Nゲージの簡易分割式レイアウトを

脇腹に冷たいモンを突っ込まれても
首を三尺高い所に晒されても

作る





ここ数年、Tゲージや、 Zゲージの泥沼に首まで埋まり、どうにもならなくなっていました。 ここらで本業(?)のNゲージレイアウトで一釜起こそうと思い立った訳です。

ここまで各ゲージについての私見。

○Tゲージ
何といっても小さく工作自由度も高い。本線級の長編成の列車が風景の中を走るのを眺めるのに適したサイズ。但し走行性能はギリギリで、スムーズな加減速が覚束ないので、駅は諦めざるを得ない。

○Zゲージ
サイズと走行性能、ディテールが見事にバランスが取れている感じ。価格も昨今のNと比較して特に高価とは言えず、これから始める人には好適。但しTゲージ程の工作の自由度があるわけではない(改造や自作に相応の腕が必要。窓抜きも必要。流血必至!)ので、自分好みの車両が市場に出回るまで一途な思いを持て余しながら日ごと夜ごと枕を濡らし我慢する事が肝要。

○Nゲージ
40年の付き合いで最も馴染のあるサイズ。車両は重箱の隅のきんぴらごぼうのかけらに至るまで製品化されており、設定に困る事はない。走行もディテールも十分。但し本線級の長編成をレイアウト上で存分に楽しむには自分名義の動産、不動産を十分に所持している必要がある。短編成の地方線や私鉄ならば、設定次第で狭いスペースで複雑な運転、運用を楽しめるだろう。

○16番ゲージ
TだのZだのNだのに慣れた目には圧倒的な重量感に満ちた存在。価格は高額だが近年プラ製の廉価版も徐々に増え、お財布に優しくなって来たようだ。しかしながらレイアウトとなると、なぁ。分割式でセクションを作りこむか。



何をほざいているかと言うと、例えば1800㎜×900㎜のスペースがあったとして、そこで各ゲージのレイアウトをどのように作るか、と言う方便です。 「小さい」Nゲージといえどもある程度の編成を固定式レイアウトで楽しむとすれば、それ相応の場所が必要(分割式にするにしても)でしょう。

私のつましい家庭において、完成したTレイアウト、建設中のZレイアウト、それにNのトロリーレイアウトが作りかけになっており、私の自由になる場所も自由にならない場所もそれらで満杯の状況下にあります。この非常時において、今さら新規のNレイアウトだと貴様恥を知れ国賊め非国民め、等と我が家の鬼軍曹(妻とも言う)や憲兵大佐(母とも言う)に弾圧される事は必至であります。
従って、「主体的にやりたい事」と「客体的に払うべき配慮」を両立させる必要がありそうです。詰まり、

・やりたい事:手持ちの鉄コレをのびのびと走らせたい。
・やりたい事:出来れば国鉄型も走らせたい。
・配慮する事:お小遣いの範囲で安く簡単に作るべきである。
・配慮する事:お片付けが楽に、しかも場所を取らないように作るべきである。

うーん、大人だ。

ある日、たまたまのたくっていた100円ショップで、MDFボードを見つけました。これは端材に近いサイズで、200㎜四方が2枚で100円。100㎜×300㎜が2枚で100円と言うお買い得価格。早速購入したのは理の当然で、駅セクション用に100㎜×600㎜1枚100円も併せてゲット。板を目にした瞬間に、今回の分割式レイアウトの全貌が脳裏に閃きました。

尤も閃いただけではダメで、手を動かさなくては欲しい物は手に入りません。で、手を動かしました。手持ちのTOMIXのレールに合わせる為、300㎜を280㎜に、600㎜を560㎜に切断。この鋸作業が唯一のベンチワークでしたが、何といってもこの仕事が一番難しかった所です。



およそこの世の形あるものは滅すべきもの、この世に生きとし生けるものは全て天地の一角に座を占めながら、しかも流転し変化して悟りに至るのでございます。 永遠と言うものは既にしてこだわりであり、未練でございます。お釈迦様は決して永遠と言うことを仰りませんでした。レイアウトと雖もまた然りで、形あるものは何時か壊れ埃まみれになるものでございます。 明日ありと思ふ心の仇桜、盛者必滅会者定離、頓鐘菩提南無阿弥陀仏。

この馬鹿即ち私は何を言いたいのかと申しますと、これまでに幾つかレイアウトを作成しては、その内に細々した所が壊れて行き、その都度修復する情熱を失い、やがて哀れなるかな塵芥と化す、と言う悲しい出来事に遭い、現世の無常を悟りし偽朝臣は出家してけりとなむ、かく語り伝へたるとや。

えぇもう話が先に進まないな。詰まりいずれはレイアウトもゴミとなる日が来る。その為に外して再利用できる物は固定しないでおこうと言う貧乏根性、いえ経済家の発想であります。





レールもそうです。「三つ子作って魂入れず」と言う諺が(で良かったよね?)ありますが、子供の頃の記憶とは中々動かしがたいものでして、レールは高い、一本180円もする。46歳になっても一度刷り込まれた記憶は消えないものです。レイアウトが壊れたらレールを外して再利用すると言う発想です。
従ってレールは両面テープでボードに固定する方法を取りました。ボード同士の接続はジョイントが頼りとなりますが、ボードの大きさ自体が大した事はないので、これで十分な強度を稼げます。

カーブはミニカーブのR177ですが、鉄コレならこれで上等。一般の動力車でも車種によっては気持ち良く走ります。





駅はやはり欲しい。TOMIXの小型ポイントがストックしてあったので、待避線と側線を一本づつ設けて見ました。但し分岐側のRが140と厳しいので、国鉄型蒸機や20m級気動車は直線側のみの周回とせざるを得ません。フライシュマンのBR89もそうで、0-8-0の軸配置のせいか、R140では脱線します。

ホームは同じくTOMIXのミニホームの中間部分だけを両面テープで固定。これで少しは鉄道らしくなりました。

簡易(安易)運転板時代の動画はこちらから。

http://www.youtube.com/watch?v=UPQFiEl1xSQ

http://www.youtube.com/watch?v=FcGPmygccFI

安易な発想と安易な工作で走らせる方面に特化したので、これを「安易運転板」と命名しました。



さて、安く出来たし収納にも場所を取らない。全く満足すべき所ではありますが、やはり最低限のシーナリーは欲しい。

なので、収納の邪魔にならない程度のシーナリーをこしらえて見ました。

敢えてイメージをスケッチしたり、ストラクチャーを仮配置したりする必要はありませんでした。作りたい風景はここ30有余年、一貫して脳裏に存在しています。
水田の中を一直線、屹立する針葉樹と葉を落とした落葉樹の混在する丘、田の中をうねる白っぽい未舗装路、それなりに賑やかな駅前。

以前上梓した「羽根鉄道」に通ずる景観ではありますが、これは何々鉄道と言ってどっからどこまでをどうやって結んでいて、機関車は何で時には牛が貨車を引っ張って、そのような設定は一切合財省きました。
設定に囚われると、無駄にレイアウトを作り込まなければならず、走らせる車両も限定され、何より安易ではありません。

非電化線として作る積りさえありませんでした。レール脇には穴を開け、架線柱を植えて磨き込まれた(詰まりオンボロの)電車を走らせる事も念頭にありました。

この運転板は、何でも走らせられる事を唯一の条件としているのです。そう何でも。小型蒸機でもガソリンカーでも戦前型DCでもマッチ箱客車でも、ツリ掛け電車でもです。何でもです。



シーナリー製作に当たって背中を押した物は、やはり100円ショップで見かけた「マジックテープ(糊付き・ブラウン)」です。これは10センチ四方のマジックテープで、ザリザリしている側はそのままで刈り入れ後の水田に使えそうです。フワフワしている側は多少色づけすれば、枯れた牧草地や麦畑のように見えるかも知れません。実に安い買い物でした。





制作手順ったって、特に珍しい事をしている訳ではありません。

レールの横を紙粘土で埋めて「犬走り」とし、その時点で田圃の畔を、やはり紙粘土でこさえておきました。レールも含めてレッドブラウンのスプレー塗料をこれでもかと塗り、ボンドバラスト法で砂利を固定します。




先ほど述べたマジックテープを鋏で切ってそのまま貼り付け、アースカラーで色調を整えた後、ザリザリ側には細かい緑のターフを敷き込み、フワフワ側はバフ系のアクリルカラーをドライブラシで塗装してやります。




次に線路肩の法面や畦道には枯草を枯れさせます(枯草を生やすってのは国語的におかしい)。

① 木工用ボンドを醜いまでに厚塗りする。
② 枯れ草色のコースターフを要所に張り付ける。
③ 次いで浅い緑のコースターフを所々に(冬枯れの景色ではあっても意外な程緑は目につきます)。
④ その上から枯れ草色のターフをパラパラと。
⑤ コースターフに絡んだターフは指でそっと払って、荒目のコースターフの目の中に落とし込む。
⑥ ボンドの生地が出ている所に、グラスセレクション(最初に枯れ草色、次いで薄緑色)を指で摘まんでボンドに押し付ける(そうすると草が立っているように見えます。固着後の強度も十分で、指で擦った位じゃ取れません)。
⑦ その上から緑系のカラーパウダー、次いで茶系のカラーパウダーを順に振り掛け、指で払ってターフの密林の中に落ち着かせる。
⑧ 必要に応じて茶系のリアルサンドを撒いて、同じように指で払うと、草地に付いた踏み跡のような感じになる。
⑨ ボンドが乾燥したら外でボードを逆さまにして、余分なターフ・パウダー類を払落す。
⑩ ニンマリする。

大体以上の手順で冬枯れを表現しました。





これは駅です(間抜けな解説だね)。

ホーム上面は紙粘土で穴を塞いで、テクスチャーカラーの泥と砂を塗りたくり、指の腹で混ぜ合わせました。乾燥した後で駅名標とベンチ、信号機の穴がどこか判らなくなり、薄氷を踏む思いでドライバーで突きながら穴探しをしました。
あぁ、もしかしたらこのレイアウトは失敗かも知れないと思ったのは、この時を措いて他にはありませんでした。

トンボ信号機は津川の完成品のニコイチです。





駅の先にある森は収納の邪魔になるので、山型の土台を先にこさえておいて山ごと取り外せるようにしました。
樹木は旧作のレイアウトから外して保管しておいたウッドランドの針葉樹とHEKIの松。それにジオコレの広葉樹を裸木として枝が重なり合うように植えています。

未舗装路は以下のように作りました。

① 木工用ボンドで道路予定地に薄化粧を施す。
② 陶芸材料の「木節粘土」を撒き、中央部に緑系のターフを接着する。
③ 乾燥したらその上から(ターフの上にも)木節粘土を撒いてボンド水溶液をスポイトで垂らし、筆で静かに撹拌する。
④ 乾燥すると、木節粘土の特性として細かいひび割れが出来るので、更にその上から木節粘土を撒いて、指の腹で強く擦る。そうするとひび割れが消える上に、最初に固着したターフが「良い具合に」土から生えているように見える。
⑤ ニンマリする。

更に、森の下生えとして笹薮をこさえて見ましたが、これは余り良い出来ではありません。

① 木工用ボンドで下草予定地を汚らしく汚す。
② ライケンの先の細かい部分を切って、密林をこさえるように接着する。
③ ライケンの葉先に木工用ボンドを(木工用ボンドもう飽きた)直接チョイチョイと擦り付ける。
④ 明るい緑のターフを振り掛けて笹の葉を表現する。
⑤ うーん、まぁこんなモンか。




かくして一応の完成は見ましたが、まだまだ不満な点があります。駅周辺の、例えばガランとした荷物上屋をどうするか? 歯が抜けたように不揃いな鉄路柵をどうするか?
それに建物コレの駅Cに入っていた農業倉庫の横の不自然な空き地も気になります。ここも雑木林にするか、それとも畑にするか、建売住宅でも立てるかスカイツリーでも生やすか。

いずれにしても運転を楽しみながら解決して行こうと思っています。思うのはタダです。



簡易(安易)レイアウト化後の動画はこちらから。

http://www.youtube.com/watch?v=uMN58djOi54

http://www.youtube.com/watch?v=tMXptQmrsfw

http://www.youtube.com/watch?v=IANLxKjaPpw

http://www.youtube.com/watch?v=9u6rP0Ckick