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ドキュメント '09裁判官日記

 9月14日の深夜、「ドキュメント '09 裁判官日記」が読売系(中京テレビ制作)で放映された。主人公は73年に長沼訴訟一審で自衛隊九条違憲を下した福島重雄氏で現在は福島県で弁護士。日記をたどりながら当時の思いを回想する。

 冒頭では昨年4月の、名古屋高裁のイラク派兵違憲判決勝利集会が紹介される。福島氏にとっては「ようやくここまできたか」と感慨無量だったに違いない。実際長沼判決以後は「裁判になじまない」とする統治行為論で、裁判所は逃げ続けてきたし、それが最高裁の意向・判例であり保守政府の解釈改憲を許してきた。
 「退官前の裁判官は良心的な判決を下す」と一般的に言われてきたが、福島裁判長の場合、いわゆる「平賀書簡」問題が象徴するように、良心に従って独自判断を下そうとすると様々な圧力が加えられる。人事権を握る最高裁は福島判事に対し長沼以後は家裁などの閑職に左遷している。最高裁の意向は判例という形で下級裁判所を締め付ける一方、その恐れのある判事は任官拒否制度で事前に排除するなど、裁判所の民主化のガンは最高裁なのである。
 「ドキュメント」ではじん肺訴訟や選挙違反訴訟に関与した元裁判長も取材しているが、判例・通例とされている事例を覆すことが如何に困難かを物語る。つまり裁判所は上(最高裁)の顔を見ながら裁判を進めているのであり、そういう体制が保守政権の元で定着してしまっている。(ドイツの裁判所のドキュメントを見たことがあるが、裁判官は自由に発言している。日本は閉鎖的で大違いだと思った。)

 今回の選挙で「一票の格差」をめぐり意見広告があった。結局一般には最高裁判事個々の経歴など分からず、ペケ○をしなければ承認ということになってしまう。格差を是認する判事の一人に涌井紀夫がいた。イラク派兵を推進した元外務事務次官などいたが、彼らは「一票の格差」に関与していないと言う。
 涌井は大阪高裁所長もやったが、かつて91年の「湾岸平和訴訟」で三兆円の裁判手数料を示した非常識な人物。その後非難を浴びて撤回するが、国民の「裁判を受ける権利」を侵害する嫌がらせで、三兆円の印紙を積み上げると富士山の高さになり、そんな印紙は求めることもできない。

 太宰治の短編に「家庭の幸福は諸悪のもと」というのがあった。主人公はたしか裁判官だったと思うが、家庭の幸福のために良心を曲げるという話。そういう世の中を亡くしなければならない。
 民主党は官僚制打破をいうが、この際司法の体制も大掃除してもらいたい。そもそも裁判官の戦争責任は問われなかったが横浜事件再審問題が象徴的だ。政府が政府好みの最高裁判事を選任し、国民は訳も分からずそのまま承認する。そんなことがずっと続いてきた。石田某という最高裁長官は退官後右翼団体の代表になるということもあった。村山政権時代、何か代わると思ったがそのままだった。世渡りのうまい官僚たちは、世論の動向に敏感だろうが、この次こそはリベラル派が大勢を占めるように望みたい。

09/09/15  W
反戦・反基地ブログ