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「流出」した、ヤマサクラ情報

朝日新聞10月17日 夕刊コラム「窓」

漏れ出したシナリオ

 陸上自衛隊と米陸軍が来年初めに行う共同図上演習「ヤマサクラ」のシナリオ
が、ウェブ上に流出した。30年近く続く演習で、初めてだ。
 すでに削除されているが、その前に入手した。作戦内容や図面はすべて英語だ。
米側から漏れたに間違いない。
 シナリオでは、中国大陸にある仮装の敵国が攻めてくる。数万人の大兵力を山
陰地方などに上陸させ、大阪を占領する。これを日米が共同して、2ヶ月間で撃
退する。
 相手は一見、中国を想起させるが、実はフランス製の戦闘機やロシア製の空母
を持っていて、訓練のための架空の軍隊とわかる。
 でも、なんで大阪? それは兵庫県に司令部をおく中部方面隊が担当するから
のようだ。
 ただ、なぜ今どき、こんな想定なのか? これはおかしい。日本の防衛政策は
すでに大規模侵攻の可能性は遠のいたとする立場ではないか。
 演習関係者に事情を聞くと、こんな返答だった。「多くの隊員が参加するには
大きな作戦がいいし、最悪の事態に備えればより鍛えられる」
 防衛省は「調査中」とほほかむりの状態だが、日米の演習内容が世界中にばれ
たのは明らか。米軍から甘い情報管理に、たびたびお叱りを受ける自衛隊だ。た
まには抗議の一つもしてみてはどうか。           (谷田邦一)

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 三菱や川崎など軍事企業の情報がハッカーによる攻撃で流出が問題になってい
るが、このコラムでいう「流出」とか「漏れた」とい表現は的確かどうか。
 たとえ米国防省のホームページが、演習参加の米兵のためのものであっても、
日本の都市の真ん中で行われる演習に、日本市民が無関心であってはならない。
当然ながらこれらを知る権利がある。
 ハッカーなど外部から、又は自衛隊員個人による故意、又は過失による情報流
出は自衛隊当局の情報管理に責任がある。
 筆者はまた、「30年続く演習で初めて」というが、2000年の伊丹駐屯地「ヤマ
サクラ37」の際も同じようなことがあった。この時は、座間の在日米軍ホームペ
ージに演習シナリオが公開され、これを週刊誌『プレイボーイ』や神戸新聞など
がレポートして明るみになった。
 米軍側は「うっかり公開してしまった」とするが、またしても「うっかり」な
のか。たぶん「まずい」とした防衛庁は削除を要求したのであろう。この場合、
問題とされたのは演習シナリオと駐屯地内の概略地図だった。例えば後者では基
地内のどこにトイレがあるか、その他、入浴・洗濯・理容・国際電話・医療など
初めて訪れる米兵には、知っておかなければならないことがある。ところが自衛
隊側にとっては、基地概略図は秘密事項に属するという見解であるらしい。
 シナリオは米兵作成のシュミレーションソフトで今回も同様。後続を含め約3
0万の敵機械化軍団が朝鮮半島を南下、北九州に上陸、応戦する自衛隊は押され
て後退、敵上陸39目にようやく名古屋に上陸した米軍の応援で岡山あたりで撃
破殲滅するという内容である。これに対して某軍事評論家は「とりたてて隠すほ
どのシナリオではない」と評した。
 今回のシナリオもほぼ同内容で、米子や金沢から大阪占領をめざして、なんと
か「人民共和国」の軍団が上陸する。米子や金沢には自衛隊が駐屯、都合よく設
定されている。最後は米軍の応援ではじめて勝利するハッピーエンドがいつもの
パターン。自衛隊は独力でなく日米軍事同盟こそ必要とするお芝居であり、日米
が半年もかけて練りに練ったシナリオである。
 
2011/10/19 W
反戦・反基地ブログ