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(続)南の島を戦場にさせない!戦争は私たちが止める! 【南西諸島の自衛隊配備に反対する大阪の会】堀 文夫

■2014年から与那国島の自衛隊基地建設が始まり、今年で10年

 今年の3月に沖縄島、うるま市の陸上自衛隊勝連駐屯地に地対艦ミサイル部隊が配備されて、与那国島から奄美大島までの地対艦ミサイル網=海峡封鎖の戦争態勢が整ったことになります。

 日米共同の軍事訓練・演習も拡大の一方で、琉球弧の島々や遠く離れた南シナ海やインド洋での訓練・演習も常態化しています。

 米軍が西太平洋で行う大規模統合演習「バリアント・シールド24」が6月に行われた。これまでは米軍単独で行われていましたが、今年からは自衛隊も初参加し、日本国内では9都道府県の自衛隊基地で共同訓練を実施しました。それだけではなくカナダやフランスなども参加した多国間訓練となり、演習も過去最大規模で行われています。さらには同じ期間中に南シナ海で海上自衛隊の護衛艦が米・フィリピン・カナダ、4ヶ国との訓練も行われています。

 7月28日から8月7日までは、九州・南西諸島全域を舞台に日米9000人を動員する最大規模の合同軍事演習「レゾリュート・ドラゴン24」が行われました。この演習は中国軍の台湾進攻を阻止し、撃滅する作戦の予行演習です。そして戦場になるのは与那国島や石垣島・波照間島・宮古島・下地島・北大東島・久米島・伊江島・沖縄島・沖永良部島・徳之島・奄美大島・喜界島・駱駝島・種子島などの島々です。





■新たな段階に入った「南西シフト」

 大分県大分駐屯地(敷戸弾薬庫)への大型弾薬庫新設や陸自湯布院駐屯地への地対艦ミサイル部隊・水陸機動団配備、佐賀県佐賀空港の隣接地に新たに大規模な陸自基地を建設しオスプレイを配備、宮崎県空自新田原基地のF35B(戦闘機)配備に向けての拡張などや、広島県海自呉基地の大拡張計画や京都精華町陸自祝園分屯地(弾薬庫)のミサイル貯蔵庫の増設など、南の島での戦争継続のために九州・西日本各地の自衛隊基地の拡大・強化が進められています。

 そして琉球弧のミサイル基地と九州・西日本の自衛隊基地をつなぐ拠点となるのが、23年1月から基地建設が始まった鹿児島県種子島・西之表市の西10キロ沖合にある馬毛島です。

■馬毛島とは



 馬毛島の面積は8.2キロ㎡(東京ドーム175個分)で、周囲16.5キロ、南北4.5キロ、東西3.0キロの平坦な地形で、島の東側は豊かな漁場で、ナガラメ(トコブシ)、トビウオ、ミズイカなどが豊富に獲れる「宝の島」と呼ばれ、希少植物や県の絶滅危惧種に指定されるニホンシカの亜種マゲシカや天然記念物のオオヤドカリが生息し、ウミガメの産卵地でもあります。

 島では3万年以上前の旧石器時代のものとみられる石器も見つかっており、古来より人の行き来はありました。1951年には農業開拓団の入植がはじまり、ピーク時には113世帯、528人が暮らしサトウキビ畑や酪農を営んでいましたが、1980年3月に最後の島民が島外に移住、馬毛島小中学校も最後の卒業生を見送り閉校となり、以降無人島となりました。

■人間の欲に翻弄された島

 1974年「平和相互銀行」により「馬毛島開発株式会社」が設立され、1975年に島の買収が行われた。当初はレジャー開発を目指していましたが多くの問題が生じてとん挫。その後、国の石油備蓄基地の候補になったことから土地の買収が進みましたが、最終的には鹿児島県志布志湾が選ばれたことからそのまま放置されていました。

 1983年には右翼活動家が、自衛隊の水平レーダー用地として利用するため馬毛島に目を付け、「平和相互銀行」に防衛省に売却する話を持ち掛け、不正経理で得た20億円の資金で関係者を買収した「馬毛島事件」も起こっています。

 1995年に東京の立石建設が「馬毛島開発」を買収し、「タストン・エアポート」を設立、島の99.6%を買収し、日本版スペースシャトルの離発着場や使用済み核燃料の中間貯蔵施設の誘致、貨物専用飛行場の建設などを構想し、乱開発を繰り返しましたが、いずれもとん挫しています。

 2007年には米軍の空母艦載機離発着訓練(FCLP)移転計画がありましたが、種子島・屋久島の1市3町の反対運動で立ち消えになり、2010年には南西シフト態勢の上陸演習場・重要集積拠点とする計画が浮上、交渉が繰り返されたが価格面での折り合いがつかないまま立ち消えになりました。

 2019年11月、安倍政権の菅官房長官が「菅案件」として国が開発業者から、160億円(土地評価額45億)で島の99%を買収合意しました。買収額の根拠となったのは違法に開発された滑走路(土地を削っただけ)のような整地料(乱開発費用)も含んでの価格とされています。(本来の土地評価額は20億円とも言われています)



■公約違反、八板俊輔市長の裏切り

 2017年3月、米軍FCLP計画反対を訴え初当選した八板俊輔市長は、2020年には基地建設は「失うものの方が大きい」、「静かで豊かな環境を守り、地域本来の力を信じて進む」、「将来にわたって島の子供たちが安心して生活できる島を築くことが、今を生きる者の責任である」などの所見を公表するなど、馬毛島基地建設に一貫して反対の姿勢を示し、21年1月の市長選挙で2期目の当選を果たしました。22年8月の住民説明会のおいても、馬毛島小中学校跡地について「売るということは考えていない」と明言していました。

 それから2週間もたたない9月2日、八板市長は議会での所信表明で基地建設への賛否を述べないまま、「防衛省による行政手続きがあれば適切に対応する」と述べ、数日後には西之表市と防衛省との協議が行われ、9月9日議会に「馬毛島の学校跡地、西之表市の市有地売却、馬毛島の市道廃止」を提案。30日に1票差で可決されました。(*市議会での基地反対、賛成議員は同数で、反対派から採決に加われない議長を出しているため)

 八板市長は今も基地建設には「賛否を述べる状況ではない」、「公約違反には当たらない」「公約は常に私の頭の中にあり、国の動きに合わせてより現実的で、最善の対応を考えている」などと発言し、賛否を明らかにしないまま米軍再編交付金を予算化するなど基地建設を容認、推進する市長に変質しています。

■日本の戦争態勢を支える馬毛島基地

 2450ⅿの主滑走路と1830ⅿの横風用滑走路が「くの字」型に配置され、空母化された自衛隊最大の護衛艦「かが」が入港できる港湾施設など、1つの島に膨大な数の施設が建設され陸・海・空自衛隊の統合した訓練ができる世界でも有数の軍事基地と言われています。さらには米軍の空母艦載機離発着訓練(FCLP)も行われます。2027年の完成を目指して24時間体制の突貫工事が行われています。25年には滑走路を完成させて、米軍の空母艦載機離発着訓練(FCLP)を先行開始する予定です。国会での議論もないまま建設費用はすでに8800億円(防衛予算43兆円の枠外)の国家予算が計上されており、最終的には1兆円を超えるといわれており、随意契約による談合疑惑もあります。

■「どんたちの馬毛島を返してや」馬毛島基地建設反対住民訴訟



 基地建設が進められる中、市民は市長リコールや数度の住民監査請求を行い、23年12月19日「どんたちの馬毛島を返してや」馬毛島基地反対住民訴訟を鹿児島地裁に提訴しました。

 この裁判は基地建設差し止めを求めるものではありませんが、選挙公約を守らず、住民に説明もないまま行われた馬毛島の市道廃止や馬毛島小中学校跡地、市有地売却の違法性を問うものであり、西之表市民にとって「宝の島」馬毛島は、売却しなければ様々な利益を得られた住民の損害を訴えるものです。そして基地建設を止める闘いと、来年に行われる市長選挙、市議選挙に大きな影響を与える重要な裁判です。

 24年3月に行われた第1回口頭弁論では、馬毛島周辺で漁を行っている漁業者が意見陳述し、「漁では色とりどりの魚がとれ、網の中は水族館のようでびっくりしたことが何度もあった」「葉山港築港のため埋め立て作業や堤防を築き、漁業用地の維持管理をし、漁業を守ってきた」「漁協は漁業権の一部放棄と漁業制限を受け入れてしまいましたが、私は今も反対しています。補償金も受け取ることは出来ません」、市長の行った市道廃止は「市道は私たちの漁業用地に接しています。入会権があるにもかかわらず、私たち漁業者の意見は全く聞かれていません」と述べられ、「軍事基地化していく馬毛島を見ていると、馬毛島がハイエナに食べられて泣いているようで、どうしょうもない自分がいます。お金には変えられない大切なものを失いかけています。この美しい宝の島を後世の人たちに残したいと心から思っています」と陳述しています。

 24年7月に行われた第2回口頭弁論では、種子島の自然に魅せられ、西之表市に移住した住民が意見陳述し、種子島での自然と共生してきた生活が、馬毛島の違法開発によって大きな影響を受けていましたが、基地建設は種子島の様子をさらに一変させた。漁業だけでなく農業、観光など島の産業構造が崩れ、地代・家賃の高騰や人件費の法外な高騰など住民の生活に大きな影響を与えていると話された。2019年の市長選挙で反対派の八板俊輔氏が当選し、馬毛島の市有地が残りの島の破壊を阻止するカギになると思っていた。それなのに八板市長は反対を明言し、売却の意思はないと公言し、広報していたにもかかわらず説明もなく国への売却を決定した。これは「日本の法律や法制度に基づく自治体の信用を毀損し民主主義の根幹を嘲笑うかの横暴な行為です。これによって住民は島の未来への破壊によるダメージと戦争への恐怖に包まれてしまいました」と述べられ「今ならまだ阻止できる」と訴えられました。

 6月2日には鹿児島市内で60余名が参加して「馬毛島基地建設反対住民訴訟」支援する会が結成されました。支援する会への参加をお願いします。

 米軍の対中戦略に従い、第一列島線と呼ばれる石垣島や宮古島、沖縄島、奄美大島などに地対艦ミサイルを配備し、列島線内の島々を戦場にして海峡封鎖を行い、西太平洋地域での覇権の維持・強化するための日本の戦争態勢を支える重要な基地が馬毛島基地です。南の島を戦場にさせないために、「日本」に住むわたしたちの闘いが問われています。









関西共同行動ニュース No96