遅滞作戦







花の咲き乱れる野原で源平の両軍が対峙している。


両陣営に赤白の幟が翻り、武者達の鬨の声、そして刀槍の日光に反射する光が開戦の間近な事を感じさせる。

今にも鏑矢が放たれ法螺貝が吹き鳴らされようと言うその時、源氏方の陣営から両軍の中間まで一騎の騎馬武者が進み出て大音声を発する。


「やよ平氏の供輩。我こそは武蔵国が住人、何の三郎何某と申す者。戦に臨む気概を歌に致し申した。何卒平氏の御大将にお届け下されい!」


それを聞いた平氏方の陣営からも一騎が進み出て、


「それがしは伊予国の住人、何の太郎兵衛何其と申す。戦場にあって尚、雅ならんとする御貴殿のお心映え、感服仕ってござる。必ずや我が大将にお伝え致し申す」


そう言うと源氏方の騎馬武者から短冊を預かり平氏陣営へ戻る。程なく戻って来て、


「我が大将は御貴殿の歌を御意に召し申した。荒ぶる東国武者にあって和歌敷島の道に秀でたる者が居る事を大層慶び、返歌を致さねば平氏の恥であると申され、これこのような返歌を託され申した。源氏の御大将にお渡し下されよ」


今度は源氏の騎馬武者が自軍に戻る。こうして何度か和歌の応酬を繰返している内に、和歌の内容は次第に露骨な嫌がらせに変化して行く。


平「天離る田舎モンが背伸びしてんじゃねーよバーロー」

源「うっせーんだこのたまきはる骨無しチキン野郎」


二人の騎馬武者は返歌を受け取る度に両軍の中間で互いの歌を見せ合い、吹き出し、互いの背中をバンバン叩き合ってクツクツ笑っている。

そうして時間稼ぎをしている内に源氏の別働隊が合流すると、それを察した平氏方は陣を畳んで更に西国への道を落ちて行く。落ちて行くその道はやがて屋島から壇の浦へと繋がっている。

これがNHKの年末の例の番組の起源である。