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【イラク自衛隊、「撤収」か「撤退」か】


  6月20日、イラク駐留の陸自<撤収命令>が下命され、以後各メディアはこ れらを報道しているが、この報道をめぐり「撤収」か「撤退」かの表現で見解が 別れている。
 6月26日の毎日新聞コラム「発信箱」、同28日の読売新聞コラム「新日本 語の現場」(上)、同29日の(中)はこれらを取り上げている。(下は未読)読売のコラム(上)は、朝日、読売の「撤収」、毎日の「撤退」のそれぞれ「三社三様」の表現理由について述べている。
 朝日は防衛庁長官の<撤収命令>を公式用語に従うとし、読売は「退却ではない点を考慮した」とし、掲載論者の表現はそのままとするなど使い分けする。
 毎日は撤退も撤収も辞書では同じで、諸外国に倣って「撤退を申し合わせた」という。他紙や地方紙も予想記事で「撤退」としても、<撤収命令>以後撤収に倣う例も多いが撤退もあり一様ではない。
 ところで、毎日のコラムによれば、撤退という表現は<『退』と字を用いて敗北感を強調し、自衛隊をおとしめ>、<政府発表を故意にねじ曲げている>との一部からの非難があったという。続いて「終戦か敗戦」の問題、戦前の軍部による「帝国軍人侮辱」を口実とする「言葉狩り」について述べ、現在の防衛庁筋はそのような干渉がましいことがないのは幸いであるとしている。
 読売コラム(上)に続く29日の(中)では、<『撤収』にも『敗退』の色合い>と題し、18種類の国語辞典を調べるなど念がいっている。うち、新明解国語辞典では撤収の項目で<『退却』の意の婉曲表現>とし、<『撤収』にも『敗退』の色合いがにじむ>という。また、「撤収」などの用例をたどって見ると、かつての大戦中、米軍との戦闘で決定的に敗北した日本軍が<退却命令>に用いていたともいう。

 以下は26日の毎日コラムを見て書きかけていた私の感想などです。
 広辞苑によれば「軍隊などが陣地などを撤去して引き揚げること」で撤収も撤退も同じだとしている。ハイキングなどで「撤収・撤退するぞ」など一般庶民は使わないとすると、軍事用語の一つとも考えられる。
 政府はサマーワの陸上自衛隊の「撤収」を命令したが、クウエートの航空自衛隊輸送活動は継続し、活動範囲は13地域から24地域へとイラク全土に拡げるなど、その危険性も指摘されている。
 空自は武器弾薬などは運ばないことを建前としているが、梱包に「部品」のみの表示では中身の確かめようがない。輸送物資の情報公開を求めても回数のみで他は墨で塗りつぶされている。小銃携行の兵員輸送も移動中は護身のためのもので武器にあたらないとし、多国籍軍の作戦行動に大いに<貢献>している。
 こう見ると「撤収」とは言うものの、これで撤退活動の総てが「収」ったわけではない。期間中、路肩爆弾の車両損傷事件もあったが、攻撃で自衛隊員が撃たれることもなく、反撃で隊員が発砲することもなかったことは幸いだった。しかし、これからは「米軍との一体化」のなかで何が起きるか分からない。
 また「テロ特措法」に基づく海自補給艦等のアラビア海米英艦船への給油・洋上活動は現在なお続いている。新政権が発足してなお内戦状態が続くアフガニスタンとイラク情勢と密接な関わりがある。小泉首相はこれら空自や海自の継続活動を訪米の「土産」にするつもりか知れないが、陸自を撤退させても自分が招いた事態は収まったわけでもない。

 政府発表をそのまま報道するマスメディアはともかく、イラク「派兵」に反対する運動関係は「撤退」と表現し「偽装撤退」とも断じている。かつて大本営は戦意高揚のため、色々言葉言い換えを行ったが、為政者は何時の世もごまかしの造語を考案する。撤退を転戦、侵略を侵攻、敗戦を終戦、占領軍は進駐軍、自衛隊関係でも戦車は特車、野砲は特科などなど。
 日本では自衛隊は「軍隊ではない」ことになっているが、諸外国ではそんなお家の事情は分からない。「日本軍」とするのが国際常識であり、「派遣か」「派兵か」と問えば「派兵」として不自然ではない。自衛隊の最高責任者小泉首相は問題すりかえの名人だが、言葉のすり替え言い換えに注意しよう。
06/06/29 W

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