巨大病院







それは例えようも無く大きな病院だった。

上から見るとU字型をしているメインビルディングは端から端まで1㌔は裕にあり、そこで一体何千人の職員が働いているのか数える気にもならなかった。

その大きな病院で「メッセンジャーボーイ」として働いているのは私一人だけだった。

封筒の束を持って病院中を駆け回り、目当ての人に渡してハンコを貰う、唯それだけの仕事なのだが、どうやらそれが只事では無い。

ナースや事務職は大体いる場所が決まっているのでまだしもなのだが、ドクター、それも腕利きともなるとあちこちでお座敷が掛かるらしく、一日中追い回しても捕まる事がない。


「知念ドクターですか? そう言えば最近見かけませんね」

「知念君はこの所中央手術室に入り浸りのようだね、医事課の田中君に聞けば判ると思うよ」

「知念ドクターの趣味は磯釣りだ。他に何も言う事は無いよ」

「いえ、本当です、火曜日にICUに天丼とかけ蕎麦を持っていったのは僕です。あ、でも妙だったな、何時もならナースかインターンが受け取るのに、その日に限っては知念さんが直接受け取りに来ましたよ」

「知念ドクターの事を私に聞くのは間違ってます。彼の事なんか全然知りません、本当です!」


このナースは何か知っているな。と思うと廊下の角から姿を表した長身、見覚えのある長い顔! 知念医師は私を認めると急に顔色を変え、咄嗟に逃げ出した。


「待て、知念! 止まれ! 誰かそいつを捕まえてくれ!」


あれ? 何時の間にサスペンスドラマになってたんだ?