二つの安易レイアウト





我が家にはこんなものが大勢トグロを巻いているので、



常設据え置き式レイアウトは作れないのです。鉄道模型の天敵は暇を持て余している猫です。これは前から分かっていた事で創作物を獣害から守る為にどうしても分割式完全収納型レイアウトに進まざるを得なかった訳です。





これは、もう何年も前に「3日で」完成させた北米型安易レイアウトです。



サイズは450mm×900mm。これは台枠すら持たず、規定通りに組んだ線路の合間を、草を生やしたプラ板で埋めていくプレハブ工法です。昔模型のムック本等に良く掲載されて、それを羨望の眼差しで眺めていた所の「レイアウトマット」或いは「トポラママット」。それを多少3D化、細切れ化して、運転しない時は衣装ケースに放り込んで収納するものです。

レイアウトは一気に完成させなければモチベーションが維持できない(=完成しない)私の事とて製作に時間が掛からず、また持論である「レイアウトは完成と同時に壊れ始める」のは受容すべき事として、破損した地面パーツは工作机の上でその都度修復が出来るメリットがある故に、ある程度の地形の平板さはさておいてこのようなレイアウトを作るに至ったのです。



これは2015年、製作途中の様子。この頃は小さかったコミケも今ではすっかり巨大化し、バルジの張り出した戦艦のような猫になってしまっています。



レイアウトの方は何も変わった所はありません。線路周りのバラストはアサヒペンの「石壁調スプレー」を目見当で吹き、草地にはみ出た部分は改めてターフを貼り付けてお茶を濁しています。丘は手持ちのスタイロフォームを金属ブラシで引っ掻いて形を整え、ボンドを塗りたくって「京壁」を撒き、フォーリッジやターフで色付けしただけです。
このレイアウトのコンセプトは「リアルじゃないが楽しげな」、一時トミー9スケール時代にラベルを張り替えて売られていたバックマンの提唱する(してないかも知れないですが)ライオネルOゲージのような「お馬鹿で明るい脳筋世界感」を踏襲したものです。曲線半径は最小177mm。KATOのGP9やマイクロエースのBL2、驚くべき事に古のバックマントミー、4-8-4ノーザンまでクリアします。





動画・古いバックマンを引っ張り出す


レイアウトどころか「運転板」ですらない(そもそもベースボードがない)安易なプレハブ情景ですが、これがあるとないでは運転の楽しさは大違い。偶に引きずり出してはブン回す、飽きたらお片付け、これが一番ストレスが溜まりません。




さて。



話変わって、同じスペースで日本型をやっつけたいと思い始めたのは、今年2018年の確定申告と高額の納税を済ませた3月のある晩の事でした。
上の写真は手持ちの線路を敷いてみて感じを掴んでいる所。最低限の線路配置で、列車交換、或いは機回し、貨車の入れ替えといった小手先の運転を出来る限り楽しみたいと言う事でこんな感じになりました。この後完成まで線路配置にほぼ変化はありません。建造物や樹木は可能な限り自作を避け、市販品を小加工してイメージに合わせる、或いはイメージを歩み寄らせると言う安易思想で当たって砕ける。



冒頭の子猫がこんな事しでかしてくれやがります。だから分割収納式が有難いのです。



水郷のような稲作地帯を行く地方線と言うイメージなので、スタイロフォームを切り込んで築堤と丘を設えた所。もうこの時点で完成後の姿は脳裏に出来上がっています。



築堤や駅前の地表に、木工用ボンド水溶液に浸したティッシュを重ね貼り、その上からスプレー式洗濯糊でしんなりさせて定着させます。このレイアウトの基盤は築堤を含めた一枚板のスタイロフォームで、非常に軽量です。道路の路面等は陶芸材料の木節粘土。扱いに難がありますが、完成すれば塗装も不要な未舗装路が簡単に出来上がります。



内側の丘。草を生やした後に植樹。中央は果樹園、その他ジオコレやウッドランドの樹木をうるさ過ぎない程度に植えました。奥は秘蔵のHEKIの松です。水田はこの時点ではジオコレの製品を利用する積りでしたが、接着に難があるので取りやめ。結局石目調スプレーのサンドブラウンを吹いた上に木工用ボンドを直塗りして、田植え前の水を張った状態にしました。



線路はTOMIX。道床とレール側面をクレオスのウエザリングカラー「グランドブラウン」で軽く筆塗りして一晩乾かせばこの通り。簡単な上に失敗もありません。



樹木は多くをキットに頼りましたが、一通り完成させた後、スプレー糊を全体に吹いて、KATOの「日本の草はら」を少し入れたコンビニ袋に入れてシャカシャカします。多少葉相が稠密になった感じがします。



意を決して10日位で完成です。駅の有効長の関係で機関車+17m級2両か、20m級気動車2両が限界ですが、走らせる車両に欲をかいたらこのテのレイアウトは成立し難いと思います。幸い非常に良く走るC12やキハ07が手許にあるので、走らせる車両には困りません。線路脇の通信柱は引っこ抜いて架線柱に挿げ替える事も出来ます。



こうした安易思想安易工法のレイアウトは今後も追及して行きたいと思っています。









動画・安易レイアウトⅥ完成記念