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●自衛隊輸送機をめぐる問題

陸自は幸運にも死傷者を出すことなく今年7月イラクから撤退したが、空自輸送部隊(C-130輸送機3機と隊員約200人)はクウエートのアリ・アルサレム空軍基地を拠点に、引き続きイラク多国籍軍の軍事輸送を継続、その運航範囲も更に拡大されイラク全土にわたる。ラムズフェルド国防長官が更迭されるなど、イラクはますます泥沼化し、自衛隊機がロケット弾やミサイルに何時狙われるやも知れず、その「地上からの脅威」なかで兵員や物資の輸送が続けられている。

●硫黄島でC-130輸送機が対ミサイル訓練
 こうしたなか、硫黄島航空基地でC-130輸送機の対ミサイル訓練が行われ10月19日には報道陣に訓練の模様が公開された。地上から移動式ロケットやミサイルでも最も攻撃されやすいのは離着陸時といわれる。同訓練では地上から訓練用模擬ミサイルを発射、これに対してC-130輸送機は機体装置から「プレア」という熱源光線を放出して、ミサイルの赤外線追尾を誤作動させ、機は旋回飛行しながら着陸態勢に入るというもので、模擬ミサイルによる訓練は今回が始めて。
 空自の空輸活動は04年3月に始まり、以後今年10月末で運航回数も400回となり、4ヶ月ごとの交替要員も11期を迎え、このほど11月8日、その前段約100人がクウェート入りした。また、これらと共に新たに統幕幹部要員5人が、バグダットに常駐し連絡調整にあたるため、ほかの交替隊員とともにクウェート入りした。サマーワ陸自駐屯地についてはそれなりの報道もあったが、2年半以上にもなる空自輸送活動は、全く何もなかったかのように実態は報道されていない。

●来年2月、空中給油・輸送機の小牧基地配備
 これまで空自F-15戦闘機などのグァムやアラスカでの海外訓練では、米軍空中給油機(C-130と同型機)から給油をうけてきた。02年度に導入が決まった空中給油機は、ボーイング社767旅客機改造による給油・輸送機(1機約275億円)で今後計4機が導入される。その1号機が来年2月、同社から引き渡され空自小牧基地に配備され、新たに150人程度の運用試験404飛行隊が編成される。
 今後、操縦席に制御板、翼や胴体に受給油ポッドを取り付けるなど、救難機やC-130輸送機ほか現有機の改造が予定されている。ただしC-130など現有機の改造はまだ先になり、とりあえずF-15やF-2への給油と、受給機能のある新導入機に給油される。C-130も人員輸送向きに改変すれば約90人。新導入機も改変すれば4〜5時間で約200人の兵員輸送機となる。また、それに相当する車両・物資も運べる輸送機に変身できるという。同機は09年度には全4機が揃う。
 また、前記のように米軍給油機から給油をうけた経緯もあり、日米物品役務相互提供協定(ACSA)の関係から今後、要請があれば米軍機への給油も実施される。
 給油機とは直接関係はないが、新たな給油機配備に伴う飛行隊の編成に先立ち、今年10月19日空自小牧基地に「機動衛生隊」が医官・看護士ら20人規模で発足した。集中治療機能の「機動衛生ユニット」というコンテナをC-130機内に持ち込み、急患輸送・災害派遣など即応するための「空飛ぶ衛生隊」と称されている。
 かつて「専守防衛」政策から「足の長い戦闘機」は不要、まして給油機など論外と野党は反対したが、PKO派兵・国際災害派遣・イラク派兵など度重なる経過から自衛隊機が海外に飛び立つことが常態化してしまった。早期警戒管制機(AWACS、ボーイング767と同型機改造)や空中給油機の導入も、こうした海外派兵型自衛隊への変身を象徴する。

●空自CX----C-130をしのぐC−1輸送・後継機
 現在空自輸送機は小牧基地のC-13016機のほか、中型輸送機C-1輸送機が27機、入間や美保基地に配備されている。その後継機CXと、海自P3-C哨戒機の後継機のPXの試作が、同時に空自岐阜基地に隣接する川崎重工岐阜工場で進められており、来年夏にはそれらの1号機が完成し初飛行が予定されている。これらを担当するのは「飛行開発実験団」で、完成を見越して空自岐阜基地には巨大な格納庫などの建設も同時に進められている。導入は01年度技術研究本部の業務計画としてとりくまれ「35年ぶりの大型国産機」ともいわれる。戦後初の国産機YS−11は生産が打ち切られたが、自衛隊でこれまで計13機を輸送機として導入(現有4機)した。

   全長  全幅  巡航速度 航続距離 最大積載 巡航高度  乗 員    現有
CX:43.9  44.4  890キロ 6500キロ   26トン 13000キロ  約110人    ----
C1:29.0  31.0  650キロ 2200キロ   08トン  11000キロ  5(60)人   27機
C130:30.0  40.0  620キロ 3795キロ   16トン   ----      5(92)人  16機

PX:38.0  35.4  830キロ 8000キロ ----   11000キロ   ----      ----
P-3C:36.0  30.0  620キロ 6600キロ ----   8800キロ    11人   97機

●その他について
・イラク派兵の物資輸送はロシアやウクライナのアントノフ超大型輸送機をチャーター、隊員輸送では政府専用機利用や外国旅客機をチャーターしたが、防衛庁筋では超大型輸送機の導入も検討されている。まだまだ先の話だがボーイング社のC−17輸送機などの名前も挙がっている。
・冷戦時代の「ソ連原潜封じ込め戦略」で海自が導入したのが、固定翼プロペラ4発の「P-3C 100機体制」。1981年導入以来計 101機を製作(現有97機)したが、冷戦は終わっても「100機 体制」に変更なしで、新たに後継機PXの試作
が進められている。
・このほか海自は回転翼の対潜哨戒機SH-60Jを96機、同掃海ヘリMH-53Eを10機現有している。この掃海へりの後継機に珍しく、英・伊合作によるMCH−101掃海・輸送へりを導入、今年3月3日岐阜川崎工場で初号機受領式が行われた。同機は「完全武装兵員36人搭乗可能」で、災害救助では50人くらいは運ぶことができる大型輸送へりでもある。なお、哨戒、掃海ヘリは護衛艦に搭載、または海自航空基地に配備されるなどさまざま。
・コブラからアパッチへ----陸自の対戦車武装ヘリ通称コブラと称されるAH−1S対戦車戦闘へりは、陸自五つの方面隊に計85機が配備されている。この後継機が「世界最強ヘリ」といわれる、AH-64D戦闘ヘリ「アパッチロングボウ」で02年から導入が開始され、今年3月15日、富士重工宇都宮工場で初号機がボーイング社から引き渡された。1機約103億円で今後富士重工でライセンス生産される。現有約180機の多用途ヘリでも1機約50億円。この手の戦闘ヘリが訓練事故で墜落したとの報道もあったが、大変な損失であり、納税者にとって無関心ではおれない。

◆以上は自衛隊関係新聞『朝雲』、『防衛ハンドブック』のほか航空専門雑誌などを参考にした。数字についてはものによってバラツキがあり、正確なところはよく分かりません。

06/11/24 W





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