一億層貧乏化の心構え

 3月11日を境に、日本がすでに抱えている問題を解決するための拠り所が ひっくり返ってしまった。

 震災だけなら復興は可能だし、今までもそうしてきた。
 しかし目下、福島原発の放射能汚染はいまだ解決の目処が立たない(4月7日現在)。

 復興のためには まず原発の放射能漏れを止められなければ話にならないのだが、日本は共産圏でないから
致死量の放射線を処理班には黙って片づけさせる という人道無視な戦術は取れない(その恐ろしさは、JCOの臨界事故で知られている)。このため、うかつに近づけないまま状況は悪化し、大気汚染、土壌汚染、そして海洋汚染はずるずる長引くだろう。

 残された家族に手厚い補償を約束して決死隊を募れるのは、漫画やゲームの中だけだ。

 JCO臨界事故の時は、一度は匙を投げる(逃げ出す)のを政府に咎められた時、責任をもって決死隊を組織して止めに行き、カタを付けた。それで周辺住民の安全は守られた(マッチポンプなんて言っちゃダメだ)。

  しかし東京電力の場合、発端が自然災害だったことがエクスキューズになっているのだろうか?  匙を投げる(撤退する)のを政府に咎められて以降は、「もう民間じゃ無理!ホラごらんの通り!」と破れかぶれの対処をして見せている。しかし今になって匙を投げられても、後始末を押しつけられる消防士や自衛隊は、原発事故の訓練なんて普段は想定していない。どうしても内情の解る東電社員が必要だ。 しかし聞けば、あの壊れている方の建屋で復旧作業に携わっている人の多くは派遣社員であるという。

  この「決死隊」を組織できない“やさしさ”が仇となり、日本の農業漁業はヘタをすれば向こう30年オーダーで壊滅するだろう(数値の如何にかからわず)。 基準値を引き上げればダイジョーブというものでもない。どのみち食うものがなくなれば、汚染された水や汚染食品にも水にも手を付けざるを得なくなるのだが・・・。

  私も首都圏に17年住んできて、東京電力の恩恵は受けてきた以上、東電に対し文句を言う資格は無い。その結果としての放射能も甘んじて受けます(逃げられんし・・・)。 復興費用の捻出も、痛み分けで公務員給与を民間なみに引き下げる交換条件でなら飲む(公務員が、自分たちの給与は国家予算の○%というふうには決めず、 お手盛りで自分たちの給与や手当てを決めていた今までが異常だった)。しかし東電もまた、今回管轄外でとばっちりを受けた住民からの非難は甘んじて受けるべき。 こうなる危険を指摘されてもコストカッターによって対策を講じなかったことが公になっているので。

  代替エネルギーだが、何のかんの言って結局石油火力が一番効率は良い。太陽光発電は、2007年時点の効率では元を取るのに20年かかる。* しかしパネルの耐用年数もまた20年程度を想定しているので、現状「電力の先払い」でしかなく、大山鳴動してネズミ一匹というのが実情だ。原子力が結局「石油の缶詰(カンヅメ)」と揶揄されるように、ソーラーパネルもまた、作る過程で多大の石油を消費し、しかも使った石油より効率の悪い発電を遣っている(と、いう嫌疑がかかっているので、ソー ラーの代替エネルギー案は話半分にきいておいた方がいい)。アメやシナが、他国に攻め入ってでも石油を欲しがる理由がココにある。 *ソースは清水浩氏の著作か ら

 このまま放射能漏れの早期収束に失敗した場合、日本の未来図は貧困化である。規模こそ違え、チェルノブイリ周辺国の状況報告によると、日本でも今後5年以内にまず乳幼児、10年以降は成人も放射線障害にかかり、医療費が高騰する。 国の「直ちに影響のあるものではない」というお決まりのフレーズは、裏を返せば、後から影響が出ても因果関係は認められないで一蹴されることを示してい る。事実IAEAが ダイジョーブといっていたチェルノブイリ影響下の農村部でも、地質や食生活によっては健康被害が事故後10年を経ずに上がった。

  外国に食糧まで握られたら、日本は経済的な奴隷になりかねないと警告していたTPP反対論も、今回の一件でご破算だ。放射能に汚染されていても国産品を食え、 などとはさすがに言えないからだ。そしていつまでも外国から食料を輸入し続けていると早晩カネがなくなり、日本は貧しくなる。

  貧しさに備えて節約すると不景気になる。正確には、本当に必要でなかったモノ・コトに携わっていた者の息の根が止まる。 そういえば、地元で早速ネズミーランドのツアーほぼ専門の旅行会社が潰れましタ。“めるへん”や“ふぁんたじぃ”に払う金のない私には何ともないのだが、 こんな風に ピラミッド構造の真ん中が崩れれば、上層の娯楽産業やプロスポーツのような虚業もだんだん淘汰され、総じて貧乏になる。

  さらに、不況下での増税は恐慌を呼ぶ。震災前から食料品はジリジリと値上がっていたが、今回は給料が上がらず食糧燃料の物価が上がるスタグフレーションになる恐れがある。水を買って飲まなければじわじわ死に向かう心配をせねばならない時代が来るとは思わなかった。4月3日の時点だと、 地元のスーパー(ベ○シア)にて、放射能が検出された茨城県産のキャベツは一個50円(?)でも売れておらず、台湾産は一個500円だが売り切れていた。
*諸説あり、売れないので段階的に値を下げた?

 野菜は既にそうなっているが、加工貿易国日本の生命線、工業製品からも放射能が検出されれば、輸出差し止め(突き返される)の恐れもある。放射能の危険は今まで騒いでいた おもちゃに含有される鉛の比ではない。元々、内需拡大政策で禁輸したい国からは、日本製品の放射能汚染はいい口実にされる。

  さいたま市では、福島からの避難民の生活保護申請に市が難色を示しており、難民と地元住民の軋轢が早くも出てきている。生活保護の増加で日本経済が破綻すれば、 失業が死に直結する時代がやってくる。そうなると、次に国外脱出や出稼ぎが起こる。中南米への棄民政策が復活するかも知れない。

  今なら富裕層は痛くもかゆくもないし、海外に逃亡もできる。被災者も、大変ではあるが、ほぼ言い値の手厚い保護が約束されている。しかし、その復興費用の穴埋めをするのはいつだって何とか生活を維持できている中間層だ。仮に、これから来る雇い止めで仕事が無くなってしまえば、被災者とは違って何でもかん でも“自己責任”にされ、救いの手は差し伸べられない。そういう人たちが今後、ますます電車に飛び込むことになる。これは避けたい。

  経営者は自問して欲しい。最近社員に対し「被災者の苦労はこんなモノじゃない!」、このフレーズを安易に連発してはいないだろうか? 一見もっともではあるが、そればかりでは社員をさらに苦しい労働条件で働くことを良しとするのと同じだ。今、弱り目にたたり目の日本の労働者を、さらなる「どん底への競 争」に駆り立てるような ことがあってはならない。

 震災前でさえ、働けるのに働かない人 が、まじめに働く人の負担を増やして苦しめている実態があったのだ。これに加えて経営側が、今度は働ける人まで働けなくなるような状況に社員を追いつめてしまえば、あるいはリストラだからとワザと不適在不適所をくり返せば、世の中というのは繋がっているので、そのうち日本全体が疲弊しますネ。無理なく働ける時間や条件というのが法律で規定されている。労基はこういう 時こそ監視を強めるべきだ。

 それにつけても原発だ(クドい)。放射能汚染が長引いて、これは人災だということになれば、損害賠償を海外から請求される怖れもある。現政権は外交能力がないからホイホイ応じることになるだろう。さらに貧乏になる。

  日本のあらわな様子が世界に報道されるや否や、シナ・ロシア・朝鮮が火事場泥棒の予行演習を始めた。平和ボケした日本はこの事実を忘れないようにせよ。これら泥棒国家に隣接する周辺国(ミャンマーなど)は、災害下でも国内外に情報規制を敷きたがる理由が、逆の立場になってみて理解できる。もちろん政権の維持もあるだろうが、アレは実は、泥棒国家の火事場泥棒に付け入る隙を見せてしまうよりは、真っ当な国の援助を断ってでも自国のたたり目を伏せておく方が、 トータルでは安全と判断しているからだ。昨今のシナやロシアを見れば納得だ。

 シナ韓寄りの政府と、マスコミによってあまり報道されていないが、アメリカの対応は早かった。今度ばかりは素直にありがたいと言いたいところだが、かつて日本が弱っていた時、アメのハゲタカにやすやすと持って行かれたうえ、今なお外資に買収されたメガバンクから流出し続けている日本のカネを、今ちょっぴりキャッシュバックされたというのが実情で、おカネに色は付けられないから証明はできないが、本気で被災者を助けたい思いがにじみ出ている米兵と、援助に喜んでる地元住民の構図は、アメの金融の遣り方や軍産を憎悪する私と しては実に複雑な心境だ。。。

  あと、これはイヤなヤツの発言になってしまうがあえて書く。

  私の郷里に限っていえば、今回の被災についてはあんまり同情していない。なぜなら彼の地は、一部の既得権益者以外まともな労働条件がなく、出稼ぎや県外就職が横行するという、不公平感のぬぐえない土地柄だったからだ。 多くの若者を、県外に追いやる口減らしの政策を敷き、その上にあぐらをかいていた。そういう政策にさんざん乗っかり、勝手に縄張り主張して、船を数多く持ち、御殿のような家を建て、被災したら、「船も家も失った、また元の生活に戻りたいので支援をお願いしたい」と言われても・・・。体よく追い出さ れ、コネもツテも親戚も元手もない県外で、ゼロからスタートせざるを得なかった身としては、彼らが元の生活を取り戻す(=既得権者だけがいい思いをするシステムの復元)支援など、ハッキリ言って『お断り』である。

  川に釣り行けば、「放流しているカネ払え」。釣れても釣れなくても4000円也。天然モノか、放流モノかなんて見分けが付かないのをいいことにアコギな商売をやっている。ウチの親父は、漁協管轄外の川、というか沢まで何十キロもガソリン代かけてクルマで行くのだが、本末転倒である(親父が子供の頃までは、そんな所へ行かずとも、釣った魚を食卓の足しにはできたという)。やはり東北出身の漫画家による「釣りキチ三平」の石鯛の回に出てくる“密漁者”は、物語の上では悪役だ。しかし実際問題として、天然モノが泳いでる漁場に養殖モノを放流し、「この辺の魚介類は全部おれたちのモノ」などと主張するのはやはり間違ってる。「ここに泳いでいるのを売り物にしよう」と思い立ち、囲い込みをしてしまうから、それまでささやかに暮らしていた者たちが締め出されることになったのだ。古今東西争いの火種は貪欲だ。自分の取り分以上を奪おうとするからだ。

 もしこれが共生の社会であったなら、私も今頃こんなところにはおらず、彼らと一緒に同じ郷土の中で共に復興にたずさわり、東電にブーたれたり、その前に泳げないから津波で早々に溺れ死んだりし ていたのだろうか。人間万事塞翁が馬だ。一体何が良く作用し、何が悪く作用していたのかなんて 死んでみなけりゃわからない。またそう思わねば遣ってらんない。

 最後に、この災いを機にもっとも見直すべきはこの国の愚劣な土地政策にある。これには西日本の休耕田を耕し、東北で作れなく(売れな く)なったコメを補う以上のことが求められている。

  家賃収入で悠々自適に暮らしている者を、人は皆例外なく『羨ましい』と言う。しかし、その前に、根本的に何かおかしいとか疑問に思ったりしないのだろう か?  「一体、どんな権利があるというので、自分たちが住む以上の土地をさらに所有している者がいるのか?」という疑問である。私は社会主義者でも共産主義者で もないし、日本がシナやロシアのようでなかったことを(帰化人の同僚から話聞けばなおさら)本当に良かったと思っている。が、放射能汚染でエクメーネ (居住可能地)が大いに狭まる畏れがある今、日本人全員が「これでいいのか?」と立ち止まって考えるべき時である。

 最小限暮らしていける以上の土地を、一部の人間が貪欲にも占有し、あがりとして家賃収入を得る者と、家賃を取られ続ける者とに分断されている。

 おかしいと、思わないだろうか?

 この現状を改めるべく大ナタを振るう時があるとすれば今だ。まず壊滅状態にある村落からモデル特区として今すぐ始めなさい。それとも、 大転換が求められていることにまだ気付いてないのだろうか?  これは、荘園の時代から続いているせいか、特に疑問にも思ってない人も多い。「おれもカネ出して土地を買ったし」と。しかしそれは感覚がマヒしている。

  いつも理不尽に思っていた。「なんで他人の上がりで悠々自適に暮らしてるのと、そうでないのがいるんだ?」終戦後のどさくさに紛れて駅前の一等地を占拠した者が、今では賃貸で大儲け。その多くはパチンコ屋になっている。一方、下がらない家賃を払うのが精一杯の人は、払えなくなったら路上に放り出される。役場も税金が払えなくなったら差し押さえに来るから、この国は土地をめぐってかつての泥棒が行政とグルになって搾取しているようなモノだ(実際政治献金という名の賄賂で癒着している)。 しかしそれでは悔しいからと、高い家賃を引いて残った収入の中から家を建てようにも、ローン(借金)でないと一番必要な時に家に住めない。 無借金で建てようと思えば建つ頃には年齢的には既に枯れている計算。くり返すが、こんな日本の土地政策を疑問に思ってない人は、感覚がマヒしているのだ。

 とゆーわけで、これから日本を襲う貧しさの前には、貪欲な者を排除し、互いに分け合う精神が必要 です。
 まだ放射能汚染されてない日本の若者たちは今こそ立ち上がレ。影で応援してます。

 (2011.4.7)

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