荒川幾男氏ら四氏が審査委員の労をとってくださいました. 幸いにして,優秀な少壮研究者,村上楊一郎氏を第一回受賞者として選ぶことができ,ここにその授賞式を挙行するに至りましたことは,私の心からの悦びとするところであります.

ここに至るまで,多くの方々のご援助とご協力を得ましたことを深く感謝いたします.そして,今後この哲学奨励賞を支えていくカとなる「農業開発技術者協会」の青年諸氏の一層の活躍を期待し,その前途を祝福したいと思います.広く世の皆様方のご声援とご協力をお願い致します.

(山崎正一先生と山崎賞 「“その日”に」から文面のまま転載)

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