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「大江・岩波沖縄戦裁判」の判決を前に

 以前、沖縄の作家原作「豚の報い」という映画を見た。若者は飲み屋の女たちと父の故郷の島を訪れる。そこには自死した父親が、風葬により白骨化し野ざらしのまま眠っている。島の掟で自死した者は15年間同族の墓には入れない。若者は父の眠る海岸近くに「拝み場」を作るなどのシーンが印象的だった。
 沖縄には「命こそ宝」という言葉がある。ムラによって掟は異なるだろうが、自らの命を断つことを戒めている。いわゆる「集団自決」は切羽詰まった苦渋の選択であって本意ではない。もちろん明治以後の皇民化教育の刷り込みもあっただろうが沖縄古来のものではない。

 大杉氏投稿の「冷静な歴史認識」の主張自体は問題はない。しかし、大江・岩波沖縄戦裁判を提起した原告側は、客観的で冷静な歴史認識を求めているものではなく極めて偏った政治的意図をもったもの。指揮官が命令をしたかしなかったか、という極めて一面的な事柄を「軍の強制はなかった」と押し広げ、住民の自発行為にすり替えようとする。こうして「皇軍」を免罪・賛美し、教科書を書き換え後世に伝えようとする狙いがある。原告らの弁論の端々に見られるのは「皇軍」を貶めてはならないとか、集団自死した住民賛美論が基調となっている。
 また、提起した自由主義史観研究会や靖国賛美論者など、侵略戦争を正当化するなど一連の右翼的な組織的な背景があり、さまざまなレトリックで冷静・客観的なフリをすることはあっても、彼らの言説のいかがわしさや時代錯誤を信ずるわけにはいかない。
 曾野綾子は『ある神話の背景』の改訂版を『集団自決の真実』として、裁判にあわせて「掩護出版」した。その序文では、ユダヤ人の「マサダの自決」について書き加えている。日本では神話伝説当時話しだが、殉教話しを21世紀の今に持ち込むなど時代錯誤も甚だしい。その基調とするのは「集団自決」賛美論であり、百年前に制定された、戦時国際人道法の思想とはおよそ無縁の発想である。

 注目の「大江・岩波沖縄戦裁判」は、いよいよ近く判決される。
◆日時等:3月28日(金)10:00〜 大阪地裁 14:00〜 エルおおさかで報告会
 名誉毀損や損害請求した原告二人は、元々は裁判などする気はなかったが、右翼集団の画策に促されて裁判に臨んだことは分かってきた。原告側が全面的に依拠する曾野綾子の著作にしても、促されてあわてて「読んだ」ような形跡がある。これらを見ても意図的に仕組まれたのが今回の裁判である。   

08/03/07  W

          
反戦・反基地ブログ