小説
昔走った稜線
そのころ僕たちは大学生で、充分に中途半端な自分たちの歳を持て余していた。「レコードってやつは」と彼は言った。「小市民の人生に似てる。広がりがあるようで、実はか細い一本の線だ。傷つきやすく、そしてよくぶつぶつ言う」
パスカル短篇文学新人賞に応募し、筒井康隆氏よりお褒めの言葉をいただいた想い出の小説。



自分のいる風景
島原での記憶はと問うと、犬だと答えた。「犬?」 「ええ、犬です。転出するその日、僕は母と小学校に行ったんです。手を引かれた妹も一緒でした」
よかったら転校生の話をいつか書いてください、と彼は言った。しかしこの文章は多分彼の意に反することだろう。



季刊誌『樂』 2号3号4号に、エッセイを寄せています。