運動会







床屋で頭をやってもらっていたら、急に今日は友人の子供が通う学校の運動会の日だった事を思い出した。

友人の子供は何か「競争」の選手に選ばれたらしく、つい昨夜、その事を彼から嬉しそうに聞いたばかりで、それを今まで忘れていたのだ。

さほどの義理はないとは言え、思い出した以上は応援したいものだ。こうしてはいられない。床屋の大将が止めるのを聞かず、「どう贔屓目に見てもかなり酷い事になっている頭」を気にしながら、床屋の前の路地を表通りに向かって駆け出した。

細い路地で、走ると床屋の前掛けに「昆布」やら「洗濯物」やら「引き出物」が絡み付いて来て走りにくかったが、「鯛の形の砂糖」や「オレンジ色のTシャツ」を振りほどき突き倒しながら、何とか表通りへ出た。

すると折よく「競争」が私の前を通り過ぎて行く所だった。幾つもの神輿や「おくんち」、「花魁が乗った輦台」なんぞを担いだ子供たちが、無言で、泣きそうな表情をして走り抜けて行った。

あぁ、もう今年も終わるのだな、としみじみ思った。