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憲法改正と日米安保 【関西共同行動】 古橋雅夫

■「中北龍太郎を偲ぶ会」開催

 2023年12月8日、関西共同行動の代表であった中北龍太郎さんの突然の訃報。動揺を抑えつつ関西共同行動の事務局メンバーを中心に、これまで関係の深かった団体・個人の方々に連絡を取り、「中北龍太郎さんを偲ぶ会・実行委員会」を結成しました。

 またこの会に先立ち、狭山事件再審裁判の弁護団の呼びかけによる偲ぶ会が3月25日にエル・おおさかにて開かれ、実行委を代表して古橋と星川洋史さんが出席いたしました。そこでは東京から部落解放同盟中央執行委員長の西島藤彦さんの挨拶に始まり、北本修二弁護士から中北さんが狭山裁判に関わるきっかけなど、司法修生時代の頃の貴重なお話を聞くことができました。

 この裁判は中北さんが弁護士を始めてからのライフワークであったのです。石川一雄さん・早智子さんからの「必ず再審無罪を勝ち取り、その喜びを共にしたかった」というメッセージも読み上げられました。会の最後には、まだ悲しみの癒えない中でお連れ合いの中北ひとみさんからのお礼の挨拶で閉会となりましたが、その機に中北さんが亡くなる経緯を子細にお聞きすることができ、私はしみいるように脳裏に焼き付けました。

 そうしたことがあって私が中北さんの追悼集を編集することになり、広く追悼文の寄稿を呼びかけたところ、最終的には91人もの方々から思いのこもった一文が届きました。私は改めておよそ半世紀に至る中で培われた中北さんの交流の広さと、いまなお途切れずに熱い関係が続いていることを知ることができました。中北ひとみさんからプライベートな写真も提供していただきました。加えて中北さんがこれまでに書かれた文章からほんの一部を遺稿として掲載して全体の体裁を整えました。

 追悼集の前書きは、元社民党国会議員であった服部良一さん(現社民党幹事長)から、後書きは在日華僑である徐翠珍さんから一文をいただきました。その意味は、中北さんが3度の国政選挙に立候補し(内2回は社民党から)、服部さんと同じく強く政治家として何事か成さんと志してきた経緯があるからであり、同時に戦争が差別排外主義を必要としている以上、中北さんとともに二度と戦争を起こさせないとして裁判を闘った徐さんの一文によって、中北さんの継ぐべき遺志が示さているからです。

 そうしてPLP会館で開かれた6月15日の偲ぶ会会場には、160名もの参加があり、遠く東京や広島から多くの方々がこの日のために集っていただきました。スタッフは朝早くから集まって配付物の準備をし、買い出しをし、テーブルをセッチングして万端ぬかりなく参加者を迎え、2時間という制約の中ではありましたが、途切れる事無く皆さんから中北さんへの思いが語られました。



 過日、中北ひとみさんから「長いお付き合いをさせていただいた皆様の賑やかな言葉に送られて、夫は喜んでいると思います。私も娘も始終和やかに過ごさせていただきました」また「先日、追悼集を夫の姉たちに送りましたところ、夫の仕事や市民運動のことを初めて知って、息子や娘にも読ませたいと、とても喜んでいました。また、夫の小学校時代からの友人にも送ったのですが、言葉数が少なかった夫の活躍を知ることができ、嬉しかったと電話をもらいました。私も外での夫の事は知らないことばかりで、たくさんの方々との交流や数々の裁判などを追悼集で教わりました。」との文面が届き、半年に至る偲ぶ会実行委の皆さんの労苦は充分に報われたと思います。

■これからの私と関西共同行動

 2年半前のウクライナへのロシア侵攻を契機に、国内反戦運動は「撤退」か「停戦」かで二分され、戦争に核兵器を使用した唯一の国アメリカに、ロシアがいつ名を連ねるのか固唾を飲んで見守る事態となりました。そして関西共同行動もまた、中北さんが病に倒れ、わたしたちとの会話が途切れてから1年近くの間、独自の行動ができませんでした。ために直近の課題を提起したい。

 来年に戦後80年を迎える中で、支持率25%を切りながらも退陣するとはいえ現岸田政権は、憲法改正を喫緊の課題として「緊急事態条項の創設」「憲法9条への自衛隊明記」を国民投票にかけるべく論点整理を急ぐようにと指示しました。

 そしてにぎやかに自民党総裁選各候補の発言がニュース時間を占有していますが、どのような主義・主張の違いがあるのかに意味はなく、どの候補者も急ぎ憲法改正の実現を主張していることが重要です。それは、集団的自衛権の容認に続きアメリカから次に実現すべき優先課題とされているからであり、総理総裁の役割はと言えば、その後始末をいかに国民に押し付けるかということでしかないからです。候補の一人である小泉進次郎は「即時解散し、一日も早く、国民投票を実施したい」などと表明するに至りました。

①台湾有事参戦に必要な緊急事態条項

 2023年1月にアメリカのシンクタンク(CSIS)が公表した「台湾有事」の際の戦闘シミュレーションの中で、中国を撤退させるためには、日本が「緊急事態条項を発動し、国会決議によって自衛隊を台湾支援に参戦させることが必用」だとしています。

 公式には台湾の帰属は中国の内政問題であり、今の法体系では自衛隊が軍事介入することができない。だから首相一極に国会権限を集中させるには、「集団的自衛権の容認」がそうであったように、9条改憲は言うに及ばず「緊急事態条項の創設」がアメリカの戦略にとって必要だと暗示されているわけです。アメリカが展開する東アジア版NATOを本格稼働させるには、これまでのような解釈改憲では間に合わなくなったということです。

②自衛隊の明記は現状の追認ではない

 80年前の国民が「一億玉砕」を叫び、天皇を神とあがめて戦争を継続したのは、そうならざるを得ない背景がありました。それは一つには「国体の本義」に基づいた教育によって、そして「治安維持法」「軍機保護法」「戦時統制3法」「国家総動員法」「要塞地帯法」「国防保安法」「国民勤労報国協力令」といった一連の法規制の中で日本国民は思想と行動の選択肢を失っていったわけです。

 しかし戦後、日米軍事一体化が強化されてきたこの間に、特に安倍政権以降すでに同等の法律が制定されているのではないでしょうか。「教育基本法の改正」に始まり、「特定秘密保護法」「安保法制(戦争法)」「共謀罪法」「重要土地規制法」「経済安全保障推進法」「軍需産業支援法」「軍拡財源法」「重要経済安保情報保護法」「食料安保強化法」が成立し、そして次に「サイバー監視法(日本版CIA)」案が提出されようとしています。残るは「国防の義務化」ではないでしょうか。

 法的解釈において、憲法9条の2項で「陸海空軍、その他の戦力を持たず」「国の交戦権を認めない」との明記がされている以上、他国と異なり兵役は「意に反する苦役」であるために制度化できない(憲法18条)とされてきました。だからこそ自民党改憲草案において、「自衛のための実力組織として自衛隊を保持することができる」といった趣旨の明文改憲が自民党の悲願とされてきました。こうした明言により、ついには兵役が「苦役」の中の例外とする道が開かれるでしょう。

 戦争を継続するには、持続的な兵員補給制度が必須となります。ために現自衛隊員の高齢化と人員不足は致命的であり、新たな若者抜きには実行不可能です。この改憲を契機に、再び教育の場が兵士の草刈り場となり、戦死者に対する国家顕彰が始まるでしょう。日の丸が掲げられ、応じない者は非国民だと喧伝されるでしょう。つまり戦時体制への道が完成することになります。


③戦争に「自衛権」を認めてはならない

 集団的自衛権の容認によって、アメリカの自衛権が即ち日本の自衛権であるとされた今、自衛隊が、敵に脅威を与える「戦力」には相当しないから違憲ではないとする時代は過ぎ、脅威を与えなければ「戦力」足り得ないという国民的コンセンサスを得たと自民党は判断しているわけです。

 現に、ウクライナ戦争を機にウクライナ市民の対ロシアに対する戦闘行為は「自衛権の行使」であるとして日本国民は称讃しています。さらにはパレスチナ市民への大量虐殺もまたイスラエルは「自衛権の行使」であると主張し、G7主要各国は支持さえしている。日本政府もその例外ではなく、同時にいかなる理由があろうとも病院や学校への爆撃が明白な国際法違反であるにもかかわらず、国連はそれを止めることができずにいます。

 つまり、戦争においてそれが「自衛権の行使」であることでの制約は何ら存在しないことが明白となった今、「自衛の戦争」であれば認めてよいのかどうか問い直す必要があるでしょう。

 そもそも「陸海空軍その他の戦力を保持せず、国の交戦権を認めない」とされながら、しかし国家しか所持できない実力部隊の不保持の保障をその国家自体に一任するという憲法矛盾によって、憲法9条はその誕生した瞬間から「護憲」の対象ではなく、私たちは、以後「自衛権」を否定された国家による、即自的な反撃と闘うことを余儀なくされたのだという自覚が必用でした。

 そして、この憲法を保持する主権が私たち一人一人にあるというのであれば、その主権は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」することでしか保障されないのだと、憲法前文で警告しています。

 この人民主権の名において、象徴天皇の地位を解体し、安保破棄!基地撤去・米帝打倒!戦後親米隷属政治家を一掃し、今ある自衛隊は武器を捨てさせ、切望された災害救助隊に改編して世界に貢献しよう。そのようにして国境なきアジア・太平洋地域の共生社会を確立すべく、日本は戦争責任と戦後賠償を実行して、広くアジア民衆と連帯しよう!そのためにわずかでも残る自身の人生を費やすことができれば、堂々と中北さんとあの世で合わせる顔があるというものです。

 若者よ走れ!老人は別の道を行く。戦争は悲惨であり、また終えても永く悲惨であり続ける。しかし銃を持つのは若者であり、私たちは全力でそれを阻止する。街頭で会おう!

▼「中北龍太郎 追悼」集(改版)



 B5版・174ページ/ 頒布価格 千円 (送料込み)/ 申し込みは関西共同行動まで
 (℡ 06‐7777‐4935 平日昼間)







関西共同行動ニュース No96