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代執行でも破綻する辺野古新基地建設を問う!(講演要約-齋藤郁夫)
【沖縄平和市民連絡会・元土木技術者】 北上田毅



 7月20日に開催された「しないさせない戦争協力関西ネットワーク」年次総会での北上田毅さんの講演内容をまとめたものです(文責:齋藤郁夫)。

■安和の事故、ダンプがルール守っていない

 6月末名護市安和の国道で起きたダンプカーによる事故。辺野古新基地建設に反対する女性と警備員の男性がダンプカーにひかれ、男性が死亡、女性は足を骨折した。沖縄県自民党は、事故は市民の抗議行動により起きた、女性が飛び出さなければ起きなかった、ガードレール設置の要求に応じなかった玉城デニー知事に責任があると、もっぱら知事に対する追及を強めている。週刊新潮も然り。

 最近、建設会社が大成建設から大林組に、警備は帝国警備からALSOK(アルソック)に代わり、石材搬送の回転が速くなった。今必要なのは事件の客観的な原因究明である。林官房長官は、警備の在り方を再検討すると表明。事故の直後に死亡した警備員の家族からは、女性に対し損害賠償請求が出された。交通死亡事故が起きれば、まず運転手は身柄拘束されるが、安和の事件ではそれがされていない。

 現場検証してみると、警備会社が交代するまでは、抗議側・搬送側・警備の間で暗黙のルールができ、ダンプが1台出たらもう一人の警備員が名護方面から来る自動車を確認し、合図で後続ダンプが発進していた。事故が起きた当日は、警備員がダンプの運転手にルール通りにやってくれと頼んだが、ダンプは前方確認をせずに急発進し、2人を巻き込んだようだ。

 抗議活動の権利とけがをした女性を守るためにがんばる(と北上田さん、そして予定の話に入った)。



■県の再度の埋立承認撤回が必要

 国交相が設計変更を代執行、国は県の行政指導を無視し大浦湾の埋め立て工事を1月から着工した。(北上田さんたちは)埋立承認後の事情の変化を理由に、再度の埋立承認撤回をすべきだと主張している。新たな事情とは、南西諸島周辺でM8級の巨大地震の発生する恐れ、生物多様性国家戦略の閣議決定違反、米軍の戦略変化、さらに沖縄南部地区からの土砂調達が困難であること(遺骨混じりだからという理由ではなく、そもそも石灰岩の地層が原因)という事情である。

 9年3ヶ月の工期は無理であり、大幅な遅れが不可避だ。大浦湾の埋立には、大量の捨石(ダンプ3万台分)を投下し、海底にケーソン(コンクリート製の大型箱)を仮設したマウンドを造成する。この海上ヤードが埋立の作業基地となるが、その地盤の強度はN値ゼロの軟弱地盤。投下する石材は採石場において事前洗浄が条件だ。沖縄防衛局は、ダンプに積んだまま上から150秒間水をかけて洗浄するというが、その程度では無理。仮に石材は洗浄できても土砂はできない。埋立承認の際の留意事項「実施設計・環境保全対策の事前協議」は行われていない。沖縄県は、今年1月海上ヤード工事中止の行政指導を行った。仮置き土砂の細粒分含有率は40%にもなる。大浦湾がひどく汚濁されるのは避けられない。ダンプ3万台分の土砂は、初めの2年半は陸上搬送、その後海上搬送と言われている。大浦湾に百隻を超える作業船が集中する。これだけ大量の土砂を搬送するのはそもそも不可能だ。

 始まっているK護岸工事では地盤改良工事をし、その上にケーソンを載せるが、海の汚濁が広がっている。45回も是正を求めたが、防衛局は無視。これからのA護岸工事は鋼管矢板を2列打ち込み、間に浚渫土砂を詰める。C護岸工事は、まず敷砂を投入し、地盤改良工事をし、その上に捨石し、ケーソンを設置し、ケーソンの中詰砂を入れて裏込石投入という工法。しかし、水深70メートルの地盤改良は例がなく、70メートル以深はさらに軟弱な地盤であることがわかっている。工事中の台風・地震・津波に対する対策は?

 埋め立て土砂の調達先は今は未確定。沖縄県内で確保できるとし、足りない場合は鹿児島県他九州4県から搬入するとしている。県内の7割は沖縄県南部地区としているが、埋立石材は黒石岩ズリと指定され、南部地区の白色岩ズリは使えない。今年4月共同通信が「奄美大島から土砂搬入を検討」を報じた。その可能性はあるが、沖縄県土砂条例により県外からの特定外来生物の侵入を防止する対策が必要だし、奄美の自然を破壊するという問題や法的義務のある採掘跡の埋め戻し問題が発生する。やはり、埋立承認の再撤回が、県の手詰まりを打破する対策である。






関西共同行動ニュース No96