朝日新聞 2月23日 コラム『窓~論説委員室から』
◆韓国からの助っ人
この想定には驚かされた。 1月末、陸上自衛隊と米陸軍がコンピューターを使って戦術技量を訓練する図 上演習「ヤマサクラ」を、兵庫県の駐屯地で取材したときのことだ。 中国大陸から海を渡って侵攻する仮装敵を撃退するため、韓国に駐留する米陸 軍が日本に長距離ミサイルを持ち込み、ソウルにいる司令官が日本での作戦の指 揮をとる--。 30年前に始まって以来、同演習のシナリオは非公開だったが、昨夏、なぜか ウェブ上に漏れ出した。 読んでみると、日本防衛のために臨時に編成される全米陸軍を指揮する部隊が、 ソウルに司令官部をおく在韓米軍の主力、第8軍なのだ。在日米軍がその指揮下 に入る。 演習には、在韓米軍からも約150人が参加していた。記者会見で訪ねると、 米側責任者のワーシンスキー太平洋陸軍司令官は、なんの問題もないと言わんば かりだっだ。 「第8軍の司令官や幕僚を訓練する場として初めて演習に活用した」 長く朝鮮半島に張りつけていた在韓米軍を、他の地域にも柔軟に振り向ける新 たな試みのようだ。 演習が想定する脅威は旧ソ連や北朝鮮ではなく、今や中国なのだ。それにして も、日本防衛に韓国から助っ人がやってくるとは、事情の変化に戸惑ってしまっ た。(谷田邦一)
2012.02.24 W
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