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大江・岩波沖縄戦裁判、原告の控訴棄却

夜の報告集会に参加しました。
弁護団報告や岩波書店あいさつ、平良宗潤さん(沖縄歴史教育者協議会)、『母の遺したもの』著者・宮城晴美さんなどのお話がありました。近藤弁護士によりますと、裁判長はこまかいことにも注意をはらう裁判官だったようです。判断についてはほぼ原審にならうもので「軍民一体化」のなかで、命令があったと判断せざるをえない。宮城初枝さんへの「お帰り下さい」が、原告側証言で、「自決してはならない」にすりかえられた。直接命令があったかどうかの立証は困難としても充分理由があった。
 そして近藤弁護士は、今回の判決で注目すべきは、表現の自由について、重大な不利益があったかどうか、問題の真実性など三要件を提示した。ゆうなれば、いちいち裁判で争うなどしていると歴史・学術研究にとっても支障を生じる。歴史のながれのなかで新事実と共に批判、反批判が交わされ真実は判明する。原告側は上告しますが、今後最高裁がこの問題をどう判断するかにかかわる。
 宮城さんは新版「母の遺したもの」を出版され、受付でも売っていました。宮城さんは人と人との関係の複雑さを指摘しました。例えば、兵隊は民家に分宿した場合のその家族との関係。母親の場合も、小学高等科一年しかいっていない学歴コンプレックスとか、それら人々との関係の複雑さがあったようです。岩波の岡本さんは、原告側は沖縄戦の真相をひっくりかえそうとした裁判だった。控訴審になって「親分」の藤岡の出番となり、「虚言」を総まとめに証言したが裏目となった。出版社としても言論・歴史研究の自由をめぐり、今回の判決は重要、などの発言があった。ドイツからの大江さんのメッセージも紹介されました。支援事務局の小牧さんは、六十すぎてパソコンにいどみホームページを開設。また思想信条を越え、さまざまな人たちが支援協力しあった、などまとめの発言があった。まだ、整理できていまらんが、とりあえず以上は私見です。

2008.11.01 W

◆この判決について、琉球新報は電子号外を発行しました。
http://ryukyushimpo.jp/uploads/img490a98c8024f9.pdf

◆また沖縄タイムスのサイトは判決要旨を掲載しています。
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-31-E_1-001-3_001.html

◆「大江健三郎さん『沖縄の犠牲の記憶を守り、戦う』(asahi.com速報ニュース)
http://www/asahi.com/national/update/1031/OSK200810310080.html

大阪高裁判決全文、大江健三郎さんのコメントをアップしました。
大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会のホームページをご覧ください。
http://okinawasen.web5.jp/

●沖縄戦裁判大阪高裁判決についての三団体共同声明

1.2008年10月31日、大阪高等裁判所第4民事部(小田耕治裁判長)は、平成20年(ネ)第1226号出版停止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成17年  (ワ)第7696号)、いわゆる大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判控訴審で、「本 件各控訴および各控訴人らの当審各拡張請求をいずれも棄却する。当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする」との判決を言い渡した。

2.大阪高裁判決は基本的に原審を維持し、ふたたび、沖縄戦の真実を歪曲した控訴人(原告)らの主張の誤りを明確にしたばかりでなく、控訴人らの主張の信用性を立証するための裏付け調査等がなされた形跡もないことなど、きわめて問題 だと指摘し,控訴人ら弁護士の立証活動が科学的、実証的なものではなく,いい加減なものであったと指摘したものと言える。

3.それにかかわって、控訴人梅澤が「自決するな」と言ったという主張を明確に否定し、住民に玉砕(自決)を求める方針を決して変更しなかったことも認定したことは重要である。さらに控訴人らが持ち出した宮平秀幸新証言を虚言と断じ、それを擁護し補強を試みた藤岡信勝意見書なども採用できないと断言したことも重要である。

4.戦隊長梅澤・赤松の玉砕(自決)命令については、「伝達経路が判然としない」という原審を訂正し、「住民への直接命令」と狭く限定したうえで、証拠上からそれを認定するのは無理があるとした。本来ならば、事実上の戒厳令下の「合囲地境」にあった慶良間列島において、命令の伝達経路は明確にされており、隊長命令なしに集団死が起こり得なかったことを判示すべきだったと考える。

5.しかし重要なことは、もっとも狭い意味での隊長命令の存在を認定しなかったからといって、それが、隊長命令がなかったことを意味するものでもなく、総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もありうると、高裁判決が明言していることである。

6.そのさい、国家機関としての裁判所は本訴訟の主題である名誉毀損等の成否にかかわる限りで歴史事実についての判断をするべきであって、本来、歴史的事実の認定は歴史研究の場において研究し論議を蓄積していくべきものであるとしたのは妥当な判断であり、それは控訴人らが集団死についての軍命の存在を否定することを裁判所に求め、それをもって教科書を書き換え、国民の歴史認識を歪曲しようとしたことの不当性をいっそう明らかにしたものといえる。

7.高裁判決は、新たに、日本国憲法が保障する言論表現の自由を最大限に尊重することが民主主義社会の基盤であるという立場から、出版差し止めが成立するための条件を明確にし、それにもとづいて出版差し止め請求を棄却した。これは憲法が定める権利の保障をいっそうすすめるうえで貴重な判断である。とりわけ公務員に関すること、いいかえれば国家権力の行為についての自由な言論の保障の必要性が高いことを明確にしたことは重要である。この判断に従うならば、国家権力を構成する軍隊の行為について教科書においても自由な言論が保障されるべきである。教科書記述を政府が認める特定の枠のなかにとじこめようとする教科書検定、とりわけ今回の沖縄戦検定の不当性は、この点からもいっそう明らかになった。

8.よって文部科学省に対し、沖縄戦に関する2006年度検定意見をただちに撤回し、「集団自決」における軍の強制・命令の記述の復活を含め、記述の再訂正による改善を直ちに認めることを強く要求する。

9.控訴人らは最高裁に上告するとのことであるが、最高裁に対し、すみやかに上告を棄却することを求める。

 2008年11月 5日
         大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会
         沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
         大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

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