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●「集団自決」を問う沖縄戦裁判

61年前の沖縄戦当時、座間味島と渡嘉敷島でおきた「集団自決」をめぐる裁判 は昨年8月に提訴され、今月10日で第6回口頭弁論を迎えます。
◆06年11月10日(金)13:30〜 大阪地裁202号 傍聴抽選のため13時まで集合 同日、<学習報告会>18:30〜エル大阪 講師:津多則光氏(沖縄国際大学)

 原告は、梅澤裕氏(元座間味島守備隊長、元少佐88歳)と赤松秀一氏(元渡嘉敷島守備隊長、元大尉、赤松嘉次氏の弟71歳)で、<当時「集団自決」を命じたなど、虚偽事実を著作に記され名誉を傷つけられた> として、作家大江健三郎氏らと出版元の岩波書店に、慰謝料・出版差止め・謝罪広告など請求。昨年8月大阪地裁に提訴以後昨年10月に第1回弁論、今回で第6回弁論を迎える。
 原告側代理人は、小泉首相靖国神社参拝訴訟の際、「補助参加」の形で介入を進めてきた「靖国応援団」と称する弁護士らが中心で、「百人斬り訴訟」などの関係弁護士ら34人で弁護団結成。一方被告側代理人は岩波書店顧問弁護士ら数人。
 原告側は「沖縄集団自決冤罪訴訟」、被告側は「大江・岩波沖縄戦裁判」とし、毎回の傍聴は開廷前に百人以上が列び抽選により、それをまつ風景はかつての靖国訴訟と同じで、雑誌「正論」を読みふけっている人も見かけた。
 原告側支援組織には「自由主義史観研究会」代表・藤岡信勝氏らが名をつらね、「新しい歴史教科書をつくる会」などと密接な関わりのなかで、プロパガンダとしてとりくまれ、文科省に<「集団自決強要」の記述を削除する指導の要請>などを決議している。従って「従軍慰安婦」問題同様に学校教科書から、「沖縄戦で日本軍は沖縄住民を守らなかった」など、軍を「貶めるもの」として歴史教育から抹消していこうとするのが狙いのようだ。また、いわゆる「南京虐殺」を巡る「百人斬り」訴訟では一審二審とも敗訴しており、これらを挽回する意図もあろう。原告側は、曾野綾子『ある神話の背景−沖縄・渡嘉敷島の集団自決』(1973年・昭和48、文芸春秋社。今年5月、『沖縄戦・渡嘉敷島「集団自決」の真実−日本軍の住民自決命令はなかった』に改題、ワック社から再版)から引用するなどして主な論拠としている。告発対照となったのは、大江健三郎『沖縄ノート』(1970年・昭和45、岩波新書)や家永三郎『太平洋戦争』などと、出版元の岩波書店。
 渡嘉敷や座間味などで、日本軍守備隊長は「自決命令はしなかった、武器を渡さなかった」のかどうかが争点、双方は真っ向から対立して裁判は進められている。
 原告側は、自決犠牲者らは戦後、援護法の適用をうけるため、方便としてやむなくと虚偽の申請をした。従って「隊長らの軍命令があったのはウソだった」と、曾野綾子氏の著作などから引用して主張する。
 一方被告側は、曾野綾子氏は都合の悪いことは無視、引用証言の食い違いもあること。例えば島民女性が隊長に自決武器を求めた際、「お帰り下さい」と言われただけ。兵器担当軍曹や、正規の兵隊・防衛隊員らが二個づつ手榴弾を配ったこと。集団自決の将校会議あったことなど挙げ反論している。
 渡嘉敷島では一般住民犠牲者368人のうち、329人が手榴弾・小銃・かま・くわ・かみそりなどで、親が子どもを殺すなど悲惨な「集団自決」が行われ、座間味でも135人が「自決」。手榴弾は不発が多く、やむなく様々な方法で「殺し合う」しかなかった。本島から投降勧告にきた住民が、スパイとして守備隊に処刑殺害されるのを目撃した島民には、投降を選択することもできず「自決」するしかなく、誰が伝えても軍命令として受けとられる状況にあった。
 前面に米軍の攻撃が迫っているなかで、「忠魂碑前広場に集まれ」を「集団自決命令」として受け取っても不自然ではなかった。守備隊長らが「命令しなかった」としても現実に300人以上の島民らが集団死しており、サイパンでも沖縄各所でも「自決」が続いた。投降すれば射殺、壕を追い出され泣き叫ぶ赤ん坊は殺され、食料を奪われても、軍に「協力」するしかなかったのが沖縄戦の実相であった。
 渡嘉敷村には誰が建立したのか、「祖国の勝利を念じ、笑って死のうと悲壮な決意をした」と祈念碑に刻んであるというが、ほんとにそうか。沖縄には古来「命どう宝」という言葉があり命を粗末にしてはならないとする。自殺者は一族の墓に入ることができず、葬式も夜中にしかできないと聞く。

 曾野綾子氏は、前記『ある神話の背景』改題版「まえがき」で、ユダヤ教徒の紀元66年の「マサダの集団自決」をとりあげ、ユダヤ人はそれを誇りにしていると述べている。曾野氏に限らず原告支援の人たちは、沖縄の「集団自決」を日本の誇りとすべきであると考えているらしい。大昔の話や宗教的信念と混交しては困る。 今は21世紀、民間人を戦争に巻き込んではならないと、百年以上前に国際条約がで申し合わせており、差別的風土のなかで違法にも日本軍は非戦闘員の沖縄住民に一方的に犠牲を強いてきたのである。
 以上は、前に書いたものと重複部分もあります。双方の主張は平行線ですが、間もなく結審も近いと思います。裁判所が今後どう判断するかです。「集団自決」は軍事用語だから表現が適当でないとの意見もあるようです。
06/11/08 W
反戦・反基地ブログ