改造







見間違えようのない大学病院の遺体処置室。

処置台の上に縛り付けられているのは私だった。状況が判っていると言う事は生きているのだろう。どうやらこれから私に対する医療関係者の復讐が始まるらしい。一人の医師が


「これ以上医療に対する中傷や批判をするなと言った筈です。こうなったのはあなた自身の責任です。これを見て下さい」


医師は大きめの鉄の風鈴を私の目の前にかざした。助手らしき男がフッと息を掛けると、それは涼しげな音を立てている。

やがて医師が合図をすると助手はハンマーとタガネを出して来てその風鈴に当て、コチコチと何やらしていた。どうも風鈴にヒビを入れているようで、


「もう良いだろう、聞かせてやれ」


再び助手が風鈴に息を吹き掛けると、先程の澄んだ音色とは似ても似つかない、がさつで神経を逆なでするような音になってしまった。あぁ、私もこうされてしまうのだろう、と覚悟を決めていると、


「はい、結構です。次の予約は来月5日で良いですね。ではお大事に」


―ってあれ? 私に対する医療関係者の復讐劇だったのではなく、普通の治療だったのかこれ?



曖昧な気分のまま場面が変わる。

晩秋のしっとり濡れた明るく寂しい雑木林の中を、貴族然とした雰囲気の黒い服を着た男が、書物を読みながら静かに悠然と散歩をしている後ろから、白と黒の斑犬が尻尾を振りながら附いて歩いていた。

しかし、私がその貴族めいた男に比定されない事は明白だった。なぜなら彼は非常にスマートでハンサムであったから。貴族の風貌と言うより山賊のそれに近い私は、だからこの場面において彼ではない。

そんなら私は一体、この場面の何処にいるんだ? ワン。