派遣労働者は どれだけ抜かれているか  

 本稿の主旨:マージン率 非公開な派遣労働の中抜き率を計算する 戻る


 

  今年の労働関連のトピックの中で個人的に気になった点に、平成2410月から義務化されたはずの派遣会社のマージン率(中抜き率・ピンハネ率)を、再び非公開にしようとする動きがあった。

 

なんでまた? 表向きは、『派遣会社がマージン率の値下げ競争に陥らないようにするため』という 一見もっともらしい理由が付いている。

だがこれは、小泉時代の経済諮問会議に続き、安倍内閣の産業競争力会議に 再び関与している現、派遣会社パソナ会長・竹中平蔵の意向が強く反映されたとの見方がある。

 

労働者の側からみた竹中平蔵は、小泉時代、派遣労働の“規制緩和”をすすめ、事後収賄よろしく派遣会社の顧問にチャッカリ座って労働者の生き血を啜る人でなしだ。派遣労働者が恨み辛みで引き起こした傷害事件や、リーマンショックで“合法的”解雇に遭い 冬の寒空に放り出された派遣社員の『年越し派遣村』騒動をご記憶の方もおられよう(野党の政治パフォーマンスとしての側面もあったが)。その後の選挙で自民が労働者階級にノーを突きつけられる大きな要因ともなった。しかし『喉元過ぎれば熱さを忘る』、歴史に疎いタイプの政治家は、“学者”や“教授”の肩書きを持つ手合いを とことん盲信してしまうらしい。

 

そして今なお、こと他業界には、「競争が進むと みんなが豊かになっていく」とか言って、労働者の足下をみて身を削るような消耗戦に駆り出しておきながら、「所得は低くてもゼロではない人がたくさん出てきた」とケロッとし、自らを高みの見物ができるよう射程外に置こうとする提言は、何とも説得力に乏しい。

 

 

 もちろん、派遣会社という派遣会社が みな吸血鬼の巣窟ってワケでは無いだろう。私の知ってる派遣会社の事務担当は、以前こんなことを言っていた。

 「昔はこうじゃなかったんです。たとえば秘書や通訳、アナウンサーや放送業界の小道具係など、その道のプロなんだけれども、専門的すぎて汎用性の無いエキスパート人材を、必要とするトコへ、必要な時だけ、必要な分だけ送り込む。そうして手駒を途切れなく、食いっぱぐれないよう誘導することで、彼らも再就職に費やす時間と労力を節約できる。お互いWin-Winの良好な関係があったんです」と。

 

 しかし今、派遣労働といえば 薄給で使い捨てられる“雇用の調整弁”、財界や資本家にとってみれば、あまり雇用責任を考えずにポイできる/役員報酬は何億オーダーで増加するほど儲けても、労働者の受け取るべき対価は ろくすっぽ与えず放り出せるような、まことに都合の良い非正規雇用の代名詞である。この変化は、小泉竹中構造改革によってもたらされ、そして現在の安倍内閣も、その改革路線を踏襲している。「競争が進むと、(俺ら派遣会社の胴元は)みんなが豊かになっていく」、の間違いではなかろうか。現実では、賃下げ競争が進めば進むほど、労働者階級は むしろ貧しくなっていく。弱肉強食のアメリカ新自由主義をそっくりマネた“改革”で、製造業への派遣労働を解禁してからの モノ造りの現場は、どこも国際競争力が強化されるどころか逆に、技術やノウハウ・後継者の霧散、撲滅したはずの不良の再発・リコールの増加、不公平感や将来不安による勤労意欲の低下と人心の荒廃に悩まされている。

 

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 他の項目でも書いたが、当方、籍を置いている会社の本業が芳しくなく、現在“出向”名目で、元・下請け会社へ『出稼ぎ』中である。労使協議の『出向は長くても三年まで』という原則は『いや今会社こんなだから』という理由で反古にされ、今の出稼ぎ先での3K業務も三年目を超過している。

先のリストラ面談で、私は、親会社の人事に「それでも あなたは 会社があなたに払ってる給料の二割しか稼げていない(から辞めてね)」という説明をしばしば受けた。

おかしい。『3K仕事』というのは、キツい代わりに短期間で稼げるのがウリではなかったのか? そこで思い浮かんだのは『中抜き』という言葉だった。親会社と出稼ぎ先との間には、おもに親会社の人事担当が移籍して できた派遣会社が噛んでいる(のち リクルートHDの傘下に)

 自分もこのようなサイトを持っているのだし、『私の中抜き率って、一体どれくらいなのだろうか?』 という疑問は、かねてより興味のあることであった(ちなみに、私と同じ目に遭ってる相棒は「ちゃんと給料は変わらず出てるでしょ?」といって、あんまり興味無さそうだった。* いやいや その無関心は ちょっとヤバくない?)。

*先輩どの、あなたはね、震災によるリストラは免れたから高給のままでしょうけど、私はワザとスキル活かせないトコへの転勤・配転喰らって降格繰り返したんだから、あなたほどの給料は貰えてないんですよ だから気になるんですよ。

 しかし、親会社も、派遣会社も、そして出稼ぎ先の給与担当者も、そろって私の出稼ぎ先での給料や、派遣会社に払っている金額が幾らなのか については固く口をつぐんでおり、給与担当者にもハッキリ「上から『教えちゃダメ』と指示されてるのでゴメンね」とだけ言われていた。

このように、諸般の事情でイレギュラーな派遣労働の場合だと、現在でもマージン率の公開義務は うやむやにされているのだった。

 どうやら、よほど後ろめたい薄給で雇われているらしい(足下見られた労働力の大安売りによって、かろうじて雇用が維持されている)という推測はついていた。が、具体的な金額については、ある出来事が起こるまで、皆目 わからなかったのである。

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 ところが ある時、出稼ぎ先の給与担当者が退職し、新人に切り替わろうかという頃、その新人の手違いで、いつもは 私には配られるはずのない『出稼ぎ先での 裏・給与明細』が 私の手元に来た。その後、10分経たずに彼女が血相変えて回収に来、持って行ってしまったのだが、残念でした、♪ 私見ちゃったの〜

 ・・・それによると、私の該当月の出稼ぎ先での報酬は、残業ゼロ時の支給額で141895であった(月一現物支給の防護アイテム込み)。時給換算だと、約886円〜887円くらいか。 「3K職場の割に安ッ!!」 と、関心なかったハズの相棒が凹んでた。

 * この件を、リストラ面談の時、人事と立ち会いの派遣会社の人に漏らしたところ(私に隠していたハズのことを私が知っていたのだから)向こうは当然ビックリしたが、「そんなに安くはないハズですよ」とも言っていたから、私が目にした金額は、出稼ぎ先が諸費用を引いた後の手取り額だと思われる。

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  ちょっと計算してみよう。

給料というのは手取りこそすべて。税金などで さっ引かれる部分 * 込みで 「年収400万だァー」とか喜んだって何の意味も無い。ここでは手取りで考える。

* 厚生年金保険料 -\2,5680、健康保険料 -\1,1400、雇用保険料 -\1551、所得税 -\7160、住民税 -\18500、介護保険料 -\2250、共済保険料 -\2447、火災共済保険料 -\460、組合費 -\4700、組合員積み立て資金 \-1600等々。ここいらは私じゃどうしようもない。

 

 まず、残業なんて よほどのことがない限りやるな、と、親会社からも出稼ぎ先からも言われて そう勤めてきたため、141895円 ×12(月)=1702740円だから・・・私の実際の年収は約170万円。うわ、非正規の平均である168万円と比べても たった2万多いだけだ。まさに『名ばかり正社員』。

 そして 源泉徴収票によると、私の去年の給与所得は308万円である。帰ったらバタンキュー状態なので、副業なども遣ってない。

上記170万円との差額である138万円ぶんの内訳は、出向手当(\5000)や、出稼ぎ先に社員食堂がない時の食事補助(月\3000円)、親会社と出稼ぎ先との労働日数差をカネで補填する手当(月約\3,0000)。これは説明が必要だろう、親会社の年間休日130日に対し、出稼ぎ先は115日だから、私は15日余計に出勤せねばならない(ちなみに2013年は16日、2012年では なんと、18日も違う。もし親会社の人が、2012年に、有給を2日以上取っていた場合、私との勤務日数差は実に まるっと一ヶ月以上にもおよぶ。それくらい違う)、通勤手当(月\2500)−しかし括弧内は私のせいじゃないぞ−、そして賞与が約44万×2(儲かってた仕事を取り上げておきながら、「会社に一切貢献していない」との理由により、最低査定額である) が含まれる。これらを合計してみると、1376764円になるから・・・多少の残業代などが誤差として出たと思うが、ほぼ辻褄は合っている。

 したがって、手取り年収・308万円の約半額にあたる170万円(55.28% 約五割)を稼いでいる つもりだったのが、「二割しか稼げていない」ということは、やはり「じゃあ 残りはどこへ行ったんだ?」「 私の労働の対価は、どれだけ派遣会社に抜かれてるんだ?」って話になってくる。 *

* リストラ面談でこの不満を話すと、人事は「いや、そうでないんですよ、派遣会社が あなたの稼ぎをハネてるわけじゃなくって、会社がね、派遣会社にお金を渡して、あなたの出稼ぎの委託を遣って貰っているんです」 という。前者では、あまりに あからさま過ぎるので、ということか。しかし それだって、迂回経路が違うだけで、結局私が二割しか稼げてないと責められるんなら同じコトだ。

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ここで いったん整理すると、

1:私の去年の手取り年収は308万円だった。

2:親会社には「あなたに払ってる給料の二割しか稼げてない」と言われた(でも それって私の労働力を大安売りしたからでは?)。

3:しかし、長らく非公開にされてきた『裏・給与明細』によると、実際には出稼ぎ先で約五割にあたる170万円は稼いでいることがわかった。

三番目によって明らかにされた新事実から、親会社が派遣会社に渡している委託費、つまりマージンに相当する「中抜き率」が導き出せるはずだ。

 

マージン率 = 派遣料金の平均額 − 派遣労働者の賃金の平均額 / 派遣料金の平均額  (ただし ここでは、月給の平均額でなく、確定した『年収』で計算している)

 

308万円の二割は616000である。

308万円から、出向に伴う持ち出しなどの約138万円を引いた残りが1702740円であるとして、

その1702740円から、派遣会社にマージン(出稼ぎ委託費)を払った残りとおぼしき616000円を引くと、1086740か。

1086740円/1702740円 = 0.638・・・ 約63%出た。 さすがにコレは多すぎる、間違っていると思う。

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では、上記は手取りで計算したが、もし親会社が、手取りでなく 総額支給の二割、という意味で言っていたら、どうなるだろう? それも計算しておこう。

 

同じく源泉徴収票によれば、私の去年の税引き前の給与収入は443万円であった。

443万円の二割は886000だから・・・

出稼ぎ収入の1702740円から886000円を引くと、816740円。この場合のマージン率は

816740円/1702740円=0.479・・・ 約47%と出た。

 

控えめな数字の方を取ると、私の場合の派遣会社のマージン率(中抜き率)は47%(実年収1702740円に対して年間81万円)、月収では141895円の中から、68061円くらいで、私の取り分は73834円らしい。という結果が出た。ということは実質的な時給は、73834円/20日(ザックリ)/8時間 で461円? 

*ちなみに上記の計算は、さらに家賃を月額44000円ほど会社に返納している(毎月物件に44000円のダメージと与えているとは考えられないため)点や、会社が雇用者を解雇せず出向に出すことで雇用調整助成金を受け取っている(か否か、人事は「わからない」と言っている)分については考慮していない。また、もし上記の計算が実は間違っており、表に出ないパラメータがもっと他にあるのだとしても、それは現場で働く私に対してずっと隠し通すつもりで非公開にして来たのだから私に邪推されても/間違われても仕方がない。

 

もしかすると、派遣会社が「141895円?(時給は)そんなに安くはないはずですよ」と言っていたのを信じるなら、私が『裏・給与明細』の中に見た金額は、すでに派遣料金(金額不明)を引いた後の金額の可能性もある。が、親会社が派遣会社にお金を渡しているとも言っている以上、出稼ぎ先の明細書に、親会社の人事が派遣会社へ渡す金額が記載されているとも思えず、上記の47%を予測金額として確定したい。

また、『裏・給与明細』が私にバレて以降は、派遣会社も「あなた方の時給はざっくり800円で計算している」とも言うようになったが、コレも少し変だ。というのも、以前 私が向こうにカマかけた時の回答に近づけるには、時給は800円でなく、890円以上でなければ話が合わなくなるからだ。そも、人事が「給料の二割しか稼げていない」というのも本当なのだろうか? 自主退職を促すための お荷物度をオーバーに言ってないだろうか? 一日の、じつに1/3以上に相当する時間をみっちり3K労働に費やして、今までゴミとして捨てていたのを再生させて外貨獲得のアシストにも貢献し、しかしそのせいで土日は仕事疲れでグッタリ、暦で祝祭日の日だって関係ナシで親会社よりもほぼ一ヶ月ぶん多く出勤し働いてもいるのに「二割しか〜」って言われても、それは さっ引いていく側の金銭感覚や制度の方が おかしいのであって、そっから先は私のせいじゃない。

 

いずれにせよ、マージン率を非公開にするってーのは良くない。「もしかして、すごーい金額をハネているから公開できないんじゃないのか?」 と、疑心暗鬼になってしまうからだ。天下のリクルート系列を通してでさえ このように(?)疑心暗鬼になってしまうファクターが多すぎる(教えてくれない)のだから、マージン率公開が義務づけられるようになる前の、ヤクザな悪徳派遣業者や貧困ビジネス然とした派遣業の中抜き率に対する派遣労働者の不信感は如何ばかりであったろうか。それをまた非公開に戻せという産業競争力会議の竹中平蔵は、選挙で選ばれたわけでもないのに 現政府の招きで しゃしゃり出てきてなお一層自分たちに都合良くこの社会を作り替えようとしている。一体何様のつもりか。

 

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言い忘れたが、ピンハネの『ピン』というのは『一割』のことである。「マージン率が30%なら良心的」と言われる派遣業界でも、「三割抜くのはピンを要求していたヤクザよりもヒドい」という人もいるだろう。といってもコレが丸々派遣会社の儲けになるわけでは無く、これらから 派遣社員へ施す教育訓練費や、派遣会社社員自身の人件費、ブランド使用料としての上納金(シノギ)などを引いたのが派遣会社の利益となる。もしマージン率の低さがウリであっても、手駒の教育が一切無ければ、派遣先で苦労することになるし、反対に、もしマージン率が高くても、手駒のケアが充実してればトータルでは割のいい派遣労働になるということもあり得る(もっとも、私の場合、それらスキルアップのための費用は派遣会社負担ではなく、私の自己負担である。ひでぇ)。もしくは、かつて『ハケン』が 選ばれしエキスパート人材ばかりだった頃なら、報酬自体も高かったので、その高額報酬から30%程度を抜かれても どうってことなかったのだろうか?

 それにしても私自身、四割七分を持って行かれている(?会社の2割しか〜が本当に正しければ)とは正直思わなかった。ではなぜ、3K労働がこうも薄給なのか。じつは この近辺は外国人労働者が多い。出稼ぎ先も76人中27人は外国人労働者である。率にすると35%だ(←もういいって)。なので、出稼ぎ先の時給もブラジル人やフィリピンの外国人研修生の賃金水準に合わせて相対的に低賃金になってしまう(こっちも外国人労働者なみの低賃金で対抗しないと派遣会社も なかなか仕事を取ってこられないし、当然私も雇って貰えず親会社から整理解雇を喰らってしまうだろう)。中小企業で働くのなんてゴメンとばかりに人間のタテとして3K職場へ出稼ぎに出された身としては、非常に納得いかないのだが、グローバリゼーションとは こういうことだ。

 だいいち 私と出稼ぎ先との仲介をしている派遣会社自体、親会社から自主退職もしくはクビになった人事部の天下り先(受け皿)なので、不本意ながらエンジンブレーキの関係みたく これでお互いの雇用を維持・創出してしまっている。

 しかし私とて安泰ではない。もっと若くて頑丈な社内失業者に入れ替えて、さらに時給は良いが過酷な職場に派遣すべく、私みたく出稼ぎ出向で関節痛や有機溶剤によるハンデを負い、体もガタガタになった人員を、手切れ金と引き替えに“排出”しようとしているからだ。

 私が腹を立てているのは、そもそも私が今の苦境に陥った時に人事遣ってた人間が、私のような人間を3K職場に派遣して利益を得ていることである。そりゃ彼だって定年ゆえに逃げ切った人たちに比べれば、ちょうど逃げ切られて敗戦処理を押しつけられ、ババ引いた人ではあるだろう。反対に、去年くらいまで その派遣会社の前任者だった人について言えば、私はむしろ あのお爺ちゃんには同情していた。今では必要とされていない、もう主流でなくなったプログラム言語のプログラマだったという理由で親会社にポイされた人なのだが、当時は必要とされており、会社命令でその潰しの利かないプログラム言語を習い、誰かが遣らねばならなかった。だから結果的に、私みたく  元職場の現役社員が稼ぎ出すインカムの幾ばくかを、親会社解雇後の補償として受け取るのは「アリ」だったと思っている。ただしそれは、ちゃんと私にも後で お鉢が回ってくること前提だ(かといって派遣業を遣りたいわけではない)。関西出身?で親会社の人事だった人は言う、「別にウチの所に あなたが心配してたようなヤクザなんて居なかったでしょ? 」と。だが、反社会的勢力の世界では、下っぱが幹部クラスの罪を背負って刑務所行くのは良くあることだが、そのかわり刑期が終わればそれなりのポストが与えられるモノだ。ヤクザにだって その程度の義理はあるのに、人に詰め腹切らせてそのまんまでは、ヤクザよりヒドい。

 もっと言うと、私の今の出稼ぎ先は、軽作業だと聞いていたのに 出稼ぎに追い出した人事部の仕事より はるかにキツいうえ、有休も ろくすっぽ取れない忙しい職場である。ひとつ間違えば、指や腕を切断しかねず、おとといだって あわや複雑骨折かという危険な思いをした。また年一回以上は誰かが隣町の救急車に駆けつけられてしまうほどの過酷労働環境である。そういうところに手駒を派遣する以上はだ、出稼ぎする人が出勤日だったら、たとえ暦は休みでも、万が一に備え 派遣会社の事務所に一人は出社・常駐待機させておくのが手駒を3K職場に送り込んでいる側の責務では なかろうか? (派遣会社の営業利益は弱冠減るだろうが、現場労働は免除されてるのだから、それくらいは遣って欲しい)。 なんでまた 親会社と同じカレンダーに合わせて悠々自適に休んでいるんですか? 人が仕事をしてるのに、働かせている側は休んでいる! 今週だって彼らは悠々自適の三連休だが、私は 明日 勤労感謝の日の振替日にも出勤である。「だったら会社を辞めれば一年365日休み放題なのでわ?」という人もおられよう。だがそれだとその時だけはいいかも知れないが後が続かないのだ。自給自足できない人は、だれしも誰かに利用されながら、誰かを利用しているものであるが、そのバランスが崩れたまんまだと だんだん不満は募ってゆく。

 通常、自分の努力だけでは どうしようもない不運に見舞われた時、それは今まで税金払ってきた最寄りの行政の出番である。ところが今の行政は、順調な時は さんざんみかじめ料取っておいて、今一体何しています? 不平等条約で失職した業界の人や、竹中平蔵みたく財界の言うがまま雇用の調整弁として放り出される人たちにまで「貧しくなる自由がある」と開き直り、それに影響された一般人までが、私のような人間にも「自己責任!ジコセキニン!」と罵倒していたんだ。だから企業が仕方なく、その行政の代わりを身銭切って、私みたく“離婚したい相手”も養わざるを得ない状況だ。そして もし『企業が解雇しやすい社会』へと法整備すれば、再就職も容易になる? そんなことはあり得ない(派遣業界のポジショントークである)。歳取れば、若手には仕事の吸収力や体力面で かなわないし、その衰えを補うための経験すら、業種が変われば殆どリセットされてしまうのだから。

 東日本大震災では、ちょうど私と同い年の漁師の人が、涙ながらに「私にはもう漁業しかないんです(今さらこの歳で転職はしたくない)」と訴えていた。ラジオでは その漁師に好意的で、放射能が心配な魚を売り続ける選択をしても、「食べて応援します」とまでエールが貰える。しかし、彼みたくドラマチックな自分史をラジオで開示できた人はともかく、 私みたく、目には見えない政府の失政で追い詰められたケースだと、順境な時には『産業のコメ』ともてはやし、もっと稼げ、もっと稼げと尻を叩いておきながら、ひとたびこうなれば、どういうわけか世間はもちろん 身軽になりたい会社の人事にまで、「自己責任!ジコセキニン!」と言われてしまうのだ。

そして、もっとおかしいと思うのは、私の出稼ぎ先で働いている人たちの月給だ。私よりもさらにキツい仕事なのに、中抜きされてる私より さらに薄給なのだ。10年働いているって言ってたから推定2930だと思うけど、見せて貰った給与明細、30歳で145千円(手取り129000円)は無いでしょう。非正規よりも少しはマシ、という程度。日本では数少ない最後の砦級の産業、今年史上最高利益を更新したとも言われる自動車業界でさえ、末端ではコレが現実なのだ。

ましてや今年出稼ぎ先に高卒か大卒の新入社員として入ってきたK君やO君が、自分の仕事に遣り甲斐見いだし、気の合う連れ合いでも見つけ、貧しくとも暖かい家庭を築ける日が果たしてホントに来るのだろうか?  人より自分の心配しろ?

 

 以上、当初、派遣会社の中抜きがいかにヒドいかを糾弾する内容にするつもりだったのに、執筆中新たなる事実を突きつけられてしまうカタチになってしまった(意外にも、派遣より正社員の待遇の方が酷かったっていう・・・)。だが これは、私が はじめっから結論ありきで何か書くような人間ではないってこと、また持論に都合の悪いことが出てきても隠蔽したりしないことの証左と思っていただければと考え、あえてそのまま掲載する。

2014/11/23  12/15 update


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